自動ブレーキの義務化はいつ? 誤作動や歩行者対策は大丈夫?

      2017/02/11

自動ブレーキ

 自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の普及が着実に進んでいます。

 「自動ブレーキの義務化」というニュースもよく目にするこのごろですが、一方で、「ほんとうに自動ブレーキは安全なのか?」という疑問の声もあります。そうしたなかで、義務化の流れはどんなかたちで進んでいくのでしょうか?

 この記事では、自動ブレーキの現状と、最低限知っておきたいその仕組み、そして今後の展望について、ざっくりとまとめてあります。

 ドライバーはもちろん、誰もが、もはや「常識」として知っておきたいことですので、この機会に自動ブレーキの知識を深めておきましょう。

自動ブレーキは止まらない? あくまで「衝突被害軽減ブレーキ」であること。

 自動ブレーキは、正式には、「衝突被害軽減ブレー」とよびます。AEBS、AEBなどAutonomous Emergency Braking Systemという英語の略称も使われます。

 「自動ブレーキ」という言葉や「ぶつからない車」のCMイメージからすると、どんな時でも絶対に止まってくれるという誤解もありますが、現段階の自動ブレーキは、あくまでも「被害軽減」をする装置です。完璧に自動ブレーキがかかる仕組みではありません

 自動ブレーキの基準は、原則として人が操作する前提で、補助的に作動したり、最悪の場合の被害を少しでも軽減することを狙い、定められています。

 これまでも「自動ブレーキ搭載車が事故った!」という事例もありますが、それは、運転者が自動ブレーキの性能を理解せず過信しためにおきたものです。自動ブレーキは100%効くものではない、ということへの理解が足らないためにおこった事故であり、衝突被害軽減ブレーキに欠陥があったわけではないのです。

 現在、自動ブレーキは、国際的な基準にのっとって市場にリリースされています。

 あくまでも、「衝突被害軽減」という意味では、国際的な基準をクリアしていて、問題なくその性能を発揮しています。

 現在の衝突被害軽減ブレーキが普及すれば、交通事故は40%ほど減るとも考えられています。その効果が期待できるからこそ、積極的に衝突被害軽減ブレーキを搭載した車が発売されているわけです。

自動ブレーキの義務化は、いつから実施?

 衝突被害軽減ブレーキが搭載された新車が続々出てくるなか、「自動ブレーキの義務化」というニュースが、しばしば流れてくるようになりました。

 「えっ!? うちの車ついてないけど・・・」と、まだ焦る必要はありません。というのも、自家用車の自動ブレーキ義務化は、まだ先の話になりそうだからす。

 では、自動ブレーキの義務化は、どのような流れで進んでいくのでしょうか?

自動ブレーキの法的根拠

 自動ブレーキ(正式には、衝突被害軽減ブレーキ)の義務化は、「道路運送車両法・保安基準の細目」のなかで法整備が進められているものです。

 実は、すでに、大型トラックやバスなどでは、衝突被害軽減ブレーキの義務化が法的に決められていて、2014年以後にリリースされている新型の商用トラックやバスには、衝突被害軽減ブレーキがすべて搭載されるようになっています。

 また、2017年9月からは、今後生産される商用トラックやバスには、すべて衝突被害軽減ブレーキが着けられるように、道路運送車両法・保安基準で定められているのです。

 一方、自家用の普通車や軽自動車の衝突被害軽減ブレーキについては、「義務化」はまだなされていません。もっとも「義務化の方向」で動きがはじまっているのですが、実際に「義務化」が実施されるのは、もう少し先のことになります。

 というのも、この「自動ブレーキの義務化」は、日本独自で決められるものではなく、国際基準に沿って、決められていくからです。

自動ブレーキや自動運転の国際基準

 国連のなかには「「自動車基準調和世界フォーラム(WP29)」という組織があり、自動車の安全生や環境対策の技術を国際的に協力して高めていったり、安全基準を国際的に統一していく活動が行われています。

 WP29のなかでは、自動車の基準についての国際協定も結ばれていて、1958年の「国連の車両等の型式認定相互承認協定」に54カ国が参加、1998年の「国連の車両等の世界技術規則協定」には36カ国が参加しています。

 これらの協定をベースに、各国が、国内の自動車の基準を法的に整備しているわけです。

 自動ブレーキについても、この国際協定の対象になっていて、「ブレーキと走行装置に関する専門分科会(GRRF)」のなかで、安全基準などが議論・決議されて、その方針に従って、加盟国がそれぞれの国内法に落とし込んでいく仕組みになっています。

 日本でも、大型トラックやバスの自動ブレーキ義務化が道路運送車両法にもとづいて義務化されていることは先に述べましたが、このトラックやバスの義務化も、この国連での協定にもとづいて法整備されたものなのです。

普通自動車の自動ブレーキ義務化はいつ?

 さて、普通自動車の自動ブレーキは、今後、国際協定に沿って、世界的に足並みをそろえながら、近い将来に義務化されていきます。

 普通自動車の自動ブレーキは、WP29のなかの「ブレーキと走行装置に関する専門分科会(GRRF)」が中心になって、国際基準を作っていきますが、実は、日本が、そこでリーダー的な役割を果たしています。

 2017年の1月のGRRFの会合では、日本の提案により、

・普通乗用車の自動ブレーキの国際基準の検討を開始すること

・普通乗用車では、自動ブレーキの試験基準に「対歩行者試験」を加えること

が決まりました。

 この件が「自動ブレーキ義務化!」として大きく報道されましたが、あくまでもまだ「国際基準の検討」がはじまった段階です。

 しかも、「対歩行者試験」が基準に加わっているため、まだまだ時間がかかります。

 実は、現在リリースされている自動ブレーキは、ほとんどは、車に対して反応する自動ブレーキで、原則、歩行者には対応しません

 現時点の自動ブレーキ技術では、車に対しての感知能力は、ほぼほぼ問題ないレベルまであがっていますが、歩行者に対しての感知能力はまだまだ精度が低く、開発の途中なのです。

 今後、対歩行者の自動ブレーキの精度があがり、それらの試験を経て、国際基準が合意されて、ようやく普通車の義務化が制定されます。

 それには、いましばらく時間がかかります。

 また、義務化がはじまっても、新型の車両の搭載義務からはじまってきますので、今乗っている車を自動ブレーキ搭載車に買い替える必要が生じるわけではありませんので、そのへんは安心してもよいでしょう。

ここまでのまとめ

・自動ブレーキは、あくまでも「衝突被害軽減ブレーキ」

・補助的に働くものであり、効果を過信するべきではない。

・義務化は、大型トラックやバスではすでにはじまっている。

・普通自家用車での自動ブレーキ義務化は、本格的な検討がはじまったばかりで、実施はまだ先のことになりそう。

自動ブレーキの仕組みと性能

自動ブレーキの鍵を握るのはセンサーとAI

 さて、つぎに、現在リリースされている各社の自動ブレーキの技術についてみていきましょう。

 ブレーキを自動で操作する仕組みは、油圧を使って機械的に操作されるものですが、この操作部分の仕組み自体は既に1990年代に完成されていました。ですが、実際に、衝突被害軽減ブレーキを搭載された車が登場したのは21世紀に入ってからです。

 開発が難しかったのは、車や歩行者などを止まるべき対象を感知する「センシング技術」と、センサーが感知した情報を処理してブレーキの油圧に命令を出す「人工知能(AI)」の部分です。

 センサーとAIについては、今も開発が続けれられていて、自動ブレーキだけではなく自動運転全体が、日々進歩している真っ最中だというわけです。

 現在、各社からリリースされている自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は、つぎの4種類のセンサーの組み合わせで構成されています。

自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)のセンサーの種類
レーダー系のセンサー

・赤外線レーザーレーダー

・ミリ波レーダー

・超音波レーダー

カメラ系のセンサー

・ステレオ・カメラ

・単眼カメラ

 採用されているセンサーの種類によって、自動ブレーキオプションの価格や性能が異なっています。

 自動ブレーキの性能を過信しないためにも、まず、各センサーの特徴を把握しておくことが大切になります。それぞれのセンサーについて以下に詳しくみていきましょう。

赤外線レーザーレーダー

 初期の衝突被害軽減ブレーキのセンサーの中心となっているのが、赤外線レーザーレーダー。コストが比較的安く設置できるため、とくに軽自動車の自動ブレーキ(衝突軽減ブレーキ)に多く採用されています。

 ただ、赤外線レーザーは、数十メートル先までしか届かないので、5kmから30kmの低速で走行中の場合でしか機能しません。ですから、駐車場や渋滞中、交差点などでのボケっとしていたり、他に気をとられて車や壁にぶつかりそうになるようなケースでしか作動しない、限定的なものだと考えてください。

 また、歩行者は検知しません。

 直射日光に弱く、朝方や夕方の日差しが強い時に、誤作動する可能性があります。また、雨で誤作動する確率が高いため、ワイパーを入れると作動しない仕組みになっている車種もあります。

 以上のことから赤外線レーザーをセンサーにした自動ブレーキは、あくまでも補助的なものだということを頭に入れておきましょう。

ミリ波レーザー

 普通車の自動ブレーキ(衝突軽減ブレーキ)や自動運転システムで採用されているのがミリ波レーザーです。100メートル〜200m先まで感知するため、高速走行中でも機能します。また、直射日光や雨でも性能が落ちないため、赤外線レーザーの弱点をカバーできるセンシング技術でもあります。

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 さらに、最新のミリ波レーザー技術では、車や壁だけではなく歩行者の感知もできるようになってきています。

 高価なのが弱点で、軽自動車ではコスト的に搭載は無理。ハイクラスの普通車の自動ブレーキのセンサーとして採用されています。

超音波センサー

 超音波センサーはテスラやベンツの自動運転車で採用されているセンサーです。ごく近距離の細かい部分をセンシングするもので、自動ブレーキというよりも、駐車での自動運転(自動車庫入れ)のためのセンサーとして、用いられれています。

ステレオカメラ

 ステレオカメラによるセンサーは、まさに人間の眼と同じようなかたちで、障害物を認識していきます。ふたつあるカメラに映る差位を利用して距離感をつかむことができ、車だけではなく、人も認識できるため、次世代のセンサーの中心になると考えられています。

 より精度をあげるためには、カメラによるセンサーの画像を解析するAI(人工知能)の改良も不可欠ですが、日進月歩で進化している分野です。

単眼カメラ

 ステレオカメラのコストを下げるために考えられている、単眼カメラによるセンサー。

 日産の輪郭検知方式、東芝の色収差方式があります。日産の輪郭検知方式は低コストですがコントラストが弱いものには反応しずらい弱点があるようです。

 東芝の色収差方式は最新の技術で、これから実用化されていく可能性が高いです。

 

 以上、自動ブレーキで使われるセンサーについてみてみました。

 メーカーや車種によって、これらを単体で利用しているもの、あるいは組みあわせて機能させているものなど、あります。センサーの特徴を知れば、「自動ブレーキが、どんな状況で作動し、どんな状況では作動しないのか?」が、おのずとわかってくると思います。

 各メーカーの自動ブレーキシステムのセンサーの種類を以下の表にまとめてあります。

 この表を見ながら、「自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)はどんな状況でも効くわけではない」ということを、しっかり理解してください。

自動ブレーキのセンサーはどれを使用?
メーカー 名称 赤外線 ミリ波 ステレオカメラ 単眼カメラ 超音波レーダー
ダイハツ スマートアシスト
スマートアシストII
スズキ レーダーブレーキサポート
デュアルカメラブレーキサポート
ホンダ シティーブレーキアクティブシステム 
OMBS
CMBS(ホンダセンシング)
日産

エマージェンシーブレーキ
スバル トマールレーダー
アイサイト
トヨタ

プリクラッシュセーフティーシステム
マツダ SBS
SCBS
三菱 E-Asisst
ベンツ アクティブブレーキアシスト(ドライブパイロット)
テスラ (オートパイロット)

自動ブレーキは誤動作をするか?

自動ブレーキの誤作動はあたりまえ?

 これまで見てきたように、現在の車に搭載されている自動ブレーキは、完璧に自動ブレーキとして作動するものではなく、あくまでも衝突軽減として、機能するものだ、ということです。

 完璧な自動ブレーキだという思い込みの前提で、「誤作動した」とむやみに騒ぎ立て、安全性を否定する声もありますが、それは少しズレたツッコミだということが、ここまで読んでくださっている方には、よくわかるとおもいます。

 つまり、センサーの特性を見れば、それぞれ弱点があるわけです。

 たとえば、赤外線レーザーレーダのみの自動ブレーキでは、雨や朝夕の光の強い環境が弱点です。また、単眼カメラではコントラストが弱い映像を捉えきれなかったり、ミリ波レーザでも斜め方向はステルス効果で感知できない、などの弱点があります。

 こうした弱点となる環境下では、センサーがうまく働かない、つまり自動ブレーキもうまく作動しないのです。ただし、それは「誤作動」ではなく、はじめから想定されている「動作保証外」にすぎません。

 現時点の自動ブレーキは、あくまでも「ある特定の条件では効果がある」というものに過ぎません。ですので、「誤動作」というよりも、そもそもメーカーもはじめから動作を保証していない部分がたくさんあるわけです。

 そうした意味では、まだまだ「過渡期」にあるのが、自動ブレーキですね。

自動ブレーキはまだ過渡期なのに、なぜ、積極的に実装されるのか

 自動ブレーキはまだまだ「過渡期」な段階です。それななのに、販売している車に実装してもよいのか?という意見もあるかと思います。

 ただ、過去に、日本では、自動ブレーキの規制を強化しすぎたために、世界の技術開発競争のなかで遅れをとってしまった、という苦い経験をしています。

 その反省から、あくまで「衝突被害軽減ブレーキ」として、限定された範囲の効果をうたって搭載していくという流れに変わっているのです。

 ユーザーは、こうした事情をふまえて、決して自動ブレーキの力を過信することなく、自動ブレーキの発展を、見守っていくべきです。自動ブレーキは、あくまでも人の操作を補助して、最悪の事態の場合にできるかぎり被害を軽減しようとするものだ、ということを決して忘れてはいけません。

 なお、現在の自動ブレーキは、国際基準に準拠したうえで、自動車事故対策機構(JNCAP)でおこなわれる「自動車アセスメント」で、安全評価をしながら開発・リリースされています。

 今後は、普通自動車の自動ブレーキ義務化にむけて、「対人の自動ブレーキ効果」についてもJNCAPでおこなわれる「自動車アセスメント」の厳しい安全評価にさらされながら開発が進んでいきます。

 普通自動車での自動ブレーキ搭載義務化がはじまる頃には、「誤作動」をおこなさい自動ブレーキがほぼ完成していると予想されます。

ここまでのまとめ

・自動ブレーキの作動条件は、センサーの種類によって変わる

・搭載されているセンサーの動作範囲を確認して、機能を正しく理解する

・自動ブレーキが「誤動作」するのではなく、それは「動作保証範囲外」であるため。「100%効くはず」と自動ブレーキを過信するほうが間違い。

・自動ブレーキは、国際基準や自動車アセスメントなどの厳しい検査条件をクリアたうえでリリースされているので、能力を誤解・過信しなければ安全。

 

 

 以上、自動ブレーキの義務化の流れや、ブレーキの仕組みなどについてみてきました。

 最終的には「人間よりも安全な自動運転」を目指して、技術開発が進められています。

 ただ、とうめんは、あくまで自動運転の技術は補助的なものであって、人間がしっかりと運転するのが前提です。

 技術の過渡期に、性能を誤解や過信するあまりに、事故につながってしまうのは、理不尽なことです。

 あらためて、自動ブレーキの性能を正しく理解して、あくまで人間主体で運転するようにしましょう。

 それでは今日も安全運転で!

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