防火シャッター(防火戸)の設置基準や役割。もし閉じ込められたら?

   

防火シャッター

 防火シャッター防火戸は、ふだんはどこに設置されているか…? ほとんどの人は気にしたことがないと思います。

 でも実は、火災や地震になると、自動的に防火シャッターが降りてきて、いつも通っている地下街やビルの中の通路が通れなくなることがあるのです。災害時に、突然、防火シャッターで閉じ込められるかと思うと、ちょっと怖いですよね。

 ……そんな時でもパニックにならずに、安全に避難できるよう、防火シャッターについて素人が最低限知っておきたいことを、まとめてみました。

 また、マンションの玄関が「防火戸」として設定されていることもあり、その場合に気を付けるべきことについても説明しています。

防火シャッターや防火戸の役割

防火シャッターは火事で怖い延焼を食い止める仕組み

 防火シャッター(防火戸)は、火災が燃え広がる勢いをおさえるために、大きな建物に設置れている、延焼(えんしょう)対策のひとつです。

 延焼は、火が次々と燃え移って、勢いもどんどん大きくなっていくことです。住宅密集地では「延焼」対策をしっかりしておかないと、あっという間に、火が広がり、手が負えない大火事になり、消火できなくなってしまいます。

 恐ろしい延焼を防ぐために、建築物には、建築基準法によって、さまざまな対策がなされています。

 たとえば、建物に使う資材には難燃性の材料を使うよう決められていたり、隣の家とのすきまをどれくらい開けなくてはいけないか?という建蔽率(けんぺい率)が、厳しく定められています。

 そして、防火シャッターや防火戸についても、延焼対策の一環として、建築基準法で設置が義務付けられているのです。

 ある一定以上の大きな建物や高層建物には、防火シャッタやー防火戸が必ずある、と考えてよいでしょう。

 

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▲防火シャッターは、ふだん気づかないところに潜んでいてることも多い。火災や震災時に、自動的に降りてくる。

防火シャッターと防火区画

防火区画で火を閉じ込める

 防火シャッターや防火戸は、防火区画ごとに設置されます。

 防火区画とは何でしょう?

 火は酸素が無いと燃えないため、閉ざされた空間では、火の勢いは強くなりません。小さな火であれば、水をかけるより、毛布などを被せて酸欠にしてしまったほうが、消火しやすいのは、このためです。

 建物の延焼対策でも、耐火構造の壁や扉を使って閉ざされた空間にしておくことで、そのなかで火の勢いが増さないように設計します。

 建物を、燃えにくい素材の耐火構造で密閉しておけば、中で火災が起きても、延焼しにくくなるわけです。

 この、耐火構造で囲われた区画のことを「防火区画」と呼びます。

 防火区画は火災の燃え広がりをできるだけおさえる、いわば「時間稼ぎ」をしてくれる仕組みです。

 時間を稼ぐことで、消火活動に有利になること、そして、もうひとつ重要なのは、避難路をきっちりと確保して、建物の中の人が建物から避難する時間を稼ぐことなのです。

防火シャッターや防火戸は防火区画の出入り口

 防火区画は、延焼を防ぐための閉ざされた空間ですが、出入り口がなければ、建物として機能しません。

 そこで、防火区画の出入り口には、防火シャッターや防火戸が取り付けられます。

 防火シャッターや防火戸は、火を閉じ込める耐火構造の一部となるので、どんな扉でもよいわけではありません。それなりの耐火性が求められるわけです。

 具体的には、ふつうのシャッターや扉よりも分厚くて頑丈なものだと考えてよいでしょう。

 これらは建築基準法上はには防火設備・特定防火設備と呼ばれ、燃え広がりを20分~60分間もちこたえて防げるという条件や、材質や材料の厚みなどが、細かく定められています。

 このように、防火シャッターや防火戸は、延焼を防ぎ、避難する時間を稼いでくれる、とても大切なものなのです。

▲広い建物では、防火区画が設定されていて、火災時には防火シャッターで区切られる。写真は屋内駐車場での防火シャッター運転テスト時の画像。

防火区画の設置基準

 建築基準法では防火戸の基準だけでなく、防火区画の基準についても、細かく定められています。

 防火区画がどういう単位で設置されているか?を知れば、防火シャッターや防火戸がどこにあるか?が見えてくるので、まずは防火区画の設定基準について、ざっくり知っておきましょう。

面積に対しての防火区画

 建物を作る場合は、一定以上の面積ごとに、防火区画として耐火構造で囲われた空間を作っていく必要があります。

 防火区画が、どれくらいの面積ごとに必要か?は、鉄筋コンクリーか木造か?によっても違うのですが、たとえば、鉄筋コンクリー1階立ての建物では、1500平米(体育館ふたつ分くらいの広さ)ごとを防火区画とします。

 つまり、体育館ふたつぶん以上の大型の建物であれば、どこかに防火区画の境目があり、そこは、耐火構造で仕切られていているはずなのです。

 耐火構造は、壁の場合もありますが、防火シャッターとして、ふだんは開けっ放しになっている場合もあります。

 ですので、体育館ふたつぶん以上の建物では、どこかに防火シャッターが設置されていて、火災や地震の時に、防火シャッターが自動的に降りてくる可能性があることを、頭に入れておきましょう。

エレベーター・エスカレーター・階段まわりには、たいてい防火シャッターがある

 防火区画は縦方向にも設置されていて、階の上下への火の延焼を防いでいます。

 たとえば吹き抜けや階段・エスカレーター・エレベータ部分など、上階と下階をつないでいる部分は、防火区画として、閉じられていなければなりません。

 吹き抜け構造は、煙突の役割を果たし、薪が積んであるかのように、ビルを勢いよく燃やしてしまいます。

 火災の時に、上下につながる空間を閉じることは、延焼防止にとても重要なのです。

 ですから、ほとんどの建物では、エスカレーター・エレベーター・階段の周りは、防火シャッターか防火戸が取り付けられ、火災発生時には、封鎖されるようになっているのです。

 エスカレーター・エレベーター・階段まわりは、日頃もっともひんぱんに通行するところですが、火災や地震の時には、防火シャッターが降りてきて、いつもとは風景が一変することがあります。

 避難のために階下に降りようとしても「え? 階段がシャッターでとじられている…⁉」という場面に遭遇するかもしれません。

 そんな時はどうしたらよいか? 次項でさらに詳しくのべていきましょう。

【ここまでのまとめ】
防火シャッターや防火戸の役割

・防火シャッターや防火戸は延焼を防ぐためにある。

・防火区画の出入り口として、大きな建物に設置される。

・エレベーター・階段・エスカレーター周りは、防火区画なので、防火シャッターか防火戸がある。

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防火シャッターが閉まる仕組み

気づきにくい防火シャッターの存在

 防火シャッターは、探知機が火災を感知すると、自動的に降りてきて、ふだん通路になっているとこころをふさぐ仕組みになっています。

 学校の廊下に設置されていた防火シャッターを覚えている人もいるかもしれませんが、街なかの建物でも、通学や通勤や買い物なので、いつも通っているルートに、防火シャッターが設置されていることも多いはずです。

 ただ、ふだんは、シャッターは上がったままで開けっ放しになっているので、防火シャッターの存在に気づかない場合がほとんどです。

 防火シャッターは、防火区画の耐火構造の一部ですから、本来は、壁として閉ざされていなければなりません。

 しかし、それでは通行の邪魔で建物として機能しないので、ふだんは開けっ放しにしておいて、火災の時は、強制的に閉じるような仕組みになっているわけです。

 このような防火シャッターを、専門用語では、常開随時閉型防火戸と呼びます。

 ほんらいは防火区画の壁として閉まっていないといけないけれど、通行のために開けといて、火災の場合は煙感知・熱感知・炎感知などのセンサーによって自動的に閉まるようになっています。

 つまり、防火シャッターは、火災を感知すると、勝手に閉まってくるのです。もし、近くを歩いている時だったら、「何これ⁉ 閉じ込められる?」ってなりますよね?

防火シャッターは閉じはじめたら止まらない⁉

 防火シャッターは、強制的に閉まるものなで、感知器が火災の予兆を感知すると、シャッターのストッパーが外れて、シャッターそのもの重みで、落ちてきます。

 ですので、シャッターが降り出したら、原則、止められません

 これは、火災でもし電気の供給がなくなっても、防火シャッターがきちんと閉まるように、動力で閉まるのではなく、自重で勝手に落ちてくる仕組みになっているのです。

 慌ててしまうと、閉まりはじめたシャッターの下をくぐり抜けたりしてしまいますが、挟まれてしまう場合もあるので、焦って、閉まりはじめた防火シャッターを絶対にくぐってはいけません。とくに子供が、はさまれて命を落とす事故も発生していますので、防火シャッターをくぐるのはNGです。

 最新のシャッターでは、閉まりかけのシャッターがものにぶつかると一旦停止する安全装置がついているものもありますが、すべての防火シャッターに安全装置があるわけではありません。原則、防火シャッターは閉じ始めたら止まらない、と考えましょう。

防火シャッターが閉まったら、どこから逃げる?

 防火シャッターは閉まってしまっても、必ずどこかに、それに替わる非常扉(くぐり戸)が用意されています。焦らず、落ち着いて、非常扉を探すことです。

 建築基準法では、「避難経路上の常開随時閉鎖型防火戸には、くぐりど(子扉)を設置する」こととされています。

 もし、閉じた防火シャッターが避難経路上にあるのであれば、シャッターのすぐ近くに、扉があるので、そこを通行します。

 もし、閉じた防火シャッターの近くに扉がなければ、避難経路を探しましょう(緑の⇒非常口の表示を探す)。避難経路に従っていけば、必ず出口があります。

 もうひとつ覚えておきたいのは、非常口の扉は、進行方向に向かって「押すと開く」ように作られています。

 地震の時は、扉が歪んで、開きにくいことも多いですが、歪んだ非常口は、蹴って開けて突破できます。

地震の時でも防火シャッターが閉まる

 防火シャッターは、自重で閉まる仕組みですので、火災ではなく、大きな地震でも、ストッパーが外れて、自然に閉まります。

 3.11や先の熊本地震でも、火災発生の無い状況で、防火シャッターが閉まりました。

 ひょっとすると地震の直後に、いつも歩いている通学通勤ルートが、防火シャッターで閉じられていて、びっくりした経験を持っている人も多いでしょう。

 とくに、エレベーターやエスカレーターホールまわりは、いつもの見慣れた風景が一変してしまいます。

 必要以上に慌てず、必ずどこかに非常口があるという原則に従って落ち着いて行動しましょう。

 また、オフィスや大型商業施設の避難訓練などでは、防火シャッターを閉じた状態を関係者がきちんと確認して、緊急時に必要以上に慌てないよう、備えておくことも大切です。

【ここまでのまとめ】
防火シャッターや防火戸の特徴

・防火シャッターは火災や地震の時に、自動的に閉まる「常開随時閉鎖防火戸」。

・防火シャッターは自重で落ちてくるように閉まるので、くぐるのは危険。

・防火シャッターが避難経路にある場合は、すぐ近くにくぐり戸など非常扉がある。

・防火シャッターの近くに戸がなくても、必ずどこかに非常口がある

・防火シャッターが下りてきても慌てない

・防災訓練時など、日ごろから、防火シャッターの位置を把握しておく

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マンションの玄関が防火戸の場合

マンションのやたら重たい勝手に閉まってくる玄関

 ここまでの説明で、オフィスや商業施設の、エレベーター・エスカレターや階段付近を中心に、防火シャッターが設置されていることは、理解できたと思うのですが、もうひとつ身近なところに防火戸があることを知っておきましょう。

 それは、マンションの玄関です。

 マンションの玄関は、防火シャッターと同じように、防火区画の耐火構造の一部として、防火戸に設定されていることが多いです。

 防火区画の設置基準は、1階では1500平米以上などですが、高層の建物だと、もっと細かくなり、たとえば、100~200平米ごとの防火区画になります。

 100平米というと、広目の3LDKくらいですので、つまりマンションなどでは、一戸ごとで、ひとつの防火区画になっていることがあるのです。

 この場合、玄関は防火区画を囲っている耐火構造の一部になるわけですので、「玄関=防火戸」となります。

 防火シャッターはふだんは開いていて火災時には閉まる「常開随時閉鎖」の防火戸でしたが、この場合のマンションの玄関は「常時閉鎖」の防火戸になります。

 重くて、手を放すと、すぐ勝手に閉まってくるタイプの玄関扉が、これです。

 子供とか危ないのに何で、こんなに重たい扉なの? と思うこともありますが、それは、防火戸として設定されているからなのです。

 子供がはさまれないように軽い扉に交換しよう!と思っても、それが防火区画の防火戸として設置されていれば、建築基準法上、交換はできない、ということになるわけですね。

マンションの玄関にストッパーを付けてはいけない理由

 また、常時閉鎖防火戸の玄関は、ストッパーが付いていません。荷物の出し入れ時にも、人がおさえていないと、すぐ自動的に閉まってくるようになっています。

 これを勝手にストッパー付きのドアクローサーに交換するのも、建築基準法上できないことです。

 常時閉鎖防火戸を、勝手に開けっぱなしにできるようにしてしまうと、火災になった時、そこから延焼してしまうかもしれないのです。

 以上のように、自宅玄関が防火戸に設定されているケースは少なくありません。

 11階以上の高層マンションであれば、ほぼ必ずそうなっていますし、それより低い階でも、玄関を防火戸にしいる場合は少なくありません。それは、防火区画を増やすことで、消防法で定められているスプリンクラーの設置を免除できる規定があるからです。

 スプリンクラーの管理コストを考えると、各戸を防火区画にし玄関を防火戸にした方がコスト的に有利な場合が多いのです。したがって、マンションの扉は防火戸に設定されていることが多い、と考えてよいでしょう。

【ここまでのまとめ】
マンションの防火戸

・マンションの玄関は「常時閉鎖防火戸」になっている場合が多い

・防火戸の玄関は、重たく、勝手に閉まってくるやつ

・防火度の玄関にはドアストッパーを取り付けてはいけない。

防火シャッターや防火戸の管理

 ここまでの説明で、防火シャッターや防火戸は、火災の延焼を防ぎ、消火や避難のための時間を生み出す、とても重要な仕組みだ、ということがわかったと思います。

 ですので、防火シャッターや防火戸は、火災の際には、常に正しく作動するように、管理されていないといけません。

 こうした施設は、防火防災管理者や消防設備士など、防災関係の資格保持者が状況を把握して、定期的な点検を行っています。

 が、それ以外の人も、自宅や職場で、いまいちど、防火シャッターや防火戸を見直して、正しく管理されているか、チェックすることは、とても重要です。

 たとえば、マンションの玄関にストッパーを勝手に付けてはいけないことを先ほど説明しました。これも、個人がしなければならない防火戸の管理です。

 また、業務上では、たとえば、地下街のテナントでは、店舗の通路に面した部分が、全面防火シャッターになっている場合があります。

 ふだんはあけっぱなしなので、ついつい防火シャッターの真下に陳列棚や看板を設置してしまいがちです。

 いざという時に、これらが邪魔をして、防火シャッターが完全に閉まらなかったとします。

 そのせいで、火の延焼が早く、逃げ遅れた人が出たりした場合、お店の管理者は、「業務上過失致死」などの罪に問われる可能性もあるのです。

 このように防火シャッターや防火戸の管理は責任重大なのですが、多くの一般市民の防火シャッターに対する意識は、決して高くないのが現実です。

 最近も、大型物流倉庫の防火シャッターが機能していなかったため、10日以上も燃え続ける大火災になった事例もありました。

 ふだん開けっ放しで、その存在すら忘れられがちな防火シャッターだからこそ、その役割を改めて認識して、いざという時の防災・減災に努めなくてはなりません。

 もうひとつ、防火シャッターが避難経路上にある場合は、併設されている、非常口の管理についても徹底しましょう。

 非常口前にものが置かれていたりすると、防火シャッターが閉じた時に、避難口が無くなってしまい完全にアウトです。

 こうした非常口は、平時は機能していない扉だけに、管理がおろそかになりがちですが、避難経路の確保には、防災管理者以外の人でも、注意を払うようにしましょう。

【ここまでのまとめ】
防火シャッターや非常口の管理

・防火シャッターの下にものを置かない!

・火災時に防火シャッターが閉まっていなければ、管理者は大きな責任を問われる

・防火シャッター併設の非常口の管理も気を付ける。

 以上、防火シャッターや防火戸の役割についてみてきました。

 火災の延焼を防いだり遅らせる防火シャッターが、災害時には自動的に降りてくる理由と仕組みが、充分おわかりいただけたと思います。

 防火シャッターに閉じ込められることは原則ありませんので、そうした場合も、パニックになることなく、落ち着てい非常口を探し、脱出するよう、心構えをしておきましょう。

 また、日常的に通る通路やビル内で防火シャッターがどこに備えあるか、知っておくことで、緊急時も落ち着いて行動できます。

 この機会に、ぜひ、身近な防火シャッターをチェックしておきましょう。

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