不動尊はお寺?神社? 全国お不動さま14選と不動明王の基礎知識。

      2019/08/18

不動明王

お不動様(不動尊・不動明王)」は、現世利益を叶えてくれる、身近な仏様です。厄除けや、合格祈願、交通安全など、さまざまなお願いごとができるので、神社と混同されがちですが、不動尊はお寺です。

 不動明王は、強い煩悩をも打破すべく、大日如来が「怒りモード」となっている仏様の一種、もともとは厳しい修験道のシンボルでした。が、今では、厄除けや各種祈願の仏様として庶民に親しまれています。

 毎月28日の縁日や、初詣・節分祭・火渡り・とうろう祭・もみじ祭などなど、お不動様では四季おりおりのお祭も多く、門前町がにぎわっています。

 この記事では、全国の有名な不動尊をピックアップして紹介するとともに、無宗教の人でも最低限知っておきたいお不動さまの基礎知識をまとめてあります。

 なお、不動明王と混同しやすい毘沙門天については、こちらの記事⇒「毘沙門天の御利益や参拝方法は?」を参照してください。

お不動様はどんな仏様? お参りの仕方は?

お不動様=不動明王は、煩悩の深い人を導く仏様

 お不動様や不動尊と呼ばれる仏様の正式名称は不動明王です。火炎をバックに、鬼のような怒りの表情を浮かべ、剣を持っています。なにやら物騒な雰囲気ですが、お不動様は、まぎれもなく(広い意味での)仏様の一種で、しかも、仏様のなかの最高位にあたる如来の化身なのです。

 ふつうに仏の教えを説いても、煩悩が深すぎて、なかなか悪い心が消えないという人は、今も昔もたくさんいます。そうした煩悩だらけの人々を気づかせるために、あえて、アグレッシブなスタイルをとっている仏様、それが明王です。明王のなかの中心的な存在が、不動明王です。

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不動明王と、仁王や毘沙門天などとの違いは?

怖い表情をして武器をもっている「攻撃型(?)」の仏様としては、山門の両端に立っている仁王や、七福神のなかのひとり毘沙門天が思いつきます。不動明王との違いは何でしょうか?

 そもそも「広い意味での仏様」の種類は、4つあり、位の高い順にならべると
・如来
・菩薩
・明王
・天部

となっています。

 金剛力士や毘沙門天は「天部」に属し、仏界を守る役割をしている神様です。一方、お不動様は、如来の化身として人々を悟りに導く仏様です。つまり明王は、天部の金剛力士や毘沙門天より、ワンランク上の仏様、という位置づけになります。(ちなみに、観音様については⇒「大観音像10選&観音様の基礎知識」の記事も参照してください)

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不動明王が人気のわけは

 不動明王は、そもそも煩悩が深い人を悟りに導く存在でしたが、庶民に不動尊信仰が広まるなかで、お不動様の御利益は、よりシンプルでわかりやすいものになってきました。

 お不動様は、現世利益をもたらす、つまり今生きている悩みや苦しみから解放され、平穏な生活をもたらしてくれる存在として、広く信仰されています。

 現代では、お不動様は、厄除け・勝負必勝・病気退散・家内安全・商売繁盛・合格祈願・安産祈願・交通安全など、さまざまなお願いごとを叶えてくれる、最も身近で庶民的な仏様になっています。

 ともすれば哲学的になりすぎて、理想が高くなりすぎる仏教ですが、お参りをすればお願いを叶えてくれるという、シンプルで気楽で、敷居が低いのが不動尊信仰の人気の秘密、というわけです。

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不動明王のお参りの仕方

お不動様は仏様ですので、神社のような二礼二拍手はしません。

 お賽銭を入れたら、鰐口(わにぐち=頭上のドラみたいなやつ)を鳴らし、静かに手を合わせ心のなかで祈ります。終わったら一礼。それだけでオッケーです。

 正式には、「ノウマク サンマンダバザラダン センダ マカロシャダ ソワタヤ ウンタラタ カンマン」というご真言を唱えますが、とくに信者でなければ、ご真言なしでも大丈夫です。

 お不動様の縁日は、毎月28日となっています。不動尊では、毎月28日ごとに縁日の出店が出る所も多いですし、28日にあわせて火渡りの大祭が催されることもあります。

 お不動様に祈願をする際のご祈祷では、護摩(ごま)が欠かせません。護摩は、密教の祈祷の方法です。不動明王像の前で、お願いごとを書いた護摩木を炎にくべる「護摩焚き」を行い、ご真言を唱えます。祈祷では法螺貝(ほらがい)が使われることもあります。

 また、不動明王は、修験道のシンボルでもあることから、火渡りや断食などの荒行をしながら、祈願することもあります。

お不動様の特徴と、お不動様にまつわるもの

 不動明王の特徴や、不動明王をとりまくアイテムにはどんなものがあるでしょうか? 不動明王の仏像を鑑賞する時などに知っておきたいポイントをピックアップしてまとめてみました。

●忿怒相(ふんぬそう)…不動明王の怒りの表情のこと。額にしわをよせ牙をむきだしにした表情です。

●火炎光背…不動明王像のバックには煩悩を焼き尽くす炎王があります。仏像によっては赤く塗られています。

●瑟瑟座(しつしつざ)…不動明王が腰かけている岩の台座です。ブレずに不動であることをイメージしています。

●弁髪…不動明王の髪型は長髪を左耳の上で束ねて垂らしています。

●剣・羂索(けんじゃく」)…不動明王は煩悩を断ち切るために右手には剣を持っています。左手には金具を付けた狩猟用の捕縛縄=羂索(けんじゃく)を持っています

●脇侍…不動明王像は脇侍と呼ばれる従者を従えています。従者は八名いて八大童子と呼ばれますが、なかでも矜羯羅(こんがら)童子と制吒迦(せいたか)童子の二名を従えていることが多いです。

●五色幕…五色の幕や紐は、お寺全般でよく使われますが、不動尊に多い真言宗では如来をあらわすカラーとしてよく見かけます。

街中から山中までさまざまな不動尊を訪ねてみよう

 日常生活でのお願いごとを叶えてくれる不動明王は、「お不動さま」「不動尊」と呼ばれるお寺に祀られています。

 願掛けや厄除けというと神社が思い浮かびますが、不動尊は、神社と同じように、厄除けや各種祈願をしてもらえるお寺です。

 不動尊のお寺は、基本的には、真言宗か天台宗のどちらかの宗派となりますが、不動明王は修験道の山岳信仰のシンボルだったこともあり、超派閥の不動様として祀られてきたものもあります。

 不動尊のスタイルは、街中にあり庶民の祈願への対応をメインにしているところと、山中にあって修験道の修行地となっているところに大きく分けることができます。

 街中タイプの不動尊ですと門前町が発達し、自動車の安全祈願が受けられたり、節分祭には芸能人が来たりと、賑やかです。一方、山中の不動尊ですと、滝を背景に霊験あらたかな雰囲気にみちあふれたパワースポットになっています。

 以下に、各地の有名な不動尊を紹介していきます。

高幡不動尊

●寺院名:高幡山明王院金剛寺 ●宗派:真言宗智山派
●不動明王像の拝観:随時 ●開創:700年頃 
●所在地;東京都日野市 ●アクセス:京王線・多摩都市モノレール高幡不動駅3分

 関東三大不動のひとつで、重要文化財の建物や仏像も多いお不動様です。高幡不動駅前から仁王門まで門前町が通じています。御本尊の不動明王像を前にいつも護摩焚きがおこなわれている不動堂、重要無形文化財の不動三尊像がまつられた奥殿、再建された大日堂や大師堂の他、昭和になって新規に建立された五重塔など、みどころの多いお寺でもあります。

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 境内の背後は、標高150mほどの丘になっていて、アジサイやヒガンバナや紅葉が美しい場所で、豊かな自然も満喫することができる花のお寺としても知られています。

 不動堂でおこなわれる護摩修行では、家内安全・商売繁盛・厄除け・合格祈願・作業安全・就職成就・安産満足などなどさまざまなお願いごとに対応してもらえます。また、高幡不動は交通安全祈願の本山とも言われ、専用の交通安全祈願殿にて、車とともに安全祈願を受ける参拝者でもにぎわいます。

 毎月28日のお不動様の縁日はもちろん、1月28日のだるま市や、毎月第2日曜日のリサイクル市、第3日曜日のござれ市(骨董市)はにぎわいます。また、境内には土方歳三と近藤勇の銅像があり、5月には新選組祭が催されるなど、通年を通じてイベントも絶えない活気のあるお不動様です。

目黒不動尊

●寺院名:泰叡山護國院・瀧泉寺 ●宗派:天台宗 
●不動明王像の拝観:ご本尊は酉年のみご開扉 ●開創:808年 
●所在地;東京都目黒区 ●アクセス:JR目黒駅20分、東急目黒線不動前駅12分

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 江戸の守護寺とされていた五色不動のひとつ。目黒という地名も、もともと「目黒不動」が先にあって、それにちなんでつけられたといいます。ちなみに、五色不動は以下のお不動様です。

江戸五色不動
目黒不動 瀧泉寺 天台宗 目黒区
目白不動 金乗院 真言宗 豊島区
目赤不動 南谷寺 天台宗 文京区
目黄不動 永久寺 台東区
最勝寺 江戸川区
目青不動 教学院 世田谷区

 目黒不動尊は、江戸時代に徳川家光の帰依を受け、江戸の不動信仰の中心となったお不動様で、明治以後も、西郷隆盛、二宮尊徳、東郷元帥など歴史上人物でゆかりの深い人も多いです。また、さつまいもの普及で知られる蘭学者・青木昆陽にちなんで10月28日の「甘藷まつり」が開かれます。

 ご本尊は12年に一度しか観ることがきませんが、境内には、水かけ不動や身代わり不動のほか如来像などがあります。訪れるなら毎月28日のお不動様の縁日がおすすめです。屋台が多数出てとてもにぎやかな、お不動様ならではの雰囲気を味わえます。

成田山

●寺院名:大本山成田山・新勝寺 ●宗派:真言宗智山派 
●不動明王像の拝観:大本堂にて御本尊を常時拝観可 ●開山:810年 
●所在地;千葉県成田市 ●アクセス:京成電鉄・JR成田駅10分、東関東自動車道成田IC

 真言宗の開祖・空海が自ら彫ったといわれる不動明王のご本尊をおがめる成田山。全国各地に「成田山分院」をもつ、不動信仰の総本山です。

 もともと東国の鎮国を目的に朝廷主導で作られた成田山新勝寺ですが、お不動様の親しみやすい教えが、庶民へと浸透していきました。なかでも、江戸時代からは歌舞伎役者や力士などがこぞってお不動様詣でをして、不動信仰が江戸中に広まるきかっけとなりました。現代でも、毎年2月の「節分会」には、多くの芸能人や力士が参加します。

 成田山では平安時代から絶えることなく続いてい御護摩の炎のを前にした祈祷を受けられるほか、写経や座禅・断食などの修行も体験することができます。また、境内には東京ドーム3.5個分の広さの庭園があり、梅、桜、藤、菊、紅葉など四季の自然も満喫することができます。

 参道には150店舗もの土産屋や飲食店が並びます。名物のウナギをはじめ、食べ歩きを楽しめるのもポイントです。

成田山は全国各地に熱烈な信者が多いため、各地に別院があるのが特徴です。東京の深川不動尊(江東区・地下鉄門前仲町駅5分)や、大阪府寝屋川市の成田山大阪別院(明王院)などが有名です。いずれの別院でも、本山と同じように、とくに節分祭は盛大で、芸能人なども招いて行われます。成田山の節分祭では、不動明王は鬼をも改心させる力があるため「鬼は外~」は言わないという特徴があります。

雨降山大山寺

●寺院名:大山寺来迎院 ●宗派:真言宗智山派 
●不動明王像の拝観:御本尊は毎8・18・28日に御開帳 ●開山:755年 
●所在地;神奈川県伊勢原市 ●アクセス:小田急伊勢原駅よりバスで大山ケーブル大山寺駅3分、東名厚木IC14㎞

 神奈川県丹沢山系の大山はもともは華厳・真言・天台宗の三宗兼学の修験道道場として開かれました。江戸時代までは神仏習合で、現在の山頂にある大山阿夫利神社といっしょに不動明王がまつられて、商売繁盛を願う江戸町人たちの大山詣でにぎわいました。

 明治の神仏分離の時に、不動様は山の中腹に移され、現在ケーブルカーの途中駅からお参りできるようになっています。御本尊の御開帳は毎月8・18・28日ですので、せっかくならその日にあわせて訪れたいものですね。また、厄除けの土器投げ(かわらなげ)は気軽に体験できる厄除けですので、おすすめです。

 山頂の阿夫利神社とともに紅葉の名所としても知られています。紅葉を楽しむには、登りはケーブルを利用し、帰りは、紅葉のトンネルが続く参道を歩いて降りるのがおすすめです。

奥武蔵高山不動尊

●寺院名:高貴山・常楽院 ●宗派:真言宗智山派 
●軍茶利明王像の拝観:毎年4月15日、冬至に開帳 ●開創:654年 
●所在地;埼玉県飯能市 ●アクセス:西武鉄道西吾野駅徒歩120分、奥武蔵グリーンライン(林道)

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 標高600メートルの山中にある本格的な山岳不動。不動尊という通称だが、ご本尊は八本の腕と3つの眼をもつ軍茶利明王(ぐんだりみょうおう)。

 奥之院は、遠く東京の夜景が見える絶景スポット関東八州見晴台にあります。西武鉄道の西吾野駅をスタートし、不動三滝(最大落差25m)、不動尊の樹齢800年の大イチョウ、関東八州見晴台をまわり、吾野駅に降りてくる4時間あまりのハイキングコースが人気です。

不動ヶ岡不動尊

●寺院名:玉嶹山(ぎょくとうさん)・總願寺(そうがんじ) ●宗派:真言宗智山派 
●不動明王像の拝観:年一度12月8日のおすす取り時のみ御開帳 ●開創:1616年 
●所在地;埼玉県加須市 ●アクセス:東武伊勢崎線加須駅よりバス

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 350年前から続く「節分会・鬼追い豆まき式」と9月28日の護摩の火渡りが有名なお不動様。また、節分会は盛大で、毎年有名芸能人も参加しています。もともとは成田山、高幡不動とならび関東三大不動尊に数えられることも。

 お祭やイベント時以外は静かな寺院で、天保年間から残る不動堂は見ごたえがあります。

多氣山不動尊

●寺院名:多気山(たげさん)持宝院 ●宗派:真言宗智山派 
●不動明王像の拝観:9月第一日曜日の「八朔祭」に御開帳 ●開山:822 
●所在地;栃木県宇都宮市 ●アクセス:宇都宮駅バス45分、宇都宮IC10分

 宇都宮の北部多気山の中腹に位置する不動尊。毎日行われている御護摩祈願で、家内安全、小阿繁盛、交通安全、開運成就、災難除など厄除けや祈願全般を行っている庶民の日常によりそった典型的なお不動様です。

 5月におこなわれる火渡り修行の大火渡り祭、9月に御本尊御開帳とその前夜祭の万灯会・八朔祭などが開催されています。自動車の安全祈願だけでなく、「ジャパンワールドカップ・サイクルロードレース」の開催地であることから、自転車の安全祈願にも力を入れているのが特徴です。

中野不動尊

●寺院名:中野山大正寺 ●宗派:曹洞宗 
●不動明王像の拝観:毎年2月28日の歳祭りで厄除不動明王が御開帳 ●開山:1179年 
●所在地;福島県福島市飯坂町 ●アクセス:福島交通飯坂線・飯坂温泉駅下車タクシー10分、東北道福島飯坂インター10分

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 820年の歴史がある修験道の修行地。カモシカに導かれた恵明道人が開山したといわれます。ご神体でもある不動滝の前に朱色の大日堂が建てられ、美しくも霊験あらたかな雰囲気につつまれています。大日堂そのものは昭和54年に建てられた新しいものですが、20年に一度御開帳の大日如来と、開山以来絶えることなく燃え続けている九字の聖火があります。

 現在は曹洞宗の寺院になっていますが、明治までは、特定の寺に属さない修験道の道場でした。陰陽道の影響が見られる「六三除け」や、修験者が堀った洞窟など、とてもディープな不動尊です。

米子(よなご)不動尊

●寺院名:本坊米子瀧山・威徳院 ●宗派:真言宗豊山派 
●不動明王像の拝観:毎年5月1日の春季大祭時にのみ御開帳 ●開創:718年 
●所在地;長野県須坂市 ●アクセス:長野電鉄須坂駅よりバス35分、須坂長束IC<より50分/div>

秘境にある美しい二本の滝が、古来から宗派をこえた修験道の修行の場となっていて、そこに不動明王がまつられています。二本の滝は米子瀑布と呼ばれ、大河ドラマ「真田丸」のオープニング映像にも使われているところ。

上杉謙信や真田信繁にゆかりのある本坊から、車で30分さらに徒歩で20分のところにある奥之院が日本三大不動のひとつに数えられる名刹です。空海一本のケヤキから3体の不動尊を刻んだといわれ、そのうちのひとつがご本尊となっています。

 奥之院は米子瀑布の不動滝と権現滝にはさまれた場所に位置し、強力なパワースポットとしても、紅葉の名所としても知られています。

菅谷(すがたに)不動尊

●寺院名:諸法山菅谷寺 ●宗派:真言宗醍醐派(創建当時は天台宗) 
●不動明王像の拝観:卯年酉年に御開帳 ●開創:1185年 
●所在地;新潟県新発田市 ●アクセス:JR新発田駅から車で約20分、日本海東北道・聖籠新発田ICより30分

 源頼朝の叔父である護念上人が平家から逃れるとき比叡山の不動明王を持ち出し、この地に開闢したと言われています。厄除けや諸願成就・家内安全の他、眼の疾患に後利益があり、遠方からも多くの参拝客が訪れます。

 境内には18世紀~19世紀に再建された本堂や山門、薬師堂、弁天堂、みたらせの滝などがあり、古い木造建築をたっぷり味わえる雰囲気が抜群のお寺となっています。ご本尊の不動明王像の御開帳は6年に一度となっていますが、境内には赤い火炎の不動明王像などご本尊以外の仏像も拝観することができます。

倶利迦羅(くりから)不動尊

●寺院名:倶利伽藍山不動寺 ●宗派:高野山真言宗 
●不動明王像の拝観:奥之院は3年に一度  ●開創:812年~1986年 1949年に再建 
●所在地;石川県津幡町 ●アクセス:いしかわ鉄道・とやま鉄道倶利伽藍駅よりタクシー20分、北陸道小谷部ICより20分

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 倶利伽藍(くりから)はサンスクリット語で龍王の名前です。奥之院にまつられている倶利伽藍不動明王は剣に蛇がまきついている姿をしている日本で唯一の仏様です。この倶利伽藍不動明王から、「倶利伽藍」という地名や駅名が付けられているのです。

 歴史的には9世紀の開闢で長く修行の場とされて来た古刹ですが、寺院の建物は戦乱や火災でたびたび喪失し、現在の建物は1949年以後に再建された、比較的新しいものになっています。寺院は倶利伽藍駅近くの山頂本堂・奥之院と、津幡駅近くの鳳凰殿にわかれています。奥之院の倶利伽藍不動様の御開帳は3年に一度ですが、山頂本堂や鳳凰殿の不動像はいつでも拝観することができます。

狸谷のお不動さん

●寺院名:狸谷山不動院 ●宗派:真言宗修験道 
●不動明王像の拝観:常時 ●開山:1718年(1944年再建) 
●所在地;京都市左京区 ●アクセス:叡山電車一条駅下車、名神京都東IC30分

 宮本武蔵も修行をしたという修行地・狸谷に、崖に舞台を組んで作る懸造(けり)の本殿を建て不動明王をまつっています。各種祈願や車の安全祈願も常時行っているほか、節分・火渡り・秋祭りなどイベントも盛りだくさんの地域の生活に根ざしたお不動さんです。

木原(きわら)不動尊

●寺院名:雁回山・長寿寺 ●宗派:天台宗 
●不動明王像の拝観:御本尊毎月28日に御開帳 ●開山:800年頃 
●所在地;熊本県熊本市 ●アクセス:JR宇都駅からバス10分、九州自動車道御船IC約15分

 恵の雨をもたらし大干ばつから人々を救ったことから「水引不動」と呼ばれるお不動様をご本尊とするお寺です。本堂の裏はスピリチュアルな雰囲気に満ちた木原山(雁回山)という里山で、山頂の奥之院まで1時間ほどのハイキングを楽しみながら行くことができます。奥之院は近年修復されたもので、阿弥陀如来、勢至菩薩、観音菩薩、不動明王、毘沙門天が祀られています。

 麓の本堂(お不動さん)の方では毎月28日の縁日で水引不動像が御開帳されるほか、2月28日の春季大祭は有名な祭で、火渡りや、湯浴びなどの荒行が行われます。

不動尊一心寺

●寺院名:一心寺 ●宗派:無宗派 
●不動明王像の拝観:常時 ●開創:1963年 
●所在地;大分県大分市 ●アクセス:JR大分駅よりバス下車徒歩30分、大分自動車道大分光吉ICより15分

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 不動尊信仰をベースに無宗派で1963年に新しく建てられたお寺だが、谷底に広がる八重桜が、まるで桜の雲海のように見える桜の名所として人気の不動尊です。ちなみに桜は関山・普賢象・一葉・御衣黄・松月・天の川といったサトザクラの代表品種が植えられています。

 御本尊は身の丈20mの日本最大の不動明王像で、17mの薬師観音像とともに、満開の八重桜のなかにたたずむ姿は独特。また1月には寒行の修行体験コースがあるなど、新しい感覚で運営されているお寺です。

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明王の種類

 さて、お不動様というと不動明王のことですが、明王は、如来や菩薩とならぶ仏様のランクのようなもので、不動明王だけでなく、さまざまなスタイルの明王がいます。ひとびとのさまざまな煩悩に特化して、煩悩を断ち切れるよう、いろいろなスタイルをとっているためです。

 密教では、不動明王を中心に五大明王としてまつる場合も多いので、不動明王以外の明王についてもチェックしておきましょう。以下★印が五大明王です

★不動明王…大日如来の化身

★金剛夜叉明王(こんごうやしゃ)…金剛杵(こんごうしょ)や弓をもつ鬼キャラ。三面六臂で5つの目を持つ。

★降三世明王(ごうざんぜ)…降三世印という手の形をしている。過去・現在・未来にまたがる悪を退治。シバ神とその妻を踏みつけている。

★軍茶利明王(ぐんだり)…手が8つあり、体中に蛇をまいている。

★大威徳明王(だいいとく)…六面六臂で水牛に乗っている。

●愛染明王…愛欲の煩悩を切り捨てる明王だが、最近は恋愛成就祈願にも対応してる

●孔雀明王…慈悲の心を象徴する明王

●大元帥明王…もと鬼だが明王になった。病気退散。

●鳥枢沙摩明王…不浄を清らかにすることからトイレのお守りとしても。

不動信仰の歴史

 不動明王をクローズアップして「不動尊」として信仰するスタイルは、世界の仏教国のなかでも、日本の密教の独自のスタイルです。日本ならではの信仰ともいえる不動信仰が、どのように形作られてきたか、簡単にたどってみましょう。

 不動明王は、密教の聖典である大日経真言経に、ヒンズー教のシヴァ神が結びついて生まれたと言われます。

 真言宗の開祖・空海が中国留学で不動明王に出会い日本に伝えました。

 まず、不動明王には敵を打ち負かす力があるとされたことから、朝廷が不動明王を鎮国の仏としてまつります。

 平安貴族の間でも不動明王は、病気を治したり、怨霊や怪物を払ってくれたり、安産の守護仏としても重宝されました。

 やがて武士勢力が台頭するなか、朝廷が平将門の乱を平定したのをきっかけに、東国を鎮国するため成田に不動明王をまつります。これが成田山のはじまりです。

 やがて鎌倉・戦国時代で武士の時代になると、不動明王の外面は剛猛だが内面は慈悲にあふれている姿に、理想の武士像を重ねあわすようになります。

 一方、不動明王は、修験道や山伏などの修行の本尊としても信仰されます。不動明王の荒ぶる姿や岩にどっしり鎮座する様が、山の自然への畏怖と重なり、山岳信仰のシンボルともなっていきました。

 もちろん町の庶民の間でも、お不動様の人気は高まっていきます。お祈りすれば現世の利益を叶えてくれるということから、観音様やお地蔵様とならぶ庶民の生活にねざした信仰になっていったのです。

 江戸時代は成田山を中心とした不動信仰がさらに盛んになります。成田山に詣でるための、「不動講」が全盛を極め、魚市場・米問屋・青物問屋・とび職・芸能界・花柳界など業界ごとにグループを作り成田山に詣で寄進をおこないました。

 江戸時代には歌舞伎役者の市川團十郎が不動信仰にあつく、歌舞伎の題材としても不動明王が多く取り上げられ、関東を中心に、庶民の間での不動信仰を確固たるものにしたようです。

 近代になってからも不動信仰の人気は衰えることなく、さまざまな現世利益を叶えてくれるものとして、多くの人の心を捉えています。

 昭和時代には、より多くの人が宗派を超えて不動尊にお参りできるように、各地に三十六寺不動尊霊場が整備されるようになりました。最近では、御朱印ブームなどもあり、ますます盛んになって今日に至っています。

 日本で独自に発展をとげた不動様の信仰は、これからも庶民の生活によりそって続いていくのでしょう。

 

 

 以上、お不動様について、知っておきたい基礎知識を紹介しました。

 あまり宗教感が強くなく、気軽にお参りできる不動尊は、生きにくい現代社会においても、ちょっとした心の平安や心の支えをもたらしてくれるものです。

 ぜひ、近所のお不動様に足を運んでみましょう。

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