インフルエンザの型。A型、亜型、香港型、新型など種類ありすぎな件

      2017/02/01

インフルエンザの型

 インフルエンザには型がたくさんあります。A型、B型、香港型、新型、亜型・・・。

 インフルエンザの型には、どれくらい種類があるのでしょうか? 型によって症状は違ったり、同じ型に2度かかることはあるのでしょうか?

 また、毎年のように「新型インフルエンザ」が話題になりますが、なぜ「新型」を心配しているのでしょう? 「鳥インフルエンザ」と「新型」の関係もイマイチよくわからないですよね?

 この記事では、インフルエンザウイルスの仕組みをひもときながら、型の違いについて見ていきたいと思います。インフルエンザの予防や、将来の大流行に備える、絶対に知っておきたい基礎知識です。

インフルエンザの型ごとの特徴は

 風邪の原因となるウイルスは200種類以上ありますが、そのなかでもインフルエンザウイルスはとくに凶暴なもの。ほかの風邪ウイルスに比べると、
・症状が急に出る
・症状が重い
・感染力が強い
などの特徴を持っています。乳幼児や高齢者がかかった場合は、生命の危険すらありますが、インフルエンザの型によって、とくに注意するもの、逆に、それほど気にしなくてもよいもの、などさまざまです

 まず、型ごとの特徴を整理していきましょう。

インフルエンザA型、B型、C型で強いのはどれ?

 インフルエンザはA型、B型、C型の3種類があります。

 特に注意すべきはA型です。なぜなら、A型は「新型インフルエンザ」になる可能性があるからです。

 ウイルスの強さや感染力からすると、B型もA型と同じです。なので、A型、B型のインフルエンザがマークしなければならい対象ですが、C型は大人の場合はとりあえず無視しても大丈夫そうです。

 C型インフルエンザは、5歳未満の乳幼児だけがかかりますが、症状は風邪程度で、一度かかると、ほぼ終生免疫ができます。なので、まず大人では問題にはならないインフルエンザです。ただし、2歳以下でC型にかかる場合は若干注意が必要ですので、小さいお子さんがいる方は、念のためC型もマークしておいてください。

 A型、B型、C型の特徴について、以下の表に整理してみました。

インフルエンザウイルスの
A型、B型、C型の違い
A B C
感染力 強い 弱い
抗体 できにくい できやすい
予防接種 あり なし
もともとの宿主 水鳥 ヒト
新型 新型に変異する 新型にならない
パンデミック 起こる 起きない
亜型 144種類 2種類

 

 これらの特徴の違いについて、さらに詳しく見ていきましょう。

ひとシーズンに2回インフルにかかるのは何故?

 「インフルエンザが流行っている!」という場合は、A型とB型のインフルエンザウイルスのことです。

 A型とB型は、感染力や症状はほぼ同じで、どちらの型も同じように注意する必要があります。予防の仕方は同じですので、実生活のなかでは、A型とB型の違いをとくに意識する必要ありません

 A型とB型は、毎シーズン流行しますが、シーズンのなかでも時期がずれて流行るケースもあります。たとえば1月下旬から2月初旬にA型が流行り、2月下旬から3月上旬はB型、というように、入れ替わりピークを迎えるパターンなど。でも、まぁ必ずそうなるわけではなく、同じ時期にABの両方が流行る場合もあります。

 毎年、両方とも流行するので、予防接種でも、A型B型の両方のワクチンを混ぜて接種します。

 ワクチンが違うということは、A型とB型は抗体の種類が違います。A型の抗体はB型には効きません。

 ということは、A型にかかったあと、今度はつづけてB型にかかることもあるわけです。ひとシーズンに2回インフルエンザにかかるというケースが少なくないのは、このためです。型が違えば、インフルエンザにまたかかる可能性あり、ということです。

A型、B型の違いは、鳥と人の違い

 では、A型とB型の違いは何でしょうか?

 B型の方が、症状が腸に来やすい(下痢になりやすい)という傾向がありますが、症状の出方は、人それぞれですし、必ずしもB型=下痢になるとも限りません。

 実は、A型とB型には、もっと決定的な違いがあるんです。

 それは、ヒトのインフルエンザはB型で、A型はもともと「鳥のインフルエンザ」だということです。

 この違いが、「新型インフルエンザ」やパンデミックなどと関係してきますので、さらに詳しくみていきましょう。

 ウイルスは寄生物です。ほんらいは、どんな動植物に寄生するか、という相手が決まっています。

 ヒト専門に寄生するインフルエンザウイルスはB型です。

 一方、A型はもともと水鳥に寄生するウイルスでしたが、突然変異して人間ににも寄生するようになったものです。

 ポイントはこの「突然変異」です。

 インフルエンザのなかでもとくにA型が注目されるのは、A型が変異しやすいからなのです。

 突然変異は一定の確率で起こっています。突然変異が必ずしも問題なるというわけではないのですが、突然変異を繰り返すうちに、毒性が強くなったり、人間への感染力が高くなったりと、悪い影響を与える変異が出現する場合があるのです。

 鳥インフルエンザウイルスが、「人間に取り憑こう!」と考えて、意図して変化しているわけではなく、あくまで、偶然に偶然が重なって、これまでにないタイプのウイルスが出現する・・・それが変異の仕組みです。

A型が凶暴化したパンデミックの歴史

 A型では、変異の繰り返しにより、偶発的に、毒性の強いインフルエンザが誕生する可能性があるわけですが、事実、過去にも何度か「新型インフルエンザ」が世界的に大流行しました。

 新型インフルエンザの大流行は、ワクチンの準備ができる前に、大規模にヒトからヒトへ感染して、どんどん世界中へ広がっていきます。・・・この状態を「新型インフルエンザによるパンデミック」と呼ぶわけです。

 新型インフルエンザによるパンデミックは20世紀以後、世界的なものが4回起きています。局地的な「準パンデミック」的なものも1回あります。

 世界的なものは、1918年のスペイン風邪、1957年のアジア風邪、1968年の香港インフルエンザ、2009年のH1N1インフルエンザです
局地的なものは、1977年のソ連インフルエンザです。

 これらのインフルエンザは、流行した年から数年は「新型」と言われますが、何年かすると抗体を持つ人も増えて、大感染が起こらなくなります。そうなると、「新型インフルエンザ」から「季節性インフルエンザ」に格下げされます。

 かつて新型インフルエンザだった、1968年の香港型と2009年H1N1インフルエンザのふたつは、現在「季節性インフルエンザ」となって、ほぼ毎年流行しています。

 また1977年にソ連で流行したインフルエンザは、その後、季節性インフルエンザのソ連型として、しばしば登場していましたが、現在は姿を消しています。ひと昔まえはインフルエンザといえば「香港型」「ソ連型」がセットでしたが、ソ連型は2009年H1N1にとってかわったような感じになっています。

 このように、かつての新型はやがて季節性になったり消滅したりしていくわけですが、一方で、次に新型になりパンデミックを起こすのではないか?と予測されて、恐れられているものもあります。現在、次の新型インフルエンザの候補になっているのは、H5N1型、H7N7型です。

常に進化し続けるインフルエンザ

まだまだ他にもあったインフルエンザの型

 さて、ここまでの説明でH1N1、H5N1、H7N7などの呼び方が出てきました。

 これはインフルエンザの亜型といいます。A型のなかに、さらに細かい型の分類があるわけです。H⚫️N⚫️と、HとNが含まれる亜型は、すべてA型インフルエンザの亜型です。

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 HとNは、例えて言えば、インフルエンザが侵入するときに使う触手のようなものです。H(ヘマグルチニン)は16種類、N(ノイラミニダーゼ)は9種類があり、HとNの組み合わせが、全部で144種類あります。

 つまりA型インフルエンザは、144種類の「亜型」に分類されるわけです。

 「香港型(H3N2)」「ソ連型」や、歴史的に大流行して世界中で多くの犠牲者を出した「スペインかぜ」「アジアかぜ(H2N2)」、そして、次の「新型」候補とされる、H5N1、H7N7・・・これらはすべてA型の亜種になるわけです。

 ちなみに、B型は変異しにくいので、B型の亜型は山形型とビクトリア型2種類だけです。

A型の亜型はさらに細かく分類・・・種類は無限大?

 さて、インフルエンザのA型の亜型の144種類は、実は、さらに細かく細分化され、株(変異株)として区別されます。

 同じ亜型のなかでも、突然変異を繰り返していきます。同じ亜型でも、発生した年や場所によって、感染力・症状・抗体の効き方などの特性が違ってくるのです。

 つまり

 A型 < 亜種 < 株

と細分化されていくのです。

 「変異株」の例をみてみましょう。

 1918年スペイン風邪、1977年のソ連型、そして2009年に新型として猛威をふるった株、この3つのA型インフルエンザはすべて亜型は
「H1N1」です。

 しかし、スペイン風邪、ソ連型、2009年の3つは、それぞれ違った変異株なので、それぞれ特性が違います。

 2009年にパンデミックを引き起こしたH1N1は、スペイン風邪と同じ亜型であるため、かつて多くの犠牲者を出した「スペイン風邪の再来」として、当初は非常に恐れられました。

 が、いざ流行してみると、毒性や感染力は、幸いなことにスペイン風邪よりは弱かったため、被害は想定よりは少なめでした。このように同じ亜型でも、性質が異なるわけです。

 変異株には、発生場所と年の数字で名称をつけています。

 たとえば香港型のH3N2のなかにも、A/テキサス/50/2012、A/ニューヨーク/39/2012、A/堺/72/2014、A/ミシガン/15/2014、A/ニューカレドニア/71/2014、A/南オーストラリア/55/2014などの変異株が見つかっています。これらの変異株は、抗体に対する反応も違ってきます。たとえば、同じ香港型のH3N2でも、A/堺/72/2014でできた抗体が必ずしもA/南オーストラリア/55/2014の株に効果があるとは言えないのです。

 ですから、ワクチンを作る場合は、これらの変異株のうちから、最も広範囲に効果があるものをチョイスします。全体的にH3N2の抗体として働きやすいか、を調べていくのです。

 このように、同じ亜型でも、株が違うと、抗体が効いたり効かなかったりになります。インフルエンザの予防接種が効きにくいのは、このためなのです。

(インフルエンザ予防接種については、こちらの記事⇒「インフル予防接種を受けないとどうなる?」をご覧下さい。

A型インフルエンザが新型になる仕組み

 次に、A型インフルエンザが鳥インフルエンザや「新型」に変異していく過程についてみてみましょう。

 A型インフルエンザの144種類の亜種ですが、ほとんどの亜種は、もともとカモなどの水鳥に寄生しています。寄生はしているのですが、水鳥に害をおよぼすことは、ほぼありません。水鳥にとってはA型インフルエンザは、「自分のなかに住んでるみたいだけどどうでもいい存在」といった感じです。

 しかし、亜型のうちのいくつかの種類が、鶏やブタや人間などにも感染するのです。ほんらいは、A型インフルエンザも水鳥以外を狙っているわけでもありませんが、たまたま、鶏やブタや人間にも、寄生ができてしまう、という感じです。HとNの触手の違いによって、感染する相手かどうかが決まってくる仕組みになっているからです。

 A型の亜型のうち一部は、水鳥から、鶏やアヒルなどの家禽(かきん)に感染するわけですが、家禽に感染するA型の亜種のうち、病原性が高いものを「高病原性鳥インフルエンザ」と言います。

 この「高病原性鳥インフルエンザ」が、まれにヒトに感染することがあります。現に、ここ数年、何度か中国などで鳥インフルエンザにかかった例があります。が、この状態では、ヒトからヒトへの感染力がないため、パンデミックにはなりません。

 「高病原性鳥インフルエンザ」が、パンデミックする、つまり人から人へ感染するようなタイプに進化するには、まず、鳥からブタに感染する必要があります。

 ブタは、家禽に感染する亜型、ヒトに感染する亜型の両方に感染る可能性をもっています。つまり、ブタの体内で鶏系の亜型と人系の亜型が同時に居合わせ、その出会が新型インフルエンザの発生につながるってケースがありうるわけです。

 もし、ブタの体内で、H5N1、H7N7など高病原性鳥インフルエンザと、ヒトに感染するH1N1、H3N2、H2N2が同時に存在した場合、それらがミックスする可能性があるわけです。そして、それぞれの特性を取り入れて変異した場合に、「新型」となって、猛威を振るうわけです。

 2009年にパンデミックをおこしたH1N1も、鳥→鶏→ブタ→人間という感染経路で、変異するうちに誕生した新型でした。また、現在、鶏インフルエンザが恐れられているのは、それがブタ経由で人間に感染し、さらに人から人へ伝染するものに変異するかもしれないからなのです。

A型インフルエンザが「進化」するスピード

 さて、A型インフルエンザが「変異しやすい」ということについてここまで説明してきましたが、ここで考えておきたいのは、「どれくらいのスピード変異をしているのか?」ということです。

 変異は、細胞分裂などの際に起こる、遺伝子のコピーミスです。コピーミスしても、ミスした情報がたいした内容でない場合もあります。その場合は「変異」とはなりません。コピーミスした遺伝情報が、何か重要な情報だった場合に、「変異」として出現します。

 この変異はどれくらいの確率で起こるのでしょうか? ふつうの動植物では、コピーミスは、10万分の一〜100万分の一のほどの確率で起きています。

 ウイルスでは、この確率はさらに高くなります。ウイルスは、細胞をもたず、とくにインフルエンザはRNAが一本という遺伝子構造のため、コピーミスが起こりやすい。1万〜2万回に1回ほどの確率でミスが発生します。

 変異のしやすさに加えて、もうひとつ注目するべきが世代交代のスピードです。

 ウイルスは16時間で⒈万倍という恐ろしいスピードで増殖していきます。1年間で1000回 以上世代交代するといわれています。

 つまり、インフルエンザの1年はヒトの数千年に相当します。

 さらに、ヒトよりも10〜100倍変異がしやすい。このことは、進化のスピードで見れば、インフルエンザの1年は人間にとっての数万年の長さに相当する、ことを意味しているわけです。

 この、インフルエンザの時間軸に立って見てみると、数年に一度、感染力や毒性の強い新型インフルエンザが発生するというのも、なるほど理解できるのではないでしょうか? 「もうそろそろ新型ができても当たり前だよね」って感覚になってきます。

 インフルエンザの型の変化は、「進化の過程」を、超早送りで再生しているような感じにも見えますね。

  

 

 

 以上、インフルエンザの型の種類や、新型インフルエンザが発生するメカニズムについてみてみました。

 何か、インフルエンザの変異の過程をみていると、進化の仕組みの神秘を感じるというか、生命の仕組みのスゴサをあらためて感じていまいます。

 といっても、ウイルスは厳密には「生命」とも言えないわけであって、そのことも含めて、この、地球上の生物とそれをとりまく自然界の精巧な仕組みって、いったい何なのだろう?って哲学的な命題に思いを馳せてしまいますね。

 また、人の1年がインフルエンザにとて数万年に相当するという、この時間軸のずれも、「時空を超えている」感じがして、もう宇宙的ですらあります。

 新型インフルエンザは、人間の天敵にすらなりうるものですが、新型インフルエンザが誕生する背景にある、壮大なスケールの時間について、思いを馳せてみるのも、ありだと思います。

また、インフルエンザを予防する方法については、こちらの記事⇒「インフルエンザを免疫力で予防するには」をご覧下さい。

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