マインドフルネスとは? やり方や呼吸法など気軽に取り組む基礎知識

      2017/01/13

マインドフルネス瞑想

 マインドフルネスは、ひとことでいえば宗教色がない瞑想のことです。

 瞑想といえば、「スピリチュアルなもの」「神秘的なもの」「で、ほんとに効果があるの?」というイメージをもつかもしれません。

 しかし、近年の脳科学の進歩で、瞑想することが脳の活動に明らかに良い影響を与えることがわかってきました。今では米国では、マインドフルネスはビジネスシーンや精神医療の現場で、欠かせないものになっています。日本でもブームが到来しているマインドフルネス。長く続けていると、ストレスに強くなったり、ネガティブ思考が無くなったり、集中力が高まったりという効果が期待できます。

 この記事では、まずは、マインドフルネスの瞑想を軽く体験してみるための基礎知識や、マインドフルネスのやり方や呼吸法について述べていきます。

マインドフルネスとは? 科学に裏付けられた瞑想

 マインドフルネスは「 脳のアップデート」「 心の筋トレ」「心のデトックス」などとも言われ、ストレスにあふれた現代社会をのりきるためのスキルとして、世界のビジネスシーンの最前線で流行しています。

 この記事では、簡単に体験・実践できるマインドフルネスの方法をお伝えしていこうと思うのですが、その前提として、マインドフルネスとはどういう歴史を持っているのか? どういう主旨なのか?を理解しておく必要がありますので、まずは「マインドフルネスとは?」というところを、ざっくり説明します。

瞑想は人類がつちかってきたライフスキル

 マインドフルネスは、もともとは、タイやミャンマーで盛んな上座仏教(テーラワーダ)のサティパッターナがベースになっている瞑想方法です。(テーラワーダ⇒「上座仏教とヴィパッサナー瞑想の基礎知識」の記事を参照してください。)

 瞑想というと、新興宗教や薬物などと結びついてしまい、悪いイメージを持つ人が多いと思います。しかし、ほんらいは、人類の長い歴史のなかで培われてきたもので、瞑想は、伝統と由緒のある心のセルフケアのノウハウです。

 瞑想は2500年前のブッダの教えのなかにもあるもので、当時から瞑想は、ストレスや苦しみから解放されたり集中力を増したりする目的をもって、行われていました。

 仏教では「諸行無常」ですので、世界は常に変化しているものと考えます。そういう激しく変わる世の中で、自分を見失わないためのライフスキルとして、瞑想は2500年の歴史を持っているわけです。

▲マインドフルネスは仏陀の瞑想を科学的に裏付けたもの

瞑想が医学と結びつきマインドフルネスが誕生した

 仏教はブッダの死後、中国方面の大乗仏教と東南アジア方面の上座仏教のふたつに分かれます。ブッダが提唱した瞑想は、大乗仏教のなかでは「座禅」として日本にも伝わっています。一方タイやミャンマーなどの上座仏教のなかではサティパッターナなどとして、脈々と受け継がれてきました。

 「心の問題」は、古今東西を問わず、人間にとって常に最大のテーマでした。東洋では仏教の瞑想として、心を見つめる方法が発展しましたが、西洋では、哲学・心理学・精神医学・脳科学というかたちで、心の研究が発展してきました。そして、近年になって、ようやく、西洋と東洋の心の学問が融合してきました。心理学や精神医学にたずさわる学者や医者のなかで、東洋の瞑想についての研究がなされるようになってきたのです。

 とくに、1980年頃に、瞑想することによって脳が変化することが科学的に証明されたことから、瞑想の研究が一気に進みました。そうして、まず、精神医学のなかで、瞑想が治療方法として使われるようになりました

 上座仏教のサティパッターナから宗教的な部分を取り除いた瞑想方法として、うつ病やパニック障害を治療する認知行動療法に用いられるようになったのです。その瞑想方法が「マインドフルネス」です。

マインドフルネスのビジネス界での発展

 21世紀に入ると、脳科学の進歩とともに、瞑想の効果が科学的に次々とあきらかにされてきました。その流れのなかでマインドフルネスは、精神医療だけでなく、ビジネス・スキルとしてさらに発展していきます

 マインドフルネスを行うことで、ビジネスマンがストレスに打ち勝ち、集中力やコミュ力をアップして、仕事がはかどり成果があがる・・・このようにマインドフルネスをビジネス・スキルとしてはじめに実践したのがグーグル社です。

 グーグルではSIY(サーチ・インサイド・ユアセルフ)というマインドフルネスの研修プログラムを作り、多くの社員が1日10分ほどの瞑想を仕事の合間におこなっています。

 仕事の合間に瞑想をすることは、ただたんにリフレッシュになるだけでなく、脳を活性化させてネガティブな感情を抑えます。ポジティブな感情が脳にあふれることで、免疫や循環器やホルモン分泌などが良好になり、結果として、体の健康維持にもつながるのです。

 マインドフルネスの効果に科学的裏付けが次々と発表され、グーグル社での成果が出てくるのをきっかけに、マインドフルネスは全米の多く企業に広がっていきます。
インテル
フェイスブック
ヤフー
リンクトイン
SAP(ドイツ)
P&G
フォード
ウォールマート
ホールフーズ
・・・など、全米の有名企業が、IT業界から流通業界まで、社内でマインドフルネスを積極的に取り入れているのです。

 そうして、ここ数年、マインドフルネスが日本でも話題になっています。

 日本ではオウム真理教事件などの影響で、「瞑想」に対しては拒否反応がありましたが、米国でさすがにあれだけの企業が採用しているとなると、無視できないといった感じで、徐々に広まりつつある、というのが現状です。

【ここまでのまとめ】マインドフルネスのなりたち

・マインドフルネスとは上座仏教の瞑想がベース

・瞑想の効果は科学的・医学的に証明されている

・マインドフルネスは精神医学の医療方法として誕生

・マインドフルネスはグーグル社によってビジネス・スキルとして発展

マインドフルネスの瞑想が目指すもの

マインドフルネスの意味

 マインドフルネスの瞑想は、上座仏教のサティパッターナがベースです。サティバッターナの語源になっている「サティ」という言葉がありますが、その英訳が「マインドフルネス」です。

 日本では「サティ」は「正念(しょうねん)」と訳されています。

 つまり、マインドフルネスは、日本の仏教のなかで「正念(しょうねん)」と呼ばれてきたものと同じものです。

 正念は、
「ものごとの本質を心にとどめ、常に真理を追求する心の正しいあり方」
「雑念を取り払った安らかな心」
、という意味になります。

 マインドフルネスでは、上記の正念をもう少しわかりやすくしたような概念です。

 マインドフルネス瞑想では、今この瞬間の心や体験に気づきの意識を集中させて、その状態をありのままに受け入れること、を目指します。これがマインドフルネスの定義といってもよいでしょう

今ここに集中すること

 このなかで、大きなポイントとなるのは「今この瞬間に集中する」という部分です。

 というのも、そもそもストレスというのは、「今ではない事」に固執したりすることで生まれることが多いため、今この瞬間に集中することで、ストレスから解放されるのです。つまり、未来のことに対してて心配したり、過去のことをクヨクヨすることが、ストレスの原因の大半を占めているから、というわけです。

 人間は、すべてを「言葉で理解してしまう」という他の動物にはない特性をもった生き物です。なので、なんでもかんでも言葉で理解して、情報として頭のなかにためん混んでいきます。

 その頭にためこんだ情報の蓄積からアイデアが生まれ、道具を使うことを知り、最終的にいまの文明を築きました。人間は高度の文明を手に入れたことで、飢えや天敵や災害など生命が脅かされるようなリスクはとても少なくなりました。

 しかし、その代償として、人類は、頭のなかに情報がパンパンにつまり、その情報は、「ストレス」として、精神的肉体的に人間を圧迫するようになってきたのです。

 なかでも、過去の出来事の積み重ねや、これから起こるであろう未来の可能性について思いをめぐらすことは、情報化社会になればなるほど、ストレスとなって、人々の心を圧迫しはじめているのです。

 だからこそ、過去や未来についての「考え」は、ちょっとそばに置いておいて、「今あること」に集中して、ニュートラルに自分を見つめ直してみよう・・・というのがマインドフルネス瞑想の主旨になっています。

▲「今ここに集中すること」でポジティブでストレスフリーな自分を取り戻そう

自分の心を客観的に見つめるために

 「今に集中」することは、とりあえずストレスから開放されるには、最も効果的でシンプルな方法です。

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 たとえば、ペットの犬や幼児達が、ストレスフリーでいつも天真爛漫でいられるのは、彼らが、過去や現在のことにはとらわれず、「今現在のことしか考えていない」からなのです。

 ぶっちゃけ、「子供の心をとりもどす」ことをすればストレスからは開放されるでしょう。

 ですが、子供やペットは守られているから生きていく心配はしなくてよい、だから「今だけ考えていられる」わけですよね。でも、大人はそうもいきません。

 なので、マインドフルネスでは、「今に集中する」という体験だけでなく、もう一歩つっこんで、「
自分の意識の反応に客観的に気づけるようになる、自分の心の中を俯瞰してみることができる
」そういう地平を目指しています。

 瞑想を続けていくと、だんだんに、自分の感情の変化や思考を、一歩引いたところから、客観的に捉えられるようになってきます。

 自分の心を客観的に見ることで、一時的な感情に流されない落ち着いた冷静な判断ができるようになったり、自分の正直な気持ちを受け入れることで自分を責めなくなります。その結果、常にポジティブでいられるようになります。

 また、思考を客観的に見ることで、より冷静な判断ができるようになります。

 人間の思考回路では、今までの経験や知識などの積み重ねで自分のなかにできあがっている「信条」や「信念」などをもとに、価値判断をしていきます。しかしこの価値判断というのは、どうしてもある一定の方向に「凝り固まって」しまう傾向があります。その価値判断が必ずしもベター・ベストの判断ではないかもしれません。

 マインドフルネスによって、心のなかを客観的に見れるようにすることで、自分のなかの偏った見方や必要以上に凝り固まった考えを、いまいちど客観的にチェックすることができ、もし問題が見つかれば軌道修正できるようになります。

【ここまでのまとめ】マインドフルネスの主旨とは?

・マインドフルネスでは「今この瞬間」を気づき・感じる

・過去・未来の囚われから解放されることで、ストレスフリーを目指す

・偏ってこり固まった自分の考えから、いったん解放されてみる

・かんたんに言えば「心の余裕」を得るための瞑想

 以上が、マインドフルネスの目的の概要です。

 少し難しい説明になってしまいましたが、ごくごく簡単にざっくり言えば、「心に余裕をもたす」ということになりますね。

 ですので、まずは「心に余裕をもたすための瞑想」というふうに気軽に考えて、とりあえずマインドフルネスの入り口を実践・体験してみましょう。

マインドフルネスの入門実践

とりあえずは、簡単に瞑想してみよう

 マインドフルネスは、過去や未来に対する雑念から開放され、今に集中することをめざす瞑想です。

 ほんらいマインドフルネスは、教室やセミナーなどで、正しい指導者について実践していくべきです。しかし、誰が「正しい指導者なのか?」見つけるのが、とても難しいことです。ですので、そうした教室などに行く前に、まず、自分自身で瞑想を体験してみることが大事です。

 いまこの場で、サクッと瞑想を体験してみることは、誰でも簡単にできることです。ですので、瞑想の入り口だけでも体験してみて、それから教室や指導者を選ぶことで、間違った先生につくリスクをだいぶ減らすことができます。

 以下に紹介する簡単な方法で、自己流で数週間やってみて、それで上手くいかなかったり疑問が出てきたり、あるいはさらに深めて本格的にやってみたいと思ったら、教室やセミナーを探してみるという手順で良いかと思います。(詳しくはこちらの記事⇒「マインドフルネスのリスクや指導者選び」を参照してください。

マインドフルネスの瞑想を簡単に入門体験

 マインドフルネスの瞑想の導入部分である、呼吸に集中した瞑想方法
です。その手順を記していきます。

 実践する時間は5分前後。いつでも気軽にちょっとした空き時間で行ってオッケーです。ただし、疲れている時よりは、朝イチとか頭脳がクリアな時にやった方が効果的です。

椅子に座ってできる瞑想

 椅子に背もたれから離れ、軽くあごをひき背筋をのばし座る。足の裏はじめんにぺったりつける。肩の力をぬき、手は膝や太ももの上に乗せ、だらりと楽にする感じです。

 ヨガの瞑想のポーズとかに慣れている人はもちろんそれでも構いませんが、椅子に座った状態でもぜんぜんオッケーですので、気軽に取り組みましょう

初心者は目をつむって

 目はつむったほうが、目に入る映像に心を奪われないために初心者はやりやすいです。慣れてきたら、うっすら開けてぼっとする半眼のような感じのほうが眠くなりません。

マインドフルネス瞑想の呼吸方法

 呼吸をして、そこに意識を集中します。

 息の仕方は、諸説ありますが、ほんらいは自由だそうです。呼吸のスピードや深さは、意識的にコントロールするのではなく、体にまかせましょう

 息は鼻で吸って口で吐くのが基本ですが、鼻で吐いても構いません。やりやすい方で。ただ、口で息を吸うのは一般的に言ってもよくないことなのでできれば避けた方がよいでしょう。

 腹式呼吸にこだわる必要はりません。とりあえず、自然な呼吸で。

呼吸に意識を集中する

 息を吸うこと、吐くことに意識を集中します。

 フト気づくと、いろんなことを考えている自分がいると思います。

 そしたら、また呼吸へ意識を戻します。

 はじめのうちは、すぐ、いろんなことを考えてしまうと思います。

 そのたびに、根気よく、呼吸に意識を戻します。

 呼吸に意識を集中するといっても、どうしたらよいか、入門者はとまどうと思います。ですので、はじめは、心のなかで言葉を唱えながらやるのもひとつの方法です。
●息を吸う時→「膨らみ膨らみ」と肺が膨らむのをイメージする
●息を吐く時→「縮み縮み」と肺がしぼむのをイメージする
●気づくと別のこと考えていたら→「雑念雑念」と唱え、雑念の存在を確認しつつ「戻る戻る」と唱えながら、また呼吸に意識を戻します。

 これで慣れてきたら、ことばではなく

●息を吸う時→鼻に意識を集中
●息を吐く時→口びるに意識を集中

・・という感じでやってみましょう。はじめから言葉を使わずに、鼻と口びるを意識してやってもいいです。

とりあえず継続してみよう

とりあえず1日5分くらい、毎日行ってみましょう。

 はじめのうちは、すぐ別のことを考えてしまうのですが、それはそれで構いません。「雑念がある」ということそのものを、意識するようになることが、まずはたいせつなのです。

 何回か続けるうちに、別な考えに囚われる回数が減り、呼吸に集中するということがなんとなくわかってくるはずです。

呼吸の瞑想から「身体スキャン」

 瞑想開始から数日して、少し慣れてきたら呼吸の瞑想に、「身体スキャン」を加えてみましょう。

 身体スキャンは、呼吸に意識を集中しながら、同時に、体の各部位にも意識を広げていくものです。

 まずは、足の裏の感触を感じます。圧力や温度などを感じてみましょう。足の裏からひざ→もも→おしり→腰というふうに順番にうごいっていっても、好きなところへ飛び飛びでもかまいません。

 呼吸を感じながら、他の部位への意識を向ける・・・もちろんこの間も雑念がきたら、呼吸へ意識を戻すようにします。

 この身体スキャンに慣れてくる頃には、だいぶ「心の余裕」というのは生まれてくると思います。

 過去や未来についてクヨクヨ悩んでいたことについても、その心配に飲み込まれずに、少し距離をおいて、「とりあえず、今のことに集中してやってみっか!」という気持ちなれると思います。

 というか、そういう気持ちになれれば、とりあえず、マインドフルネスで一定の効果があったと言えるでしょう。

【まとめ】マインドフルネス瞑想の入門実践方法

・椅子に背筋をのばし、足の裏を地面につけて座る

・自然に呼吸を開始。呼吸リズムは体にまかせる感じ

・唇や鼻を感じながら呼吸に意識を集中

・他のことを考えてしまったら、また呼吸に意識を集中。これの繰り返し

・呼吸の瞑想になれてきたら、意識を体全体に広げてみよう(身体スキャン)

▲まずは気軽に「呼吸の瞑想」にトライしてみよう。それだけでもスッキリを実感できる可能性大

 

 以上、マインドフルネスとは何か?ということと、簡単に実践できる入門的な瞑想方法について紹介しました。

 まずは、気軽に、上に紹介した「呼吸の瞑想」を何日かやってみてください。それだけでも、何か見えてくるものがあるはずです。

 注意したいのは、マインドフルネスに限らず「瞑想」には、やり方を間違えると、いろいろな意味で危険な方向に行ってしまう可能性があることです。

 こちらの記事では⇒「マインドフルネスのリスクと注意点」について述べていますので、参照してください。

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