皇居の紅葉は東御苑雑木林や北の丸公園で。乾通りの混雑を避けるには

      2017/11/21

皇居の紅葉(乾通り通り抜け)

 皇居は紅葉の名所でもあります。見ごろは例年11月下旬〜12月上旬です。

 平成26年からは「乾(いぬい)通り通り抜け」の特別公開が春と秋に実施され、平成29年も12月2日~10日に実施されます。ただし乾通りは大混雑しますので、特別公開以外で、ゆっくりたっぷりと紅葉を満喫できるスポットをチェックしておきたいものです。

 昭和天皇のご発意で造林された「紅葉の林」がある東御苑をはじめ、北の丸公園、千鳥ヶ淵、大手濠緑地など、大都市の喧噪を忘れさせてくれるボリューム感のある紅葉が皇居をとりまいています。

 この記事では、そんな皇居の紅葉を、たっぷりと楽しむポイントやアクセス方法などについて詳しくみていきたいと思います。

平成29年(2017年)皇居紅葉の最新情報

平成29年(2017年)11月21日現在の最新情報

 気象庁は、東京でのイチョウの黄葉が11月17日はじまったことを発表しました。平年値より3日早く、昨年より4日早い黄葉となっています。

 カエデの紅葉の東京の平年値は12月4日です。このペースで行けば平成28年は12月上旬から、皇居の紅葉が見頃になりそうです。

 最近は、温暖化の影響で、東京の紅葉が遅くなり、年末にも紅葉の赤い色が残っていることも少なくありません。

  天皇陛下も、そのことをお歌に詠われてらしゃいます。

年毎に東京の空暖かく紅葉赤く暮れに残れり

 これは、平成25年に皇居にて詠われたものです。

  今年は、平年並みなですので、暮れまでには散っているでしょうね。

  では、皇居の紅葉について、より詳しくみていきましょう。

皇居の自然の多様性が守られている理由

 お堀に囲まれた、江戸城の白い城壁と、深い緑の松・・・そんなイメージがある皇居ですが、皇居の樹木は松だけではありません。

 皇居と北の丸公園を合わせた面積は213ヘクタールで、山手線内の総面積の3.3%を占めています。

 そこには、711種の植物が生息していて、大都会の真ん中としては、驚くべき多様性のある自然空間となっています。。多様性のある自然空間ですので、とうぜん、樹木の種類も針葉樹だけでなく、広葉樹も豊富、つまり紅葉が多く見られる場所なのです。

 皇居の自然が豊かなのは、乱開発ができない区域であり、自然が残されているという理由だけではありません。

 自然に対する深い造詣をお持ちである昭和と今上の両天皇陛下が、積極的に、多様性のある自然を残そうと、ご配慮されていることも、皇居の自然が豊かな理由なのです。

 そんな皇居のなかの、ふだんは見られない場所が、平成26年と平成27に一般公開されて話題となりました。春の桜と秋の紅葉の時期に行われた「乾通り通り抜け」です。

 これは天皇陛下の傘寿を記念した記念行事として平成26年に行われたものでしたが、たいへん好評だったため平成27年も継続して開催されました。

 29年秋の「乾通り通り抜け」は、12月2日(土)から12 月10日(日)までの9日間開催されます。詳細については「宮内庁HP乾通り一般公開について」からご確認ください。)

 しかし、「乾通り通り抜け」以外の場所でも、紅葉はたっぷりと満喫できます。行列や混雑や警備を避け、ゆったり皇居の紅葉を楽しむなら、敢えて乾通りを外すのも選択肢かもしれません。

 多様性に富んだ自然空間・皇居の紅葉スポットを以下に詳しくみてみましょう。

東御苑の雑木林の紅葉が美しい

二の丸雑木林の誕生秘話

 皇居の紅葉のなかでも、メインとなるのが東御苑です。

 東御苑は、江戸城の本丸・二の丸・三の丸があった場所で、明治に皇居となる時に、庭園として再整備されました。

 東御苑のなかには、天守台、本丸、中雀門、百人番所、諏訪の茶屋など江戸城の面影を残す建物が点在し、二の丸庭園、果樹園古品種園、二の丸雑木林など、史跡と自然のコラボレーションのなかで紅葉風景を楽しむことができます。

 なかでも、紅葉が圧巻なのが、二の丸雑木林

Ayumi.yさん(@ayumi.y_photo)が投稿した写真

 二の丸雑木林は、「失われていく雑木林を、皇居内に再現し残していこう」との、昭和天皇のご発意で造成されたものです。

 もともと芝生だった8,200平米の土地に、「武蔵野の雑木林を再現する」というテーマで1982年〜1985年に、コナラ、クヌギ、モミジ、ハゼノキ、ヤマザクラ、ガマズミ、ムラサキシキブ、ウメモドキ、エゴノキが移植されました。今では、立派な雑木林として育ち、メジロやシジュウカラなど、野鳥たちのオアシスにもなっています。

 雑木林の造成に際しては、林の表層の土を、実際の雑木林から採取して移植する「表土移植工法」がとられました。表層土は、神奈川県相模原市にある相模原慰霊の塔周辺の武蔵野の林などから、移植されました。

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 自然保護に対する昭和天皇のお気持ちと、手の込んだ方法による造林。その結果が実り、今や素晴らしい雑木林となって、みなが紅葉を楽かしめる場所となっているわけです。

果樹古品種園も意義が深い!

 また、「果樹古品種園」は、今の天皇陛下のご発意で、約10年前から整備されているものです。

 失われつつある、江戸時代などの日本の古い果樹の品種を、残していくために作られています。農業の現場では、市場のニーズにあわせて、どんどん新しい品種に替えていくものです。その過程で、かつて栽培されていた品種が失われていくことは、とても多いのです。

 ですから、古い品種を継承するということは、学術的にも文化的にも、とても意義の大きなことなのです。「果樹古品種園」では、ナシ、モモ、スモモ、カキ、和リンゴ、柑橘類など、のべ27品種の伝統的な品種が守られています。

 紅葉の時期は、ちょうど柑橘類が色づく頃ですので、紅葉と併せて見ておきたいポイントですね。

東御苑の開園日・アクセスと注意事項

 東御苑は、入園は無料ですが、開園の曜日に注意が必要です。

 原則、月曜と金曜日は休園です。天皇誕生日以外の「国民の祝日等の休日」は開園されます。月曜日が休日で開園する場合には,火曜日を休園します。

 開園時間は、紅葉の見ごろ時期である11月下旬〜12月上旬は、午前9時~午後4時(入園は午後3時30分まで)となっています。

 入園は、北桔橋門、平川門、大手門の、いずれかの門からとなります。入園の際,各窓口で入園票を受け取り,退園時に返却するシステムです。

 アクセスは北桔橋門(きたはねばしもん)と平川門が地下鉄竹橋駅1a出口、大手門が、地下鉄大手町駅C10・C13B出口となっています。

 なお、公園内は、喫煙所以外の喫煙と飲酒はもちろん、運動競技も禁止となっています。身体障害者補助犬以外のペットもNGですので、注意してください。

皇居外周エリアの紅葉の見どころ

自由にピクニックできる北の丸公園で紅葉狩り

 北の丸公園は、皇居に隣接する公園で、武道館や国立近代美術館や科学技術館があるところ。こちらは、いつでも入場できる完全フリーの公園です。

 園内にはモミジ約300本、イチョウ約100本、ケヤキ約100本、、サクラ約200本、ニシキギ約100本など、ぜんぶで約2,000本の落葉樹がある広大な林となっています。

@a01__aoiが投稿した写真

 紅葉の見どころは、武道館前の大イチョウ、中の池周辺の周辺のケヤキ、モミジ園のもみじなどで、紅葉と黄葉の紅葉狩りをゆっくり楽しめます。北の丸公園は、東御苑と違って、犬もオッケーですし、自由にピクニックなどできるので、ボーッとして癒しの時間を過ごすのにバッチリです。

アクセスは九段下駅 2番出口・竹橋駅 1b出口などです。

千鳥ヶ淵のボートで紅葉は見れる?

 千鳥ヶ淵は、戦没者慰霊苑と桜で有名な場所ですが、紅葉スポットでもあります。

 半蔵門近くの戦没者慰霊苑から千鳥ヶ淵の西側を通り靖国通りの九段坂上まで抜ける、700mの遊歩道があります。

 ちょうど、北の丸公園を、お堀をはさんで反対側から見ることになります。お堀沿いに真っ赤なカエデ類が映えます。

 千鳥ヶ淵とえいば、手こぎボートが有名ですが、残念ながらボートの営業は11月30日までで、例年のパターンだと、もみじの紅葉の最盛期の前にボートは終ってしまいます。

 ですが、紅葉が早い年であれば、ぎりぎり、ボートからの紅葉狩りができるかもしれません。

 11月の終わりには、千鳥ヶ淵は要チェックです。

大手濠緑地の震災イチョウ

 皇居ランナーの休息所としても有名な、大手濠緑地。

 東御苑をお堀をはさんで望める場所にあります。

 大手濠緑地は、ちょうど気象庁の前にあるのですが、大手濠緑地の大イチョウの木は、紅葉の時期を毎年サンプリング調査する「標本木」となっています。

 また、この大イチョウは、関東大震災の時も、東京大空襲の時も生き残ってきた、幹回り3.6m樹齢150年の巨木です。関東大震災の時に半分焼けた木から、翌春には新芽が芽吹いて、当時の人々を勇気づけました。今でも、焼けた跡が残っていて、火傷のあとは、樹脂加工するなどしてガードされている木です。

 紅葉は例年11月下旬から。北風が吹くとすぐ散ってしまうため、黄金色に色づく期間は長くはありません。11月の終わり頃は、千鳥ヶ淵とともに大手濠緑地もチェックしておきましょう。

 

 

 以上、皇居の紅葉スポットについて、みてきました。

 武蔵野のおもかげを今に伝える広葉樹の林の紅葉を楽しみみながら、皇居の自然が象徴する「多様性」という価値観について考えてみるのも、また一興だと思います。

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