耐震基準の変遷。建物の中と外どちらが安全か?は築年数で変わる。

      2017/08/24

耐震基準

 耐震基準について知ることは、実は、震災から身を守る基本中の基本なのですが、案外見落としている人も少なくありません。

 定期的に震災に見舞われる日本では、震災のたびに耐震基準を強化してきました。

 このため、どの時期の耐震基準で建てられたか?によって、建物の耐震性に大きな差があります。

 震災から身を守るために最低限知っておきたい、建物の耐震基準について、その変遷をまとめてみました。

耐震基準の変遷と安全性を築年数から調べてみる

地震で崩れる家と崩れない家の差は何?

 震災から身を守るのに「家の安全」はとても大切です。

 阪神淡路震災で亡くなった人のうち88%が、倒壊した建物などの下敷きになったのが原因です。

 阪神淡路以後も、中越、東日本、熊本と最大震度7前後の強い地震が定期的に起きています。そのたびに、倒壊する家屋が後をたちません。

 が、その一方で、強震でも、倒壊することなく、ほぼほぼ無傷で残る家もあります。

 地震で倒壊する建物と被害を受けない建物……この違いはどこにあるのでしょうか? 

 建物が倒壊する時は、地震の波長や地盤の状況などさまざまな要因が複雑に絡みあっていますので、原因をはっきりさせて100%倒れないように対策することは、なかなかできません。

 ただ、少なくとも言えることは、「最新の耐震基準」で建てられた家は、倒壊する可能性が極端に低い、ということです。

耐震基準によってかわる、震災時の避難の仕方

 地震にあったその時、あなたがいる建物が、いつの耐震基準で建てられているか?によって、瞬時の対応策がかわってきます

 たとえば、最新の耐震基準で建てられたRC造(鉄筋コンクリート)の建物にいる場合は、建物のなかのほうが安全です。

 逆に、古い耐震基準の木造住宅にいるなら、できるだけ、はやく外に避難するべきです。
また、旧耐震木造の2階にいるなら、2階にとどまり1階に降りないほうが安全です。

 このように、耐震基準によって、地震時の安全性がまったく違っています。

 ですから、住んでいる家や、職場など、自分が、いつも居る建物が、いつの耐震基準で建てられた建物なのか? それを知っておくことはとても重要なことなのです。

築何年以内は安全?

 下の表は、築年数(建設されてから何年経つか?)から見る、建物の耐震性の目安です(2017年現在)。

築年数から耐震性を調べる早見表(2017年版)
築年数 木造 RC
46年以上 × ×
47年~35年 ×
36年~34年 △~〇 △~◎
34年~17年
10年以内 ○○ ◎◎
×…耐震性ほぼなし
△…耐震ややある
○…耐震性は充分ではないがある
○○…耐震性があるが深度7では倒壊の可能性あり 
◎…耐震性ほぼあり
◎◎…耐震性あり(避難先として使えるレベル)
※この表はあくまでイメージを伝えるもので、耐震性を保障するものではありません

 この表では、地震の時に、外よりも建物の中の方が安全なレベルは◎〜◎◎、建物が崩壊する危険が高く地震の時に建物の外に避難した方がよいレベルを×~△で示しています。

 また、2007年現在で築36年から築34年の建物は、ちょうど、旧耐震基準と新耐震基準が切り替わった過渡期にあたります。この期間のものは、建物ごとに旧耐震基準か?新耐震基準か?確認する必要があります。

 この表はあくまで、ざっくりのイメージをつかむものですので、より正確に耐震基準をチェックするために、もう少し詳しく、耐震基準の変遷についてみていきましょう。

 

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耐震基準の変遷〜「新耐震」ができるまで

関東大震災前後

 耐震基準の歴史は、1923年(大正12年)の関東大震災をきっかけにはじまります。

 関東大震災以前には、市街地建築物法という、現在の建築基準法の前身にあたる法律がありました。この法律は、耐震基準もとくにない、ゆるいもので、都市部だけに適用されるものでした。

 当時は、伝統的な大工さんのルールが法律よりも優先する時代でした。江戸時代から続く大工さんの技術や知恵のなかには、延焼しにくい設計など防火性能を高める工夫がたくさんありました。

 そうした、伝統的な知恵が、法律をカバーして、火災から街や人を守ってくれていたのです。

 ただ、防火性に関しては優れた技術があった日本の伝統建築ですが、耐震性については、技術的に限界がありました。

 そういう時代でしたので、関東大震災では21万戸の家屋が全半壊しました。木造住宅と、西洋式のレンガ造りの家は、ことごとく崩壊したのです。

 これを受けて、関東大震災の翌年に市街地建築物法が改正され、はじめて「耐震基準」が導入されます。ただ、決して十分な基準とはいえませんでした。木造住宅では、交筋(カスガイ…柱どうしを斜めにつなぐ補強)を入れるなどの規定がもりこまる程度だったようです。

 耐震基準こそできたものの、この時代に、実際にどれだけ基準が守られていたかも、定かではありません。また、戦時体制下では「法停止」していたため、事実上、建築に関して無規制の状態でした。

福井地震と建築基準法の制定

 終戦と同時に、各地で空襲被害を受けた都市にも、復員兵がぞくぞくと帰還し、住宅が不足します。そこで、ありあわせの材料でバラック小屋が乱立するようになりました。

 そうしたなか、1948年の福井地震は東日本・阪神に次ぐ戦後3番目に激しい地震でした。この地震では、なんと市街地の60%の家屋が全壊するという、壊滅的な被害を受けたのです。

 この福井地震をきっかけのひとつに、1950年(昭和25年)に建築基準法が制定されます。

 建築基準法で、耐震性だけでなく防火性・耐風性など家の安全性を確保するさまざまな基準が、木造、RC造(鉄筋コンクリート造)など、家の構造ごとに定められたのです。

 建築基準法は制定当時、「震度5の地震でも倒壊しない」ことを目標に耐震性が設定されました。

 以後、戦後の復興期から高度成長までの時代に、この耐震基準が建物の基準となっていきます。

建築ラッシュで建築基準法もたびたび改正

 1960年代に入ると新築住宅の戸数が飛躍的に伸びはじめます。それまで年間50万棟ぐらいだったの建築数が70年代には年間180万棟になります。

 建築ラッシュの時代には、合板・クロス・フローリング材・断熱材など「新建材」がぞくぞく新開発されてきました。これら新建材の防火性能に合わせて、建築基準法は、何十回となく改正されていきます。とくに防火基準については、建築現場や建築業界が先を歩き、法律が後を追っかけるような状態だったようです。

耐震基準の抜本的見直し(新耐震)

 一方、耐震基準では、やはり、地震をきっかけに強化されてきました。

 たとえば1968年の十勝沖地震をきっかけにして、1971年には、RC住宅の鉄筋量を強化しています。

 しかし、1978年(昭和53年)仙台市を中心とした宮城沖地震では、地震に強いとされていたRC建築物が倒壊したり、建設中の東北新幹線の橋げたに亀裂が入るなど、それまでの耐震基準の脆弱さをつくものでした。

 そこで、1981年に、耐震基準を抜本的に見直す建築基準法の改正が行われたのです。

 この改正から後を「新耐震基準」と呼び、それ以前に建てられた建築物と、明確に区別しています。耐震基準は1981年を境に、まったく違ったものに変わった、と考えてよいでしょう。

 新耐震基準では、耐震基準の目標をそれまでの震度5から震度7まで高めてあります

 震度5では、倒壊しないのはもちろん、住宅がほぼ無傷に近い状態でキープできること、そして震度7では、建物が多少部分的に破損することはあっても倒壊しない……それが新耐震の基準です。

 建物の破損はある程度あっても、最低限と中にいる人の安全性を確保しよう、というのが新耐震基準のコンセプトになっています。

 その後、新耐震基準は、阪神淡路・中越・東日本・熊本と、震度7レベルの地震でその真価を問われてきましたが、それらの地震で、新耐震基準で建てられた建物の被害は、旧耐震に比べると、比較的少ないということが証明されてきました。

 1981年の新耐震基準は、基準としては、ほぼほぼ問題ないわけです。(ただし、木造についてはそうとも言い切れないのですが、それについては⇒「木造住宅の耐震基準」のところで述べています。)

 逆に言えば、新耐震基準以前の建物は、地震で倒壊するリスクが高いのです。

 「1981年の新耐震基準導入以前の建物は、耐震性に問題がある」……このことは。最も重要なポイントになるので、頭に入れておきましょう。

耐震基準と地震の年表
凡例;震災名(マグニチュード/最大震度/全半壊戸数)黒字;耐震関係の法律など。太字はとくに重要なもの薄茶色字;住宅診断関係の法律
西暦 元号 震災・耐震基準関係の法律など
1920 T9 市街地建築物法施行
1923 T12 関東大震災(M7.9/S7相当/212,400戸)
1924 T13 市街地建築物法改正(耐震基準が初導入)
1948 S23 福井地震(M7.1/S7相当/48,000戸)
1950 S25 建築基準法制定
1968 S43 十勝沖地震(M7.5/S5/3,600戸)
1971 S46 建築基準法改正(鉄筋コンクリート基準強化)
1978 S53 宮城沖地震(M7.5/S5/7,400戸)
1981 S56 建築基準法改正
(抜本的見直しで「新耐震」誕生)
1995 H7 阪神淡路大震災(M7.3/S7/249,100戸)
1995 H7 耐震改修促進法制定
1998 H10 建築基準法改正(「仕様」から「性能」へ、基準概念を抜本改正)(建築確認・検査の民間開放)
2000 H12 建築基準法改正(木造の耐震基準強化)(形式適合認定)
2001 H13 品格法がスタート。耐震等級の導入
2002 H14 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(未施行)
2004 H16 新潟中越地震(M6.8/S7/18,000戸)
2005 H17 耐震偽装事件
2005 H17 住宅・建築物の地震防災推進会議を設置。
2005 H17 耐震基準適合証明で住宅ローン控除が築年数25年(木造20年)以前も可能に
2006 H18 耐震診断の有無が重要事項説明(宅建法改正)
2006 H18 住生活基本法制定(住宅政策の方向転換)
2007 H19 建築基準法改正(建築確認に構造計算適合判定)
2009 H21 長期優良住宅の普及の促進に関する法律施行
2011 H23 東日本大震災(M9/S7/300,800戸)
2013 H25 耐震改修促進法改正(一般住宅の耐震診断が努力義務に)
2013 H25 既存住宅インスペクションガイドライン
2013 H25 首都直下地震対策特別措置法
2013 H25 防災・減災等に資する国土強靱化基本法
2016 H28 熊本地震(M7.3/S7/37,600戸)
2018 H30 建物状況調査(住宅診断)が重要事項説明に(宅建法改正)

建築年から耐震性をチェックする場合に気を付けたいこと

 古い家の耐震性を調べる時は、まず、その家が建ったのが、新耐震の前か後か?をチェックします。

 新耐震基準を含む改正建築基準法が施工されたのは1981年の6月1日です。

 この日以後に、建築確認の申請を通過した建物が「新耐震基準」をクリアしています。

 建築確認は、建築を開始する前に、図面上で、建築基準法に合致しているかを県などので審査機関がチェックするものです。

 1981年の新耐震のもとで建築確認が通っている建物は、震度7でもほぼほぼ倒壊しない、ということが言えるわけです。

 注意したいのは、1981年の新耐震基準の前後には、新耐震基準と旧耐震基準で作られた建物が混在しているということです。たとえば、1981年の5月に旧耐震基準で建築確認を通過して、翌年の1982年に完成したマンションもあるはずです。

 ですから、2017年であれば、築36年と築37年の物件は、新旧の建築基準が入り混じっているのです。

 古いマンションに入居する時や、実家の耐震性をチェックする時は、1981〜2年を境目にして判断します。1981年以前のものは耐震性がきわめて弱い可能性が高いので、耐震診断や耐震補強が必要になってきます。

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木造とRC、それぞれの耐震基準の変遷

 日本の建築物で多いのは、個人の戸建て住宅である「木造」、マンションや公共建築物で多い「RC造(鉄筋コンクリート)」です。

 建築基準法のなかで、それぞれに耐震基準が定められ、改正されてきました。

 耐震基準を考える場合、木造とRCではまったく違ってきますので、分けて考える必要があります。

 それぞれの耐震基準の変遷について、もう少し詳しくみていきましょう。

地震に強いRC造の耐震基準

 RC造(鉄筋コンクリート)」はもともと地震に強く、関東大震災でも、木造やレンガ造が崩壊するなか、RC造は倒壊しなかったものが多かったため、公共建築物などだけでなく、集合住宅や戸建てにも取り入れられるようになってきました。

 RC造では、梁や柱の太さや、コンクリートの中に入れる鉄筋の密度などが、耐震性に大きく影響しますが、建築士による専門的な「構造計算」をすることで、耐震性をもたすようにしています。

 RC造りは、論理的に完成されている部分もあり、設計ミスや手抜き工事さえなければ、かなり頑丈な建物が作れます。

 設計ミスや手抜きといえば、2005年に明るみになった耐震偽装件が有名です。耐震性を証明する構造計算書を偽造して、工事費用を浮かせる、業界ぐるみの手抜きが行われていた疑惑です。

 この事件をうけた2007年の建築基準法改正では、構造計算に間違いが無いか?建築確認の段階で厳しくチェックすること
となりました。

 この2007年の改正で、RC造の建築物では新耐震基準が確実に守られるようになりました。2007年以後建築のRC造については、耐震性は、原則、心配することは無いと言えそうです。

 実際のところ、1981年以後の新耐震基準で建てられたRC造りの建築物は、これまでの震災でも、倒壊した例は原則ありません。

 活断層の真上で、地盤が近く変動を起こしたような特殊な場合以外では、鉄筋コンクリートの建物は、ほぼ想定通りの耐震性を維持して、崩壊することなく大地震をクリアしてきているのです。

 たとえば、先の東日本大震災でメルトダウンの大事故を起こした福島原発でも、建物そのものは地震や津波で崩れることはありませんでした。

 事故の原因は津波による浸水で停電を起こした結果、とりかえしのつかない放射能事故となったものです。原発が安全というう意味ではないですが、少なくとも、原発の建屋の耐震性については、想定内だったわけです。

 このように、新耐震の基準を守っていれば「地震に強い」と言えるのがRC造なのです。

▲築10年内のRC(鉄筋コンクリート)建築は、耐震性について心配しなくてもほぼ大丈夫。(写真はイメージです)

木造住宅の耐震基準

 1981年の新耐震以後のRC造(鉄筋コンクリート造)が、ほぼほぼ耐震性については心配がないのに対して、木造建築については、いろいろ注意が必要です。

 とくに日本の伝統的な建物である軸組建築では、「耐震性が案外弱い」いのです。大工さんの職人技が蓄積された軸組建築は、木材がほんらい持っているしなやかさと丈夫さを活かした伝統建築です。

 地震国日本で、幾多の地震を乗り越えてきた建築方法です。

 木材は繊維質セルロースからできていますが、セルロースから作る新素材セルロース・ナノ・ファイバーは鋼鉄の5倍の強度をもっています。

 また木材は重さのわりに頑丈です。たとえば鋼鉄は縦に長くすればするほど、鋼鉄自身の重みで倒れてしまいます。しかし、木材は軽いため、鋼鉄よりも高く伸ばすことができます。

 こうした点からも、木材は建物の材料としては、かなり優秀な素材なのです。

▲木造の耐震基準はまだまだ過渡期にある。ほんらいは丈夫な木材をどう活かしきるか?が鍵。(写真はイメージです)

 しかし、日本の伝統的な軸組工法では、基礎部分や木材の継手部分に、限界があり、「震度7でも倒壊しない」という新耐震基準を満たすことはなかなか簡単ではありません。

 実は、1981年以前の旧耐震基準の時代に建てられた木造家屋は、耐震性はゼロに近いとされているほどです。

 実際のところ、1995年の阪神淡路大震災では倒壊した建物のほとんどが、旧耐震基準による木造建築だったのです。

 もっとも、阪神淡路では、新耐震基準で倒壊した木造建築もあったため、その後さらに建築基準法改正が行われます。

 2000年の改正では、木造家屋の接合部分を金物で強化することで、耐震性を高めるよう技術基準が改正されました。

 また、1998年の建築基準法改正では、自由化の流れで、使用できる建材の種類が各段に増加しました。それにより、木造住宅の耐震性をより高められるようになったのです。

 これらの流れから、木造住宅の耐震性は1981年の新耐震だけでは不十分で、2000年以後の新・新耐震基準が比較的安全だといえます。

 実際のところ、2016年の熊本地震では、震源に近いところの調査で、次のような調査結果が出ています。

熊本地震/震源地付近(震度7)での木造住宅の倒壊率

・1981年以前の築…50%が倒壊

・1981年〜2000年の築…19%が倒壊

・2000年以後の築…7%が倒壊

 この熊本の例をみても、木造住宅では、明らかに2000年以後の新・新耐震基準のものが安全だということがわかると思います。

 ただし熊本地震では、最新の耐震基準によるものが7%も倒壊しています。

 やはり、木造住宅は、RC造のように、ほぼほぼ耐震性については心配ない、というわけにはいかないのでしょうか?

 実は、耐震基準以上に丈夫な木造建築を作ることが可能なのです。

 その点について、詳しくは⇒「耐震基準と耐震等級」の記事を参照してください。

 また、木造住宅と耐震基準については、実は「4号住宅」と呼ばれる、建築基準法の抜け穴を通ったような家屋が多数存在しています。

 そのことも、絶対に知っておくべき事実ですので、詳しくは⇒「耐震診断は義務化されている?」の記事を参照してください。

 

 

 以上ここまで、耐震基準の変遷と、木造とRC造での耐震性の違いなどについてみてきました。

 この機会に、いまいちど、自分の住む家や実家や職場など、身近な建物が、いつの耐震基準で建てられているのか? 確認しておきましょう。

 旧耐震基準の木造住宅にであれば、早めに耐震診断と耐震補修が必要になります。

 都会を歩いている時に、震災にあった場合は、「新耐震」などの適合マークが張ってある建物に避難した方が、外にいるよりはるかに安全です。

 このように、耐震基準について正しい知識を持つことは、身の安全を守るために必須だということを忘れないようにしましょう。

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