山桜の名所を自生地をメインに紹介。山桜の個性豊かな魅力とは。

      2018/01/11

やまざくら

 桜といえば、ソメイヨシノ(染井吉野)のイメージが強いですが、「山桜が好き」という人が近年増えているようですね。

 ほんらい、日本の桜と言えば、山桜のことを指します。

 里山に自生して新芽と花が同時に開く山桜の姿は、とてもナチュラルな美しさで、クローンである染井吉野とは違った魅力があり、そこが見直されているのでしょう。

 この記事では、ヤマザクラの種類、代表的な山桜の名所、そしてヤマザクラとソメイヨシノの特徴の違いをみながら、山桜の魅力を再発見していきたいと思います。

 なお、桜関係では、
⇒『桜と菜の花のコラボ風景を見にいこう(関東近県)』の記事も参照してください。

ヤマザクラの種類

 山桜は、もともと日本の山野に自生するサクラで、品種改良されていない原種の桜です。

 山桜には約10種類あって、花の大きさ、花の色、花と葉っぱが出る順番、分布場所など、それぞれ特徴があります。

 山桜というと、花だけが先に咲くソメイヨシノに対して、花と新芽が同時に出てくる桜というイメージがありますが、いちがいにそうとも言えません。たとえば、山桜の一種エドヒガンは、葉が出るよりも先に花だけが咲きます。

 花の大きさも小ぶりなのが山桜というイメージもあるかもしれませんが、山桜のなかでもとくに花の大きい品種に、伊豆大島を原産とするオオシマザクラがあります。

 あらゆる桜のなかで、最もポピュラーなソメイヨシノは、山桜の一種であるエドヒガンとオオシマザクラを交配して作られた品種です。大きな花が、葉っぱより先に咲き誇るソメイヨシノの性質は、オオシマザクラとエドヒガンから受け継がれた遺伝子なのです。桜の改良品種は300以上あるとされていますが、いろいろな桜のルーツになっているのが、10種類の山桜なのです。

 山桜グループのなかでも最も多く分布して、本州・九州・四国の里山に多く見られるのがヤマザクラ(シロヤマザクラ)です。桜の聖地・吉野山の桜もこのシロヤマザクラ種です。

 また、東北北部や北海道など寒い地方では、桜とえいばソメイヨシノではなく、オオヤマザクラ(エゾヤマザクラ)のほうがスタンダードです。

 一方、沖縄では桜といえば日本一早く1月下旬頃に見頃を迎えるカンヒザクラで、こちらも山桜の一種です。

 その他、数は少ないですが、高山などに自生するヤマザクラに、タカネザクラ、チョウジザクラ、ミヤマザクラ、マメザクラ、カスミザクラがあります。

 これらの山桜種の特徴について、下の表にまとめました。

ヤマザクラ各種の特徴や開花時期
品種 花色 樹高 花径 花と葉のタイミング 開花時期 分布と特徴
ヤマザクラ 白または淡紅 20m以上 3cm-4cm 開花と同時に新芽 4月上〜下 関東・近畿~屋久島。もっともポピュラーな山桜。新芽の色は緑・黄・茶と個体差があり、花とのコントラストを楽しめる。
オオヤマザクラ 紅色 15m 4cm 花と葉が同時 4月中〜5月上 北海道、本州東部、中部地方の高地(700~1500m)近畿四国九州は少ない。北海道や東北北部ではソメイヨシノよりも一般的なピンク色の桜。
オオシマザクラ 15m 4cm大型 開花と同時に緑葉 4月上〜下 伊豆諸島、三浦半島、房総半島南部。花が大きいことから、園芸改良品種(ソメイヨシノ・八重桜など里桜各種)のベースとなっている。
エドヒガン 白、淡紅 20m 2cm 開花後に葉 3月中〜下 東北~九州。花だけ先に咲くタイプ。一本桜などの古木に多い。
カスミザクラ 白まれに淡紅 25m 2-3cm 開花時緑の新芽 4月中〜5月上 北海道・本州・四国(九州なし)。樹肌の色が赤っぽくなく灰褐色。
マメザクラ 白、薄紅紫 低・小高木 2cm 花と葉同時 3月下〜4月中 関東南西部、静岡、山梨長野、八ヶ岳富士山、箱根など火山地帯の山間部に自生。
タカネザクラ 白または淡紅。花弁先端が濃い 低・小高木 2-3cm 花と葉同時 5月上 本州中部の1000m-2800mの高地や北海道に自生。
チョウジザクラ 白で芯が淡紅 低・小高木 2cm 花と葉同時 3月上〜中 東北地方太平洋側、中部井以東の1000m以上の山地。変種のオクチョウジザクラが有名。
ミヤマザクラ 15m 2cm 葉が先 5月上 本州、九州、四国の標高の高い山地。
カンヒザクラ 濃紅色 低・小高木 2㎝ 花が先 3月上〜中 沖縄でみられる桜。自生地もあるが元は台湾や中国から帰化したとみられる。

 桜は、バラ科サクラ屬の植物ですが、このサクラ屬は自然に交雑しやすい性質もっています。ですので、山の中で、自然にまじりあって、山桜の亜種が多数生まれています。オクチョウジザクラ、チシマザクラ、ツクシヤマザクラ、キンキマメザクラ、ブコウマメザクラなどです。

 また、最近、亜種ではなく新種の山桜ではないか?と言われているのが、和歌山県南部に生えるクマノザクラです。ヤマザクラに比べて、葉が小さい・花色が濃ゆい・開花時期が早いなどの特色があるため、山桜の新品種の可能性が高いと言われています。

 以上のように品種や亜種が豊富な山桜ですが、同じ種でも、木ごとの個性(=個体差)のバリエーションが豊かなのもの山桜の特徴です。クローンであるソメイヨシノに対して、一本一本の個性を楽しめるが、山桜の特徴だといえるでしょう。

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山桜の名所30選

 山桜は日本全国の山に自生している桜です。とくに「桜の名所」でなくとも、近所の山にポツポツと生えている桜を毎年楽しみにして、春を感じている人は少なくないでしょう。

 逆に、「桜の名所」といえば、品種はソメイヨシノだと思いがちですが、山桜の名所もあります。数でいえば、ソメイヨシノの名所がほとんどなのですが、山桜の名所も、また違った趣で、春を楽しむことができます。

 ヤマザクラの名所には次のようなタイプがあります。

・ヤマザクラの自然の自生地(里山の山桜)

・古くから人の手で植えられた群生地(吉野山や嵐山など)

・一本桜として残る古木

 自然自生の山桜の名所は、近年「里山」が注目されるなかで、クローズアップされてきています。

 一方で、古くから人の手で植えられてきた山桜の群落もあります。日本一のサクラの名所・吉野山がこのタイプです。

 また、日本各地の里に残る樹齢数百年~千年の銘木は「一本桜」といわれますが、一本桜といわれるものは、品種改良が進んだ江戸時代より前のものが多いので、山桜系統が多いです。

 山桜の自生地や群落のなかから、ぜひ行きたい名所6選と、おすすめの名所24カ所をピックアップしてみました。

吉野山~霊験あらたかな世界的な桜の聖地

●桜種:ヤマザクラ(シロヤマザクラ)、他100種類 ●本数:約3万本 
●開花時期:4月上~下 
●所在地:奈良県吉野町 ●アクセス;近鉄吉野線吉野駅よりすぐ、東名阪・名阪国道針ICより・マイカー規制あり

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 古くから桜の名所と言えば「吉野」。名実ともにダントツでNO1のヤマザクラの名所です。吉野山は、世界遺産「紀伊山地の霊場」の一部で、蔵王権現を祀った金峯山寺(きんぷせんじ)を総本山とする修験道の聖地。桜が御神木として植えられ、現在はその数3万本にのぼり、全山がヤマザクラでおおわれる世界的な名勝地となっています。

 南北8km標高差500mの吉野山は、下千本~奥千本まで4つのエリアにわかれ、4月上旬から下旬まで1カ月かけて、ヤマザクラが咲き続けます。そのダイナミックさは、ぱっと見で千本も桜が眼にはいるようであることから「一目千本」、白い花が滝の水のようが流れ落ちてるかのように見えることから「滝桜」とも形容さています。

 ヤマザクラの花弁の白と赤・黄・緑と木々ごとに個性豊かな新芽の色あいが美ししく、時に雲がかかると、深山の霊験あらたな気配に圧倒されます。1300年という歴史のある吉野の桜ですが、自生地ではなくあくまで人の手によって植えられ育てられてきました。ほんらい乾燥を好む桜にとって決して適地とは言えないなか、人々が手塩にかけて守ってきている桜なのです。

桜川~高峰の山桜

●桜種:ヤマザクラ、他 ●本数:磯部桜川公園~桜川磯部稲村神社:約500本 他、高峰など里山に自生
●開花時期:4月上~下 
●所在地;茨城桜川市 ●アクセス;JR水戸線羽黒駅より:磯部桜川公園~桜川磯部稲村神社=徒歩10分、高峰入口(平沢公民館)=徒歩60分、岩瀬駅にレンタサイクルあり、シーズンの土日には羽黒・岩瀬駅~平沢公民館に臨時シャトルバスあり。北関東自動車道・筑西桜川ICより数10分

 筑波山の北部に広がる里山に囲まれた桜川市は、野生の山桜の多い地域であるほか、古来より伝わる桜の名所です。「西の吉野・東の桜川」と言われていますが、もともと磯部稲村神社のヤマザクラが中世の時代から京の都にも知れ渡っていたことに由来します。平安時代には紀貫之が歌によみ、室町時代には世阿弥の謡曲「桜川」の題材とされました。磯部稲村神社や門前の桜川公園のなかには当時から脈々と植え継がれてきたヤマザクラがあります。また、桜川公園の中で国指定の天然記念物になっているのは、現地で発見されたヤマザクラの亜種11種類です。

 桜川には、これらの山桜の他に、もうひとつの見所である里山の山桜があります。北部の高峰山・雨巻山、御岳山・雨引山など里山が山桜の薄紅色に染まります。なかでも高峰山は、林道(桜期間中は車両通行止め)を歩いて整備された第一展望台・第二展望台より天然林の山桜を眺めることができます。桜川公園から高峰山ふもとの平沢公民館までは徒歩約60分、第二展望台までも60分ほどの行程になります。

 さらに、岩瀬駅から南へは、つくば鉄道の廃線跡が自転車専用道に整備され、雛人形で有名な真壁まで続いています。その間はソメイヨシノの桜並木となっています。桜川市内全体が、桜色に染まりまり、ヤマザクラ、ソメイヨシノ、自然林、古樹、などさまざまな桜を楽しめる里山です。

大峰山・橡平(とちだいら)

●桜種:オオヤマザクラ、カスミザクラ、オクチョウジザクラ、ヤマザクラ、他自然交配亜種 ●本数:1000約本
●開花時期:4月上~5月上
●所在地:新潟県新発田市 ●アクセス:JR羽越本線・金塚駅より車で5分、日本海東北自動車道・中条ICより10分

 日本一小さい山脈としても知られる櫛形山脈の大峰山ふもとに広がる天然記念物の山桜群落。オオヤマザクラ、カスミザクラ、オクチョウジザクラ、ヤマザクラが自生しています。それぞれの自然交配種(オオオクチョウジザクラ、カスミオクチョウジザクラ、オオミネザクラなど新しい亜種)をふくむ40種類ほどがあります。自然交配種が多いため、桜の色あいもすべて微妙に異なっていて、色とりどりのヤマザクラが見られます

 自然林とは別に、ふもとには桜公園として、5.2haの敷地に100種類の園芸種の桜(サトザクラ)が植えられているので、こちらもあわせて楽しむことができます。桜公園からヤマザクラ群生地を経て、展望台チェリーヒュッテから標高399mの大峰山までは登りやすいハイキングコースになっています。トチノキ、ブナ、ミズナラなどの広葉樹林とヤマザクラの織り成す自然を楽しめます。なお、前長10㎞の櫛形山脈の縦走をあわせて楽しむプランも考えられます。400m級の山脈ですが、途中道に迷いやすい場所があるなど、縦走についてはそれなりの準備と心構えが必要なので注意しましょう。

信州池田・陸郷の桜(桜仙渓)

●桜種:ヤマザクラ ●本数:約5000本 
●開花時期:4月中~下 
●所在地:長野県池田町 ●アクセス;JR大糸線・信濃松川駅、JR篠ノ井線・明科駅よりタクシー15分、安曇野ICより20~30分 交通規制あり

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 長野安曇野の北東側の里山・陸郷地区に広がるヤマザクラの自然群落は、鳥が運んで自然に拡大したヤマザクラ林として有名ですが、その規模から、「西の吉野、東の陸郷」と称されることもあります。

 ビューポイントは池田町から林道を登っていった先の豊盛(ほうせい)公民館前の一帯にある「桜仙渓」、そこから谷の下側にあるラベンダーガーデン「夢農場」。どちらも入場料などはかからず自由に観覧できますが、地元農産物加工品の売店などがあるので、是非立ち寄ってみましょう。

 さすがに吉野山にはおよばないものの、尾根伝いに広がるヤマザクラが織りなす自然が作り出したパッチワークの風景は、里山の春を満喫させてくれるものです。また同じ池田町内の高照山の桜の里では、ヤマザクラ、エドヒガンの他各種サトザクラを楽しむことができます。

三多気の桜

●桜種:ヤマザクラ  ●本数:約500本 
●開花時期:4月上~中 
●所在地:三重県津市 ●アクセス;JR名松線・伊勢奥津駅よりバス10分または電動アシスト自転車のレンタル、伊勢自動車道久居ICより1時間フットパーク美杉からはシャトルバス利用

 三重県津市三杉町にある9世紀に開かれた古刹・真福院に通ずる1.5㎞の参道にヤマザクラの参道。茶畑とのコラボや、かやぶき屋根の民家の裏の棚田に映るヤマザクラの姿が美しい名所です。

 4月上旬のピークの週末には桜まつりが開かれ、餅まきや歌謡ショーなども開かれます。また、カメラの撮影地としてもメッカとなっているため、カメラ愛好家が集結します。人混みはある程度覚悟しなければならないですが、それでも、日本人の原風景的な景色は、やみつきになるほど印象的です。

神子(みこ)の山桜

 ●桜種:ヤマザクラ  ●本数:約本 
●開花時期:4月上~中 
●福井県若狭町 ●JR・三方駅駅よりバス45分、北陸自動車敦賀ICより30分

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 若狭湾につきでる常神半島の神子地区には、ヤマザクラの群生地があります。破風崎から神子集落まで東西1㎞南北200mにわたっての範囲が、ピンク色に染まります。250年以上も前に、境界の目印として植えた山桜が自然に広がったもので、幹回り1m以上の古木もあります。

 ビューポイントは破風崎の展望台。春になり穏やかな若狭湾の海面をはさんで山肌を美しく染めあげるヤマザクラ群が眺められます。また神子海浴場や漁港からの、岬小学校裏手の山に広がる景色も見事。また、小川地区から、湾を取り囲む岬の山を尾根伝いに縦走しながら桜を鑑賞することもできます。

 神子の桜については、随筆家・白州正子「かくれ里」でも書かれていますが、神子地区の漁師民宿に宿をとれば、翌朝、漁船で海からの風景を見る20~30分のクルーズに連れていってもらえます(天候により中止などもあるので詳しくは若狭三方五湖観光協会)。

 以上ここまで代表的な山桜の名所6選を紹介しました。そのほかにも地元民だけが知るような山桜の名所は多々ありますが、特徴のある山桜スポットをさらに24カ所ピックアップしてみました。

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ヤマザクラ各種の名所や自生地24選
名所や自生地など 桜の種類 例年開花時期 本数 特徴
二十間道路桜並木
北海道新ひだか町
エゾヤマザクラ 5月上~中 3000 幅20間(36m)直線道路の7kmにわたる桜並木。北海道で桜といえばエゾヤマザクラ(=オオヤマザクラ)
世界一の桜並木
青森県弘前市
オオヤマザクラ 4月下~5月上 6500 岩木山南麓の20kmの並木。桜並木としても最大級のもの。
戸赤の山桜
福島県下郷町
オオヤマザクラ 4月下~5月上 100 樹齢200年樹高30mの古木が100本近く自生している。
三株高原
福島県古殿町
ヤマザクラ 5月上~中 80 標高700m三株高原のヤマザクラの自然群生地。近くにキャンプ場もあり
日光街道
栃木県宇都宮市
ヤマザクラ 4月中~下 1500 国道119号線に16kmにわたり昭和26年に植栽された1500本
茶臼岳
栃木県那須町
タカネザクラ 5月下~6月中 ロープウェイ山頂駅より徒歩の日の出平(標高1700m付近)に珍しいタカネザクラの群生地がある
沓掛峠
茨城県大子町
ヤマザクラ 4月中~5月上 26 標高400mの峠にある樹齢130年ほどのヤマザクラの群落
竜ヶ峰桜並木
茨城県土浦市
ヤマザクラ 4月上~中 ヤマザクラの桜のトンネルと県立中央青年の家裏山の山桜自生地
群馬県立さくらの里
群馬県下仁田町
オオヤマザクラ、カスミザクラ、オオシマザクラ、他 4月中~5月上 5000 47haに45品種。ソメイヨシノやサトザクラのほか、各種ヤマザクラを見ることができる。
榛名高原ゆうすげの道
群馬県高崎市
ヤマザクラ 5月下~6月初 14 榛名高原の遊歩道にあるミヤマザクラ。たいへん珍しい
大島公園
東京都大島町
オオシマザクラ 3月下~4月上 オオシマザクラの原産地である伊豆大島。公園にオオシマザクラが多数植栽されているほか、特別天然記念物の噴火で生き残っている樹齢800年の「桜っ株」が有名
丹沢塔ノ岳
神奈川県秦野市
マメザクラ 4月下~5月上 丹沢山系の塔ノ岳~大倉尾根付近はマメザクラの自生地として有名。行くには登山装備が必要。
北小谷菖蒲平
長野県小谷村
オクチョウジザクラ 4月中 チョウジザクラの亜種のオクチョウジザクラの天然の群生地。
中綱湖
長野県大町市
オオヤマザクラ 4月下~5月上 100 仁科三湖のひとつ。濃いピンクのオオヤマザクラが湖面に映る美しい情景。
愛知海上(かいしょ)の森
愛知県瀬戸市
ヤマザクラ 4月中~下 多様性に富んだ里山。ハイキングコースのなかにヤマザクラコースがあり自然林の桜を満喫できる
庄川の江戸彼岸
富山県砺波市
エドヒガン 4月上~中 220 エドヒガンは本来太平洋があわだが鳥により運ばれできた自生地
霞間ケ渓(かまがたに)
岐阜県池田町
ヤマザクラ、オオヤマザクラ、エドヒガン、他 3月下~4月上 1500 江戸時代後期から続く名所、川沿いには近年ソメイヨシノも植えられているが、山肌に自生する山桜も人気
嵐山・保津峡
京都市右京区
ヤマザクラ、など 3月下~4月上 嵐山公園の桜は平安時代に吉野より移植されたものといわれ、対岸の亀山公園展望台がビューポイントになっている。奥の保津峡にも、自生する山桜が点在する。
武庫川渓谷・亦楽(えきらく)山荘桜の園
兵庫県宝塚市
ヤマザクラ、カスミザクラなど 4月上~中 1000 旧福知山線廃線跡に沿って広がる武庫川(むこがわ)渓谷にある40haの桜園。ソメイヨシノは一本もない。
妙見山
兵庫県川西市
エドヒガン、他 3月下~4月上 日本一の里山としてケーブルカーなどで気楽に自然を満喫できる妙見山は、めずらしいエドヒガンの野生群落地でもある。
立雲峡
兵庫県朝来市
ヤマザクラ 4月上~中 天空の城で有名な竹田城の向かい。樹齢300年の山桜を含む但馬吉野と呼ばれる
寒霞渓(かんかけい)~四方指
香川県小豆島町
ヤマザクラ 4月上~中 日本三大渓谷美と瀬戸内海とヤマザクラの織り成すコラボを、ロープウェイから満喫できる
えびの高原付近県道1号線
宮崎県えびの市
ヤマザクラ 3月下~4月上 3500 霧島連山の高原を走る県道1号線(旧霧島有料道路)沿いにはヤマザクラ自生木と植栽が混在している
名護城趾公園
沖縄県名護市
カンヒザクラ 1月下~2月上 3000 2kmのカンヒザクラの遊歩道。日本一早い桜として1月下旬に桜まつりも盛大に開かれる
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ヤマザクラとソメイヨシノの歴史

 ここまで、山桜の特徴や名所について説明してきましたが、もう一歩突っ込んで、山桜と染井吉野の歴史を通して、それぞれの違いについても見ておきましょう。

 奈良時代までは、花といえば「梅」のことを指し、宮中や寺社などにも梅が多く植えられていました。梅は中国では、お目出たい花の代表であり、その影響で日本でもナンバーワンの花木とされていました。一方で、もともと日本の山には山桜が自生していて、桜は神聖な花、浄化力がある花と考えられていました。万葉集では、梅についての歌が118首ありますが、桜も44首と以外に少なくありません。

 平安時代になると、桜が日本を代表する花として梅にとってかわります。嵯峨天皇の時代には、宮中の梅が桜に植え替えられたとの記録があります。もちろん、この時代で桜といえば山桜かその変異種である垂(しだれ)れ桜のこと。平安文学の「古今和歌集」「枕草子」「源氏物語」のなかでも、桜はとても重要なテーマとしてあつかわれ、日本の美意識を象徴するものになってきました。

 室町〜鎌倉時代になると武家文化のなかで「花は桜木、人は武士」として、桜花が潔く散るさまが美徳とされるような風潮が生まれます。一方で、仏教の文化や価値観が浸透し、桜の散る姿は「諸行無常」と重ねて考えられるようにもなります。

 江戸の元禄時代になると、それまで貴族や武家のものだった花見の習慣が、庶民にも浸透するようになります。江戸では、庶民が着飾って花見を楽しんでいた情景が記録に残されています。ちょうどこの頃から、桜の品種改良が盛んになり、山桜を交配して、里桜といわれるさまざまな品種が生み出されました。その園芸品種の数は400種類にものぼったと言われています。

 そうした品種改良ブームのなか、江戸末期に、ソメイヨシノが誕生ます。葉よりも先に大きな花が満開になるダイナミックさが人気を博します。ちなみに染井吉野の名前の由来は、江戸の染井村で作られたことと、吉野山の吉野にあやかって名付けられたとの説が有力です。まぎわらわしいですが、吉野山の桜はすべて山桜で、ソメイヨシノのと吉野山は無関係です。

 さて、ソメイヨシノはそのダイナミックな美しさで全国に広がっていきますが、実は、明治以後の日本の政府が、意図的にソメイヨシノの植栽を全国に押し広げてきた歴に注目しておきましょう。政府の後押しもあって、日本全国の各地の山桜や里桜がソメイヨシノに植え替られました。

 ソメイヨシノが一斉に咲いて一斉に散る様と、武士の潔さのイメージを、富国強兵のプロパガンダに利用していたわけです。そうした理由から、サクラは軍関係のさまざまな紋章として使われてきました。「日本人なら桜のように潔く散るべし」そんな価値感を浸透させるために、ソメイヨシノが利用されていたのです。

 日本軍が第二次大戦末期に作った、爆弾を誘導しながら敵艦に突っ込む特攻専用のグライダーの名前は、「桜花」と言います。まさに、そこに桜が戦争利用された歴史をみてとることができます。

 戦後は、豊かな経済成長のなかで、桜の花の下で宴会をするスタイルのお花見が隆盛を究めます。会社単位で花見が行われることが多く、花見の席は会社中心の日本社会の縮図とされました。

 近年は、お花見のドンチャン騒ぎを会社単位でする風潮は、だいぶすたれてきました。一方で、個人個人が思い思いのスタイルで花見を楽しむなかで、山桜が見直されてきています。

 クローンという性質上、同じ地域では一斉に咲いて一斉に散るソメイヨシノ。それに対して個体差のはげしい山桜。それぞれ別の美しさがありますが、個性を重視する時代の流れのなかで、明治以来ソメイヨシノ一辺倒だった流れが変わりつつあります。近年では、ソメイヨシノを山桜に植え替えるところも増えてきました。

 山桜の復権は、桜といえば染井吉野という画一的な価値観の時代が、確実に終わっていることを象徴しているのです。

 

 

 以上、山桜の品種、名所、その歴史について見てきました。

 この春は、ソメイヨシノだけでなく、山桜に要注目ですね。

なお、早春の花木については、こちらの記事⇒『花梅の種類と実梅との違い』⇒『花桃の名所とその特徴』の記事も参照してください

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