月の土地が買えるってホント? 米国が進めている月の所有権主張とは?

      2018/06/17

月の土地

月の土地が買える、って知ってますか? えぇ?まさかと思うでしょうが、「一応」買えるのです。

もっとも、とりあえず買えることは事実なのですが、ほんとうに所有権が認められるのでしょうか?という話になると、どうよ?ってことを検証していきたいと思います。

 でも、その前に、そもそも、月は誰のものなのでしょうか? もうアメリカやロシアが占領しちゃってるのでしょうか?

 月の土地の、夢と現実について、ひもといていきましょう。

月の土地をプレゼントされたら…?

 月の土地は、地球圏外不動産を扱う会社から販売されています。

 現在の法律では、月の土地の個人所有については、規定がないこことに目をつけた米国の企業家がはじめたサービスです。

 月の土地の所有権を得られるなんて、とてもロマンチックですね…。なので、ちょっとおサプライズなプレゼントとして秘かに人気があるようです。

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 しかし、ほんとうに、個人が早い者勝ちで月の土地の所有権を主張しても、たとえば月開発が実際に進んで、人類が頻繁に月面に行くようになった場合に、その権利は有効なのでしょうか?

 

月は、誰のものなのか? 月の土地が買える理由

 そもそも、宇宙は、どこかの国の領土になるのでしょうか? 

 やっぱりアメリカなんでしょうか? なにしろ月の上を歩いたことがあるのはアメリカ人ばっかりですからね。(⇒「月へ行った人の人数は?」の記事を参照)

 しかし、実際は、どこの国のものでもありません。

「宇宙はどの国にも属さない」という「宇宙条約」(宇宙憲章)が1967年に国連で採決されています。宇宙条約では、宇宙の平和利用のほか、宇宙で各国が領有を主張したりしないように定められているのです。

 この条約は多くの国が批准していますので、月の土地も、「どの国にも属さない」ということになっています。南極地域における領土主権、請求権の凍結を凍結した「南極条約」と、同じような扱いだということです。

 1979年には、宇宙条約をさらに突っ込んだかたちで、月協定(月その他の天体における国家活動を律する協定)が国連に提案されました。

 この条約では「月の表面や地下、天然資源は、いかなる国家・機関・団体・個人にも所有されない」と定められいます。

 つまり、この条約に従えば、月の土地の個人所有は禁止されています。

 では、なぜ、月の土地の権利書をプレゼントするサービスが成り立つのでしょうか?

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 実は、この月協定は、批准している国が宇宙開発を行っていない13カ国のみで、宇宙開発を手がけている国をはじめとする多くの国が批准していないため、事実上、機能していない条約なのです。

月の権利を狙う水面下の動きがはじまっている…?

 さらに、アメリカは、近年、積極的に、宇宙の資源の企業による営利利用を推進していく方向に向かっています。

 2015年米国議会で成立した「2015年宇宙法」では、小惑星の資源としての商業利用を認めることが銘記されたのです。

 小惑星は太陽系の軌道に9000個があり、なかには、地球全土で採掘されたプラチナの合計量が、ひとつの小惑星から採取できる可能性などがあり、未来のビジネスとして期待されているのです

 さて、月の資源も、小惑星同様、実は、近年注目されてきていて、その所有を巡る権利主張が水面下ではじまっていると言われています。

 NASAは2012年に「月面史跡保護ガイドライン」なるものを発表しました。

 このガイドラインは、「これまでの月面着陸地点や、人類が探査などで月面に残した遺構などの、周辺地域と上空を立ち入り禁止にする。」というものです。

 このガイドラインは、開催中の月面探査機レースでも尊重されることになり、実行力をもったガイドラインとして存在感を増してきています。
(開催中の月面レースに関する記事は詳細はこちら⇒「グーグルがスポンサーの月面車レースとは」

 このガイドラインは、人類の偉大な遺構をきちんと保存しよう、という文化的な趣旨で作られたガイドラインですが、事実上、月の土地を早いもの勝ちで占有できる根拠を与えるものでもあります。

 米国がこのガイドラインを理由に月の土地や資源の所有権を主張してくるかどうか?は未知数です。

 しかし、いずれにせよ、各国が「1979年の月協定」を批准していなということは、月に所有権を主張したいという意向のあらわれに他なりません。

 月の土地や資源の所有権は、水面下で各国が狙っているのが、事実なのです。

 

 月は、現状では誰のものでもありませんが、そうはいっても「人類共通の財産」と考えているわけではなく、権利や資源を、各国が秘かに狙っている状況だと見て取れます。

 もし、「NASAの月面史跡保護ガイドライン」がより強化されて、唯一人類を送り込んだ米国が月の権利を主張しはじめれば、逆に、米国企業が提供している「月の土地ギフト」も、効力を発揮してくるかもしれませんね。

 いずれにせよ、美しい月を眺めながら、「月の土地を所有する」というささやかな夢を楽しんでみるのも、一興かもしれませんね。

 
 

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