ビタミンDで免疫力がアップする仕組み。花粉症やインフル対策にも。
2017/06/16
ビタミンDは「サンシャインビタミン」と呼ばれ、日光浴をすると増えるビタミンとして知られています。
ビタミンDは、近年、とても重要な栄養素として、再注目されています。ビタミンDは、免疫の調整役として、インフルエンザなどの感染症や花粉症などの免疫異常の改善につながることが、わかってきたのです。
一方で、紫外線を嫌う風潮から、太陽光線にあたる機会が減り、ビタミンDが不足しがちな傾向にある人も増えています。
この記事では、ビタミンD・日光浴・免疫の3つの関係を強化することで、感染症やアレルギーなどに負けない体を作るコツについて探っていきたいと思います。
ビタミンDは現代日本人には不足気味?
ビタミンDが「サンシャイン・ビタミン」と言われる理由
ビタミンDは魚やキノコ類に含まれるビタミンですが、皮膚が紫外線を浴びることでも生成されます。
ほんらいビタミンの定義は「ビタミンは体で合成されないもの」となるのですが、ビタミンDは例外的に、皮膚で合成されるけれども、ビタミンに分類されています。ただし、皮膚での合成だけでは不十分で、積極的に食品からとらないと不足してしまいます。
ビタミンDは、カルシウムの吸収を助け、体内のカルシウム・バランスをとるとても重要な役割があることから、必須のビタミンと位置付けられてきました。
とくに、ビタミンDは欧米では「サンシャインビタミン」と言われ、むかしから、不足しがちな栄養素として意識されてきました。
欧米は緯度が高く冬の日照時間が少ないため、ビタミンD不足になりがちです。ビタミンDが不足するとカルシムの吸収が悪くなり、骨粗しょう症など骨の病気が増えてきます。
ですから、欧米ではビタミンDを添加した牛乳がスタンダードになり、ビタミンDを補給するサプリメントなども盛んに用いられれているのです。
日本人にはビタミンD不足は無いはずが・・・
一方、日本の気候では、欧米ほど日照不足を心配する必要はなく、伝統的にビタミンDが豊富な食生活スタイルだったので、ビタミンD不足を心配する必要はありませんでした。
ビタミンDは、イワシ、サバ、ブリ、サンマ、サケ、カジキ、ウナギ、イクラなどの魚類や、きくらげ、しいたけ、まいたけなどキノコ類に豊富に含まれています。これらの食材はまさに定番の和食のおかずですよね。
たとえば、カルシウムが豊富な小松菜を、おひたしにしてシラスをまぶしたり、しいたけとあわせて煮浸しにするなど、カルシウムとビタミンDをセットで摂れる献立なども、自然にできあがったいたのです。
ところが、近年の食文化の西洋化と、紫外線を避ける風潮から、日本人でもビタミンD不足が懸念されてきています。
ビタミンDのはたらき
近年、日本でも心配されているビタミンD不足は、カルシウム不足以外にも、さまざまな障害をもたらすのではないか?と懸念されています。たとえば、花粉症なども、ビタミンDの不足が原因だという説もあるわけです。
ビタミンDの働きは広範囲にわたっていて、総合的な必須栄養素としての役割が重要視されはじめているのだけに、ビタミンD不足の問題は、軽視できなくなっています。
ビタミンDにはどんな働きがあるのかをあらためて確認してみましょう。
ビタミンDは、体内のカルシウムの調整役
食品から得たり、皮膚で生成されたビタミンDは、肝臓から腎臓を通って、活性型ビタミンD(カルシトリオール)となり、血液中に供給されます。
活性型ビタミンDは、カルシウムの腸からの吸収を高め、腎臓からのカルシウムの流出を防ぐことで、体内のカルシウムが不足しないように調整する重要な役割をしています。
また、骨から血液へのカルシム移動を高めることで、骨内のカルシウム交換を盛んにして、結果、骨を丈夫にしています。
また、ビタミンDには筋肉を増強する力もありますので、高齢者の骨粗鬆症と転倒予防対策にビタミンDが活用されています。
免疫調整ホルモンとしてのビタミンD
ビタミンDはカルシウムの吸収や働きを助ける必須栄養素として位置付けられてきましたが、近年の研究では、ビタミンDはという栄養素のひとつと考えるよりも、むしろホルモンに近い、広範囲にわたる働きをすものとして重要視されています。
つまり 「ビタミンDは免疫調整ホルモン」なのです。
ビタミンDと免疫の関係については、次のようなことがわかってきています。
・抗菌ペプチドの生成に必須…細菌やウイルスへの抵抗力
・好中球,単球,T 細胞などの免疫細胞の活性化
・良好な腸内環境を整える。悪玉菌の抑制。
・細胞の増殖抑制を活性化…細胞の自然死(アポトーシス)を促しガンを抑制する
なかでも、抗菌ペプチドは、皮膚の上皮や口の粘膜のなかで作られる物質で、細菌だけではなくウイルスにも効果がある抗菌物質です。
免疫システムの第一関門として、細菌やウイルスに対抗すうる抗菌ペプチドの生成に、ビタミンDが不可欠であることが、わかってきています。
このことから、ビタミンDがインフルエンザ予防に効果があると考えられるわけです。実際、インフルエンザの発生数と血液中の活性ビタミンDの量には相関関係があるとするデーターもあります。
ビタミンDの摂取や、適度な日光浴がインフルエンザや風邪の予防に効果があることは、科学的にも証明されていると言ってよいでしょう。
まだまだあるビタミンDのはたらき
ビタミンDはカルシウムの調整、抗菌ペプチド生成へのかかわりなどの他にもさまざまな働きをしているといわれています。
というのも、ビタミンDを受けいれるための受容体が、腸や骨はもちろんのこと、脳、心臓、腎臓、甲状腺、生殖腺、など体中の機関に備わっているからです。
それぞれの臓器での働きは、まだまだこれからの研究になってきますが、ビタミンDは栄養素というよりも「ホルモン」として、総合的に体のなかで活躍していることは間違いなさそうです。
たとえば、血圧調整能力があることから循環器疾患との関係、また、セロトニンやドーパミンの放出を促すことからうつ病などの関係などがありそうだということが、研究されています。
ビタミンDで花粉症はなおるか?
また、ビタミンDの効果として、花粉症に効くのではないか?ということが、最近言われてきています。
ビタミンDの接種で花粉症が治ったという事例があることや、野外で日頃活動している人には花粉症が少ないというデータなどがあるようです。そのことから、ビタミンDがなんらかのかたちで免疫反応の調整にかかわっている可能性が高いことから、そのように言われているようですね。
現時点ではまだ効果が証明された段階ではなさそうですが、少なくとも、ビタミンDも含めて総合的に免疫力を高めることで、花粉症を抑えることはできるはずです。
このように、ビタミンDは、カルシウムだけでなく、免疫系や循環器や自律神経など広範囲に活躍しています。ビタミンDは、総合的に体のバランスを整える重要な要素なのです。ですから、ビタミンDを不足させないために、魚やキノコ類を定期的にとる食習慣や、紫外線を極端に避けない生活習慣の大切さを、あらためて考えてみる必要がありあそうです。
日光浴が総合的に免疫力を高める
ビタミンD生成に必要な日光浴の時間は?
ビタミンDの合成には、紫外線が必要ですが、どれくらいの時間の日光浴が必要なのでしょうか?
紫外線といっても、日焼けするほどの量は必要ではないので、日焼け防止とビタミンD合成のための日光浴は両立できるものです。
手の甲を約15分日光に当てたり、夏場なら日陰で約30分過ごすだけで皮膚でのビタミンD合成は、きちんと行えるようです。
また、最近の家屋の窓ガラスは、紫外線のB波とよばれる波長をカットするもの多いため、屋外の日光のほうが、確実にビタミンDを生成させます。
日光浴が大事なのは総合的な免疫力アップのため
さて、日光浴はビタミンDとの関係で語られることも多いですが、実は、日光浴は本質的に健康にかかわってる、とても大事なことです。
たとえば、やる気や食欲のもとであるセロトンニンの分泌にも太陽が必要ですし、眠りのリズムをコントロールするのにも太陽光線のじゅうぶんな光は不可欠です。太陽光線により自律神経のバランスが整えられているわけですね。その結果、免疫力が強化につながります。
また、各細胞の活動をつかさどるミトコンドリアの働きも、太陽光線を浴びることで間接的に活性化します。
ミトコンドリアの働きが正常であれば、体内の代謝が順調に行われ、適切な体温が保たれて、その結果、免疫力が高まります。
このように、太陽光線を浴びることは、ビタミンD生成だけなく、自律神経や代謝など本質的な体の動きに深くかかわってきます。
こうしてみると、「日光」との付き合い方を、いまいちど見直す必要があるかもしれませんね。
たとえば、過度なUVカット対策だけをして、それを補完するためにビタミンDサプリを飲むという流れは、「日光浴」の本質的な部分を見失ってしまっているような感じがします。
紫外線対策ももちろん大切なのですが、紫外線を含む日光にあたることが、総合的な免疫力を高めるベースになっていることも、もう一度見直してみるべきだと思います。
以上、ビタミンDの働きと、日光浴と免疫力の関係についてみてきました。
魚や茸などの食品からビタミンDを補充すること、過度な紫外線カットを避けて適度に日光にあたること・・・それによって結果として、総合的に免疫力が高まってくることが、おわかりいただけたと思います。
サプリメントなどでビタミンDを補充するというよりは、食生活を伝統的な和食中心に切り替え、適度に日光にあたることで、インフルエンザや花粉症に負けない体を作っていきましょう。