スノーシュー初めてガイド。靴や服装や安全面で知っておくべきこと。
2017/09/29
スノーシューは誰でも雪の上を、気軽に歩き回れるウィンターギアです。一度やったらやめられない!とスノーシューの魅力に取りつかれる人が急増中です。
スキーやスノボはちょっと苦手という人でも、ウィンター・リゾートをぞんぶんに楽しめるメニューとしてスノーシューはもってこいです。また、雪の高原や稜線を歩き冬の大自然と向き合う本格的なスノー・トレッキング・ギアとしても、スノーシューはその威力を発揮します。
この記事では、人気が拡大中のスノーシューを、安全に楽しむための基礎知識について述べていきます。スノーシューの歩き方のコツ、靴や服装、注意点などについて、ぜひ参考にしてください。なお、スノーシューをこれから買おうという人は⇒スノーシューの選び方の記事も参照してください。
急速に広まったレジャーとしてのスノーシ
まず、スノーシューって何?ってことを確認しておきましょう。
最近、よくみかけるようになってきたカラフルでスタイリッシュなアルミやプラスチック製のスノーシュー。その歴史は、実は、案外、新しいんです。
スノーシューそのものは、世界各地の雪国では、古くより伝統的に使われてきた道具です。フカフカの新雪の上を、自由に歩き回るために、圧力を分散させて雪に沈まないようにする大きいゾウリ型の雪靴です。
日本では「かんじき」が伝統ですが、かんじきは足全体にくくりつけるのに対して、スノーシューは、ちょうどスリッパをひっかけるような感じで、かかとがフリーになっているのが特徴です。
スノーシューはもともと、木で長円形の枠を作り、その中に皮や木などを編んで作られていましたが、1980年代に、アルミやプラスチック製のスノーシューが作られるようになりました。
アルミやプラスチック製のスノーシューが登場したことで、
日本でも、トレッキングブームとあいまって、冬のスノーシューハイクやトレッキングが年々盛んになっています。もはや、「スノーシュー」というひとつのジャンルになりつつあるわけです。
【スノーハイクin長和町】美ヶ原コース 2月6日(土)はおかげさまで定員に達しました!早々のお申込、ありがとうございます♪
3月19日(土)もあと10名で定員となります!#スノーハイク #美ヶ原 #スノーシュー pic.twitter.com/llPV5reZrB— 信州・長和町観光協会 (@nagawa_info) 2016年1月18日
スノーシューイングのスタイル
スノーシューを使ったレジャーやスポーツのことを「スノーシューイング」と呼びます。
スノーシューイングのスタイルとしては、
●1スノーシュー・ハイク
●2スノーシュー・トレッキング(バックカントリー・スノーシューイング)
●3スノーシュー・ランニング
の3つに分類されます。
スノーシューハイク(スノーハイク)とスノーシュートレッキング(スノートレッキング)の定義は一般的には曖昧で、あまり区別されませんが、この記事では、便宜上、ハイクとトレキッングに分けて、スノーシューの楽しみ方を探っていきます。
1スノーシューハイク
スノーシューハイクは、スキー場やウィンターリゾートの施設内や、街の公園など、平坦な雪原の上で、雪の上歩きを気軽に楽しむものです。ウィンターリゾート地では、スノーシューをレンタルして未経験者でも子供でもすぐに参加できる気軽なスノーシュー・ハイク・ツアーができるところが増えてきています。
ふかふかの誰も歩いていない新雪の上を歩き回ったり、動物たちの足跡を追いかけるアニマルトラッキングを楽しんだり、雪のなかでのコーヒーブレイクを楽しんだり、誰でも気軽に雪に親しむことができます。
はじめての人は、どこまでも続く真っ白な雪原に立つ経験は、人生観をかえるほど、ともいわれています。
基本的にガイドに連れていってもらうメニューになります。ツアーの趣旨やガイドの得意分野によって、
2バックカントリー・スノーシューイング
バックカントリー・スノーシューイングはスノーシューで行くトレッキングです。
バックカントリーとはスキー場などの人工的な環境ではなく自然状態の雪山のこと。
本格的な雪山登山ほどはハードではなく、それでいてしっかりと冬山の自然を満喫できるのがスノートレッキングというスタイルです。冬山といえば、熟練者以外を寄せ付けない世界だったのが、スノーシューの普及で、冬山が一気に身近になったのです。
スノーシュートレッキングでは、ロープウェイやスキー場のリフトなどを利用して山頂付近まで登り、そこから、比較的アップダウンの少ない尾根歩きを楽しむコースが多いです。
トレッキングとは言え1500m級の冬の山に入ることには違いないので、決してあなどれません。
スノーシューは気軽にどこまでも歩いて行ってしまえるだけに、雪山についての知識がないと、いとも簡単に遭難してしまいます。初心者・入門者だけでのスノーシュートレッキングは論外。初心者・入門者はツアーに参加するか、経験者同伴で行くようにしましょう。
経験を重ねるなかで、GPSや地図の読み方に熟練し、天候の急変などに備えた対応や、緊急時にビバークする知識や装備の扱いを習得して、自分の力でスノーシュートレッキングができるようになるのを、目指すのも良いと思います。
3スノーシュー・ランニング
スノーシュー・ランニングはトレイルランニングの冬バージョンです。「雪上トレラン」として、人気拡大中です。
この場合は、ランニングモデルのスノーシューを使い、ストックは使わずに走り、速さを競います。
まだあまり知られていないことですが、実は、「日本スノーシューイング連盟」の主催で、毎年スノーシューイング・グランプリ・シリーズが開催されています。
2017年の開催日程は以下です。
第1戦【白山大会】2017年2月4日~5日
第2戦【妙高大会】2017年2月18日~19日
第3戦【日光大会】2017年3月11日~12日
スノーシュー・ランニングの競技は、世界的に広がっていていています。国際アマチュア・スノーシュー競技連盟を中心に、世界大会も開かれています。日本から代表選手も世界大会に参加しています。もちろん、冬季オリンピックの新競技種目になるよう、関係者は目指しています。
オールマイティーな雪上ギア・スノーシューの機能性
それでは次に、スノーシューとは、どういうウインターギアなのか? その機能性についてみてみましょう。日本の伝統的な雪歩き道具であるかんじき(ワカン)と比較しながら、スノーシューの特徴を整理していきます。
スノーシューは埋もれにくい
まず、ワカンよりもスノーシューの方が、面積が広いです。そのため、スノーシューの方が、雪に埋もれにくく、ほぼどんなところでも歩いていけます。
スノーシューはかかとがフリー
また、ワカンは足全体にくくりつけますが、スノーシューはかかとが浮く構造になっています。この機能のおかげで重量はスノーシューがワカンよりも重いですが、歩きやすくなっています。
スノーシューはオールマイティー
スノーシューはクランボンと呼ばれる爪がついて、ある程度の滑り止めがあります。わかんで滑り止めが必要な場合はアイゼンと組み合わせて使います。ワカン+アイゼンの方が、より本格的な道具ですが、より使いやすくオールマイティーに使えるように考えられているのがスノーシューです。
スノーシューは勾配(坂道)に弱い?
スノーシューの弱点は坂です。
急な坂を上り下りする場合は、ワカンやワカン+アイゼンの方がはるかに合理的です。
ですので登りが多い本格的な登山の場合は、スノーシューは使いません。
スノーシューのトレッキングは、尾根歩きなど比較的アップタウンが少ないコースに限られます。
それでも部分的に、急坂を登る降りする場合があります。
スノーシューの弱点を補うために、スノーシューには工夫がされています。
まず登りの場合。登りはスノーシューのつま先を雪に突き刺すように登っていきます。その際浮き上がったかかとをホールドするサポート機能がついたスノーシューもあります。
下りの場合、スノーシューは縦に長いために、斜め横に降りながらジググザクに進んでいきます。その際、スノーシューは斜面に対して横向きになりますが、横滑りを防止するために、スノーシューの外枠(フレーム)にも滑り止め構造(トラクションディバイス)が設けられています。
このように、スノーシューはオールマイティーに使えるように、細かい技術が駆使された道具なのですね。
スノーシューの靴や服装は?
スノーシューは、専門メーカーのしっかりしたものは2万円〜4万円ほどで、決してお安くはありません(⇒スノーシューの選び方の記事を参照)。
なので、入門者はまず、ツアーなどに参加して、レンタルで体験してみるのがよいでしょう。
ただ、レンタルでスノーシューをやる場合でも、悩むのが、靴や服装はどうするの? ということですよね。
そこで、スノーシューイングで必要な靴と服装について、ガイドをしていきましょう。
スノーシューと相性の良いブーツは?
スノーシューは靴に止める機能(=バインディング)がフリーサイズになっています。
ですので、スノーブーツやトレッキングシューズをはじめ、スノーボードのブーツから長靴まで、ほとんどの雪靴はスノーシューに装着可能です。
スノーシュー自体に22インチとか25インチのサイズがありますが、これは靴のサイズではありません。スノーシューのサイズは、雪に対する浮力に比例してますので、体重や荷物の重さに応じてチョイスするものです。
ですから、靴はどんなサイズでもスノーシューは装着できます。ただし、スノーシューによっては男性用と女性用の区別があるものがあり、女性用は靴幅が狭いことを想定されて設計されているものもあります。
さて、ブーツの種類ですが、スノーハイクで楽しむのであれば、スノーブーツや長靴など防水型のブーツであれば、だいたい問題ありません。
ただ、アップタウンを含む長距離を歩く場合は、ウールラックスのような柔らかいブーツは避けましょう。スノーブーツはバンドで固定するので、ブーツが柔らかいとずれたり食い込んだりして、スノーブーツの種類によっては、スノーシューとの相性が悪くなってしまいます。
また、長時間のハイクになる場合は、足が冷えてしまうこともあります。保温のために登山用の靴下に保温用インソールを併用するのがおすすめです。その場合、ブーツや長靴のサイズは、大きめのものを用意してください。
バックカントリーのスノーシューハイキングの場合は、ゴアテックスなど防水性の高いトレッキングシューズがベストです。
夏用に使っている履きなれたレッキングシューズで構いません。ゴアテックスなどの素材のトレッキングシューズであれば、原則、さらさらした粉雪は撥じきます。
ただ、雪が激しく湿っている場合などで靴下に染みてしまうことが無いとはいえないので、替えの靴下は必須です。
スノーシューの服装。アウターやインナーは?
次は、スノーシュー時の服装について。
まずは、アウターですが、防水透湿性のレインウェアやソフトシェルが最適です。
体験スノーシューツアーであれば、簡単のレインウェアや手持ちのスキーウェアやスノボウェアなどもいいのですが、スノーシューはスキーやスノボよりも汗をかきます。なので、スキー・スノボウエアでは蒸れがちになります。なので、透湿性能の高いものが必要になってきます。
長距離のハイクの場合なら、汗をかくことを前提に、重ね着で温度調整をします。ですので、スキー・スノボウエアを着る場合は脱着がしやすいものを選びましょう。
バックカントリーのスノートレッキングであれば、やはりゴアテックス素材のレインウェアにかなうものなしです。
バックカントリーのスノートレッキングは「雪山登山の一種」として捉えておくべきです。ただ、雪山だからといって、雪山専用のアウターであるハードシェルまでは必要ないでしょう。スノーシューでいける範囲のところであれば、防水透湿性の登山用のレインウェアやソフトシェルで充分、ということですね。
次にインナーです。
スノーシューに限らずウィンターアウトドアの特徴として、外は寒いけど、中は汗かくというのあがあります。が、スノーシューは特に汗をかきやすいです。
ですので、インナーには吸汗速乾性の素材のものを着るようにしましょう。濡れやすく乾きにくい綿製品は避けましょう。
ミドルレイヤーにはフリースや薄手のダウン、インシュレーションなどを用意して、重ね着で温度を調整できるようにします。
ただの体験であれば、ありあわせのウェアでかまいませんが、トレッキングやバックカントリーなど、長期距離のスノーシューハイクに出かけるなら、登山ウェアについてのしっかりとした知識を身につけておく必要があります。必ず、⇒「防寒着の選び方」、⇒「マウンテンパーカーの選び方」の記事に目を通して、冬のアウトドアウェアの基礎知識を身につけてください。
スノーシュー時に忘れてはいけない小物類
手袋はスキー用などの雪用のグローブであれば大丈夫です。暴風・防寒・防水のものであれば問題はありませんが、スノーシューイングではストックを常に両手にもっていますので、グリップ性の良いものにしましょう。
透水性のある軍手はもちろんNGです。
帽子は、必ず耳までカバーできるものを。
マフラーなど首をガードするものもあればベターです。
まぶしい雪から目を保護するゴーグルとサングラスも、とくに、バックカントリーで尾根を歩く場合などは必須となります。
ゲイターやスパッツと呼ばれる、靴に雪が入らないカバーをできれば用意したいところです。
スノーシューは慣れないうちはとくに、後ろで雪を自分の方に跳ねたりしますので、とくにブーツに雪がかかりやすいです。
アウターのボトムスには「インナースパッツ」がついているものありますが、雪を防ぐには、レインウエアの上からつけるゲイターやスパッツがいちばんです。
体験スノーシューなど短時間のものであれば、なくてもなんとかなりますが、本格的なスノーシュートレッキングであれば、天候の変化に対応する意味でも用意をしておきましょう。
これだけはおさえておきたいスノーシューイングの注意点
スノーシューは誰でも簡単にできる、とくに技術を必要としないウインターギアです。
ただし、あまりなめてかかると思わぬトラブルのもと。
また、ガイドなしで独自でバックカントリーをトレッキングする場合は、「雪山登山」と一緒ですので「遭難」のリスクがあることを念頭において行動しましょう。
以下に、スノーシューでこれだけは気をつけておきたいポイントについ整理しておきましょう。
スノーシューの歩き方と注意点とリスク管理
スノーシューは重量が軽く作られているとはいえ、片足で900g前後あり、決して軽いものではありません。
しっかりとバインディングで固定されているので、それほど心配はないのですが、ねんざの危険性がある、ということは頭に入れておきましょう。
とくに価格帯の低いスノーシュー製品を使っていると、ブーツとの相性によっては、バインディングが緩んでしまうことがあり、その場合は、思わぬ「ねんざ」につながることも。
ですので、足首のストレッチの準備運動はマストだと考えてください。
また、忘れがちな手首のねんざ。雪上のストックは思わぬところでスポッと雪にもぐったりして、手首に負担がかかることも。手首のストレッチもあわせて、しっかり行いましょう。
スノーシューは慣れないうちは、反対の足のスノーシューを踏んてしまうことがあります。
なので、肩幅程度に軽く股を開いて歩くようにします。
また、必要以上に足をあげると、重さで体力を消耗してしまいます。スリッパをつっかけるような感じで、うしろをひきずるようにして動かせば、後ろがスッとすべるような感じになり、無駄な力が入らずリズミカルに歩けます。
さて、スノーシューで歩くときの最大の難関は、下り坂でしょう。
斜めにジグザグに下りていきますが、その際、山側の足を進行方向に向け、谷川の足を谷川へ開くようにします。
これは慣れが必要で、雪の深さや質によっては、逆に向けたほうがいい場合もあるのですが、とにかく、片方の足は進行方向に向かって平行、もう片方は角度をつけて開くことで安定します。
また、からだの重心はつまさきか土ふまずあたりに置くようにしましょう。
怖がって腰が引けて、いわゆるへっぴり腰になると、かかとに重心がかかり後ろに転倒するリスクがあります。
スノーシューをやる場合、雪が少なくとも数十センチ、多い場合はメートル単位で積もっています。
積もった雪の上を歩いているわけですから、いえば、空中を歩いているようなもの。その感覚がまた、たまらないのですが、同時に注意が必要です。
ツアーなどでは、ラッセルされた踏み跡を進んでいくことが多いですが、スノーシューの本来の醍醐味は、新雪のうえに、ウサギやカモシカなど野生動物のように自分がはじめての足跡をつけていくこと。
コースから外れて歩くことこそが、スノーシューの醍醐味ともいえるわけです。
しかし、雪の下がどうなっているか、ある程度地形を見ながら、とくに、川や沼などの近くでは、事前に地図で川や沼の位置をしっかり把握しておくことが大事です。
また、水がにんじんでいたりする怪しい雪面のところは、とにかく避けて、慎重に歩んでいくことを忘れないようにしましょう。
また、スノーシューは、凍結した雪面には、原則対応していないことも、しっかり頭にいれておきましょう。
スノーシューのクランボンは凍結している雪にささる鋭利さはありません。凍結している場合はアイゼンが必要になってきます。
基本的にスノーシューハイクのコースでは、凍結が予想されるところまでは行かないのが前提です。万が一、凍結している場所があれば、無理にその上をあるかず、迂回していくことが大事です。
また、植物の新芽などが、すぐ雪の下に埋まっている場合もあります。春の訪れをじっと待っている自然を傷つけないような、気遣いを忘れないようにしましょう。
スノーシューでトレッキングを行う場合は、いくら標高が低くても、「雪山登山」であることを忘れてはいけません。
天候が急変することも、雪崩が起きたりやホワイトアウトになることも、充分あり得ることだという認識をもちましょう。
ですので、ガイドツアーではなく、独自にスノーシュートレッキングに出かける場合は、雪山の天候に関する知識や判断力、地図の見方やGPSの扱いなどは不可欠になります。
スキー場からエントリーする場合などは、登山計画書の入山届けはマストになってきますし、遭難保険に入っておくことも必要です。
コースにもよりますが、最低限の非常食やビバークできる装備と知識も必要です。そのことを充分に理解したうえでスノーシュー・トレッキングに臨んでください。
とくに、ガイドツアーなどに参加しない場合は、すべてが自己責任ですので、とにかくスノーシューだからといって甘く見ないことです。
以上、スノーシューの魅力や、装備やリスクなどの基礎知識についてみてきました。
とにかくはじめての場合は、スキー場でのスノーハイクであれ、バックカントリーのトレッキングであれ、まず、ガイド付きのツアーに参加してみることをおすすめします。まずはスノーシューもレンタルして使ってみてから、マイ・スノーシューを買えばよいと思います。スノーシューの選び方は⇒スノーシューの選び方と6大メーカーの特徴の記事を参照してください。
スノーシューは手軽で魅力的な道具だけに、ついつい夢中になります。しかし、リスクととなりあわせであることをしっかりと意識しましょう。
かといって、怖がってばかりでもしょうがないので、安全な場所と気候を選んで、スノーシューで繰り出してみましょう。
そこでしか味わえない美しい世界が、あなたを待っていますよ!