蓮粉で作る蓮子餅は涼菓の新定番。蓮粉と蓮根パウダーの違いは?
2017/10/29

蓮粉(はすこ)は、レンコンからとれるデンプン粉です。
デンプン粉といえば、片栗粉、葛(くず)粉、わらび粉、コンスターチなどがポピューラーです。蓮粉は、知る人ぞ知るマイナーなデンプン粉ですが、とても良質な澱粉で、主に「蓮根餅」などの和菓子の素材として使われています。
また一方で、健康食品として「れんこんパウダー」が有名です。レンコンパウダーは料理に混ぜたり、「れんこん湯」にして飲めば、風邪や花粉症にも効果があると言われています。
ところで「蓮粉」と「れんこんパウダー」は、同じものなのでしょうか・・・? この記事では、その疑問に答えるとともに、蓮粉についての基礎知識、さらに澱粉の性質、レンコンの栄養素などについても見ていきたいと思います。
蓮粉vs蓮根パウダー
どこが違う? 蓮粉と蓮根パウダー
蓮粉(はすこ)とれんこんパウダーは、どちらも蓮根100%の粉末ですが、あくまで別のものです。まず、その違いを整理しておきましょう。
蓮粉は、蓮根から、でんぷんを抽出し精製したデンプン粉です。
片栗粉はじゃがいも、コンスターチはとうもろこし、など、デンプン粉にはいろいろな原料があり、一口にデンプン粉と言っても、原料によって、性質が微妙に異なってくるのです。
レンコンから作られるデンプン粉=蓮粉は、主に和菓子の材料として使われます。
一方で、健康食品として古くから親しまれているものに「蓮根パウダーが」あります。風邪の予防や咳止めとして蓮根パウダーをお湯に溶かして飲む「蓮根湯」が、民間療法として古くから伝えられています。
最近は、いろいろな料理に「蓮根パウダー」をかけたり混ぜたりして健康作りに役立ている人も多いです。蓮根パウダーを練りこんだ「蓮根麺」なんかもありますね。
この「蓮根パウダーは」、蓮根をまるごと細かく砕いで乾燥させたものです。
・蓮粉・・・蓮根から抽出したデンプン粉
・蓮根パウダー・・・蓮根を丸ごと粉砕し、乾燥したもの
蓮粉は精製したデンプン、蓮根パウダーはれんこん丸ごとの粉、という違いがあります。
この違いは、案外大きいので、しっかり押さえておきましょう。
蓮粉と蓮根パウダーで栄養価が高いのはどちら?
れんこんには豊富なビタミンC、植物では珍しいビタミンB12、ポリフェノールのタンニン、水溶性食物繊維のムチンなど、注目すべき栄養素がたくさん含まれています。
れんこんパウダーは、蓮根まるごと皮のままを粉砕して乾燥させたものなので、栄養素もそのままたっぷり摂取できます。
一方で、蓮粉は、あくまで澱粉をとるために精製したものです。澱粉抽出の過程で、水にさらしたりしていますので、ビタミンや食物繊維などの栄養素が流れ出してしまっています。
蓮粉は、蓮根パウダーに比べると、栄養素はかなり少ない、と考えてよいでしょう。
ですから、栄養素を摂取する目的であれば、抽出でんぷんである「葛粉」ではなく、丸ごと粉砕した「れんこんパウダー」を使うべきですね。
逆に、蓮粉は、栄養目的というよりは、透明感と清涼感あふれるその独特の食感を味わうための、嗜好性の高いこだわりの素材なのです。
そんな蓮粉は、どんな和菓子に生まれ変わるのでしょうか?
蓮粉を使った和菓子
レンコン餅と言えば、お惣菜。だけど和菓子の蓮根餅も要チェック!
蓮粉は、和菓子の「れんこん餅」の材料として、使われます。
「れんこん餅」といえば、おつまみやお弁当のおかずに最適なお惣菜のことが思い浮かぶかもしれませんね。お惣菜の蓮根餅は、すりおろした蓮根を片栗粉でつないで、ハンバーグ状にし、両面を油で焼いて、最後に甘辛いお醤油タレを絡めて作るものです。
これとは別に、和菓子の「蓮根餅」というのがあるんです。
和菓子の「蓮根餅」は、半透明でつるつるぷるぷるの涼しげな食感が楽しめる、「わらびもち」や「葛饅頭」と同じタイプの和菓子です。
伝統の和菓子というよりは、近年、ひっそりと流行しつつあるもの、と言ってよいでしょう。
蓮根餅が誕生した背景には、「わらび餅」のとある事情が背景にあると考えられます。その「背景」について、次項でみてみましょう。
無色透明でプルプルのわらび餅。でも「本物のわらび餅」の色は・・・?
蓮粉は、加熱すると透明でプルプルの状態になります。
デンプンはみなこの性質を持っています。中華料理で片栗粉をトロミに使うのも、「わらび餅」も同じ原理です。
わらび餅は、身近なおやつですので、ピンとくると思いますが、実は、コンビニやスーパーで売っている無色透明の「わらび餅」の原料は、ワラビ粉ではなく、サツマイモ澱粉やタピオカ澱粉が主原料です。
本物の蕨(わらび)の根からとれる本わらび粉は、国産品では全国でも年間200kg程度しか生産量が無い、超貴重なものです。
なので用として一般に目にしたり食べたりできるのは、サツマイモ粉やタピオカ粉で作られた無色透明の「わらび餅」がほとんどです。
本わらび粉のわらび餅を食べたことがある人は、少ないのではないでしょうか?
実は、「本わらび粉」で作ったわらび餅は、無色透明ではなく、こげ茶〜黒色をしているのです。
蓮粉で作った餅、つまり「蓮根餅」も、本わらび粉と同じように、透明感のある濃ゆい飴色に仕上がります。
つまり、とても貴重な「本わらび粉」の代用品として、蓮粉が使われるようになってきたわけですね。
蓮粉を使った蓮根餅の有名銘柄は?
「ぶに〜」っとした独特の弾力と、ほんのり土くさいような独特の風味がある蓮粉餅は、かなりの絶品で、初めて食べた人はみな感動すると言われています。
以下に代表的なおすすめの「蓮根餅」をいくつか紹介します。
「蓮根餅」は最近増えてきていますので、ここで紹介した以外にも、地元の和菓子屋さんにもあるかもしれませんので、チェックしてみましょう。
紫野和久傳 西湖
京都の名門料亭・和久傳(わくでん)はシンプルな「和の甘み」を追求していることでも有名。和久傳の甘みを代表するのが「れんこん菓子・西湖(せいこ)」。蓮粉と和三盆を練り上げて笹の葉で包んである絶品和菓子。西湖は中国杭州の蓮で有名な湖にちなんで名付けられている。
たねや 蓮子餅
滋賀で有名な和菓子屋「たねや」の、近江八幡宮内にある日牟禮乃舍でのみ購入できる限定商品、日牟禮餅(ひむれもち)。蓮粉でできた生地でこしあんを包みこんだもの。きなこと黒蜜でいただく。ファンが多い限定品
おなじくたねやの蓮子餅も蓮粉の和菓子。こちらはあんこなしの蓮根餅にきなこだけをかけていただくよりシンプルなもの。真空包装になっているためおつかいものどにも便利。デパ地下などで購入できる。
日蔭茶屋 れんこん餅
神奈川・葉山の老舗料亭・日影茶屋(ひかげちゃや)の4月〜8月の限定商品。蓮粉に和三盆と黒糖を練り込んだ、シンプルな夏を感じさせる涼菓。
老松 蓮根餅
朝廷の儀式で使う「有職儀式典礼菓子」を献上してきた京都の名門和菓子屋・老松の蓮根餅。夏の追善の茶席菓子。蓮粉のほかに寒天も使って羊羹的に仕上げてあるもの。一般に蓮粉餅は日持ちがしないが、こちらの蓮根餅は寒天を使って真空包装のため、日持ちがするので、おもたせなどにも便利。
デンプンが透明になるのは何故?
デンプンのα化
前項では、蓮根餅をいくつか、紹介しましたが、蓮根餅に限らず、夏の和菓子は、とくに透明な素材を生かした清涼感あふれるものが多いですね。
和菓子で、透明な素材といえば「寒天」が代表的なのですが、寒天を使わずに、デンプン粉で「透明な素材」を作り出すことができます。
それが、蓮根餅やわらび餅です。
デンプンには、水を加えて加熱すると、透明なゼリー状になる性質があるのです。
デンプン粉は、デンプンの結晶なのですが、水と熱を加えることで、結晶の隙間に水が入り込み、膨れるような状態になります。この状態を、でんぷんの糊化(こか)またはα化と呼びます。
澱粉質を含んでいるものを加熱すると、必ず糊化がおこります。
たとえば、炊いたお米のもっちり感も、お米のなかのでんぷんがα化することでうまれます。
蓮根を野菜としていただく場合、酢の物やきんぴらの時は、豊富な食物繊維でシャキシャキしていますが、蓮根をじっくり炊くとホクホクしてきますよね。これもα化です。
このアルファ化する性質をいかして、蓮根餅やわらび餅のプルプルができているのです。
蓮根餅やわらび餅を冷やしすぎてはいけないのは何故?
蓮粉や片栗粉など、純度の高い澱粉が、水分と加熱によりα化すると、でんぷんが水に溶けたような状態になり、透明となりますが、温度が下がってくると、再結晶をはじめます。
蓮根餅やわらび餅を長時間冷やしすぎると、透明でなく濁ってしまうのはこのためです。
市販のわらび餅では、砂糖のかわりにトレハロースを使うことで、冷やしても濁りにくいように作られていますが、それでも冷蔵庫でギンギンに冷やすと、でんぷんが再結晶して透明感がなくなってしまいます。
蓮根餅やわらび餅などでんぷん系の餅を手作りで作る場合は、加熱して練って完成したものを、氷水にさっととって、短時間で冷やしていただきます。
長期冷蔵などで、濁ってしまった場合は、一度レンジでチンすると、ふたたびでんぷんがα化して、透明に戻ります。
それをいただく直前に、氷水でサッと冷やします。
レンコン餅を手作りしてみる?
蓮粉はネット通販などでも手に入りやすくなっているので、手作りすることも可能です。
基本は、蓮粉に、上白糖・和三盆などの砂糖と水を加えて、中火でゆっくりと練っていきます。
そうすると、徐々に粘り気が出て透明度が出てきます。
透明感を増したい場合は、ある程度の固さがでるところまで練って、その後は蒸し器で一度蒸すと、きれいに仕上がります。
鍋で混ぜながら糊化させる時、しゃもじや鍋の底に蓮粉がくっつきやすいので、くっつきが激しい時は、火加減を弱めにして、じっくり練っていきます。
また、電子レンジを利用して、作る方法もあります。
30秒ごとに「レンジ→取り出して混ぜる」を何度か繰り返せばオッケーです。
わらび餅とはまた違った食感と香りを楽しめる蓮子餅作りに、ぜひチャレンジしてみましょう。
蓮根パウダーの栄養価
ここまで蓮根からとれる澱粉である蓮粉についてみてきましたが、より栄養価の高い「蓮根パウダーについても」簡単に触れておきましょう。
蓮根は栄養価が高い野菜で、「蓮根農家は風邪をひかない」などとも言われていました。
蓮根農家はいつも、蓮根をすりおろして、お湯割りにして飲んでいるから、蓮根の高い抗アレルギー効果によって、風邪をひかないのだそうです。
蓮根が風邪予防に良いとされる理由のひとつが、植物繊維「ムチン」です。ムチンは納豆やオクラのねばねばと同じものですが、蓮根の糸引きもムチンによるもの。
ムチンは、体の喉や胃腸の粘膜を保護・強化する力があります。
喉や腸の粘膜は、免疫活動の最前線ですので、ムチンで粘膜を強化することにが、結果として、免疫力のアップにつながるわけです。
また、蓮根は豊富なビタミンCとでんぷんが同時に存在しているのがポイントです。通常は、ビタミンCは加熱すると破壊されてしまいますが、豊富なでんぷんに守られて、ビタミンCが加熱してもあまり減らないという特徴をもっています。
これは、焼き芋の栄養価が高いのと同じですね。
さらに、蓮根はポリフェノールの一種であるタンニンを豊富に含んでいます。このタンニンがムチンとともに花粉症に効果があることが、究明されています。
花粉症は、免疫細胞のひとつIGE抗体が過剰反応をしてしまうことが原因ですが、タンニンがその動きを抑制することで、蓮根が花粉症に効果があることは、証明されているのです。
蓮根の花粉症抑制効果を究明したのは徳島大学の研究室なのですが、徳島は全国2位の蓮根の産地です。
もともと蓮根産地では、形の悪いB品や良いかたちにカットするため節っぽいところがはねられていて、蓮根採算重量のうち約25%もが廃棄されていたと言います。
この、捨てられる蓮根に目をつけて、蓮根パウダーや蓮粉などの新商品が生まれてきたわけです。
蓮根パウダーの健康効果のエビデンスを、産地の大学が証明しているというのは、農業と大学の見事な産学連携の好例だといえるでしょう。
蓮根のポリフェノールなどは、皮に多く含まれるので、皮ごと粉末にしてしまう蓮根パウダーは、ほんとうに抗アレルギー効果が高い食品だ、というわけですね。
蓮根パウダーは、各種料理に隠し味的というか、栄養増強の意味で、適当に入れてしまってもかまいませんん。
咳を止めたい時などは、蓮根パウダーにお湯を注ぎ、混ぜていただく「蓮根湯」もおすすめです。
蓮根湯を作る時、熱湯を注ぎしばらくまぜていると、はじめ濁ったような色だったのが透明感が出てきます。
これは、蓮根パウダーのでんぷん質が、α化したからですよね。
蓮粉と蓮根餅、そして蓮根パウダー、その魅力的な特徴や栄養価を、どんどん食生活に生かしていきたいものですね。
以上、みてきたように、夏は蓮粉を使った涼しいお菓子、冬は風邪対策の蓮根湯と、蓮根の粉には、1年中お世話になれるわけです。
蓮粉と蓮根餅、そして蓮根パウダー、その魅力的な特徴や栄養価を、どんどん食生活に生かしていきたいものですね。