路面凍結する気温や時期。非雪国人は必修のアイスバーンの運転方法
2017/11/17
路面凍結(アイスバーン)は冬のドライブの最大の難関です。
雪国に住んでいなくても、ドライバーである以上、アイスバーンへの備えは必須です。
暖冬の年でも、東京都心で早朝に路面が凍結することは決して少なくはありません。また、秋や早春のドライブで、峠道や高原で予想外の凍結や雪道に出会うことも、珍しいことではありません。
この記事では、雪が少ない地方に住む「非雪国人」向けに、路面凍結の基礎知識や運転のコツ、雪道やアイスバーン対策として最低限備えておきたい装備などについて、説明していきます。
路面凍結が起きる気温は何度ぐらいから? 時期はいつぐらい?
路面凍結が起こる気温は?
路面凍結は気温が何度くらいの時に起きるのでしょうか?
結論から言えば、プラス3度からマイナス3度くらいが最も多く路面凍結が発生します。気温が低ければ低いほど路面凍結しやすいわけでなく、とくに±3度前後が、注意が必要な気温帯です。
路面の凍結は、前の晩に降った雨が翌朝の冷え込みで凍ったり、気温が上がり一度溶けだした雪が夕方に再たび凍る、などして起こる現象です。
気温が低くても、雨や雪などの湿気がなければ、もちろん路面凍結はしませんし、また、逆に、雪がしっかり降り積もって、雪が溶けていない状態は、「圧雪路」と呼ばれ、凍結した路面よりは危険性が低いです。
マイナス4度以下だと、雨が降ったり雪が溶けたりすることがないので、路面凍結せずに、「圧雪路」になっていることが多くなります。路面凍結が多いのが零度前後の気温になるのはこのためです。
路面凍結するとどうなる? アイスバーンとは何?
路面凍結はアイスバーンとも呼ばれます。道路の水分が凍った状態です。路面凍結している場合、車のブレーキやハンドルが効かなくなり、たいへん危険な状態です。
また、雪が降っていなくても凍っている場合があり、パッとみただけでは、アスファルトが湿っているだけなのか?凍っているのか?区別がつかないこともあります。
このように、雪がない状態で、アスファルトが濡れているように見えるけれども、実は凍っている状態を、ブラックアイスバーンと呼びます。見分けがつかないだけに、北国のドライバーにも恐れられています。
路面凍結が起きやすい場所
路面凍結の発生は、ただたんに気温だけでは予測できません。とくに注意が必要なのは、ほかの場所よりも凍りやすい場所があるということ。
凍結しやすい場所では、気温が5度くらいでも凍結を起こしたり、昼間でも凍結していたりする場合があります。たとえば、次のような場所では、とくに注意が必要です。
・橋の上、高架
・トンネルの出入り口、日陰
・雪道の交差点
橋の上はや高架道路では、風にさらされることにより、部分的に気温が下がり、凍結しやすくなります。気温が零度に達していなくても凍結することを、ぜひ覚えておきましょう。
また、トンネルの出入り口付近も、ほぼ1日中、山の影になっていて、凍結の危険が高いところです。トンネル内は乾いていても、トンネルを抜けたとたんアイスバーンになっていることもあります。
雪道の交差点も危険です。ふつう雪道は「圧雪路」とよばれ、凍結路にくらべればスリップしにくものです。しかし、雪道でも交差点付近は、停止車両の熱で雪が溶かされ、その水分が夕方や早朝に凍るため、アイスバーンになる危険性が高いです。さらに、交通量の多い交差点などでは、車のタイヤでアイスバーンが磨かれて「ミラーバーン」と呼ばれる、とても滑りやす状態になっていることも少くないのです。
路面凍結する時期はいつぐらい?
路面凍結は気温が0度以上でも起こったり、場所により差があるため、いつから路面凍結するとは、一概には言い切れません。
もちろん、地方や年によってまちまちですので、でかける直前に、その都度確認するのが原則です。
とはいえ、だいたいの参考例を知っておけば、見当がつけやすくなります。たとえば、以下のような各地の路面凍結の時期をおさえておきましょう。
北海道 | 10月~~翌5月 |
日光いろは坂 | 11月~翌4月下旬 |
箱根 | 12月~翌3月中旬 |
六甲山 | 11月下旬〜翌4月 |
案外、長い期間、路面凍結に注意が必要なのですね。とくに、山や高原では秋春の早朝などは気温がけっこう下がります。「標高が100m上がれば気温が0.6度下がる」という法則も知っておくと便利ですね。
さて、気をつけたいのは、関東平野などの温暖な平地部でも、毎年冬には必ず路面凍結が起きているということ。
たとえば、2015年の2月6日は、東京都内でも積雪があり翌朝の気温が0.3度となりました。この日だけで1,150件のものスリップ事故が起きたそうです(JNN調べ)。
なかには重大事故も多数含まれています。雪国であれば、まず、路面凍結で1日でこれだけのスリップ事故が起こることはありえません。ふだん雪の降らない非雪国人のドライバーだからこそ、路面凍結についての認識をもっと深めなければなりませんね。
路面凍結で最悪の事態は車輪がロックすること
アイスバーンでは。ブレーキがどれだけ効かないか?
では次に、アイスバーンや雪道で、どんな危険があるのか、詳しく見ていきましょう。
まず、雪道やアイスバーンでは、「どれくらいブレーキが効かなくなるのか?」についてです。
ブレーキが効いてから停止するまでの距離を制動距離といいますが、制動距離は雪道や凍結路面では、下記のように何倍にも長くなります。
制動距離 | 路面状態 |
3倍 | 圧雪路。雪解け期の凍っていない道 |
10倍 | 凍結した路面、アイスバーン(ブラックアイスバーン・ミラーバーンを含む) |
車が止まるまでの距離、つまり「停止距離」は、「制動距離(ブレーキが効く時間)」+「空走距離(危険を察知してからブレーキを踏むまでの間)」で計算されます。
乾燥した路面での制動距離は、時速20kmで2m、時速60kmで20mになります。アイスバーンの制動距離は10倍ですので、アイスバーンの上での時速20km走行は、乾燥道路の時速60kmと同じ制動距離になるということです。
空走距離は、時速20kmで6mですので、アイスバーンの上での停止距離は、26mになります。通常時の時速20kmの停止距離は8mですので、3倍以上の停止距離ということです。
走行時速 | 停止距離 | ||
ふつうの道 | 圧雪路 | 凍結した路面(アイスバーン) | |
20km | 8m | 12m | 26m |
40km | 20m | 38m | 101m |
60km | 37m | 77m | 217m |
この表を見ると、「アイスバーンではいかにブレーキが効かないか?」ということがよくわかると思います。
ですので、凍結路面では、「とにかくスピードを落とす」「車間距離を十分にとる」ということが、まず最も大切なこととなります。
タイヤがロックすることを想定しよう
路面凍結した場合、「タイヤ(車輪)がロックする」可能性があることを念頭におく必要があります。
「ロックする」とは、どういう状態でしょうか?
タイヤと道路の面との摩擦がなくなる状態です。
ブレーキをかけても車輪がすぐに止まらないのは、タイヤと道路の間の摩擦力が働いて、車輪を止める抵抗になっているからです。つまり、ブレーキの力と、タイヤと道路の摩擦は、拮抗する力だということですね。
アイスバーンの上では、タイヤと道路の摩擦がなくなります。そうすると、ブレーキがすぐに働いて車輪の回転がピタリと止まります。
この状態が「ロックする」という状態ですね。
もし、アイスバーンの上でタイヤがロックしてしまうと、車輪の回転が止まったまま「ツー」っと滑っていきます。「慣性の法則」に従って、車はどこまでも滑っていきます。ロックするとブレーキが効かなくなるのです。
また、タイヤの摩擦が無い状態なので、ハンドルを切っても、車はいっさい向きを変えません。ロックするとハンドルもまったく効かなくなるのです。
「ロックしたらブレーキもハンドルも効かない」ということを、必ず頭にいれておきましょう。
アイスバーンや雪道でのドライビング基礎
ここまで、アイスバーンや雪道での特徴として
●制動距離が長くなる(通常路の10倍)
●ロックしたらいつまでも止まらない
という2点について述べました。
これらをふまえたうえで、アイスバーンや雪道での運転のコツについてみましょう。
ソフトブレーキでロックをさせない
まず、急ブレーキをかけない、ことです。
急ブレーキをかけると、すぐロックします。
ロックする度合いは、車によっても違いますが、それほど「急ブレーキ」と思っていなくても、「キュッ」とブレーキをかけただけでロックしてしまうことが多いです。
ですので、じわじわとブレーキを効かす「ソフトブレーキ」を行います。
ソフトブレーキは、ブレーキを半分くらいのところまでゆっくり踏み込み、そのあたりで微妙に《戻す←→軽く踏む》を繰り返します。
これを「ポンピングブレーキ」とも言います。
足の指で微妙に押したり戻したりを調節するような感覚です。
慣れてくると、ロックするぎりぎり寸前の位置がわかってくるので、その微妙な位置をキープします。これが、ソフトブレーキです。
慣れないうちは難しいですが、とくにかく急ブレーキは避け、細かく踏むポンピングブレーキを行うこと、そして何よりスピードを出しすぎないことです。
アイスバーンや雪道のハンドル操作
ふつうの路面では、何気なく行っているハンドル操作ですが、雪道やアイスバーンでは、「ハンドル操作とアクセルまたはブレーキ操作を同時に行わない」・・・そのことに注意しなければなりません。
雪道や凍結路面では、スリップとは別に《ハンドルを取られる》ということがおこります。路面の轍(わだち)や凸凹に応じて、勝手にそっちの方向に進んでしまう状態です。
ハンドルをとられないように、スピードを落とし、ハンドルをしっかりつかんで操作し、なおかつ、ブレーキ・アクセルを使うときは、ハンドルを切らない直進の状態で行うことが重要です。
また、後輪が滑る、つまり「おしりが振れる」ことが多々あります。もしおしりが左に振れたら、ハンドルも左にきって体勢をもちなおすようにします。
車体後部が左に振れたらハンドル左、右に振れたらハンドル右、です。あたりまえのことなのですが、慣れてない人は、反射的に逆方向にハンドルをきってしまう傾向があるので、しっかりイメージトレーニングをしておきましょう。
とにかく、アイスバーンの運転では、あせらず、ゆっくりとひとつひとつの作業をこなしていきましょう。でないと、ロックして、重大なスリップ事故につながります。ハンドルとアクセル・ブレーキ操作を別々に行えるくらい、余裕のある速度で走行することが大事です。
ABSの動きを知っておく
ABSはアンチロック・ブレーキ・システムの略です。
ブレーキを踏み込んだ場合に、自動的にロックを防いでくれます。
ABSが作動すると、ロックをしそうになった瞬間に、ブレーキが自動で押し返されてきます。これは自動で「ポンピング・ブレーキ」をやってくれているような状態です。
ブレーキが押し戻された感覚のあと、ここでひるまずに、さらに踏み込むと、ロックをせずにブレーキがかかります。
また、原則ブレーキとハンドリングは同時に行わない、ということですがABSが作動している場合はハンドル操作をしても大丈夫、ということになっています。
ただ、ABSの使い方は慣れが必要で、雪国の人でも、ABSが使いにくので外しているという人もいるようですね。
いずれにせよ、まず、自分の車や乗るレンタカーにABSがついているか確認し、ついているなら、乾燥した道路で一度、急ブレーキを踏んでABSの動作を確認しておいてください。
もし、ABSの動作を未確認のままアイスバーンでいきなりABSが作動したら、それこそパニックです。ABSの確認は必ず行いましょう。なお、急ブレキーのテストをする場所は後続車が無い安全なところで行ってください。
・十分減速し車間距離をとる(停止距離が何倍にもなる)
・ロックするとブレーキもハンドルも効かないことを知っておく
・ブレーキはソフトに指先で繊細にポンピングさせる
・ハンドル操作時に、アクセルやブレーキを踏まない
・後輪が、左に振れたらハンドル左、右に振れたらハンドル右
・ABSの動きを知っておく
非常時に使えるチェーン代わりのものとは?
チェーンとスタッドレスのどちらがよいか?
基本、雪国に出かける場合は、スタッドレス・タイヤをはかせていくことはマストです。
チェーンでも良いのですが、チェーンはどうしてもスピードが出せません。雪国の人は100%みなスタッドレスを履いていて、アイスバーン以外では、ふつうのスピードの車の流れが出来ています。チェーンだとノロノロ運転になり、その流れを妨げてしまいます。
ですので、雪国に出かける場合は、スタッドレスタイヤをレンタルするか、スタッドレスのレンタカーを借りるほうが、なにかとスマートだと思います。
もっとも、スタッドレスを履いていも、雪道に慣れていないのなら、無理に地元の人の流れに合わせてスーピードを出す必要はまったくありません。安全優先で運転をしましょう。
布チェーンやスプレー式タイヤチェーンは使えるか?
ドライブの行き先が雪国の場合は、スタッドレスの準備がマストです。しかし、晩秋〜春先のドライブでは、雪国までは行こうと思っていなくても、峠道などで、想定外の雪やアイスバーンに出会うことがあります。
そんな時のために、非雪国の人が車に常備しておきたいのが、布チェーンやスプレー式タイヤチェーンです。
布チェーンは「オートソック」などの商品名で販売されていますが、なにしろ装着が簡単で、グリップ力もふつうのチェーン並みにしっかりありますので、いざという時に頼りになります。
ただ、布チェーンは、駐車時には外しておかないと、凍りついてとれなくなってしまうので注意が必要です。また、使用可能距離は150kmほどしかありません。あくまで短距離での使用や、応急的に使うと考えておいたほうがよさそうです。
スプレー式タイヤチェーンは「タイヤグリップ」などの商品名で販売されています。こちらは布チェーンほどの安定したグリップ力は無いようですが、緊急用としては役立ちます。
ただし1回のスプレーでグリップ力が持続するのは30kmほど。
グリップの弱くなった古いスタッドレスタイヤにふきかけて補助的に使うなら、アイスバーンでも効果があるようです。しかし、ノーマルタイヤでの効果は、はじめから当てにせず、あくまで緊急用のみと考えましょう。
以上、路面凍結についての基礎知識や、安全運転のコツ、注意点などについて見てきました。
非雪国の人が、たまの週末ドライブで、峠で雪道やアイスバーンに出会い、右往左往したり事故ったりというケースが少なくありません。
峠や山道では、春先でも、予想外に雪や凍結が残っている場合がありますので、注意が必要です。
少し、遠出をする場合は、アイスバーンや雪道についての正しい知識を確認し、しっかりと準備をしてからでかけるようにしましょう。
また、雪道で故障すると洒落にならないどころか命にかかわります。「警告灯」の意味からメンテがわかる記事⇒「警告灯はオイル・水・ブレーキ・電気系の4つを必ずチェック」の記事も目を通しておいてください。
それでは、安全運転でドライブを楽しみましょう!