春節の中華街。横浜・神戸・長崎で春節祭を楽しむコツと基礎知識。
2018/01/07
中国春節(中国の旧正月)には、中国本土はもちろん世界中の中華街で、盛大に新年がお祝いされます。
旧暦ですので毎年日時は変わります。2018年は2月16日(金)が旧暦元日です。この日をはさんで数週間が春節の期間で、旧暦の1月15日にあたる元宵節(2018年は3月2日)までお祝いムードが続きます。
春節といえば、ここ数年は春節の休みを利用して日本に訪れる中国人観光客の「爆買い」が話題ですが、この記事では、中国春節の芸能・風習・食事についての基礎知識について詳しく述べています。また、日本の代表的な横浜・長崎・神戸の中華街で催される華僑のひとたちを中心とした春節のイベントにつていて紹介していこうと思います。
中華街(横浜・長崎・神戸)の春節が10倍楽しめる基礎知識
中国での春節の過ごし方は?
春節(しゅんせつ)は、中国のお正月のことで、いまでも旧暦の1月1日を中心にお祝いされます。
旧正月を祝う習慣は、中国以外でも台湾、ベトナム、韓国、タイ、沖縄などの国や地域に今でも受けつがれていますが、なかでも中国の春節は有名です。
中国本土では、春節時期は1週間ほど連休になり、「なにがなんでも実家に帰る」というのが伝統的な風習で、春節シーズンは13億人が大移動するとも言われ、交通機関は鬼のように混雑します。
帰郷の祭は、親戚や親へお年玉(赤包)やプレゼンとを持ち帰ったり同級生との飲み会などで、1ヶ月ぶんの給料以上を使ったりする人もいるようです。
大晦日から家族で集まり、年越しの料理(北方では餃子、南方では鍋と魚の煮付けが定番)を囲みながら、中国の紅白歌合戦にあたる「春晩(春節聯歓晩会)」を見ながら、家族で年越しをするのがスタンダードな春節の新年の迎え方です。
年が開けると爆竹が鳴り響き、各地のお寺や廟(びょう)では、お正月の獅子舞や龍踊が行われます。
最近は、実家参りを瞬間終わらせてから、日本をはじめヨーロッパなど世界各地に「爆買い」や観光に出かける富裕層も多いようです。
横浜・長崎・神戸~日本の中華街の春節
さて、中国本土では春節時期は、企業は1週間の休みになり、みな実家に帰ったりするので、商店などはみな休業になることが多いのでが、世界各地のチャイナタウンでは、華僑の人たちが春節の間にも盛大なイベントが催されています。
日本の華僑は、台湾系や大陸系、大陸のなかでも北方と南方と、出身地はさまざまです。とくに多いのは台湾系や中国南部の広東系の人たちですが、日本の中華街には、中国各地のさまざまな文化や風習が凝縮されている、と言ってもよいでしょう。
横浜・長崎・神戸の中華街の春節では、赤提灯(ランタン)飾られた独特の雰囲気のなかで、中国獅子舞や中国雑技などが披露されます。日本にいながら、かなりエキゾチックな中国文化を体験できるので、春節の期間はチャイナタウンへ足を運んでみましょう。
春節祭の芸能
では、日本の中華街などでおこなわれる「春節祭」で定番の行事について見ていきましょう。
広大な中国ですから、地方により伝統や風習はさまざまです。日本の中華街にも中国各地から人が集まっていますので、春節のイベントも、中国各地のものが入り混じったものになっていますし、さらに日本独自のアレンジも加えられて、国際色豊かなイベントになっています。
代表的な春節祭の演目を見ていきましょう。
獅子舞(ライオンダンス)と採青
中国の獅子舞は、北方系と南方系に大きく分かれます。北方系の獅子は、みかけは日本や沖縄の獅子に近い感じのものですが、玉乗りなどをこなすアクロバットな獅子です。世界各地の中華街で舞われる獅子舞の多くは、「ライオンダンス」と呼ばれる南方系の獅子です。
南方系の獅子は、「思いっきりデコった進化系の獅子」みたいな感じで、とても派手です。派手派手なんで、初めて見ると「何これ?」みたいに思うのですが、だんだんキュートに感じてきます。
黄色と赤の獅子が基本なのですが、近年、ますますカラフル化して、カラフルな獅子が増えてきています。なかには蛍光色に光るものもいたりして・・・
目がまばたきしたり耳が動いたりするやつもいて、とても可愛いです。
獅子舞は年中イベントのたびに登場しますが、春節独特の獅子舞としては、「採青(ツァイチン)」があります。
お正月に、獅子がお店や事務所などに邪気払いで回るのですが、この時、ご祝儀袋を青菜と一緒に天井など高いところに吊るしておくのが習わしです。獅子は舞終わると、思いきり背伸びして(つまり、獅子のなかの二人が肩車して)、青菜とご祝儀袋をパクリと食べます。
採青は横浜中華街などで、旧暦1月1日に見ることができます。
龍踊り
中華街で踊られる獅子舞が南方系のものであるのに対して、龍踊りはどちらかといえば北方系の伝統芸能です。
1体の龍を、十数人の踊り手が棒で支えながら、ほんとうに生きているかのように、リアルに龍を動かします。
もともとは雨乞いの儀式として旧暦1月15日の元宵節で踊られていたものですが、現在は、年中イベント毎に踊られています。横浜では「りゅうまい」、神戸では「りゅうおどり」、長崎では「じゃおどり」と呼ばれる龍踊りですが、横浜のものと神戸・長崎のものは若干違います。
横浜の竜舞は、華僑の若者を中心に19世紀から受け注がれているもの。一方、長崎の「じゃおどり」は、江戸時代に日本人が華僑より習い、「長崎くんち」の奉納芸として伝えられてきたものが、近年は春節祭でも踊られるようになったものです。神戸の龍踊りは、シンガポールと長崎くんちの影響を受けたスタイルになっています。
変面ショー
もともとは春節の伝統行事ではありませんが日本の各地の春節祭では定番の出し物となりつつあるのが「変面ショー」。中国語では「変臉(へんれん・ピエンリェン)」は、踊りながら、瞬時にお面が変わっていく、マジカルな芸能です。
四川省の川劇(せんげき)と呼ばれる京劇の流れを含む伝統芸能。そのなかで編み出された繊細な仕掛けと技が織りなすエンターテイメントです。
ほんらい川劇はプロジェクションマッピングなどを駆使した壮大な舞台仕掛けの大スペクタル演劇ですが、春節では、変面のパートだけをとり出した「変面ショー」として、春節祭のステージの人気演目となっています。
春節パレード
各地の春節祭では、中国の神様や王朝時代の人々に扮した仮装パレードも呼び物となっています。
このパレードは中国の伝統ということではなく、日本の中華街ならではの催しですが、いずれのパレードも完成度が高く、中華街春節イベントの呼び物のひとつになっています。
横浜、神戸、長崎の春節祭で、テーマがそれぞれ違っています。
横浜:祝舞遊行(しゅくまいゆうこう)…高下駄を履いた将軍に続き人力車に乗った皇帝と皇后に、舞を披露する中国女性、雑技団、獅子舞、竜舞などオールスータ出演のパレードです。
長崎:皇帝パレード・媽祖行列…清朝の皇帝の街行きの様子を再現した皇帝パレード。江戸時代に唐船の乗員が行っていた航海の神・媽祖をまつる媽祖行列を再現したもの。
神戸:中国史人游行…本格的な京劇の衣装とメイクで三国志の英雄や中国の歴史的美女に一般公募の市民が扮して行われるパレードです。
春節祭で体験できる中国春節の風習
春節祭は、獅子舞や仮装行列などの演目を見るだけでなく、中国の春節の風習をいろいろ楽しむことができます。
中華街の店先の飾りや、お参りされている神様など、春節の風習について知っておけば、春節祭で中華街を訪れた時、より一層楽しめます。
春節燈籠・春聯
春節の飾りといえば赤い提灯(灯籠)です。
そもそも、春節のカラーといえば「赤」。提灯で街が赤く彩られるだけでなく、門の両脇には春聯と呼ばれる縁起文字が掲げられれますし、春節の集まりのドレスコードも「赤」となります。
灯篭やランタンは春節の期間だけではなく、クリスマスイルミネーションも兼ねて、新年の年末から旧暦の正月15日の元宵節までずっと飾られていることもあります。
また、長崎の春節祭は、灯篭を強調して「長崎ランタンフェスティバル」との名称になっていて、街全体でイルミネーションを楽しむイベントに発展しています。
倒福
福の字を逆さまにした飾りです。「逆さまの福=倒福」と「福が来る=到福」が音が同じため、幸運を呼び寄せる意味があるとされています。
中華街のレストランの壁などには1年中貼られていることが多い倒福ですが、とくに春節シーズンは、この「倒福」が全面に出てくる感じです。街のいたることろに「倒福」があったり、「倒福」グッズがいろいろ売られているので、春節の中華街に行く時は要チェックです。
財神
富をもたらす道教の神様、五路財神(=ごろざいしん、五顕財神=ごけんざいしん)の誕生日が旧暦の1月5日とされ、誕生日には文財神・武財神・義財神・富財神・偏財神の5名の神が下界に降りてくると信じられています。
そのため、1月4日の財神誕生日イブは、爆竹を鳴らすなど春節の新年以上に盛大にもりあがります。
1月5日は、各地の廟(びょう=日本の神社にあたるところ)や商業施設などには、財神に扮した人が現れるのが定番で、財神キャラグッズなどが販売されます。
また、中華街にある関帝廟 は関聖帝君(=もとは三国志の関羽)を祀っていますが、華僑の人たちにとってはお金持ちの神様とされています。
春節の中華街を訪れたら、五路財神のグッズを探したり、関帝廟 にお参りしたりして、今年の金運を呼び寄せましょう!
爆竹
春節といえば爆竹ですね。
爆竹には邪気払いの意味があって、春節中、ことあるごとに爆竹が鳴らされます。
とくに大晦日や、財神が訪れる1月4日の夜などに、各家や商店で競うように爆竹が鳴らされます。
中国本土の都市では、大気汚染の原因になるとして、現在では爆竹は禁止されていますが、それだけ多くの爆竹が鳴らされていたということですね。
春節の料理
春節の料理とひと言で言っても、中国の場合、地方によってぜんぜん文化が違います。よって、春節の中華街を訪れた場合にも、お店によって「正月料理」が何か?というのはさまざです。
ここでは代表的なものをいくつか見ていきましょう。
餃子
餃子は中国の北部では、大晦日に家族で作って、家族全員で食べる正月料理です。
ふつう中国で餃子といえば「水餃(=水餃子)」のことです。
大晦日の餃子には、フォーチュンクッキー的に中に金貨を入れたものを作る場合があります。金貨入りの餃子にあたった人は、一年間金運に恵まれる、と縁起をかつぎます。
年々余魚と鍋料理
南部では魚の煮付けなどが、必ず大晦日の料理にならびます。
「魚」の読みと「余裕」の「余」の字の読みが一緒なことから、「年年有余」と呼ばれて、向こう一年が余裕のある年となるように願いを込めます。
南部の大晦日料理では、魚料理はマストアイテムですが、料理としては脇役で、メインディッシュは「鍋料理」です。
魚料理のかわりに、餅粉で作った魚型のお菓子(年糕)も食卓に並ぶことがあります。
また、台湾では、年々余魚の意味で「たい焼き」を大晦日に食べるのもありですね。
春巻き
春卷や春餅は、名前に「春」が含まれているとおり、お正月料理です。中国の北部でも南部でも、春節から立春にかけて食べられ機会が多いです。
春卷は日本の春巻きと同じ揚げたものですが、焼いた皮に具材をつ包んで食べる春餅(チュンピン)もスタンダードな料理です。
年糕、蘿蔔糕
春節のお餅は、日本のお餅とは違って、米粉で作ったプルプルしたお餅になります。
年糕(ニィンカオ)は、地方により甘いものとしょっぱいものがあります。甘い年糕は、薄くスライスしてフライパンで焼いて、なかの砂糖がカリカリに焼けた状態にして食べます。
また、香港や台湾などでは蘿蔔糕(ルオポガオ)と呼ばれる「大根もち」をお正月の定番とする地域もあります。
中華街の春節行事
日本の代表的な中華街の春節行事をみていきましょう。もともとは中華街に住む人たちの内輪のお祭りでしたが、ここ十数年は、大々的なイベントとして定着しつつあります。
横浜中華街の春節
- 古い歴史を持つ伝統の中華街春節と獅子舞
-
開催期間:1月27日(金)〜2月11(土)
(「春節燈花」は11月1日〜2月28日(火)まで - ●カウントダウン(獅子舞)…1月27日・関帝廟 前、媽祖廟
- ●採青(獅子舞)…1月28日(土)16:00~20:00:中華街内のお店を獅子が回り商売繁盛を願う…1月27日・関帝廟 前、媽祖廟
●春節娯楽表演(獅子舞・龍舞・中国雑技)…2016年1月29日(日)、2月5日(日):伝統芸能のステージが中華街内・山下町公園
で披露されます。
●祝舞遊行(パレード)…2月4日(土)6:00~:中華街のなかを練り歩くパレード。獅子舞・龍舞のほか皇帝衣装隊の仮装行列
●元宵節燈籠祭(げんしょうせつとうろうさい)…2月11日(土)17:30~:旧暦15日の元宵節にあわせて媽祖廟で願いを込めた燈籠を奉納。美しい女性の奉納舞などが見られる。
●長崎ランタンフェスティバル
- 中華街のみならず街全体を巻き込んだ祭り
- ●中国ランタン装飾…1月27日(金)〜2月11日(土):新地中華街・中島川公園・浜市アーケードの各会場が、春節赤提灯のほか、干支のオブジェのイルミネーションなど、さまざまな灯りで飾られます。
- ●媽祖行列…1月29日(日)・2月5日(日)14:00〜17:00 :江戸時代に唐人たちによっておこなわれていた行列を再現し孔子廟〜興福寺までを往復します。
- ●皇帝パレード…2月4日(土)・11日(土)14:00~16:30:150人からなる清朝時代の皇帝行列を模したパレード
- ●獅子舞…1月28日(土)・29日(日)・30日(月)・2月2日(木)・4日(土)・5日(日)・6日(月)・8日(水)・9日(木)・10日(金)・11日(土):新地中華街湊公園特設ステージ
- ●龍踊り…期間中毎日:中華街会場・中央公園会場
- ●変面ショーなど雑技や二胡演奏など…期間中毎日:孔子廟会場など
神戸南京町の春節
- コンパクトながらも盛りだくさんの神戸南京町の春節
- ●獅子舞…1月22日(日)、1月27日(金)〜1月29日(日):南京町広場ステージでの披露や、28日29日には採青
- ●龍舞…1月22日(日)、1月28日(土):南京町広場ステージでの披露。
- ●中国史人游行パレード…1月28日(金)12:30頃〜17:30頃
- ●変面ショーなど雑技…1月27日(金)〜1月29日(日):南京町広場ステージ
- ●ポチ袋くじ・開帝さまおまもりなど…1月27日(金)〜1月29日(日):南京町内
以上、中国の春節の芸能や風習と、日本の中華街の春節行事についてみてきました。
春節期間は、異国情緒あふれる隣国の文化に触れながら、春を待ちわびるのもなかなか良いものです。機会があれば、ぜひ春節の中華街に足を運んでみてください!