悪態祭りと悪口祭り。日時や見どころなど二つの奇祭の詳細情報。

      2016/11/09

悪口祭り

 悪口を言ってウサばらしをして、清々しい気分でさっぱりとした新年を迎えませんか? ・・・といきなりヘンな誘いなのですが、そういう趣旨のお祭りが年末にあるので(しかも二つも)、紹介したいと思います。

 ひとつは茨城県笠間市・愛宕神社の「悪態祭り」(2016年は12月18日(日))、もうひとつは栃木県足利市・大岩毘沙門天の「悪口祭り」(大晦日)です。

 どちらの祭りも、悪口を言うことで、1年溜まった「けがれ」を吐き出してしまおうという趣旨のものですが、お祭りのスタイルや内容は違います。

 「悪態祭り」と「悪口祭り」は混同されることも多いので、この記事では、ふたつの祭りの内容を整理しつつ、見どころやアクセス方法の詳細などを、お伝えてしていきます。

年末にふたつの悪口を言う祭り。関連はある?

 「悪口を言いたい放題の奇祭」として、TVなどでも紹介されているので、「悪態祭り」と「悪口祭り」は、それぞれ、だいぶメジャーになってきました。

 「悪口祭り」も読み方は「あくたいまつり」です。ふたつの「あくたいまつり」が、12月に北関東で開催されるわけです。しかも栃木と茨城なので、どっちがどっちかわからなくなります。なので、まず、整理しておきましょう。

愛宕神社(飯綱神社)悪態祭り
【場所】茨城県・笠間市
【日時】12月18日(日) 13:30~17:00
【アクセス】JR常磐線・岩間駅よりタクシー徒歩20分「御霊池の水神様」からスタート  
北関東自動車道・友部IC 常磐自動車道・岩間ICより25分【P】愛宕山森林森林公園・愛宕山天狗の森駐車場など
大岩毘沙門天(最勝寺)・悪口祭り
【場所】栃木県・足利市
【日時】12月31日 22:00~(大声コンクール)  23:00~(提灯行列)
【アクセス】JR両毛線・山前駅より徒歩約60分・タクシー約15分 東武足利市駅より・タクシー約20分
北関東自動車道太田桐生ICより20分【P】最勝寺に駐車場あり

 このふたつの「あくたいまつり」は、別々のルーツではじまったもので、とくに関連はありません。そもそも、愛宕神社は「天狗」、最勝寺は「毘沙門天(七福神の一人)」をまつった神社ですから、系列が違います。

 「悪口を言って、すっきりした状態で新年を迎える」という発想が、たまたまカブったものと思われます。

 では、このふたつのユニークな祭りの詳細を、それぞれ見ていきましょう。

笠間・愛宕神社(飯綱神社)悪態祭り12月18日

神社の由来と天狗

 愛宕(あたご)神社は「火防の神様」をまつった神社で、京都の愛宕山山頂に総本社があり、全国に900社ほどあります。茨城県・笠間の愛宕神社もそのひとつですが、ここ笠間の愛宕神社は、飯綱(いいつな)神社も併設されているのが特徴です。飯綱神社は天狗をまつる神社です。

 天狗は羽団扇を使って「火を自由に操れる」とされていますので、愛宕神社の火伏せ信仰に、天狗信仰が結びついているのですね。パワーが増していそうな神社です。

 飯綱神社には笠間の愛宕山にかつて住んでいた「十三天狗のほこら」があります。悪態まつりのときには、この「十三天狗のほこら」には、オバンドと呼ばれる竹筒に入れた甘酒と、カケ魚と言われる魚の生干しが供えられます。

悪態まつりの内容と祭りの流れ

 悪態祭りでは、この13天狗にちなんで、13人の天狗に扮した地元の人たちが、愛宕神社周囲の16の祠(ほこら)にお供えをしてまわります。

 天狗に扮すると言っても、お面は着けておらず、白装束にマスクといういでたち。天狗たちは神主に導かれ、標高300mの愛宕山山頂の愛宕神社まで4kmの道のりを、終始無言のまま、登っていきます。その途中途中で、お供えをしていきます。

 さて、この祭りのユニークな特徴はふたつあります。
1.白装束の天狗たちに向かって、見物人は、悪口を言って罵倒する
2.天狗たちが祠に備えたお供え物は、お祈りが終われば、見物人が奪い合って持ち帰える

 このように「参加型」の祭りになっていますが、なかなか妙なルールで、「奇祭」の名に恥じない内容です。

 天狗に悪口を言う風習は、江戸時代の領主が、住民の不満を情報収集するためと、住民のガス抜きのために、はじめられたと言われていますが、定かではありません。

 今では、「悪口」を吐き出して、「けがれ」は天狗たちが受け止めてくれるという設定です。がしかし、見物人たちはいざとなると案外控えめで、なかなか悪口を言いきらないので、悪口係の人がハンドマイクで見物人の悪口を煽りながら行列は進行していきます。悪口は、主に「バカやろー」「このやろー」です。

 さて、もうひとつの、お供えものを持ち帰るという件ですが、これはとうぜん縁起が良いから持ち帰るわけです。ただ、見物人同士でゆずりあって、ということはなく、奪い合いのバトルが展開されます。

 天狗たちが来るのを祠で先回りして、お祈りが終わり次第、見物人同士のバトルになります。

 なかには、お祈りが終わる前に、お供えに手を出そうとする見物人もいますが、そういう人は、天狗が持っている青竹でビシバシと容赦なく叩いてきます。

 このように、道中16の祠で見物人と天狗が入り乱れての、激しいバトルが繰り広げられた後、行列は愛宕神社に到着します。

 13人の天狗たちは、ここではじめてお面をつけ、こんどは、神社の舞台から、見物人に向けて餅まきをします。紅白のもちのほかにも、うまい棒などのお菓子も投げられるという、なかなか良い雰囲気です。

 そして、最後は、見物人と神社舞台上の天狗とともに、「バカやろー」と悪口を唱和して、フェス的な雰囲気のまま祭りは終了します。

笠間・悪態まつりアクセスと交通機関

電車で行く笠間・悪態まつり

 東京都新から「悪態まつり」を電車を利用して見に行くプランを見てみましょう。

 笠間市は案外遠くて、常磐線の土浦と水戸の間になり、上野駅から1時間半以上かかります。下車駅は岩間駅です。

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 悪態祭りの行列がはじまるのは、愛宕山山麓の「水神様」で14時スタート。水神様は駅より徒歩20分。

 上野からの常磐線は以下の便になります
上野10:15発 → 岩間12:04着
上野10:52発 → 岩間12:38着
上野11:52発 → 岩間13:37着

 10:15分上野発で来て、岩間でランチを食べて、腹ごしらえをしてから参戦というのがベターなプランです。また、上野発11:52分で来ても、急ぎ足で向かえば行列に追いつくことができるでしょう。

 さて、行列でたっぷりと悪態をつき、祠でのバトルに参戦しながら、愛宕山山頂の愛宕神社に到着するのが15時20分ころ。そこから餅まきとなり、祭りのプログラムは16時前に終了となります

 愛宕山山頂から岩間駅までは、徒歩1時間。天気がよければ気持ちの良い山道ですので、散策しながら戻るのもありですね。帰りの電車は、
岩間16:25発 → 上野18:05着
岩間16:51発 → 上野18:34着
岩間17:26発 → 上野19:11着
など、まあまあ本数はあるので、成り行きで帰れば問題ないですね。

車で行く笠間・悪態まつり

 北関東自動車道・友部ICや常磐自動車道の岩間ICより25分ほどで愛宕山につきます。祭りの時は、愛宕山森林森林公園内に5箇所ある駐車場を利用できます。ただ、行列の出発点までは駐車場から歩く必要があります。途中の駐車場にとめて、そこから行列に合流するのもありですね。

 以上、笠間の悪態まつりについて、でした。

足利・大岩毘沙門天(最勝寺)・悪口祭り12月31日)

 ここからは大晦日の悪口祭りについてです。

 栃木県足利市の「悪口まつり」は、大晦日の奇祭として、マニアックなことが好きな人たちには人気がある祭りです。「悪口まつり」ですが読み方は「あくたいまつり」です。

 悪口を言い切って、さわやかな心で新年を迎えるという、ある意味しっかりした趣旨の年越イベントです。

 ただし、祭りのメインである「ちょうちん行列」は江戸時代から伝わっているのですが、実は由来がよくわからないという、ゆるめの感じの祭りです。

 行列に先立って行われる、賞金1万円の悪口大会の軽いノリ、そして、悪口まつりが終わり、明けた新年に行なわれる「滝流しの式」という謎の多い儀式などから、かなりコアなファンが多い年越し行事となっています。

 祭りの雰囲気が怪しい一方、このお寺そのものはたいへん由緒あるもので、『京都の鞍馬山』『奈良の信貴山』にならぶ日本の三大毘沙門天のひとつです。開山は西暦745年の古刹です。

悪口まつりの内容と祭りの流れ

 悪口まつりは、大岩毘沙門天の山麓にある最勝寺の広場からスタートします。

 屋台も何もないただの広場ですので、飲料食糧などは各自あらかじめ調達しておきましょう。また、それなりの山道を登っていきますので、スニーカー着用と水の携帯は必須です。

 この広場で午後10時から、「大声悪口コンテスト」が開かれます。

 ビール瓶ケースのステージの上から思い思いに悪口を叫び、声の大きさをホン数で測りいちばん大きかった人が優勝という、いたってシンプルな大会です。毎年、110ホンくらいの人が優勝するようですね。

 コンテストは先着60名までが参加可能ですので、絶対に出場したい人は早めに受付をしましょう。

 大声大会が終わると、標高300mほどの山上にある大岩毘沙門天まで、「ちょうちん行列」がはじまります。こちらがメインイベント。ちょうちんはレンタル料1,000円ですので、各自ヘッドセットライトなどは用意し、ちょうちんは各グループに一個でよいでしょう。

 法螺貝を吹く山伏を先頭に、およそ40分ほどかけて、大岩毘沙門天まで、悪口をおのおのが叫びながら登っていきます。

 それなりの山道ですので、やがて、息切れと、悪口のネタがつくことで、参加者は徐々に無口になっていき、毘沙門天に着く頃には心が洗われているという仕組みです。

 毘沙門天では甘酒がふるまわれます。そうこうしているうちに新年を迎えます。

 毘沙門天から麓の最勝寺まではシャトルバスが出ていますので、帰りはそれを利用できます。

滝流しの式(オプション)

 毘沙門天では、年明けての零時より「滝流しの式」がおこなわれます。

 毘沙門天の前で読経が続くなか、祈願を受ける人は大きな杯を構えます。すると神主さんが祈願者の頭に神酒を注ぎはじめます。神酒は、額から鼻を伝って流れ落ち
構えている杯に落ちます。それを「滝のように尽きることのないご利益を」と祈願しながらいただく、とそいういう流れの祈祷です。

 お酒は、祈願者が左手をあげてストップの合図をするまで注ぎ続けられます。

 新年早々、たくさんのオーディエンスの見守るなか、この不思議な儀式を受ける勇気のある方は、ぜひチャレンジしてみましょう。祈願料は1,000円です。

足利・悪口まつりアクセスと交通機関

 足利悪口まつりの起点となる最勝寺は、JR両毛線・足利駅/山前駅から徒歩ですと1時間以上かかります。タクシーも考えられますが年末年始ですし、年明けてからの帰りのことを考えれば、原則、マイカーかレンタカーでのアクセスをお勧めします。

 もちろん運転者はあま酒や神酒は禁止です。

 悪口まつり終了後は、せっかくですので、車で仮眠して、初日の出も拝んでいきましょう。

 毘沙門天すぐ近くの足利市・織姫神社は、地元では有名な初日の出ポイント。さらに、西に足を伸ばして栃木市の太平山見晴らし台もゆったりと初日の出を拝めます。

 仮眠の必要がなければ、そのまま、太平洋まで走って阿字ヶ浦海岸や鹿島灘海浜公園で初日の出を見るルートも考えられます。

 以上、足利の悪態まつりについて、でした。

まとめ・もっと悪口を言った方がよいかも?

 年末の二大あくたい祭り・・・茨城笠間の悪態祭り、栃木足利の悪口祭りについて詳細をお伝えしました。

 ところで、日本は、「悪口」をいうことは「悪いこと」だとする風潮が強いところですよね。ただし、行き過ぎた「悪口禁止」には注意が必要です。

 なぜなら、悪口と言われ批判されるものが、実は、少数意見や反対意見である場合が少なくないのです。少数派の意見に「悪口」というレッテルを張って、多数派が少数はの意見をねじふせようとしている場合があるからです。

 そうしてみると、「悪口」は必ずしもネガティブなものではなく、前向きな主張だと、捉えることもできます。

 もっと悪口が言いやすい社会にしたほうが、風通しがよくなるような気がするのですが・・・。

 まぁそれはおいといて、とりあえず、年末には、思いっきり悪口を言い放ち、新しい年につないでいきましょう!!

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