蚊帳(かや)の選び方。ムカデ対策、アウトドア用、ベビー用など。

      2019/07/30

モスキートネット

 蚊帳(かや)は、蚊やムカデなど不快な害虫をよける、エコな道具です。

 蚊帳といえば「となりのトトロ」の冒頭で出てくるのを思い出す人も多いでしょう。蚊帳には「昔の道具」「懐かしいもの」というイメージが強いですが、実は最近、ふたたび蚊帳が注目されているのです。エアコンや殺虫剤に頼らないエコな防虫方法として、アウトドアグッズとして、蚊による伝染病予防として、蚊帳への関心が高まっているわけです。

 一時期はなかなか手に入りにくかった蚊帳ですが、最近はネット通販やホームセンターなどでも蚊帳がいろいろ選べるようになりました。

 この記事では、蚊帳を選ぶために知っておきたい、蚊帳の種類・生地・使い方など基礎知識についてまとめています。

蚊帳の選び方と使い方のポイント

古民家で毎晩、蚊帳を吊って寝ていたこと

 蚊帳を使ったことない人は、「蚊帳の効果ってどれくらいなの?」と疑問に思うかもしれませんが、使い方を間違わなければ、蚊帳を使って、ほぼほぼ蚊フリーの空間を手に入れることができます。

 わたし自身、アルミサッシの無い田舎の古民家に住んでていたことがありますが、夏はもちろん蚊帳はマストアイテムで、蚊帳のおかげで毎晩快眠できていました。

▲田舎の古民家では今でも蚊帳はマストアイテム

 サッシが無いような古い木造住宅では、アルミサッシの替わりに木の網戸があるのですが、やはりどこかしらに隙間があり、昼夜を問わずどこからともなく蚊は入って来ます。

 日中の活動時間で、自分がなにかと動き回っている時は、蚊取り線香を焚いておけば、蚊はなんとかやりすごせるものです。

 でも、あまり動きまわらない時に刺されると、痒いことばかりに意識がいってしまいますよね。

 最悪なのは、寝る時です。動かないために、蚊に狙われやすいのはもちろん、たとえば蚊取り線香を布団の周りに数カ所設置しても、風向き次第では、蚊にかまれまくることもあります。耳元でプーンと飛ばれたり、足の指を刺されたり、就寝時は蚊取り線香だけでは蚊を防げません。

 何より、毎晩、蚊取り線香の煙幕のなかで寝るようでは、あきらかに健康被害につながります。

 そういうわけで、田舎暮らしでは、就寝時の蚊帳は、欠かせないものなのです。

▲伝統的な日本の蚊帳。裾はおふとんの下に入れ込めば、完全に蚊フリー空間が。大き目のサイズを選ぶのがコツ。

蚊帳を選ぶポイント

 蚊帳のタイプには主に、次のようなものがあります。

蚊帳のタイプ

・四すみから吊るす、日本の伝統的な長方形の蚊帳

モスキートネットと呼ばれる西洋型の蚊帳。

・吊る必要がないワンタッチ蚊帳(底のシートがあるタイプも含む)。

 これらの3タイプのうち、どの蚊帳が使い勝手が良いでしょうか? 蚊帳の特徴から、3タイプのメリット・デメリットをみてみましょう

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蚊帳はネットが体に触れないことが条件

 蚊帳を選ぶ最大のポイントは、サイズに余裕があること。これにつきます。

 狭い蚊帳ですと、蚊帳のネットに体がひっついてしまい、ネット越しに蚊に刺されてしまうことが、たびたびあるからです。

 体がネットに触れにくいという点では、和式の四角い蚊帳がいちばんです。ワンタッチ蚊帳や上部が狭くなっているモスキートネットでは、寝返りをうった時に、ネット越しに蚊に噛まれるリスクがあるわけですね。

▲ベル型のモスキートネット。ネット越しに刺されないように注意が必要

狭い蚊帳は熱がこもる

 また、内部空間が広い蚊帳は、より涼しいというメリットもあります。

 最近の蚊帳の材料は、ほとんどポリエステルですが、ポリエステルの蚊帳は熱がこもりやすい傾向です。

 ですので、内部の空間が広い蚊帳を選んだほうが、より蒸れにくく、より快適に過ごせるわけです。

 蚊帳の高さが低ければ低いほど、熱がこもりやすく、熱帯夜などはでは、息苦しさがあるかもしれません。

 以上の理由から、蚊帳を選ぶなら、天井まで充分な空間がある日本の伝統的な四角い蚊帳を選ぶのが、ベストの選択となるわけです。

蚊帳のセッティングの手間は?

 伝統的な四角い蚊帳は、吊る箇所が4か所と多くなってしまい、1点で吊るせるモスキートネットや、吊るす必要がないワンタッチ蚊帳にくらべると、セッティングがたいへんそう、と感じるかもしれません。

 しかし、吊ることそのものはそんなに悩む必要はないでしょう。

 まず、和室であれば鴨井のうえにある「長押し」に簡単にひっかけることができます。

 マンションでも、蚊帳は軽いので、石膏ボードフックなどで簡単に吊る場所を確保することができます。

 また、蚊帳は毎晩出したりしまったりする必要はないということも覚えておきましょう。

 吊るタイプの蚊帳は毎晩セッティグがたいへんでは? と思うかもしれませんが、基本、蚊帳はワンシーズン、吊りっぱなしでかまわないのです。

 日中は、蚊帳は吊ったまま収納します。裾を蚊帳の上に折り返して畳むようにして、浮かした状態で日中は過ごします。そうしておけば、掃除の邪魔にもなりませんし、夜になったらくるっと広げられるので、蚊帳をセッティングする途中で、蚊帳の中に蚊が入ってしまうことも避けられます。

 一方で、傘のように折りたたみができる、ワンタッチ蚊帳であれば出し入れが簡単ですので、毎日、出したりしまったりできます。

 狭い家では、蚊帳をつりっぱなしにできないこともあるかもしれませんが、ワンッタッチ蚊帳は空間が狭く熱がこもりがちなので、快適性という点では、やはり、和式の大き目の蚊帳がおすすめです。

▲麻の蚊帳は、熱伝導率の関係で、化繊よりも涼しくなる

日本の伝統的な蚊帳の魅力

麻の蚊帳が涼しい理由

 伝統的な日本の蚊帳は、綿や麻で作られてきました。

 現在の主流はポリエステルなどの化繊ですが、なんと言っても、機能性が高いのが麻の蚊帳です。

 麻は繊維のなかでも最も熱伝導率が高く、ポリエステルの3倍も熱を伝えやすい性質があります。熱伝導率が高いと、温度が高い方から低い方へ熱を伝えていく、つまり、熱を逃がす力が高いことを意味しています。

 蚊帳の場合は、蚊帳の中にこもった熱を、外に逃がす力が、素材の熱伝導率によって変わってくるわけです。

 麻はポリエステルの3倍の熱伝導率があるために、麻がポリエステルに比べて蚊帳の中がだいぶ涼しいということが、科学的にも言えることなのですね。

 さらに、麻の繊維はケバだっているため、少し大き目のメッシュでも、蚊が通りにくくなる、という特徴もあります。繊維のケバのおかがで、メッシュを荒めにしても蚊を防げるので、そのぶん風通しが良くなります。

 麻の蚊帳は、値段も高く高級品ですが、それだけの価値はあるわけですね。

蚊帳で有名な大和・近江・越前

 日本の蚊帳の歴史は奈良時代に中国より伝わったとされています。稲作の普及で蚊が増えたと同時に、蚊帳も広まっていきます。

 当初、細かい織物で手がかかる蚊帳はとても高級品で、貴族だけが使える高級品でしたが、江戸時代にかけて、徐々に一般人も手に入れるようになっていきます。

 蚊帳が普及していくなかで、大和(奈良)、近江(滋賀)、越前(福井)の3つの蚊帳の産地が発展していきます。

 日本の蚊帳づくりの発祥の地は大和(奈良)です。奈良でははじめ、綿の蚊帳が作られていたようですが、その後、琵琶湖の湿気が麻の加工に良いということで、近江(滋賀)で、麻の蚊帳が作られるようになりました。

 また、麻の産地である越前でも蚊帳の産地が生まれ、現在でも、奈良、滋賀、福井の3県で作られている蚊帳が、有名です。

 江戸時代は、萌黄色に染めた麻の蚊帳生地に、紅布で縁取りをしたデザインが定番として、日本の伝統的な蚊帳文化が定着したわけです。

 戦後になって化学繊維の蚊帳作られはじめた頃から、一方で、家屋のアルミサッシやエアコンが急速に普及しはじめていき、蚊帳の必要性が急速に無くなっていき、やがて蚊帳は時代の先端からは忘れさられる「過去のもの」となりました。

 ところが、近年、温暖化の影響で害虫や伝染病のリスクが高まったり、エコ志向の高まり、アウトドアブームの影響もあって、蚊帳が再び見直されているわけです。

 次の章からは、最近、人気が高まっているさまざまなタイプの蚊帳をみていきましょう。

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都会で蚊帳は必要ない?

 蚊帳は、サッシもないような古い民家ではマストアイテムですが、都会のエアコンのある家では、敢えて使う必要も無いとも思えます。

 まず、都会では、窓を開けっ放しで寝ることの、防犯上の問題があります。マンションの高層階などでは、開けっ放しでも防犯上問題ないでしょうが、逆に、高いところは蚊は少ないですね。

 いずれにせよ、サッシの網戸があれば、万が一室内に蚊が侵入しても、蚊取り線香を15分ほど焚いておけば、室内の蚊は防除できます。

 また、とくにポリエステル製の蚊帳は、熱がこもりやすい、という特性がありますので、ヒートアイランド現象で熱帯夜が続く都会の室内では相性はあまりよくありません。

 田舎暮らし経験では、蚊帳の中が蒸れて寝苦しいという経験は、ほとんど無かったのですが、都会のマンションなどでは、風通しが無く、夜は建物そのものが熱を持っていて温度が下がらないため、蚊帳のなかはどうしても蒸し暑くなるはずです。

 以上のようなことから、都会では、蚊帳をあえて使う必要は少なそうなのですが、そうしたなかでも、最近、蚊帳が再注目されていきています。

 その背景には次のようなニーズがあります

さまざまな蚊帳の活用ポイント

・温暖化でムカデが増えているため、ムカデ避けを兼ねた蚊帳

・伝染病リスクなども増え、赤ちゃんが心配

・アウトドアや車中泊で使いこなせる蚊帳は?

・お姫様ベッドで、気分上々のモスキートネット

 以下に、それぞれについてもう少し詳しくみてみましょう。

ムカデ対策の蚊帳

 ムカデは温暖化で、最近増えている害虫です。ムカデは、マンションなどでは目にすることは少ないでしょうが、木造の家屋では、床や畳の隙間などから侵入して、何気にふとした瞬間に、部屋の中を、ササさーと駆けていくことなど、夏になると、けっこうしょっちゅうありますよね。

 蚊はサッシの網戸で防げていても、ムカデは防げていないケースがあるわけですね。

 ベッドならまだしも、畳にお布団を敷いて寝ている場合、ムカデはかなりの恐怖ですし、実際に噛まれる被害も少なくありません。

 とくに最近は温暖化の影響で、ムカデも巨大化し、その活動期間も長くなっているといわれています。

 そんな状況のなかで「ムカデを防ぎたい!」というニーズが高まり、近年、人気があるのが、ムカデ対策ができる床付きの蚊帳です。温暖化の影響で、蚊というよりも、ムカデ対策として、蚊帳への注目が集まっているわけです。

 床とネットが一体となった、ドーム型テントのような蚊帳は、若干、圧迫感があり、場合によっては暑苦しいさも感じるかもしれません。

 が、あくまでムカデ対策用として、エアコンをかけた室内で使えば、暑苦しく無いですし、エアコンの風もやわらげるので、赤ちゃんへのムカデ対策としても、有効です。

▲フロアシート付きのワンタッチ蚊帳はムカデ対策にもなり便利

赤ちゃん用の蚊帳

 ベビーベッドの上に被せるタイプなど、赤ちゃん用の蚊帳も、最近注目されています。

 赤ちゃんの健康を考えると、スプレー式殺虫剤や蚊取り線香にできるだけ頼りたくないところです。また、最近は、蚊が媒介する伝染病のリスクが温暖化で高まっていることも心配ですよね。

 そこで、ベビーベッドに蚊帳を被せて、赤ちゃんを完全に蚊フリーにしてあげたい気持ちはわかります。

 ただし、ベビー用蚊帳で注意したいのは、蚊帳の中が蒸れることです。

 あせものことを考えると、赤ちゃんが暑がる状態は極力避けたいですよね? でも問題は、ベビー用の蚊帳では、実際に、中がどれくらい蒸れたり暑苦しくなっているか、外からではわかりにくいものです。

 そこで、赤ちゃん用の小さな蚊帳ではなく、ママやパパも一緒に入れる大きな蚊帳をつるして、そのなかにベビーベッドをおくことをお勧めします。できれば麻の蚊帳が最適です。

 大きな蚊帳は、熱がこもりにくいですし、熱い空気は上のほうに逃げて行ってくれます。

 なにより、親も一緒に入れるので、蒸れていないか?常に確認できますし、また、蚊帳のなかに蚊がはじめから紛れ込んでいないか?チェックすることもできるので、とにかく安心です。

▲ベビー蚊帳は、暑さに注意。中が蒸れてないか?こまめなチェックが必須。レンタル品がお得。

アウトドア用の蚊帳

テントタイプの蚊帳を使いこなすポイント

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蚊帳タイプのメッシュテントは、タープと組み合わせて使いこなそう。

 アウトドアではテントのインナールームとして、メッシュの蚊帳がセットされていることが多いですね。

 とくに、ダブるウォールのワンポールテントでは、メッシュのインナーテント単体で建てることができるので、「蚊帳テント」のようにして使えます。

 蚊帳だけのテントもありますが、若干、上級者向けです。風雨のことを考えると、蚊帳だけを使うのではなく、タープやシェルターなどと上手く組み合わせることが、必要になってくるからです。

 アウトドア初心者は、やはりインナールームがセットになったテントを使うところからはじめたほうが良いでしょう。⇒「ワンポールテントの選び方」の記事を参照してください。

 また、四角い屋根のワンタッチタープの壁面がメッシュになっているものも、アウトドアでは重宝します。

 後付けでメッシュをタープに被せて害虫フリーにするメッシュ・スクリーンもあります。

 ファミリーやグループでアウトドアでわいわい楽しむ時は、このワンタッチタープ+メッシュスクリーンの組み合わせがベストですね。

▲アウトドアでは、タープと蚊帳が一体となったものが、最も使いやすい

 さらに、野宿用には、寝袋にすっぽり被せる蚊帳もあります。顔の部分はネットが浮き上がるようになっていて、ネットの外から刺されないようなっています。ただ、この寝袋型の蚊帳を実際に使いこなすのは、かなり熟練が必要
です。

 バックパッカーが野宿で旅を続ける場合は、寝袋型の蚊帳よりもフロアのついたテント型の蚊帳とタープを組み合わせて使う方が、現実的でしょう。

車中泊用の蚊帳は?

 アウトドアブームの流れのなかで、車中泊ga人気です。

 夏の車中泊では日中に暖められた車内の空気がなかなか抜けきれず、暑さ対策が欠かせません。

 暑さ対策と言っても、カーエアコンを使うためにずっとアイドリングしておくわけにもいきません。

 そこで活躍するのが車中泊用の蚊帳です。

 車をすっぽり覆うタイプのものや、ドアにすっぽり被せて車の窓を網戸化するタイプなどいくつかのタイプの蚊帳が販売されています。

 車内に自然な夜風を取り込みながら、蚊に悩まされることなく、車中泊ができれば、アウトドアの行動半径も広がります。

 防犯上のことも考えて、オートキャンプ場やRVパークなど、車中泊向けの施設で使うようにしましょう。

▲車中泊用の蚊帳には車ごとすっぽり覆うタイプや窓を網戸化するタイプなどがある。

お姫様ベッドで天幕の蚊帳を楽しむ

  さて、ここまで、日本の伝統的な蚊帳や、アウトドア用の蚊帳などについて見てきましたが、もうひとつ、秘かな人気になっているものに、モスキートネットがあります。

 モスキートネットは、西洋の伝統的な蚊帳で、くさび形やベル型をしています。

 お姫様ベッドの天幕のようなかたちですので、ベッドルームのゴージャスなインテリアになります。ベッドルームの雰囲気を盛り上げるのにはバッチリ効果的です。

 また、蚊がフリーになるという効果以上に、包まれている安心感があり、メンタルリフレッシュが期待できるアイテムです。蚊の侵入がそれほど気にならない都会のマンションなんかでも、それなりの用途があるのがモスキートネットなのです。

 ただ、モスキートネットは、日本の蚊帳に比べると天井に近づくにつれて狭くなっているので、立ち上がっての行動が制限されますし、比較的熱がこもりやすく、機能性では、日本の四角い蚊帳のほうが勝っています。

 ですので、モスキートネットを選ぶ場合は、サイズに充分に余裕をもたせて、できるだけ大き目のものを選ぶことをおすすめします。

▲ベッドルームのムーディーな演出には、モスキートネットがエモい。

 

 

 以上、蚊帳について、基本的な使い方から、シーンごとの活用方法について見てきました。通販などで蚊帳をゲットする際の参考にしてください。

 それでは、蚊帳を上手に使いこなして、ヘルシーで快適な夏を過ごしましょう!

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