押し花の色褪せを防ぎ長持ちさせる保存・保管方法は?
2019/07/30
押し花の色あせをできるだけ防ぎ、長持ちさせるためには、どんな押し花の押し花の作り方と保存方法があるか整理してみました。
押し花といえば、百科事典や電話帳の間に新聞紙に載せた花をはさんで放置して作る…と思っていませんか? 実は、押し花は奥が深く、シリカゲルや電子レンジを駆使して、できるだけ色を落とさず作る方法がたくさんあります。
また、完成した押し花を、額に入れて飾ったり、レジン樹脂を使いスマホケースを作ったりと、作った後の押し花の処理もさまざまです。
それぞれのやり方の長所短所を整理しながら、色あせず長持ちする押し花作りの正しいやり方を探っていきましょう。
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押し花の発色や色あせは、作り方と保管方法でぜんぜん違ってくる
押し花は、作り方や仕上げ方、保存・保管の方法によって日持ちがまったく違ってきます。特に色あせはやり方次第で、数週間~数カ月で褪色(たいしょく)してしまうこともありますし、3年から長いものでは5年もつこともあります。ただし、どんなやり方をしても、半永久的にもつわけではありません。
ですから、せっかく押し花を作ったら、できるだけ長く綺麗な色を残して長持ちさせたいものです。
そのためには、
・押し花の作り方
・押し花の保管方法
がとても重要になってきます。
押し花が色あせ劣化していく原因は
・湿気
・酸化
・紫外線
の3点です。押し花の保存・保管には、これら3つの劣化要因をいかに防いでいくかです。しかし、まずその前提として、「長持ちするための押し花の仕上がり」が大事です。
押し花が長持ちするのに、まず大切なのは充分乾燥されていることです。乾燥具合をチェックするには、
・持った時にダラりとせずピンとしていること。
・触った時に冷んやり感が無いこと
などのポイントがあります。
さて、しっかり乾燥していることが押し花が長持ちするポイントですが、色を綺麗に出すためには、できるだけ短い時間で乾燥させることが大きなポイントになります。
押し花に限らずドライフラワーでは、短時間で脱水することで、格段に褪色を防ぐことができます。その理由について、少しだけ難しくなりますが、だいじなポイントですので次に簡単に説明します。
植物の色は、細胞内の「色素分子」によって生まれますが、色が発色するためには、色素の周りを取り巻く環境が重要です。色素分子そのものだけではなく、周囲の分子やイオンの状態がどうなっているか? 中性か酸性か?というph(ペーハー)が複雑にからみあてっています。
たとえば、押し花では、赤い色より青い色が残りやすいですが、赤は色素細胞の周囲が酸性でないと発色しません。一方、青は中性でも安定するため、乾燥後も比較的変化しにくい色となっています。
さて、植物が乾燥していく過程では、色素分子の周囲の環境が変化して、さまざまな生化学反応が引き起こされます。
乾燥していく過程が長ければ長いほど、生化学反応は複雑になり、色素分子を取り巻く環境はが大きく変化して、結果、はげしく色あせてしまいます。
逆に、乾燥する時間が短ければ、色素分子周辺の生化学反応は少なく、色の変化も最小限におさえれられるのです。
もともと圧力をかけて水分を押し出す押し花ですが、色あせない押し花を作るために「できるだけ早く乾燥させるには?」どうしたらよいか?という観点から、さまざな押し花方が編み出されています。次の章では、そうした押し花のいろいろな方法をみていきましょう。
押し花の作り方と色褪せ
押し花作りにはいろいろな方法がありますが、いずれの方法も、いかに花の中の水分を取り除くか?がポイントになります。シリカゲルや電子レンジを使い、効率良く水分を除去するわけですが、除去した水分をうまく排出するため、ダンボールを併用するなど、さまざまな方法が考えられます。
どの方法が、どういう長所短所があるか、混乱しないために把握しておきましょう。
重しをして作る
押し花を電話帳にはさんだり、新聞紙にはさみ上から百科事典など重ねる、古典的な押し花の方法です。乾燥するのに時間がかかるため、色素分子が変化して、色は褪せてしまう方法です。また、圧力をかけ植物細胞を傷めるため、押し花にしたあとの日持ちもやや短くなります。
この方法は原則、色あせますが、セピア調の風合いこそが押し花っぽい、という意味では、敢えてこの方法で押し花を作るのもありです。
新聞紙や電話帳に挟む場合は、本の色移りを防ぐためにティッシュを間に挟みましょう。キッチンペパーを使うとペーパーのデコボコが仕上がりに影響します。
ダンボールの吸水性を利用
重しではなく、ダンボールに挟み輪ゴムで縛り軽く加圧することで作る押し花の方法です。
ダンボールは吸水透湿性が高い素材ですので、本に挟むよりも、早く乾燥させることができます。また、本ほど圧力をかけずに細胞の破壊も少なくなります。手軽にできて、なおかつ色もそこそこ残しやすいバランスの採れた方法です。家庭にある材料だけでできなおかつ、本の重しよりは発色が良いので、人気のあるやり方です。
ダンボール→ティッシュ→花→ディッシュ→段ボールのセットを4段くらい重ねてからゴムで縛り、1週間ほと放置します。
押し花シートを利用
シリカゲルなどの乾燥剤をシート状にしたもので、押し花専用に開発された押し花シートを使って作る押し花です。基本は、本などの重しと併用して使います。
乾燥力がとても強いのが特徴で、綺麗な色を残すことができます。押し花教室で使うメインの方法であり、また、押し花を素材にした押し花アートの材料を作るのにも適しています。花材の下処理をすれば、どんなものでも押し花にできてしまいます。たとえば、中身をくり抜いて野菜の押し花なども作れます。どんな素材にも対応できる、最もスタンダードな押し花方法だといえます。
花材によって、花芯をくり抜いたり、茎ごと半分に縦に割ったり、葉にサンドペーパーをかけたり、さまざまな下処理の技を組み合わせることで、どんな花でも美しい色を残した押し花が作れます(赤系のものはクエン酸などにより後処理をします)。
押し花シートは、厚めの花を押す場合は、厚が均一にかかるように押し花クッションを使ったり、押してる途中に湿度が加わらないよう、全体を防湿性のビニール袋に入れてから、重しの下に挟みます。欠点としては、厚みがあり湿度が多い花の場合は、途中で防湿シートを交換しなければなりません。このへんが経験が必要なところで、完璧に使いこなすには経験が必要になってきます。
アイロンで押す押し花
チリ紙や布などに挟んだ花材を、100度~120度の低温のアイロンにあてて、押し花を作る方法です。
15秒当てて15秒休む、のように断続的に何度もアイロンを当てます。アイロンを水平に動かす必要はありません。
アイロン押し花方法は、もともと桔梗(キキョウ)など分厚い花や葉っぱなどを処理する、特殊な方法です。短時間でできる方法ですが、熱を加えることから後の日持ちにも影響を与えますし、完全に乾燥できているかどうか確認しにくいため、特殊な目的以外はあまりおすすめできる方法ではありません。
電子レンジで作る押し花
最近では、電子レンジを利用した押し花がスタンダードになりつつあります。
最も色が褪せないのも、電子レンジを使った方法です。電子レンジを使う方法のなかでも、色が褪せないもっとも良い方法は、シリカゲルの中に花を埋め込んでからレンチンする方法です。これは、押し花というよりも、ドライフラワーのやり方ですね。
一時期はセラミック製の電子レンジ専用の押し花プレスなどがありましたが、今では、ダンボールやシリカゲルなど身近な材料を併用して手軽に作る電子レンジ押し花が主流です。
ただ電子レンジで作る方法は、焦げたり煮たってしまったりする失敗するリスクが高いこと。貴重な花素材などを処理する場合は、ちょっと心配です。また、全体に、花が縮れ気味になってしまうという欠点もあります。
さまざまな技法を組み合わせた色褪せない押し花方法
重し、ダンボール、押し花シートなど、電子レンジ、と押し花作りの基本技術があるわけですが、これらをいろいろ組み合わせることで、実にさまざまな押し花の作り方が編み出されています。
たとえば、押し花シートをダンボールで挟み、さらにダンボールの外にシリカゲルを敷いて、押し花シートの交換を不用にする方法だったり、ダンボールの小さな箱を作り花を布で押さえシリカゲルを周囲に置いてレンチンする方法などなどいろいろあります。
正直、どれがベストな方法とは言い切れず、押す花の種類や花の仕上がり、かかる手間など総合的に判断しながら、自分にあったやり方を見つけていきましょう。
押し花の保存・保管方法と日持ち
乾燥した押し花を、できるだけ長く保存するには、乾燥剤などともに密封してできるだけ光に当てずに冷暗所保管することです。ただ、しまい込んでしまったら、押し花を楽しむことができず、学術用の保存のためならともかく、見て楽しまないことには意味がありません。
そこで、さまざまな保管方法と日持ちや色褪せの程度について整理してみました。
押し花額に入れる
額の中に乾燥剤とともに押し花を封入するこの方法が、押し花が最も長持ちする保管展示方法です。
額に封入する方法は、押し花を使って絵を描く「押し花アート」の世界で開発されて定着した方法です、手間がかかりますが、3年からうまくいけば5年以上色あせずにもちます。
基本的には額の裏側にシリカゲルを張り付け、アルミ箔を使って封印します。より確実に長持ちさせるために、脱酸素剤を同時に封入したり、額のガラスにUVカットアクリル板を用いたり、シール地にポンプで減圧しながら密封性を高めたりと、さまざまなバリエーションの技があります。
押し花アイロンシート・押し花シール
押し花アイロンシートは、アイロンを使い押し花を紙や布地の上にシールコーティングできるものです。絵葉書やコースターに押し花を張り付ける定番の方法です。
特に布地などでは、コーティングの押し花シートが溶けて下の布地と綺麗に密着するため、コーディング力が強く、1年くらいは色あせずに持ちます。コーティングの仕上がりも美しできます。
何にでも張れるシールを作れる押し花アイロンシートもあるため、押し花を手芸やインテリア、アクセサリーに活用するには、欠かせない素材です。
透明なシートと剥離紙がセットになっていますが、アイロンの当て方や剥離紙をはがすタイミングを間違えると失敗するので、説明書をよく読んで使いましょう。
また、アイロンのかわりにラミネーターを使ってパッキングする場合もありますが、フィルムはあくまで押し花アイロンシートを使うべきであってラミネートフィルムでは代用できません。
押し花和紙
押し花和紙は押し花をコーティングする薄い和紙です。主に絵葉書や手紙などに、押し花を添えるのに使われます。押し花和紙として販売されているものだけでもなく、ふつうの極薄の和紙でも使えます。
和紙のナチュラルな風合いが押し花との相性が良く、最も押し花らしい保管方法と言えるかもしれません。スプレー糊を使い固定しますが、艶を出したい場合は、シリコンゴムコーキングを併用するなどの技があります。
和紙であるため湿度や酸化の保護能力は劣りますが、電話帳などで作った、伝統的なセピア風味の押し花であれば、むしろテイストが合っていますし、1年くらいは色褪せを防ぎます。
ラミネート
手軽にしおりなどが作れるラミネーターですが、ポリエステルフィルムはガスバリア性がほとんど無く酸素や湿度を通します。また紫外線もまったく通しますので、思いのほか、押し花の色あせをふせぐ保護能力はありません。
ラミネートで押し花しおりを作ろうとしても、素材の周囲に空間ができたり、台紙の縁を残さないといけなかったりで、仕上がりも素人っぽいものしかできません。ですので、仕上がりを重視して保存性も期待するなら、ラミネートシートではなく押し花アイロンシートを使いましょう。
なお、押し花アイロンシートをアイロンでなくラミネーター機械を使ってパッキングする方法はありです。
樹脂(UVレジン・クリスタルレジン)
100均などでもUVレジンが入手しやすくなり、樹脂を使ってちょっとしたアクセやスマホケースなどに押し花を封入するのが流行っていますね。
密封されるので長持ちしそうですが、あんがい、早く色褪せてしまうことがあります。スマホケースなど苦労して作っても、数カ月で色あせてしまうこともよくあるので、そのへんはわかったうえで使うようにしましょう。
UVレジンは作成時に色あせの原因となる紫外線をあてますし、封入する押し花が乾燥したと思っていても、どうしても、湿気が残っていて、その湿気の逃げ場もなくなるため、あんがい早く劣化してしまうことが多いのです。
ただ、紫外線を照射しないクリスタルレジン(エポキシ樹脂)を使って、数年間色あせないドライフラワーを作るノウハウなどもあります。ただし、クリスタルレジンは配合を正確にしたり気泡が抜けにくかったりとUVレジンに比べて難易度が高いです。
樹脂で押し花を封入するのは、ネイルのような短期間のものには向いていますが、長期保管用としてはハードルが高いということですね。
アフターブーケなど生花を保存するには?
さて、ここまで、押し花の色を落ちを防ぐ方法を見てきました。
いろいろな押し花の方法や、保管の方法を組み合わせることで、できるだけ長く色を保ったまま保管できそうです。
ここまで見てきたように、電子レンジとシリカゲルを使ったドライフラワーを乾燥剤とともに額に封入する方法がもっとも発色良く長持ちできそうです。
ただシリカゲルレンジ方法が「押し花」か?というと曖昧で、ドライフラワーともいえます。しかし、そもそも押し花でもバラのような立体的なものは、一度花びらを分解して額に入れる時に並べて描画する方法がとられます。ですから、素材作りの過程で押し花とドライフラワーの境界が無くなってくるわけです。
あくまで「押し花」ということにこだわり、なおかつ色持ちを重視するなら押し花シート+アイロン押し花シートの組み合わせが、もっとも押し花的なのかもしれまんね。
さて、ここまで見てきたように、押し花の色もちは、半永久的ということは無いというポイントはあらためておさえておきましょう。
乾燥されているとはいえ、あくまで、押し花の色素分子は有機物ですので、どんな方法を使っても、おそかれはやかれ崩壊してしまうのです。
これはドライフラワーにも言えることで、天然色素である以上、どんなにしても5年くらいでは色あせてしまうものだ、というわけです。
押し花やドライフラワーをクリスタル樹脂に封入しても、ハーバリウムにしても、数年後の色褪せは防ぎようがない宿命なのですね。
結婚式のブーケなど記念の花束を、後に残すのに、押し花やドライという選択肢もあると思います。
記念の花束などを末永く色合いを残すためには、天然の色素にこだわることなく、着色やプリザーブドフラワー化したうえで保存する方法を考えた方がよいと思います。
いずれにせよ、アフターブーケなどは、手作りしてみたいという気持ちもあるでしょうが、長持ちさせるという点では、プロのサービスに頼んだ方が仕上がりなどの点でも安心だと思います。
押し花やドライで長期保存加工するプロのサービスの利用法
記念の花を、ナチュラル感あふれる押し花・ドライ加工で保存
記念の花束をいつまでも大切に保存しておきたい…。そんな時に、最近はプリザ加工したり、あるいははじめから保存することを考えて生花の花束ではなくプリザの花束にすることも少なくありません。
ただ、プリザではなく、生花の花束を、ドライや押し花など、より自然な形で残したいという、こだわりもあると思います。
そんなこだわりを持つ方にお勧めしたいのが、プロによる押し花&ドライサービスなのです。
このサービスは最もニーズが高い結婚式のブーケがメインですが、謝恩会・お祝い・コンサートなどなど記念の花束なら何でも、押し花&ドライ加工を受け付けています。
ドライ・押し花・3D押し花など選べるプロの技
このサービス独自のおすすめの技術は、押し花をさらに立体的に組み上げる3D押し花。記念の花束のイメージを活かした立体感のある押し花です。
押し花とドライを比較した場合のそれぞれの特徴はどんな感じでしょう?
ドライは立体感を残したまま、ブーケや花束の状態や鮮度によっては、そのままの形で保存できるところです。ただ、色味は押し花にくらべるとやや淡くなります。また、鮮度が必要なため、花束をもらってから3日後くらいで加工が必要です。
一方、押し花の方は、花束やブーケを分解するので立体感は残りませんし、花の大きさも一回り小さくなります、がそのぶん色味は濃ゆくなります。また「3D」押し花にすれば立体感や花束・ブーケのイメージも保つことができます。押し花の場合は花束をもらってから4~5日後まで加工が可能です。
花束をもらってからの注文・メンテ対応も充実
結婚式のブーケはもちろん記念の花束を保存加工できるこちらのサービスは、急な対応も可能なので、「花束を保存したい!」と感じた時は、まずは相談してみることをお勧めします。
また、これまでの記事で述べたように押し花やドライの色味は、どうしても時とともに色あせていきます。このサービスでは、メンテナンス対応もしているのが嬉しいところ。難しい押し花の色褪せ対策を、プロの技で、いつまでも美しくキープしてくれます。
このサービスの特徴をもう一度まとめておきます。
・結婚式のブーケはもちろん、記念の花束なら何でも押し花またはドライ加工で長期保存
・花束をもらった当日からの急なオーダーにも応相談
・美しさをキープするメンテナンスにも対応
……記念の花束を、もちろん自分で押し花にしても良いのですが、プロの技術で大切な思い出を末永く保存できるようにするのも、ありですね。
以上、押し花の色合いを長持ちさせる方法について、いろいろな角度から見てきました。
発色の良い押し花を作るのは、奥が深い世界です。押し花の花材によって、いろいろですし、資材の使いこなしかた、トライアンドエラーを少しずつ経験を積んでいくか、押し花教室に通ったりというのもありだと思います。
一方、押し花なら少しくらい色あせているほうがテイストがあるという考えで、手軽にティッシュと新聞紙と本だけで押し花を楽しむのもぜんぜんありですよね。
癒しと楽しみを届けてくれるお花に感謝しながら、押し花を楽しみましょう!