梅林(関東)のおすすめ一覧と観梅のコツ。関東地方の梅の見ごろ時期

      2023/01/03

梅林

春を告げる花といえば梅。桜にくらべると、ついつい見逃してしまいがちな梅の見頃。でも、「桜よりも奥が深い」といわれる梅の魅力に触れずに春を迎えるのは、なんとももったいない話です。

梅の花をじっくり鑑賞するには、梅林がおすすめです。

ただし、梅林には、花梅中心、実梅中心のところがあり、それぞれ見ごろ時期が違います。また、紅花と白花のバランスや、植えられている品種なども、梅林ごとでそれぞれ違ってきます。

この記事では、関東地方の代表的なおすすめ梅林の特徴を解説するとともに、梅の花を観賞する際に是非とも知っておきたいポイントなどについても見ていきたいと思います。

梅の花の楽しみ方

梅林に梅を見に行く前の予備知識として、簡単に、梅の花を見るポイントを整理しておきましょう。どの梅林に行くか?を決める参考にもなります。

梅の花を楽しむポイント

・梅林に植わっている品種の傾向をチェックしましょう

・咲き始めの梅を訪ねる『探梅(たんばい)』が風流です。

・近づいて見て、さまざまな花のかたちや蕾や香りを堪能しましょう

・梅にまつわる美しい言葉を知れば、いっそう奥深い楽しみに。

関東のおすすめ梅林を紹介する前に、これらのポイントについて、もう少しだけ詳しく解説しましょう。梅林の紹介へお急ぎの方はこちら⇨⇒『関東地方のおすすめ梅林8選+リスト』からごらんください。

梅・実梅のどちらがメインの梅林か?をチェックする

梅の花は、まっさきに春を告げるものとして、昔から親しまれていました。

「春告草」「花の兄」「百花魁(ひゃっかさきがけ)」などの別名を持つ梅は、春先に、最も早くから咲き出す花です。

短歌の題材にも歌われたり、デザインの題材となったりと、桜とならんで日本の文化には欠かせない花です。

ぱっと咲いてぱっと散る桜にくらべると、梅は、じわじわと咲いてくるタイプで、開花期間も長めです。

品種によっても開花時期が異なりますので、花梅の各品種を織り交ぜて植えてある梅林では、晩冬〜初春にかけて長い期間、梅の花を楽しむことができます。逆に、実梅の生産を目的とした梅林では、開花期間は3月上旬など、遅めで短めになります。

花梅の花を楽しむ3つのスタイルとは?

梅の花を鑑賞する粋なスタイルとして、『探梅』『賞梅』『送梅』が古くから言われています。

探梅(たんばい)は、早咲きの梅を野山に探しながら鑑賞すること。

賞梅(しょうばい)は、最盛期の梅をじっくり鑑賞こと。

送梅(そうばい) 散りゆく梅を惜しむように鑑賞する意味

このように、開花時期の長い梅ならではの、タイミングごとの観賞の仕方があるわけですね。

とくに、咲き始めの頃に、梅の花を探しにいく『探梅』は、晩冬の季語にもなっていて、季節感を感じさせるものです。今のように情報があふれていなかった時代には、「そろそろ梅のほころぶ時期かな?」と思ったら、梅のほころびを探しに、実際に野山に出かけてみる必要があったはずです。

美しいものを見るためだけに、わざわざ労力をかける『探梅』は、ことさら粋な楽しみとされていてたのでしょう。

ちなみに、探梅のほか早梅、寒梅、冬至梅なども冬の季語とされています。

▲梅ふふむ

蕾や香りをじっくり味わおう

梅を楽しむポイントの一つとして、近づいてじっくり観察する、というのがあります。

桜は、遠目から全体を見て眺めて楽しむことが多いですが、梅は、桜のように枝を隠して覆いつくすほどは花が茂らないものです。

もちろん遠目から見る梅も美しいのですが、梅は、枝に近づいてじっくりと、枝と蕾と花の姿とバランスを鑑賞するのが良いとされます。

とくに梅の蕾は、そのまん丸で愛くるしい姿と、寒さのなかでもじっと耐える様子に生命力を感じ、パワーをもらうことができます。

梅の蕾をあらわす言葉に、「梅ふふむ(梅含む)」があり、俳句では春の季語となっています。なんとも風情があり、いまにも芽が動き出しそうな小さな躍動が感じられる言葉ですね。

また、近くで見ると、品種ごとの花の違いが良く観察できます。花弁の数や形、めしべやおしべの色や長さなどにも注目して、いろんな品種を比較してみると、興味がつきません。

なかには雄花が旗のように変化した「旗弁」が見られる品種もあります。(「旗弁」については⇒『花梅・実梅。梅の種類についての基礎知識』のページもご覧ください。)

こうした細やかな観察が、梅の花を楽しむ醍醐味です。

もちろんその時に、馥郁(ふくいく)たる香りを楽しむことができます。品種によって香りがの強さも違うので、香りをかぎ分けることも興味が尽きません。ちなみに、「馥郁たる香り」とは「良い香りに満ちあふれていることを指す言葉」ですが、梅の香りを表現するときによく使われる言葉です。

ここまでみてきたように、日本人は、長い歴史のなかで、いろいろな言葉の表現を使いながら、梅の花を観賞してきたことがわかります。

こうした梅見にまつわる教養をちょっと知っておくだけ、観梅に深みが出てくるものです。

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関東地方おすすめの梅林

 それでは次に、関東地方で、おすすめの梅林を紹介していきます。

関東でナンバーワンの梅林だった、東京・青梅の吉野梅郷が、2014年にプラム・ポックス・ウィルス病のため全伐採となってしまうという悲しいニュースがありましたが、関東にはまだまだ見ごたえのある梅林が沢山あります。

そのうちのいくつかを紹介していきましょう。(ちなみに吉野梅郷は、2017年より再生のための植樹がはじまっています。)

高尾梅郷

●開花時期;2月中〜3月中 ●梅本数:1万本 ●花梅中心

 高尾山麓の旧甲州街道沿いの南浅川一帯に総数1万本の紅梅・白梅が植えられています。もともと旧街道沿いに点在していた梅をボリュームアップするかたちで1960年代から植樹されてできた梅郷です。梅林遊歩道・関所梅林・天神梅林・新井梅林・湯の花梅林・木下沢梅林と、4.5kmにわたる梅の郷に点在するポイントは、片道1時間半ほどかけてゆっくりハイキングしながら巡ることができます。

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▲青梅梅郷が無い今、高尾梅郷に注目が集まっている。

湯河原・幕山梅林+熱海梅園

●開花時期;2月中〜3月上 ●梅本数:3000本 ●梅種類:紅梅・白梅 

 湯河原駅からバスで15分ほどの幕山公園の山腹を、紅白バランスよく梅の花がうめつくします。品種は十郎など神奈川特産の実梅のほか、咲き分け種『思いのまま』など28種類。山を10分ほど登った展望台から見下ろす、紅白のじゅうたんも見事です。隣町の熱海には、品種数が豊富な熱海梅園もあるので、あわせて訪れるのも良いでしょう。ただし熱海梅林は早咲きの寒梅種が豊富なので、見頃ピークは若干ずれます。湯河原梅林と同時にまわる組み合わせとしては、小田原の曽我梅林やフラワーガーデンもありですね。熱海梅林は品種の種類は豊富ですが、ボリューム的には湯河原や小田原のほうがまさっています。

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▲湯河原幕山梅林。山のハイキングも楽しめる。

水戸偕楽園

●開花時期;1月中〜3月中 ●梅本数:3000本 ●梅種類:花梅・実梅100種 

 偕楽園は1842年開園で江戸時代から続く関東を代表する梅園で、日本三大庭園のひとつです。水戸の名六木と言われる『白難波』『虎の尾』『柳川枝垂』『烈紅梅』『江南所無』『月影』のほか、咲き分け種の『春日野』や旗弁が見られる『香篆(こうてん)』などの特徴ある品種も植えられています。新しく増設した「猩々梅林(しょうじょう)」「窈窕梅林(ようちょう)」,「田鶴鳴梅林(たづなき)」エリアもふくめ、馥郁(ふくいく)たる梅の香りに包まれながら散策できます。

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▲やはり関東一の水戸偕楽園。

箕郷(みさと)梅林・榛名梅林+秋間梅林

●開花時期;3月上〜3月中 ●梅本数:15万本 ●梅種類:実梅『白加賀』(秋間梅林は紅梅もあり) 

 箕郷梅林・榛名梅林は群馬県高崎市にある広大な梅の生産地です。群馬県は和歌山に次いで全国2位のウメの生産量を誇っていますが、その中核産地がこの箕郷・榛名梅林です。品種は『白加賀』が中心の実梅で梅林ですので、真っ白な梅畑が見渡す限り続きます。また隣の安中市にある秋間梅林は、『白加賀』以外にも『鶯宿』『鹿児島紅』など花梅の紅梅もあります。箕郷梅・榛名梅林をメインにしたドライブで秋間にも立ち寄るコースがおすすめ。

▲箕郷梅林をはじめ群馬は梅の全国2位の産地

越生(おごせ)梅林とその周辺

●開花時期;2月中〜3月下 ●梅本数:梅林は1000本、周囲全体で2万本 ●梅種類:実梅中心 『白加賀』『越生野梅』『べに梅』など 

 埼玉県の越生梅林は関東三大梅林のひとつとして有名ですが、梅林だけでなく周囲全体が梅の産地となっていてます。関東では定番の実梅『白加賀』のほかに、生越固有の梅干し用品種の『べに梅』などが咲き誇ります。梅林には『魁雪』『越生野梅』など珍しい品種の樹齢200年〜650年の老木もあります。休日には梅林のなかをミニSLが走ります。

▲関東三大梅林のひとつ越生梅林。周囲は『べに梅』の産地。

曽我梅林+小田原フラワーガーデン

●開花時期;2月上〜3月上(フラワーガーデンは1月中〜)●梅本数:3万5千 ●梅種類;曽我…『十郎』『杉田』『白加賀』;フラワーガーデン…紅白各種500種 

 曽我梅林は神奈川県・小田原の北方に広がる、梅の生産地です。生産ですので、すべて白梅。別所・原・中川原の3梅の総称を曽我梅林と呼んでいます。北条氏時代に兵糧食用として梅生産がはじまり、江戸時代は箱根の峠越えのお弁当の梅干し需要で栄ました。観梅のポイントとしては、曽我丘陵にある見晴台から、富士山をバックにした白梅のじゅうたんの風景がハイライトです。また、曽我梅林近くの小田原フラーガーデンは2ヘクタールのこじんまりした梅林ですが、500種類もの花梅・実梅が植えられています。曽我梅林とあわせて訪れるのがおすすめです。

▲富士山をバックに白梅の畑が広がる小田原・曽我梅林

亀戸天神+小村井香取神社

●開花時期;2月中〜3月中 ●梅本数:300+120本 ●梅種類;50+85種

 亀戸天神は「飛梅」の伝説で梅とのゆかりが深い菅原道真公を祀った神社。学問の神様であり受験祈願の参拝と梅の時期が重なるのもまた季節感を感じられ風情があります。亀戸天神から北に15分ほど歩いたところにある小村井香取神社の梅林もコンパクトながら種類が豊富で見事です。ちなみに亀戸香取神社と小村井香取神社があるのでまちがえないように。

▲亀戸天神とあわせて訪れたい小村井香取神社

武蔵丘陵森林公園

●開花時期;2月上〜3月上●梅本数:500本 ●梅種類;紅白120種類

 東部鉄道の森林公園駅でおなじみの武蔵丘陵森林公園内の梅林は、小さいながらも120種類と種が豊富。ファミリーで遊べる公園です。

まだまだある、おすすめの梅林と観梅ポイント

このほかの梅林も含めて、下記にリストにまとめました。

リストの背景がピンク色のものは花梅を楽しめる梅林、白のものは実梅が中心の梅林です。

ぜひ、お気に入りの梅林をみつけてください。

関東おすすめの梅林一覧
場所 梅林名称 例年の見ごろ時期 梅本数
群馬 榛名梅林 3月上~中 12万本
群馬 箕郷梅林 3月上~中 10万本
群馬 秋間梅林 2月中~3月下 3万5千本
神奈川 曽我梅林  2月上~3月上 3万5千本
埼玉 越生梅林とその周辺 2月中~3月下 2万本
東京 高尾梅郷 2月中~3月中 1万本
神奈川 湯河原梅林・幕山公園 2月中~3月上 28品種4000本
茨城 水戸偕楽園 1月中~3月中 100種3000本
栃木 観音山梅の里梅園 3月中~下 3000本
神奈川 田浦梅林 2月中〜3月上 4種2000本
栃木 足利西渓園 3月上~中 1200本
東京 府中・郷土の森 2月中~3月上 60種1100本
千葉 阿玉台(あたまだい)貝塚梅林 1月下~3月中 40種1000本
神奈川 本沢梅園 3月上~中 1000本
静岡 修善寺梅林 2月上~3月中 20種1000本
茨城 筑波山梅林 1月下~3月上 30種1000本
千葉 坂田城跡梅林 2月中~3月中 1000本
東京 羽根木公園 2月上~3月上 60種650本
神奈川 本牧・三渓園 2月下~3月中 600本
埼玉 武蔵丘陵森林公園 2月上~3月上 120種500本
神奈川 小田原フラーワーガーデン 1月中~3月中 200種480本
静岡 熱海梅園 12月上~3月初 59品種472本
埼玉 長瀞・宝登山(ほどさん)ロープウェイ梅百花園 2月上~3月下 170品種470本
鎌倉 十二所果樹園 2月下~3月中 400本
埼玉 越谷梅林 2月下~3月中 40種300本
東京 亀戸天神 2月中~3月中 50種300本
東京 湯島天神 2月中~3月上 13種300本
東京 新宿御苑 2月中~3月中 300本
神奈川 根岸森林公園 2月上~2月下 70種300本
神奈川 小田原城址公園 2月下~3月上 250本
東京 神代植物公園 1月中~3月上 70種180本
神奈川 鎌倉瑞泉寺 2月下~3月中 150本
神奈川 鎌倉・東慶寺 2月下~3月中 150本
神奈川 鎌倉荏柄天神社 2月下~3月中 100本
東京 小村井香取神社香梅園 2月中~3月中 85種120本
東京 小石川植物園 1月中~3月中 50種100株
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関東地方の梅の開花時期

梅の開花時期と梅林の品種

梅の開花時期は、品種によって異なります。

関東地方では『冬至梅』『寒紅梅』などの超早咲きのものは12月や1月から、『白加賀』『豊後』などの実梅は3月前後から、となります。

梅林や梅の名所を訪れる場合に、植えてある品種によって、開花時期が変わってくることは、頭に入れておきましょう。

たとえば、水戸の偕楽園などであれば、超早咲きの品種をふくむ花梅が数多く植えられているので、1月〜3月の長い期間、梅を楽しむことができます。

一方、群馬の榛名梅林のような実梅の生産を目的とした梅林では、遅咲きの実梅が植えられていますので、3月上〜中旬と、時期も遅く見ごろ時期も短くなっています。

梅林を訪れる際は、花梅中心か?実梅中心か? 早咲きの品種が多いかどうか? など、品種のチェックはあらかじめしておいた方が良いですね。

関東地方の梅の開花日

関東地方の、梅の開花時期の例年の基準についてもみておきましょう。

気象庁の生物季節観測データーによると、白梅の開花の平年値は、次のようになっています。

白梅の平年の開花日(関東)
静岡 1月20日
東京 1月26日
水戸 1月31日
横浜 2月4日
甲府 2月5日
気象庁・生物季節観測データーより

このデーターの観測基準では、指標木となる梅の品種は「白梅」とだけしか指定がありません。ですので、観測している気象台ごとで品種差が出ている可能性があります。が、少なくとも、同一気象台内で、毎年どれくらい開花日が変わるかという比較はできます。

過去5年間の、実際の梅の開花日をみてみましょう。

ここ5年間の白梅の開花期(関東)
東京 横浜 甲府 水戸
2013 2/3 2/7 3/7 3/7
2014 1/19 1/26 3/11 2/27
2015 1/26 2/3 3/1 3/1
2016 1/10 1/28 2/14 2/7
2017 1/10 1/17 2/19 2/2
気象庁・生物季節観測データーより

案外、バラバラで、観測地点や年によって1カ月ほどの差がありますよね。

実は、梅は開花は、桜などに比べて、休眠期間が短く、気温に敏感に反応しやすいために、花が咲きやすい性質があります。

1月や2月のまだ冬の時期でも、ちょっと温かい日が続いただけで、花が咲くわけです。そのあと、また寒くなって雪が降り、雪化粧した梅が、しばしば見られます。

花の開花時期と温暖化の影響。

桜の開花時期は、温暖化の影響で確実に早くなっています。今では、桜は卒業式の花のイメージですが、年配の方は、桜といえば入学式のイメージをもっています。

桜の開花時期は、確実に、前進化しているようですが、梅の場合はどうでしょう?

実は、梅の場合は、温暖化により、開花が遅くなるかもしれない、とされています。

梅は、夏につけた花芽が、気温が12度以下に上がる秋に休眠し、一定の期間低温にさらされることで、休眠が打破されて、開花スタンバイの状態になります。

休眠が打破されて開花スタンバイの状態になっていないと、暖かい日が来ても、開花しないことがあります。

つまり、休眠が打破されるには一定期間寒さが必要なのです。

これが、温暖化により、低温になる日が少なくなると、休眠が打破されるのに時間がかかってしまい、結果、開花が遅れてしまうのです。

逆に、12月〜1月の冷え込みが充分だれば、温暖化で早めの春が来れば、例年より早く開花することもあり得ます。

このように、梅は天候に敏感に反応するため、開花時期が「予測しにくい」ということなのです。

梅林に出かける前は、現地に問い合わせたり、ツイッターで梅林名を検索したりして、最新の情報を確認してから、でかけるようにしましょう。

以上、梅の花を楽しむポイントや、関東地方の梅林について紹介してきました。

春の訪れを感じに、ぜひともでかけてみましょう。また、早咲きの花梅の時期であれば「蝋梅」とセットにしたお花見もおすすめです。蝋梅については⇒『関東地方のおすすめ蝋梅の名所』の記事を参照してください。

なお、ドライブで梅を見にでかける場合は、路面凍結などに充分注意が必要です。ドライバーの方は、こちらの記事⇒『路面凍結の気温や時期』の記事も参照してください。

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