切り花の長持ちする種類と、水替え・水揚げ・切戻しなどお世話のコツ
2019/07/30
切り花は、せっかくですので長持ちさせたいものです。
その美しさで、私たちの日常に癒しを与えてくれる切り花へは、感謝の気持ちを忘れてはいけません。お花は、大切にあつかい、できるだけ日持ちさせることが、最小限のマナーです。
この記事では、これだけははずせない切り花を長持ちさせるポイントと、長持ちする切り花の種類についてまとめました。
切り花のお世話をして、長持ちさせることが、とても楽しくなってくるはずですよ〜。
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切り花を長持ちさせるための3つの原則
切り花を長持ちさせるには、よく「砂糖水を使う」とか「10円玉を入れる」など、いろんな技について言われています。それは確かにひとつの方法ですが、そうした小手先のテクニックではなく、まず、本質的なところをきちんと押さえておきましょう。
たいていの花は、管理の方法をきちんとすれば、お水だけでも長持ちさせることができます。
切り花を日持ちさせ、長く楽しむためには、原則して、次のようなことが言えます。
1.できるだけ新鮮な花を手に入れる。
2.毎日の基本管理=「置き場所」「水揚げ」「水替え」「切り戻し」「葉がら・花がら取り」などをきちんと行う。
3.必要に応じて「殺菌剤」「糖類」などの切り花用栄養剤を与える。
4.長持ちする品種を選ぶ。
切り花を、できるだけ長く日持ちさせるには、これら4つのポイントをクリアしていく必要があります。
以下に詳しくみていきましょう。
新鮮な花を見分けるチェックポイント
切り花の寿命は、だいたい5日~1週間ほど。なかには3週間以上も持つ品種もありますが、標準的には5日前後と、決して長くはありません。
ですので、できるだけフレッシュなお花を花屋さんで手に入れることで、楽しめる期間が大きく変わってきます。
切り花の鮮度は、店頭でパッと見ただけではわかりにくいですし、あまりジロジロ見れない雰囲気のお花屋さんも多いと思います。
ただ、知識として、良い花を見分けるポイントを頭に入れておいて損はないはずです。じっくりと見分けるチャンスがあれば、お花選びを楽しめますし、お花屋さんの品揃えの品質をチェックすることにもなります。
はじめはなかなか見分けられませんが、以下のポイントは頭に入れておきましょう。
×花びらの色が薄く透き通っている。花びらの付け根が変色している。
〇花びらに厚みがあり色がしっかり乗っている
×花びらの縁が乾燥して縮れている
〇花びらの縁が縮れていても、みずみずしい
×ガクの先端や根元がが茶色や赤っぽくくすんだ色になっている。
〇ガクも全体に緑色でみずみずしい
×葉っぱが黄色くなったり黒や赤い斑点がある
〇葉っぱが無傷で変色や斑点が無い。しおれが無い。
×花びらが変色してつぼみでなく咲き切って萎れた花が多い。
〇つぼみが多い
新鮮な花を見分けるには、まず、花びら(花弁)を良く観察します。古いものは、透けるように薄くなり、シワになってきます。開花直後の花もシワがありますが、花びらに厚みと艶があるかどうか?である程度わかります。
次に花を真上からみて花芯の周りの花弁の付け根部分をチェックしましょう。花びらの根元が黒や茶色に変色しているものは、病気の可能性があるので、避けましょう。
次に葉っぱを見てみます。葉色の他に、葉が上を向いてピンとした感じになっているか? 小さい葉っぱも萎れていないか? もチェックします。
スプレーや小花が密集しているものは、咲き終わりの花が無いか?をチェックします。つぼみは花の種類によって、下から咲いてくるものと上から咲いてくるものがありますので、咲き終わりの花が上の方にある場合と下の方にある場合があります。
また固すぎる蕾はないか?もチェックポイントです。こちらも花の種類によりますが、緑のガクにがっしりと覆われているものは、咲かない蕾であることも多いです。ガクの隙間から花びらが見えているようなものが良いでしょう。ガクから花びらがはみ出ているのは、たいてい、蕾ではなく咲き終わりのものです。
このように、花の状態を見極めて、できるだけフレッシュなものを入手することが、花を長く楽しむ前提です。少しずつ経験を積んで、花を見分けられるようになると、切り花の楽しみも深まってきます。
なお、花市場は、全国的に月水金に開催されています。ですので、お花屋さんには月水金の午後に行けば、新鮮な入荷したてのお花に出会うことができます。
切り花を長持ちさせるコツ
お花屋さんで新鮮な切り花を選んできたら、できるだけ長持ちさせるのは、あなたの腕次第。管理の仕方を詳しくみていきましょう。
お花を置く環境は「直射日光」「風」に注意
花束を置く場所は、案外、重要です。玄関の靴箱の上とか、定番の場所はだいたい大丈夫ですが、リビングの窓際など、直射日光があたるところは、避けるべきです。日に照らされると、部分的に高温になり、切り花の呼吸活動が活発になり、エネルギーの消耗が激しくなり、結果、日持ちが悪くなります。
また、直射日光以上に注意したいのが、風です。切り花だけでなく野菜などもそうですが、風があたる所に置いておくと、あっというまにしおれてしまいます。外の風が当たる環境は少ないかもしれませんが、エアコンの風が直接あたらないように、とくに気を付けましょう。
「水あげ」の意味とさまざまな方法
さて、次は、切り花を扱う上で、マストのポイントとなる「水あげ(水揚げ)」についてです。
「水あげ」は、具体的には、水の中で切り花の茎を折ったりハサミで切って、水を吸わせるものです。
植物の茎には導管という水を吸い上げるパイプのようなものがあります。切り花では、茎の切り口に、導管の口が表皮の内側に並んでいるのですが、切り口が渇いたり傷んだりすると、導管の口がふさがれてしまいます。
そうなると、いくら水に漬けていても、切り花は水を吸えずにしおれてしまいます。
そこで、水の中で、茎をカットするなどして、新しい導管の口を開き、水を吸いやすくする…これが「水あげ」です。
「水あげ」は「水折り」と「水切り」が基本
水あげの方法は、「水折り」と「水切り」が基本となります。
折る方が、カットした面がギザギザになり表面積が増えるので、水の吸いがよくなります。ですので、折れる茎はできるだけ水折りをし、折りにくいものは、ハサミで斜めにカットする水切りとします。
いずれも、花をいける花瓶とは別に、ボールや洗面器に水を張って、そのなかで「水折り」「水切り」をおこないます。
●水折りのコツ……茎の下5cmほどを折ってちぎり取る感じで。表皮が伝染して剥(む)けてしまわないように注意。捨てる方を押すようにしてちぎると、残す茎の表皮がむけないですむ。
●水折りに向く花種……キク、カーネーション、トルコギキョウ、リンドウ、アスター、枝物など
●水切りのコツ…良く切れる花ばさみで、できるだけ、斜めに切り、切ったのちそのまま2~3秒おき水を吸わせる。(ディルフィニウムやラナンキュラスのように茎が空洞のものは斜めではなく水平に切る)
●水切りに向く花種…バラ、ガーベラ、チューリップ、ユリ、ラン類、ラナンキュラス、アネモネ、カラー、アンスリウム、アマリリス、グラジオラス、グロリオサ、スイセン、スカピオザ、ナデシコ、ヒヤシンス、フリージア、ポピー、など
水切りと水折の使い分け方は?
「水折り」と「水切り」の使い分けは、考え方とては、「まず水折りをしてみて、ポキッと折れなさそうなら水切り」という感じです。しかし、実際は、「水切り」をするものの方が多いので、「水切り」が、もっとも標準的な水揚げ方法として思っておけば良いでしょう。
また、初心者は水折で力が入りすぎて茎を痛めてしまうことも。ですので、キク、カーネーション、トルコギキョウ、リンドウなど、ほんらいは水折りが向くものでも、切り花の取り扱いに慣れていない初心者は、まずは、水切りから練習して慣れていっても良いでしょう。
慣れてきたら、水折に変えていきましょう。
水切り・水折り前にやっておきたいこと、取り扱いの注意点
話が前後しましたが、水切りや水折りを行う前に、できるだけ葉っぱをとっておくことも大きなポイントです。
最終的な葉っぱ取りは、アレンジの仕上げの時にデザインを見ながら行った方が良いですが、あきらかに不要な葉や、咲かなさそうな蕾は、水切りや水折をする前に取っておきます。
その方が、水切りや水折をした瞬間の水揚げが良くなります。
手早く行いところですので、悩んだものはとりあえず残すようにして、最低限の葉っぱ取り・固いつぼみ取りをしてから、水切り・水折りをやりましょう。
また、水あげをする際に、花に水がかからないようにするのが原則です。花によっては大丈夫のもの多いですが、多くの花は、水がかかると痛みのもとになったり水ジミができたりします。水がかかりそうなら、茎の先端以外は新聞紙にくるんで、水をガードしながら作業するようしましょう。
さまざまな水揚げの技法
ここまで、基本となる水揚げ方法である水折り、水切についてみてきましたが、花によっては、それだけでは、水が揚がりにくいものがあります。
そこで、いろいろな補助的な技を使い、水をあげます。そうした技について見ていきましょう
深水・逆さ水・アルコール
深水は、水切りをした後に、枝葉を新聞紙でくるみ花首あたりまで水に浸けて、一時間~半日ほどおいて置くものです。ラナンキュラス、シャクヤク、クレマチス、アイリス、アンスリウム、ビバーナム、ブプレウルムなどで効果的です。
逆さ水は、水切りをした後に、束を逆さに持ち、葉裏に霧吹きをして湿度を保ち水あげを良くします。スプレー菊、スプレーバラ、コスモス、ソリダスター、ディモルフェセカなどで。
アルコールは、茎から白い乳液状の樹液が出てくる品種に対して使います。これらの灰汁(あく)はロウのような物質で、導管の口をふさいでしまいます。ですので、灰汁の多い花種では、アルコールに数分浸け、あくを洗い流してから水あげをします。スズラン、ブルースター、ユリ、リューココリネ、スイセン、ライラック、アガバンサス、オーニソガラム、ツルバキアなどで。
湯上げ・燃焼法
切り口を熱することで、導管内部の空気を追い出し、浸透圧で水を吸わせやすくする技法が、「湯あげ」や「燃焼法」です。
湯あげは、60度以上のお湯に茎の先を3cmほど数秒間浸けたのち、冷水に一時間ほど置きます。茎が薄茶色に変色しますが、問題ありません。湯あげは、ほとんどの花に使えますので、水切りや水折で水が揚がらない時、また、一度水が上がっても、またしおれてしまう「水落ち」した場合は、湯上げを試してみましょう。バラ、シャクヤク、蘭、デルフィニウム、ヒマワリなど。
燃焼法は、湯揚げと同じ原理で空気を追い出して水を吸わせる方法です。枝の堅い品種の水あげに向いています。トーチバーナー(ホームセンターで売っている)で、茎の先3cmほどが、炭のようになるまで焼き、用意しておいた水に茎の半分ほど1時間ほど漬けます。バラ、シャクヤク、クレマチス、スカピオサ、ストック、デルフィニウム、センニチコウ、チョコレートコスモスなど。
枝割り・枝叩き
枝割りは主にウメやツツジなど花木の枝もので使う技です。とくに枝ぶりの大きなものや葉数が多いものは、蒸散も多いため、たっぷりと水を吸わせたいものです。そこで、吸い口の表面積を増やすために、枝を縦に4つに割るようにハサミを入れれます(下から見たら十文字になるよう)。これを枝割と呼びます。切り込みを入れたら、軽く開き、1時間以上水に浸けます。梅、さくら、ツツジ、ビバーナム、桃、ライラックなど。
細くて枝割ができないものは、枝の口を堅い台にのせてハンマーで叩く枝叩きをします。その後1時間以上水に浸けた後、活ける時は、叩いた部分は切り戻し(=カットすること)てから活けます。枝割をする花木類で特に枝が細いものや、クレマチスなどで用いられる技です。
ミョウバン・お酢
ミョウバンやお酢を使い繊維を柔らかくして、水を吸いやすくする方法もあります。
アジサイの水揚げには昔からミョウバンが良いと言われています。水200ccに大サジ1ほどの濃ゆいミョウバン液をり、5分ほど浸します。その後、深めの水に1時間以上置き水揚げします。アジサイ、ボタン、シュウメイギク、ビバーナムなどで。
イネ科では、1cm~3㎝ほどの5分ほどお酢に浸してから、別な水に1時間ほど水揚げします。ササ、ススキ、タケなど。
・水あげは、切り花を長持ちさせるにはマスト
・もっともスタンダードなのは水切り
・ポキっと折れるもの(菊・トルコギキョウ・カーネーションなど)は深水・逆さ水をやれば、より効果的
・水あげがうまくいかない場合や水落ちした場合は湯上げ・燃焼法を試してみる
・アクが出るタイプのものはアルコールに浸したのち水切りすればより効果的
・枝ものや堅い枝の花には枝割・枝叩きを
・アジサイなどにはミョウバン、イネ科にはお酢を補助的に使う
切り花を活けるポイント
生花店で買ってきた切り花を、水揚げをしたら、いよいよ、花器に活けていきます。
生け花やフラワーアレンジにはいろいろなマナーやルールがありますが、家庭で飾るぶんなら、とりあえず、自分の感性を全開にして、好きに飾っていきましょう。
デザイン的には自由にアレンジしていけばよいのですが、長持ちさせるために気を付けたいポイントはいくつかあります。
まず、活けるときには、水のなかに葉が浸からないようにするのは大原則です。小さな葉もふくめて、丁寧に取り除き、水に漬かるところは茎だけになるようにしましょう。
葉は原則、手でちぎってとれますが、品種によって、たとえばキクのように切れ残ったり、チューリップのように茎の表皮が伝染してむけてしまうものもあります。そうしたものはナイフを使って葉元に切り込みを入れて、丁寧に除去します。
また、活ける水の深さも、水分の蒸散が激しいものや、茎が腐りやすいものなど花の種類によって変わります。
たとえばバラのように、茎の表面がツルツルしているものは、深水でオッケーです。キクのように表面に毛が生えているものや、カラーのように茎がスポンジ状のものは、ぬめりが付くと落ちないので浅水とします。
また、水の量については、花の品種ごとに、とくに深水が良いとか浅水が良いなど特徴がありますので、購入の際のお花屋さんで聞いて習うようにしましょう。
・水に漬かる部分の葉っぱはすべて除去
・葉っぱの取り方には注意
・茎の状態を見て深水か浅水かを判断
・花の種類によっても水の消費量が違う
水の管理と切り戻し
お花を活けたら、お花とともに暮らす生活のスタートです。それほど長い期間ではありませんが、よく観察しながら、こまめに手入れをしながら楽しんでいきましょう。
切り花を長持ちさせるには、次のような手入れのポイントがあります。
・毎日水を替える
・水替えのたびに花器を洗う
・花殻や葉殻を取り除く
・随時、切り戻しをする
水を替える原則と裏技
切り花の水は、毎日、替えるのが原則です。交換する時間帯は、いつも決まっていないくても大丈夫です。
水を交換するのは、水の中で繁殖するバクテリアによる痛みを防ぐためです。
水替えと同時に、茎のぬめりを流水で洗い流すことも忘れずに行います。
また、水替えを毎日行わなくてすむよう、抗菌剤やキッチンハイターを混ぜ、バクテリアが繁殖しないようにする裏技もあります。店舗のディスプレイや大型の生け花で使われるやり方ですが、家庭でお花を飾る場合であれば、おっくうをせず、毎日替えることが良いかと思います。ただし、水が腐りやすい夏や、つぼみを咲かすための栄養剤を入れる場合は殺菌剤を併用していきます。(詳しくは後述)
花器の洗浄
水替えのたびに花器をしっかり洗うことも重要です。水を交換しても花器がそのままでは、またすぐバクテリアが増えてしまいますので、花器までしっかり洗わないと、水交換の意味がありません。
花器の洗浄は水洗いでかまいません。ぬめりがついている場合はスポンジで丁寧に洗います。花器を洗っている間は、花は別の器にとっておきます。この際に、切り戻して水揚げををしておくのも良いですね。
花器はできれば伏せてしばらく乾燥して荒い水の水滴の残りが渇いてから、新しい水を入れるほうがよいですが、そこまで待てないので、5分ほど水切りをして、新しい水を入れてもかまいません。
花がらや古葉を取り除く
花器を洗って乾かしている間に、花のメンテを行いましょう。咲き終わった花や、変色した葉、などを丁寧に取り除きます。
これは見た目だけの問題ではなく、枯れた花や葉からは、植物にとっての老化ホルモンである「エチレン」が発生している可能性があるからです。
そのまま放置しておくと、エチレンの影響で花の老化が早まってしまいます。
植物のエチレンへの感受性は、品種によっていろいろで、エチレンの影響を受けにくいものもありますが、とりあえず、古い花や葉がらは、除去するようにしましょう。
切り戻し
水替えのタイミングのたびに、新鮮な切り口にするため、茎の切り戻しをおこないます。いちばん始めに一度水があがっているので、水中ではさみでカットする「水切り」は、毎回やる必要はありません。
むしろ、切り戻しは、ハサミよりもスパッと切れるフラワーナイフで、吸水面が増えるようできるだけ斜めにカットするのが理想です。ナイフの場合は水中で切らなくてもかまいません。ナイフを手前に向けて固定し、花のほうを動かして、カットします。花を自分の前側に引っ張るようにして、スパッと切ります。
切り戻しでは、傷んでいるところ、変色しているところを切り落とすのはもちろん、洗ってもぬめりがとれにくいところも思い切ってカットして、清潔を保っていきましょう。
茎の長さは、水替えのたびに、短くなていきますので、それに応じて、アレンジも変えていきます。そこが手間はかかりますが、切り花を飾る楽しみの部分でもありますので、丁寧に作業をしていきましょう。花が短くなるにつれ、花器も小さなもに変えていきます。
なお、水が無くなっているわけではないのに、花がしおれてしまう場合があります。これが「水落ち」の状態で、もういちど水揚げをしてあげないといけません。水落したものは、水切りでは戻りにくいので湯上げなどの方法を試してみましょう。
延命剤・フラワーフードの種類と見分け方
ここまで、水揚げ・水替え・切り戻しなど、水と刃物以外は何も使わないで、切り花を長持ちさせる方法について見てきました。
あくまでこれが基本ですが、長持ちさせるため、あるいは蕾をよく咲かせるために、切り花栄養剤(延命剤やフラワーフードなど)を、ぜひとも併用していきましょう。
よく、「ハイターや砂糖水で長持ちさせるには?」みたいな情報も見かけますが、できれば、切り花用に開発された製品を使った方が、リスクなくより効率よく、切り花を長持ちさせることができます。
延命剤やフラワーフードなどは、確かに少しお金がかかりますが、それをケチっていては、せっかく私たちを楽しませてくれるお花に失礼です。
必ずしも使わなければいけない、というわけではないですが、はっきりとした効果が期待できるときには、あまりケチりたくないものです。
・夏・高温時のバクテリア抑制
・蕾の多い花への栄養補給
・首折れ(ベントネック)対策
切り花栄養剤の種類と効果
切り花栄養剤は、とてもたくさんの種類があり、同じブランドでもちょっとずつ製品名が異なるラインナップが並んでいますよね。
栄養剤には効果別に、いくつかの種類の剤があります。
1 抗菌剤
2 栄養補給剤(糖類)
3 水揚げ剤(界面活性剤)
4 水分蒸散抑制剤
5 エチレン作用阻害剤
花の種類によって、これらをミックスして製品が作られています。栄養剤を使う時は、これらの剤のうちどれがミックスされているのか、きちんと把握しておかないと、狙い通りの効果が出ません。以下に、それぞれの剤の効果について、もう少し詳しく見てみましょう。
1.抗菌剤
抗菌剤はバクテリアの繁殖を抑えるものです。原則は水を毎日交換すれば不要ですが、栄養補給のために糖類を入れる場合に、糖を餌にしてバクテリアが増えないようにする効果があります。ですので、栄養補助剤には抗菌剤も一緒に入っています。また、抗菌剤入りの延命剤を入れることで、水替えを2日に1回と、省力化することができ、店舗のディスプレイなどでは重宝します。
さらに、真夏の高温期などは、毎日水を変えても菌が繁殖する可能性が高いので、夏は抗菌剤を積極的に使えば、花をより長持ちさせられます。
ハイターで代用することもできます。バケツ一杯にキャップ一杯ほどの濃度としますが、絶対に他のもの剤などと混ぜないよう。有毒ガスが発生します。
2.栄養剤
栄養剤の中身は糖類です。植物が活動するのに必要なエネルギーを供給します。切り花は光合成をして糖類を作り出していますが、地面が無い状態ですと、次々と蕾を咲かせるには、エネルギーが足らなくなります。そこで、蕾が多い切り花に対しては、糖類の入った栄養剤を与えることで、開花が長く楽しめます。もちろんその際は、咲き終わった花ガラは除去するなど、基本の管理も同時に行います。
また、バラで花首が垂れてしまう(ベントネック)の対策としても効果を発揮します。。
糖類は微生物の餌にもなりますので、悪いバクテリアが増えないように、殺菌剤も同時に入れるのが原則です。よく、切り花に砂糖水やサイダーを入れると長持ちするなどと言われますが、確実な方法ではないのでやめたほうが良いでしょう。切り花が吸って利用できる糖の種類は決まっているので、専用の栄養剤を使うようにしましょう。
4.水揚げ剤
水揚げ剤は、水揚げを補助する界面活性剤と抗菌剤を混ぜたものです。水切りや水折をやっても水が揚がりにくい場合は、花なら湯揚げ、枝物なら枝割・枝叩きを行います。それでもうまくいかない場合や、時間が無いときは、水揚げ剤も重宝します。
とくに、ガーベラで多い首垂れ(ベントネック)は水落が原因ですので、ガーベラの水揚げには、水揚げ剤を使った方が確実かもしれません。
4.蒸散抑制剤
蒸散抑制剤はふつうの生花というよりはリースやブーケを長持ちさせるのに使います。花は葉っぱや茎から常に水分を蒸発させています。水分供給が少ないリースやブーケなどでは、水が切れてしおれてしまう可能性があります。
それに対して蒸散抑制剤(製品名「フラワーベール、フレッシュミストなど」)をスプレーすることで、植物からの水分の蒸散を抑え、長持ちさせます。
5.抗エチレン剤
抗エチレン剤は、市販の栄養剤の成分に含まれていることもありますが、これは、切り花生産者が出荷前に使うのが通常です。
輸送中に切り花そのものから発生するエチレンガスで傷まないように、出荷前に抗エチレン剤を処理しています。とくにエチレンガスに弱い、カーネーション、デルフィニウム、スイートピー、カスミソウ、ハイブリッドスターチス、トルコギキョウ、キンギョソウ、ストック、バラなどでは、この前処理がされていることが多いです。
長持ちする品種は?
ここまでみてきたように、切り花は丁寧でこまめな管理を怠らず、時には延命剤や栄養剤なども上手く利用していけば、そのポテンシャルを最大限引き出すことができます。
しかし、花のもともとの特性で、長持ちするかどうかは決まってきます。つまり、日持ちしやすい花と、しにくい花の種類があるわけです。
条件によってさまざまですので確実なことは言えませんが標準的な日持ちが10日以上ある切り花の品種をリストアップしてみました。
どうしても長く持ってほしい場合は、花の種類を選ぶ段階で、長持ちする花を選ぶべきです
また、長持ちする品種は、ドライフラワーにするのにも向いているものも多いため、ドライにしてさらに長く楽しむこともできます。
もちろん、これまで述べきたような長持ちさせるためのポイントを抑えてこそ、下記の日持ちが実現できるので、ぜひチャレンジしてみましょう。
約 3 週 間 く ら い 持 つ も の |
アンスリウム | キク科エキナケア属 | 花がロウ質で夏場でも花持ちの良い熱帯性の花。 | オーニソガラム | ユリ科オーニソガラム属 | 密集したつぼみが順番に咲いてくる。1980年代にできた新しい花 | カーネーション | ナデシコ科ナデシコ属 | 水切りで斜めに切ってきちんとケアすれば長持ち | キク | キク科キク属 | 葉は蒸れやすいので丁寧に取り除き浅水管理 | スターチス | イソマツ科リモニウム属 | ドライ感のある花。ブラシ状の大花と細かいフィルフラワータイプの2系統あるが、どちらも長持ち。 | ジンジャー | ショウガ科ハナミョウガ属 | 夏場でも花持ちの良い熱帯性の花。 | シンビジューム | ラン科シンビジューム属 | ロウのような質感の丈夫な花のラン | ストレルチア | バショウ科ストレリチア属 | 極楽鳥花。南国アレンジだけでなく松やセンリョウと合わせた正月需要にも。 | バーゼリア | ブルニア科バーゼリア属 | クリスマスアレンジで活躍する。花に水がかからないようにまめに水換えを | プロテア | ヤマモガシ科プロテア属 | 大きなアフリカのネイティブフラワー。ドライにも向く。花に水をかけないよう。 | ヘリコニア | バショウ科ヘリコニア属 | アジアンテイストあふれる夏場でも花持ちの良い熱帯性の花。 | ワックスフラワー | フトモモ科ワックスフラワー属 | 梅に似た小さい花が咲く。ロウ状の花がながもち |
約 2 週 間 く ら い 持 つ も の |
アマランサス | ヒユ科アマランサス属 | 穂が印象的。秋のハーベストイメージ。水あげは悪いので湯上げで。 | アリウム | ユリ科アリウム属 | ネギボウズのようなまん丸の花。コワニー種はやや日持ち短い。 | クリスマスローズ | キンポウゲ科ヘレボルス属 | 真冬に咲く白いバラのような花。湯水・深水で水あげすれば長持ち | ストロベリーキャンドル | マメ科トリフォリウム属 | 赤いイチゴのようなキャンドルのような花 | トルコギキョウ | リンドウ科ユーストマ属 | つぼみが次々咲いてくるので長持ち。水あげは水折りで | ユリ | ユリ科ユリ属 | 水あげが良い。つぼみを次々咲かせば長持ち。つぼみが咲きかけたら花粉が散る前に雄しべをとる。 | リュウココリーネ | ユリ科リュウココリネ属 | 光沢のある星型の香りも良い花。花もちよい。 | アジサイ | ユキノシタ科アジサイ属 | 秋色アジサイ(アンティーク系)はとくに日持ちがよい。ただし、水あげが悪いため、十文字に切るか叩くかし、ミョウバン水を使うなど。 | アマリリス | ヒガンバナ科ヒッペアストルム属 | スパイダー咲きやフリル咲きなどバラエティも豊富な豪華な花。 | アランセラ | ラン科アランセラ属 | 小さな花が放射状に咲く。小さくてもランの形なのが可愛い。 | アランダ | ラン科アランダ属 | バンダとアラクニスの交配種のラン。 | アリストロメリア | アリストロメリア科アリストロメリア属 | 咲き終わった花を取り除き、次のつぼみを咲かすのがコツ。 | オンシジューム | ラン科オンシジューム属 | 切り花のランの定番のひとつ。バニラ風のよいかおり | カトレア | ラン科カトレア属 | ランの女王。水あげをしすぎると水染みになるので注意。 | カンパニュラ | キキョウ科カンパニュラ属 | ベルフラワーとよばれる小さい釣鐘状の花。吸水が早いのでこまめに水を足す。 | クラスペディア | キク科クラスペディア属 | 小さい花がボール状に咲く。ドライにも向く。 | ケイトウ | ヒユ科ケイトウ属 | 花持ちはよく水あげもよいが、茎が腐りやすいので浅水で。 | センニチコウ | ヒユ科センニチコウ属 | 赤が色あせない丸い花。ドライフラワーにも。 | デンファレ | ラン科デンドロビウム属 | もっともスタンダードなラン。つぼみも咲いてくる。価格が手ごろ。 | バンダ | ラン科バンダ属 | 青が鮮やかなラン。突然水落することがあるので、多めの水を。 | ブプレリウム | セリ科ブプレウルム属 | 茎がつきぬけた葉が特徴的。水落しやすいので注意。湯上げが効果的。 | ラケナリア | ユリ科ラケナリア属 | 円筒状の花が連なるアフリカンヒヤシンス。春先だけ流通 |
約 10 日 く ら い 持 つ も の |
アイリス | アヤメ科アヤメ属 | アヤメやショウブの西洋版。花ガラを摘むと長持ち。 | アガバンサス | ユリ科アガバンサス属 | 小さなユリのような花が密集して咲く初夏の花。こまめな水切りを。 | アゲラタム | キク科アゲラタム属 | アザミのような小さな花が密集。夏以外は長持ち。 | アストランティア | セリ科アストランティア属 | 星形の花(ガク)。ドライフラワーのような乾燥した花 | アネモネ | キンポウゲ科アネモネ属 | 春を代表する花のひとつ。花が開ききってないものを買えば長持ち | ウイキョウ | セリ科ウイキョウ属 | フェンネル。線香花火のような黄色花 | エキナセア | キク科ムラサキバレンギク属 | 切り花としては、花弁が落ちた丸いシード状態のものが出回り。日持ちがよい。 | エレムルス | ユリ科エレムルス屬属 | デザートキャンドル、フォックステイルリリーの別名 | カスミソウ | ナデシコ科ジプソフィラ属 | つぼみが咲きにくいため、開いた花が多いものを選ぶのがコツだが、それでも比較的長持ちはする。 | ガーベラ | キク科ガーベラ属 | 水が汚れやすいので、浅水にしてこまめに水を替えれば長持ち。 | キンセンカ | キク科カレンデュラ属 | 翌月になっても咲いている日持ちのよさから名前がついた。花首がたれても、水あげすると復活。 | クジャクソウ | キク科アスター属 | スプレー菊によくにた花。葉が傷みやすいので黄葉はとりのぞく | グラジオラス | アヤメ科グラジオラス属 | さわやかな花が連なる。糖分など栄養剤を与えればつぼみが次々咲く。 | クレマチス | キンポウゲ科クレマチス属 | 「鉄線」と呼ばれ茶花の代表種。水あげ悪く叩いたり湯上げや深水をする | グロリオサ | ユリ科グロリオサ属 | 「ミサトレッド」を中心に夏場の花もちがよち。咲き終わった花は除去する。 | コチョウラン | ラン科ファレノプシス属 | 切り花ではサイズが小さ目の品種が多くブーケやアレンジで使われる。冬はぬるま湯で水あげ。 | ストック | アブラナ科アラセイトウ属 | 春を代表する花のひとつ。こまめに水替え、水切りをすれば次々開花。 | スナップドラゴン(きんぎょうそう) | ゴマノハグザ科キンキョソウ属 | ベル咲とバタフライ咲 フルーティな香り | ソリダスター | キク科ソリダゴ属 | フィルフラワー的に使われる黄色小さな花。風に弱いので注意 | ダリア | キク科ダリア属 | 茎は折れやすいため丁寧に扱い、こまめ2水換えと切り戻しをこまめに。 | チューベローズ | リュウゼツラン科ポリアンテス属 | 「月下香」と呼ばれる香りの良い花。下から咲き終わるので花ガラは摘む。 | チョコレートコスモス | キク科コスモス属 | 黒紫のチョコレート色の花。香りもチョコレート風。深水で水あげを。 | ツルバキア | ユリ科ツルバキア属 | 上品で小さな球根系の花。葉っぱのない状態で流通。 | デルフィニウム | キンポウゲ科デルフィニウム属 | 花が長く連なってなるラインフラワーの代表種。茎が空洞のため、取り扱いに注意。 | ナデシコ | ナデシコ科ナデシコ属 | 茎の節が折れやすいので取り扱い注意し、終わった花を除去すれば長持ち。 | ニゲラ | キンポウゲ科クロタネソウ属 | ワイルドな雰囲気の花。スプレーのなかの固いツボミは除去し、水上がりにくい時は焼いて水あげする。 | バラ | バラ科バラ属 | 水切りなどでしっかり水あげをすれば長持ち。不要な葉やトゲはとり、咲き終わりの花を除去すれば長持ちします。栄養剤も効果的。 | ヒマワリ | キク科ヘリアンサス属 | 日本改良のサンリッチが世界的定番品種となっている。細めの茎のほうが水があがりやすい。 | ヒメヒマワリ | キク科ヘリオプシス属 | ひまわりとは別の種族。葉はしおれやすいのでとりながら管理する。 | ヒヤシンス | ユリ科ヒヤシンス属 | 球根が有名だが、切り花でも定番。茎がぬめりやすいのでこまめに切り戻しを。 | ブルースター | ガガイモ科トゥイ―ディア属 | 星型の花の定番品種。茎から汁が出るので、流水またはアルコールで洗い流す。 | ベニバナ | キク科カルタムス属 | 黄色から赤に変化していく初夏の花。染料や口紅材料としても。ドライフラワーにも。 | ユーフォルビア | トウダイグサ科ユーフォルビア属 | クリスマスやお正月用に出回る、フルゲンスという品種が定番。白い液がでるため流水やアルコールで洗う。 | リアトリス | キク科リアトリス属 | 夏に長持ちしお彼岸でも人気。アザミに似た花が連なるキク科のラインフラワー。 | リューカデンドロン | ヤマモンガシ科リュウカデンドロン属 | 夏場に出回るオーストラリアのワイルドフラワー。ドライフラワーにも。 | りんどう | リンドウ科リンドウ属 | 日本を代表する夏〜秋の花。花に水をかけないように管理する。 | ルピナス | マメ科ルピナス属 | 昇り藤とも呼ばれる。湯上げして栄養剤を使うと長持ち。 | ルリタマアザミ | キク科エキノプス属 | はりねずみのような青い放射状の花。ドライフラワーにも。 |
以上、切り花を長く楽しむために、長持ちさする花の選び方、長持ちさせる管理の方法、長持ちする品種などについて見てきました。
切り花は出回り時期が限られているものも多く、毎日のように買うものでもありません。ですので、切り花との出会いも一期一会といえるでしょう。
その出会いを大切にする意味でも、切り花を手に入れたら、できるだけ長持ちさせていきいましょう。