山寺の紅葉と紅葉川渓谷が素晴らしい。仙山線で行く日帰りプラン。
2018/08/21
山寺は松尾芭蕉が「閑さや岩にしみ入る蝉の声」の句を詠んだ場所として有名ですが、実は、紅葉の名所でもあります。山形県内では、紅葉の名所といえば、まず、山寺の名があがります。
山寺は、山形と仙台を結ぶ「仙山線(せんざんせん)」沿線にありますが、この仙山線がまた「紅葉列車」としても有名です。とくに山寺駅となりの面白山高原駅付近の紅葉谷渓谷の紅葉は見事です。
山寺や紅葉谷渓谷付近の紅葉は、例年10月下旬~11月上旬が見ごろとなります。
この記事では、山寺と紅葉谷渓谷の紅葉を同時に楽しめるプランを紹介していきます。さわやかな秋空に紅葉の赤が映える山形の紅葉をみてリフレッシュしてみましょう。
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山寺へいく仙山線は落ち葉で止まる?
山寺と紅葉谷渓谷はどちらも、JR仙山線の沿線です。仙山線は、なんと「山の落ち葉で遅延する電車」としても有名です。
JR仙山線は、仙台と山形の県庁所在地を結ぶ動脈ラインであり、仙台近郊から仙台中心地への通勤・通学路線でありながら単線でローカル線の要素も兼ね備えた路線として、鉄道ファンには人気があります。
仙台と山形を結ぶバスに対抗して、快速を走らせていますが、さらにスピードアップのために車輛を軽量化しようと、都会のようなステンレスの車輛を導入しました。ところが、車輛が軽すぎて、秋は、線路に積もった落ち葉で空回りしてしまうという、全国でも珍しい路線です。カモシカやクマと衝突することもたまにあるそうです。
それだけ、深い山のなかを走るので、シーズンには車窓からの紅葉も見事です。仙台と山形を隔てている奥羽山脈の紅葉がたっぷり味わえる紅葉路線としても、人気があるわけです。
仙山線の紅葉ポイントは、仙台側では、作並温泉~奥新川、山形川では面白山高原〜山寺、この区間では、列車は、錦織の深い谷間を鉄橋でわたりながら縫うように進みます。とうぜん、列車の車窓から眼をはなせません。
もし首都圏から紅葉の山寺へ向かう場合は、仙台経由と山形新幹線経由の2ルートが考えられますが、紅葉の風景を楽しむために、仙山線を利用するほうが、だんぜんおすすめです。
芭蕉がもし秋の山寺に来ていたら・・・
では次に、山寺の紅葉についてみていきましょう。
山寺は、正式名所を宝珠山立石寺(ほうしゅざんりっしゃくじ)、と言います。
山寺は、天台宗のお寺。天台宗は、比叡山延暦寺を総本山とする、「修行が厳しい」宗派です。
ほんらい厳しい修行の場である山寺。だから、敢えて、山にへばりつくようにお寺が造られているのですね。
山門から奥の院までは、標高差200m。1015段の階段が作られていて、奥の院までお参りするのは、「プチ登山」。さすが、修行がメインのお寺です。また、このあたりの山は、とても不思議なかたちの岩が多く、修行に最適なんだなぁということもよくわかります。
ただ、山寺の奥の院までのエリアは、一大観光地です。慌ただしいツアー客も多く、混雑していますので、修行の霊場にふさわしい秘境感や凛とした雰囲気はあまり感じられないのが、少し残念なところ。現在は、奥の院より先の釈迦が峰など一般人は立ち入り禁止になっているエリアで、秘かに修行が続けられているとのことです。
そんな山寺ですが、紅葉の時期は、ダイナミックな景観のなかに広がる、古いお寺とみごとな紅葉のコラボを楽しめます。
なかでも、1015段の階段を30分ほどかけて登ったところにある五大堂からの、錦織に包まれた紅葉の風景は、まさに絶景。真っ赤に染まった里山の風景を見下ろすことができます。
松尾芭蕉が1689年に山寺を訪れたのは新暦の7月15日頃だったのですが、もし秋に山寺を訪れていたのなら、必ず、紅葉のことを詠んでいたに違いありません。
そんなことに思いを馳せながら、山寺全体をじっくり楽しんでください。紅葉の風景はもちろん根本中堂・山門・ 彌陀洞・中性院・納経堂・仁王門・開山堂・五大堂・奥之院・大仏殿・燈籠など、見どころが満載のお寺ですので、2時間〜3時間くらいかけてじっくり見て回るのがいいでしょう。
さらに時間があれば、山をおりたあと、芭蕉記念館へたちよってみましょう。
芭蕉記念館は、山寺の全景を眺めるのベストポイントです。山肌に鎮座する山寺と紅葉の織りなすさまも、とても美しいものです。「紅葉の山に点在する古寺」という、山寺以外ではなかなか見ることのできないレアな風景を、しっかりみておきましょう。
紅葉川渓谷のスリリングな遊歩道で、滝・吊り橋・紅葉を満喫しよう
さて、せっかく紅葉の山寺へ来たのなら、より素晴らしい紅葉をもとめて、紅葉川渓谷にもぜったいに立ち寄りたいところですね。
というか、山寺以上に、紅葉川かも。紅葉的にいえば、紅葉川渓谷のほうがメインといえます。
紅葉川渓谷は、その名のとおり、渓流沿いにあふれるばかりのカエデの紅葉が広がり、とても美しい谷です。いくつもの滝を、吊り橋で渡りながら進む渓谷の谷は深く、足元の清流と見上げる紅葉の美しさが格別です。
ハイキングコースは面白山高原駅前すぐにある、小さなトンネルのような入り口からスタートします。
藤花の滝、千太滝、布引の滝、絹糸の滝、幻竜の滝などいくつもの美しい滝を、吊り橋で渓谷をわたりながら、たどっていくルートです。
(注:2016年10月初旬現在、紅葉川渓谷のハイキングコースは夏の台風の影響で通行が一部のみできる状態です。紅葉のピークにまにあうようにハイキングコースの復旧作業をしているようですが、⇒2017年7月現在コースの復旧は確認されていますが、最新の状況については⇒面白山観光協議会にてお問い合わせご確認ください。)
ハイキングコースというイメージからすると、ちょっと、ワイルドなのがこのコースの特徴。道幅がとても広く、人がすれ違えないくらい狭く、落ちたら危ない崖っぷちなども多数あります。
スニーカーではなくトレッキングシューズを着用し、リュックなどで、両手がフリーになっていた方がいいですね。
トレッキングというほどではないにしても、街歩きの格好では無理なコースですので、紅葉川渓谷を訪れる場合は、アウトドアスタイルで臨みましょう。
山寺・紅葉川渓谷の紅葉を見る、東京からの日帰りプラン
紅葉が美しい見ごろは、10日から2週間くらいしかありません。
見ごろの紅葉に出会うためには、「今が見ごろ!」という現地からの最新状況と、「明日なら観に行ける!」という自分のスケジュールがぴったり合わないと、なかなか実現しません。
ベストタイミングで紅葉を見るためには、多少贅沢でも「日帰り」で観に行く覚悟をもっておいたほうがよいでしょう。
そこで、この項では、東京から日帰りで、山寺と紅葉川渓谷の紅葉を観に行くプランを考えてみましょう。
東京から新幹線で仙台へ。仙台から、仙山線でまず山寺へ行き、山寺見学の後昼食、ふたたび仙山線で面白山高原駅へ移動して紅葉川渓谷をハイキングを満喫。そして、帰路につく、というコースになります。
紅葉川渓谷がある面白山高原駅は仙山線快速が止まらない関係上、山寺→紅葉川渓谷という順番しかスケジュールが組めませんが、時間的には余裕もあり、丸一日ゆっくりとリフレッシュできるでしょう。
日帰りで行く場合はまず
仙山線の
・仙台8:15発→山寺9:13着
・仙台9:04 発→山寺10:01着
のどちらかに乗る必要があります。
これに間に合う新幹線は
・東京06:04発→仙台8:00着
・東京06:20発→仙台08:41着
・東京07:16発→仙台08:57着
などがあります。
9時か10時に山寺に着いたら、2時間〜3時間かけて山寺、芭蕉記念館などで紅葉を満喫しましょう。名物の「力こんにゃく」や山形自慢の蕎麦などで腹ごしらえして、ふたたび仙山線へ乗ります。
・山寺11:09発→面白山高原11:16着
・山寺13:15→面白山高原13:22着
・山寺15:14→面白山高原15:21着
のいずれかで、面白山高原へ移動します。
紅葉川渓谷は面白山高原の駅前にすぐ入り口があります。というか駅がすでに一面の紅葉に囲まれていて、駅のホームから滝が見えてたりします。紅葉川渓谷のハイキングコースは全ルートで2時間ほどの行程、たっぷりと紅葉狩りを楽しんでください。
なお、山寺駅から、紅葉川渓谷ハイキングコースの西側の入り口までは、徒歩80分ほどですので、時間がある場合は、歩いて移動するのもありです。
帰りは、次のいずれかで仙台へ戻ります。
・面白山高原17:20発→仙台18:15着
・面白山高原19:15発→仙台20:07着
・面白山高原20:00発→仙台21:01着
・仙台から東京への新幹線はこちら。
・仙台21:30発→東京23:04着(終電一つ前)
・仙台21:47発→東京東京23:44着(終電)
遠出の日帰り旅行は、贅沢と言えば贅沢ですが、タイミングさえばっちりあっていれば、日帰りで行く価値は充分にある紅葉狩りコースです。思いたったら、ぜひトライしてみてください。
(注:2016年10月初旬現在、紅葉川渓谷のハイキングコースは夏の台風の影響で通行が一部のみできる状態です。紅葉のピークにまにあうようにハイキングコースの復旧作業をしているようですが、詳細は⇒山形市のホームページ`・紅葉川渓谷の状況をご覧ください。)
以上、山形の山寺と紅葉川渓谷の紅葉を楽しむプランについてみてみました。
旅を愛した松尾芭蕉も訪れた山寺。芭蕉にならって、フットワーク軽く、美しい紅葉の風景に出会いにでかけてみましょう。