サンゴのシュノーケル、本州・四国・九州の近場ポイントが案外よい?

   

珊瑚

 日本国内の珊瑚といえば、沖縄や奄美諸島のイメージですよね。とくに沖縄本島や宮古島・石垣島は、昔より飛行機代が安くなったため、サンゴを見に気軽に行けるようになりました。

 ところが最近、沖縄の珊瑚は、温暖化で海水温が上がりすぎたため、「白化現象」を起こし、場所によっては珊瑚が急速に減っています。その一方で、日本本土沿岸域が、珊瑚の適地になりつつあるのでは? と言われています。もともと四国や紀伊半島南部の珊瑚は有名でしたが、最近は千葉県の房総半島南端の珊瑚も注目されています。

 この記事では、「さんご群集域」と言われる、沖縄・奄美以外の珊瑚の現状について、まとめてみました。

 また、沖縄・奄美以外でシュノーケルやグラスボートで珊瑚を楽しめるポイント8選も、あわせて紹介しています。案外、身近なところで珊瑚が見れるかもしれません。ぜひチェックしてみてください。

【関連記事】海遊びは自己責任で安全を確保しましょう!⇒『シュノーケルの安全な使い方と練習のコツ』の記事もぜひ参照してみてください。

珊瑚の種類と基礎知識。テーブル珊瑚は宝石になる?

サンゴは動物?植物?

 サンゴはトロピカルな南の海のイメージどおり、熱帯から亜熱帯の海に生息する海の動物の一種ですイソギンチャクやクラゲと同じ仲間の刺胞動物なのですが、サンゴの体内には「褐虫藻(かっちゅうそう)」という植物性プランクトンが共生しています。

 褐虫藻が光合成で作り出すエネルギーを利用してサンゴは生きているので、褐虫藻がいなくなればサンゴも死んでしまいます。最近良く聞く「サンゴの白化」は、サンゴの体内から褐虫藻が出て行ってしまうことでおこります。サンゴそのものは無色のため、褐虫藻が抜けると色が白くなり、褐虫藻が戻ってくれば復活しますが、戻ってこなければサンゴは死滅してしまうのです。

 植物性プランクトンの褐虫藻がいなければ生きられないサンゴ。ですので、サンゴ+褐虫藻をセットで「サンゴ」であると考えた方が良いかもしれません。つまり、サンゴは動物でもあり植物でもある、といえるのです。

▲生物の多様性や環境保護の象徴である造礁サンゴ(ハードコーラル)はイソギンチャクと同じ動物だが、体内に植物プランクトンを共生させている。

サンゴの3つの種類

 ところで、珊瑚と言った場合、大きく分けて、3種類のサンゴがあります。

・造礁サンゴ

・ソフトコーラル

・宝石珊瑚

の3種類です。

 それぞれの違いを簡単に見てみましょう。

 まず、サンゴ礁でお馴染みの「造礁サンゴ(石珊瑚、ハードコーラル)」です。いわゆる枝サンゴやテーブルサンゴのように、石灰質の石のような堅めの骨格を形成するタイプのサンゴです。比較的浅いところに生息します。ミドリイシやキクメイシといったサンゴがあります。

 一方、同じサンゴ虫の種類なのですが、固い骨格を作らない「ソフトコーラル」もいます。ヤギやウミトサカなどダイビングではお馴染みの、海藻のようにも見える動物です。これらソフトコーラルは、造礁サンゴ以上にカラフルで、ソフトコーラルの群生地は海のお花畑のようです。造礁サンゴにくらべると比較的低い温度帯でも育ちますので、伊豆や房総などをはじめ、沖縄以外のダイビングポイントではこれらソフトコーラルがメインになっています。

 それからもうひとつ、昔から「珊瑚」と呼ばれているものに「宝石サンゴ」があります。ベニサンゴやモモイロサンゴといった100m以上の深い海に生える希少なサンゴです。造礁サンゴよりもはるかに成長が遅く、硬い宝石になり、世界的に見ても貴重なものです。実は、この種類が「サンゴ科」に分類されるものですので、元祖サンゴと言えます。これは、分類学上はどちらかというとソフトコーラルに近い仲間になります。

 サンゴの分類については、以下の表に、ざっくりとまとめてあります(ほんとうはもっと複雑です)。「宝石サンゴとソフトコーラル」「造礁サンゴとイソギンチャク」が、それぞれ近い仲間なのですね。

サンゴの種類と分類
花虫綱 八放サンゴ亜綱 ヤギ目 サンゴ科 アカサンゴ、ベニサンゴ、モモイロサンゴ、シロサンゴなど 宝石サンゴ
イソバナ類 ソフトコーラル
ヤギ類
ウミトサカ目 ウミトサカ、ウミキノコなど
ウミエラ目 ウミエラ
アオサンゴ目 アオサンゴ ハードコーラル(造礁サンゴ)
六放サンゴ亜綱 イシサンゴ目 ミドリイシイ、キクメイシ、ムカシサンゴ、ハナヤサイサンゴ、ヤスリサンゴ、ムカシサンゴ、ウミバラなど
イソギンチャク目 イソギンチャク類
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サンゴは温暖化で北上しているのか?

造礁サンゴの生息域は?

 さて、珊瑚には3種類あることを前項で述べましたが、南西諸島以外の日本本土(本州・四国・九州)で、「珊瑚」と言えば、これまでは、宝石珊瑚かソフトコーラルのことを指すことが多かったです。

 たとえば、四国の土佐や長崎の五島では、昔から「珊瑚漁」が盛んです。「土佐珊瑚」「五島珊瑚」と呼ばれるのは、これらはみな深海にはえる宝石珊瑚のことです。ひょっとする今のシニア世代の人は珊瑚というと、宝石としてアクセサリーやオブジェなどに加工される種類の「宝石珊瑚」のことを思い浮かべるかもしれません。ちなみに、今、中国漁船により密漁されて問題になっているのも、この宝石サンゴです。

 それから、南西諸島以外の日本本土では、「サンゴ」がソフトコーラルを指していることも多いです。たとえば、伊豆半島などのシュノーケルポイントで「サンゴが観れるよ」と言う場合、ほとんどは、このソフトコーラルのことを指しています。

 では、南西諸島以外には、枝サンゴやテーブルサンゴのような造礁サンゴは無いのでしょうか?

結論を言えば、あります。
九州、四国、本州やその周囲の離島などに、造礁サンゴは思いのほかたくさん分布しています

 東京のすぐ近くの千葉県の館山や、意外なことに日本海の壱岐島にも、造礁サンゴはあるのです。

サンゴ群集域での造礁サンゴ分布の主要地点
千葉県 館山湾 沖ノ島、坂田、波佐間
富浦町 大房
静岡県 沼津 内浦湾、大瀬崎
西伊豆 田子
東京都 三宅島 富賀浜、伊ケ谷
八丈島 八重根、ナズマド
和歌山県 串本町 紀伊大島、潮岬、高富湾
白浜町 円月島
大地町 那智勝浦
徳島県 牟岐町 阿波大島
宍喰町 阿波竹ヶ島
高知県 須崎市 奈半利湾、神島・横波半島
夜須町 手詰、大手浜
土佐清水市 滝串海中公園
大月町 柏島、尻貝、樫西、沖ノ島
愛媛県 愛南町 津島町、内海村
大分県 蒲江海中公園周 屋形島、深島
宮崎県 南郷町 日南海中公園
鹿児島県 大隅半島 佐多岬
薩摩本島  笠沙町‣大当
阿久根桑島、宇治群島、甑島列島<
長崎県 対馬 加世浦、瀬ノ浦
五島列島 福江、多々良島、筒本、渡良東
長崎湾 高島
島根県 壱岐 黒崎、板浦、神瀬

 この表をみると、九州、四国、紀伊半島南を中心に、南西諸島以外にも思いのほかたくさんサンゴが生息しているのがよくわかりますね。

 ただ、これらの地域の造礁サンゴは、原則的には、サンゴ礁を作るまでは発達していないため、屋久島以南の「サンゴ礁域」に対して、「サンゴ群集域」として区別されています。

▲韓国にほど近い五島列島・福江島の造礁サンゴ。

温暖化でサンゴが増えているか?

 さて、意外にも日本海や関東地方にも珊瑚があることを聞いて、「温暖化が進みすぎ!」とびっくりするかもしれません。

 確かに、温暖化で、珊瑚群集域のサンゴが勢いづいている面もあり、微増傾向にあることは確かです。

 しかし、実は、九州・四国・本州には、もともと珊瑚があったと考えるべきです。ところが、以前は珊瑚といえばお金になる宝石珊瑚のことを意味していて、造礁サンゴは価値が無いものと考えられていました。漁業の面から見れば、浅いところに生育する造礁サンゴは、魚網がひっかかるだけの邪魔な存在だったのです。

 1990年代より以前は、造礁サンゴについて関心を寄せる人はダイバーや自然保護関係者などごく一部の人でした。なにしろ、つい25年前までは、珊瑚の島石垣島ですら、サンゴ礁をつぶして空港を作ろうとしていた歴史があります。いまとなっては、信じられないことですね。生物の多様性と環境保護を象徴として造礁サンゴが広く認知されたのは、ごくごく最近のことなのです。

 このような状況ですので、1990年以前は、本格的な造礁サンゴの分布調査なども行われていませんでした。本格的な調査を開始した近年になって、各地の造礁サンゴの存在がはっきりしてきた…そんな背景があるわけです。

 なにしろ、壱岐島にあるキクメイシのサンゴ群落は21世紀になって「発見」されました。ここは「サンゴ礁」と言えるくらい長年にわたり群生しています。このように、温暖化で急にサンゴが北上したわけではなく、その存在にわれわれが関心を寄せていなかっただけなのです。

暖流がはぐくむサンゴ群集域のサンゴ

 実は、珊瑚が案外、北のほうまで生育していることは、温暖化というよりは、日本列島を流れる「暖流」の力をあらためて感じさせてくれるものです。

 黒潮対馬暖流のふたつの海流が、南から暖かい海水を運んできます。多くの魚たちとともに、サンゴの幼生も南からの海流にのって、少しずつ北へ分布を広げてきたようです。

 黒潮と対馬海流は、海を豊にするだけでなく、西日本と関東の太平洋側に豊かな照葉樹の森を作り出しています。

 豊かな森が豊かな海を守り、日本の自然をとても豊かなものにしてきてたのです。(日本の森林の状況については⇒「日本の原生林一覧」の記事も参照してください。)

造礁サンゴは沖縄から北上するか?

 さて、地球環境のバロメータでもある珊瑚は、今、世界中で危機にさられています。

 国内最大のサンゴ礁のメッカ石垣島では、温暖化による海水温の上昇で、広範囲にわたり珊瑚が白化してしまいました。いちめん珊瑚に覆われていたところが、何もない岩だらけの海になってしまっています。

 造礁サンゴ類は、復活と成長がわりと早いので、全滅したところにも、ポツポツサンゴが再生してきます。しかし、復活しかけたかと思うと、また白化で枯れてしまい、かなり深刻な状態のようです。

 ひょっとするあと何十年かすると、サンゴの中心は、南西諸島ではなく、九州や四国に移っているかもしれません。

 ただ、サンゴの生育はそれほど単純なものではなく、とても繊細で微妙なバランスのうえに成り立っています。たとえば、温暖化による白化は、サンゴ群集域の高知や和歌山でも観測されていて、地球温暖化が確実に進行していることを示しています。水温だけを見れば、九州や四国がサンゴの適地なっても、温暖化による白化やオニヒトデの増殖、逆に、冬の寒波によるサンゴの死滅など、サンゴの安定した生育を妨げるリスクはたくさんあるわけです。

 温暖化でどんどんトロピカルなムードになってきて、沖縄に行かなくてもサンゴの海が楽しめるようになれば楽しいですが、サンゴが増えると、もともといた温帯地方の魚の生息場所や産卵場所が奪われて、逆に魚が減ってしまうことも懸念されています。

 サンゴがわれわれに教えてくれるのは、自然のバランスは、われわれが考えている以上に微妙なものだ、ということなのです。

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近場のサンゴ群集域で楽しむ、おすすめの珊瑚ポイント

 それでは、以下に、おすすめのサンゴを見るポイントを紹介していきます。南西諸島や奄美以外の主要なサンゴ群集地域のなからから、シュノーケルやグラスボートなど、比較的だれでもサンゴを楽しみやすいポイントをピックアップしてあります。

天草・牛深海域公園

●サンゴ種類:フカトゲキクメイシ、エンタクミドリイシ、キクメイシ、ウスカミサンゴ、カメノコキクメイシ、フタマタコブハマサンゴ、イボサンゴ、ウネカメノコキクメイシ、ベルベットサンゴ、
●サンゴ被覆度と規模:◎◎
●観る方法:グラスボート、シュノーケル、ダイビング
●所在地:熊本県天草市 ●アクセス:天草空港より車65分、九州自動車道松橋ICより車150分。

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 天草は、沖縄奄美以外の「サンゴ群集域」のなかでも、珊瑚の状態が最も良いとろこです。白化の被害も今のところ少なく、オニヒトデも駆除が上手くいって、被害を最小限にとどめられているようです。

 透明度高く、熱帯魚がたくさん見れるビーチとして茂串海岸が有名ですが、とくにサンゴの被覆度が高いのは、牛深南部の下須島(げすじま)周辺です。下須島の中央にある砂月海岸は、ふつうの海水浴場ですが、少し沖にいけばサンゴの根が点在しています。また、牛深海中公園の法ケ島、築ノ島、春這など、沖縄以外でこんなサンゴが観れるのか? とびっくりするレベルのサンゴを観ることができます。

 また、天草北東部・苓北町の白岩崎にある富岡海中公園のサンゴも状態が良いようです。こちらはビーチから徒歩五分のところに白岩崎キャンプ場があり、天草灘の夕陽の感動ポイントです。

 天草地方は、対馬暖流が五島列島から逆流し黒潮に合流しる支流が流れているとところ。つまり北から南に暖流が流れている珍しいところで、その暖流のおかげでサンゴが美しく発達しています。最近は、温暖化の影響で冬季の水温があがったため、サンゴも増加傾向で、ブダイなど南洋性の魚も増えてきています。珊瑚のポイントとしては、これからますます注目されそうです。

 

竜串海中公園/柏島

サンゴ種類:エンタクミドリイイシ、クシハダミドリイシ、シロサンゴなど
●観る方法:グラスボート、海中展望台、シュノーケル、ダイビング
●サンゴ被覆度と規模:◎
●所在地:<竜串>高知県土佐清水市、<柏島>大月町 ●アクセス:<竜串>土佐黒潮鉄道中村駅よりバス1時間20分、高知自動車道四万十中央ICより2時45分、<柏島>宿毛駅より1時間15分

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 高知県でハードコーラルが観れる観光地として古くから有名でなのが「滝串海中公園」です。127種類のサンゴがある豊な海で、海中展望台やグラスボート、博物館などがあり、老若男女を問わず気軽にサンゴが観れる観光地として整備されてきました。ただ、四国の南西端というとてもアクセスに時間がかかるため、今でも「秘境感」ばっちりで、自然の力が感じられるポイントです。ただ、ここ数年オニヒトデが大量発生し、現在滝串湾のサンゴは危機的状況にあるといわれています。

 とはいえ、造礁サンゴが全滅したわけではなく、ダイビングやグラスボートではポイントに案内してもらえますし、ビーチからすぐシュノーケルで珊瑚が観れる爪白海岸など、珊瑚が健全で綺麗な見所はまだまだ残っています。秘境感あふれる珊瑚の旅にはぴったりの場所です。ちなみに爪白海岸には芝生がふかふかのキャンプサイトもあります。

 また、滝串よりさらに西へ向かった大槻町の柏島は、さらに秘境。柏島ブルーとよばれる海の透明度が半端なく美しいとして、ネットでも話題のビーチですが、もともとダイビングの聖地とされ、珊瑚も美しいところです。ただ、こちらも、最近は人が増えすぎたため、急激に荒れているとのことです。ただ、周囲にはまだまだ秘密のポイントは多数あるようですので、ダイビングサービスの主催する体験ダイビングやシュノーケルツアーに参加するのが良いでしょう。

 

宇和海(須ノ川・鹿島)

●サンゴ種類:枝状ミドリイシ、円卓ミドリイシ、ハナヤサイサンゴ、キクメイシ、シコロサンゴ
●観る方法:シュノーケル、水中観光船、シーウォーク、ダイビング
●サンゴ規模・被覆度:◎
●所在地:愛媛県愛南町 ●アクセス:JR宇和島駅よりバス1時間、松山自動車道・津島岩松IC40分

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 北上する黒潮分流とリアス式海岸に囲まれた宇和海海中公園。高知の柏島などから続く一連のサンゴ地帯ですが、なによりも、高知側よりもアクセスが楽なのがポイントです。

 シュノーケルポイントとしては須ノ川公園前のビーチが人気です。キャンプ場もあり整備された須ノ川公園に隣接する海岸なので、自然感満載で、親子連れでも安全に手軽に珊瑚と熱帯魚観賞を実現できます。ただビーチは砂浜ではなく石なのでマリンブーツは必須です。さらに須ノ川から突き出る由良半島からその崎の塩子島あたりには、秘密の珊瑚ポイントがたくさんあるようですね。

 さらに南の西海鹿島地域は、サンゴ観光のメッカ。海中観光船「ユメカイナ」や、空気を送るヘルメット式の潜水服「シーウォーク」などで、まったく泳げない人でも珊瑚をまじかに見ることができます。

 

南紀・串本/白浜

●サンゴ種類:クシハダミドリイシ、オヤユビミドリイシ、フカトゲキクメイシ、タカキクメイシ、ウネカメノコキクメイシ、エンタクミドリイシ、キッカsンゴ
●観る方法:グラスボート、海中展望台(串本のみ)、シュノーケル、ダイビング
●サンゴ規模と被覆度:◎
●所在地:和歌山県串本町・白浜町 ●アクセス:<串本>大阪よりJR特急くろしおで2時間40分、阪和自動車道すさみICより30分、<白浜>特急くろしおで2時間20分、阪和自動車道南紀白浜IC

 紀伊半島の先端、串本は、最近は水族館めあてで訪れる人も多いですが、昔から本州で珊瑚規模の珊瑚が観られるダイビングのメッカです。黒潮の分流が、紀伊半島に向け流れているため、温暖で珊瑚が発達しています。ただ、黒潮が蛇行し南に離れるサイクルがあり、その時が寒波と重なると、サンゴに低温の影響が出ます。2017年~18年の冬はちょうどその影響が出たため少なからず珊瑚が白化してしまったようです。

 それでも、本州有数の珊瑚地帯であることにかわりがなく、魚種も豊富で、串本海中公園の海中展望台からは豊かな海を見ることができます。もちろんダイビングも、珍しい生物が豊富で世界的なポイントのひとつグラスワールドをはじめ砥崎、双島など見所満載です。串本の珊瑚は、黒潮蛇行や寒波による低温障害、逆に、温暖化による高温白化、そしてもちろんオニヒトデと常にリスクにさらされながらも、たくましく10年単位で再生を繰り返しているようです。

 シュノーケルで珊瑚を観るなら、海中公園のなかの、ダイビングパーク前とオレンジハウス前のビーチは、ビーチエントリーしてすぐ手軽にテーブル珊瑚が観れる場所として定番です。

 また、串本より北にある白浜は、ワイキキと姉妹提携している美しい白いビーチで、ビーチコーミングでサンゴが見つかることでも有名です。こちらの海の中にもサンゴがあり、円月島の周囲がシュノーケルでサンゴが見れるポイントになっています。

阿波竹ヶ島海中公園

●サンゴ種類:エダミドリイシ、カワラサンゴ、コブハマサンゴ、ウミバラ、オオスリバチサンゴ
●観る方法:シュノーケル、水中観光船
●サンゴの規模・被覆度:〇
●所在地:徳島県海陽町 ●アクセス:阿佐海岸鉄道・宍喰駅よりバス、徳島ICより120分

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 徳島県南端にある宍喰(ししくい)は、四国南東部の豊な森を背景にした美しい海が広がる地域。なかでも竹ヶ島は、竹ヶ島は釣りやサーフィンやSUPのポイントとして総合的に海を楽しめる穴場ですが、枝サンゴの群生地ポイントでもあります。

 海陽町が運営する総合海洋観光施設「マリンジャム」をベースに、シュノーケルやシーカヤックなど安心して珊瑚を楽しめます。泳げない人は海中観光船「ブルーマリン」もありですが、静かな海なのでシュノーケルに挑戦したいところですね。

 また、竹ヶ島より北にある阿波大島の世界最大級のコブハマサンゴ「千年珊瑚」もあります。これら四国南東部(徳島)の珊瑚は、ほかの地域にくらべると温暖化やオニヒトデの被害は比較的少なく、陸地側の開発があまり進んでいないことも珊瑚に良い影響を与えているのかもしれません。

 

深島・尾形島

●サンゴ種類:エンタクミドリイシ、シコロサンゴ、エダミドリイシ
●観る方法:シュノーケリング、水中観光船
●サンゴ規模・被覆度:〇
●所在地:大分県蒲江町 ●アクセス:JR佐伯駅よりバス70分蒲江港、蒲江港より船で尾形島10分深島30分

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 大分県の南端の佐伯地方はリアス式海岸になっていて、海が豊かなところです。この海に浮かぶ深島は、珊瑚の穴場中の穴場。釣り人が訪れる程度で、珊瑚ポイントとしてはほとんど知られていなませんが、人が来ないぶん、美しい海と珊瑚が観られます。珊瑚はテーブル状の緑石とソフトコーラル、チョウチョウウオやスズメダイなど南洋系魚もばっちりです。

 深島は住人数十名でネコの数の方が多いという、典型的な離島の風景。ゆったりとした離島の時間を味わうこともできます。

 また、蒲江のマリンカルチャーセンターから出ている海中観光船マリンコーラルでも、ダイビングポイントになっている珊瑚を観ることができます。

高島(長崎湾)

●サンゴ種類:不明
●観る方法:シュノーケル
●サンゴ規模および被覆度:△
●長崎県長崎市 ●アクセス:長崎港→高島まで高速船40分、長崎市内よりバス55分または車30分で伊王島→伊王島より高速船35分

 長崎港に浮かぶ高島は、産業遺構で有名な「軍艦島」の近くで、同じように廃炭鉱の島です。しかし、最近は、珊瑚がビーチからすぐのところで見れる場所として話題です。

 長崎で珊瑚というのも意外ですが、実は五島列島は昔から宝石用の赤珊瑚の産地で有名ですまた、五島列島の福江や多々良島は造礁サンゴが良くみれるダイビングポイントです。長崎港の高島も、五島と同じく対馬暖流に洗われ、最近は温暖化の影響もあり珊瑚がよく育っているようです。

 実は高島の珊瑚シュノーケリングポイントは人工ビーチなのですが、エントリーして数十メートルのところに珊瑚やスズメダイなどが群れるポイントがあります。規模は小さいですが、その近さと手軽さは、沖縄でもなかなかありません。人工ビーチにはキャンプ場も併設されているため、長崎で南国リゾートをたっぷり味わえます。

 

館山湾(沖ノ島・坂田)

●サンゴ種類:エダミドリイシ、キクメイシ
●観る方法:シュノーケル
●サンゴ規模よよび被覆度:△
●所在地:千葉県館山市 ●アクセス:館山自動車道富浦IC30分

 東京からわずか2時間でアクセスできる千葉の館山に、サンゴがあると地元のダイバーには言われてきましたが、公に確認されたのは1990年代後半です。現在、温暖化の影響で成長を続けているようで、現在も、館山湾の沖ノ島波左間、坂田の数カ所のポイントで確認されています。

 沖ノ島ではシュノーケルで見れるところにあるようですが、海水浴場としても有名なため、また、台風時に打ち寄せるゴミが多いため、サンゴへの状態が心配されています。首都圏にあるサンゴということで是非とも守り育てていきたいという思いの人は多く、2017年も台風被害のゴミ撤去作業の費用をクラウドファンンディングで集めたところ、目標の額が無事集まったようです。これからも温暖化の影響で成長する可能性は高いので、保護策をとりながら楽しんでいきたいものですね。

 シュノーケルをするには「NPO法人たてやま・海辺の鑑定団」が主催する「サンゴに出会えるシュノーケリング体験」のほか、ダイビングショップ主催のツアーもあります。

 

 

 

 以上、沖縄や奄美以外のサンゴについて、紹介してきました。

 近場で見れるサンゴを、この夏ぜひ見に出かけてみてください。

 そして微妙なバランスのうえにしか生育できないサンゴ群落を、どのように守り育てて、後の世代に美しいサンゴの海を残し育てていくか…? そんなことに思いを馳せながら、自然が与えてくれる癒しを満喫してみましょう。

 

 なお、海のレジャーにでかけるための基礎知識として、⇒「レスキューチューブの使い方」
⇒「スタンドアップパドルボード(SUP)を安全に楽しむため入門者が知っておくべきこと」の記事も参照してください。

 

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