お赤飯の色。赤を綺麗に出すコツを和菓子屋さんの技に学ぶ。

      2018/03/19

お赤飯

 お赤飯は人生の節目のお祝いごとに、欠かせない食べものです。

 お祝いのたびに家庭で作ることが多い赤飯ですが、最近は、日常食としても人気で、コンビニのおにぎりやスーパーの総菜コナーの定番にもなっています。

 でも、赤飯作りのプロといえば、実は、和菓子屋さんです。和菓子屋のお赤飯は、美味しいのはもちろん、もち米の食感が絶妙で、なにしろご家庭でなかなか真似ができないのは、とっても綺麗に色が染まっているところ・・・。いったい和菓子屋さんでは、どうやって綺麗な紅紫色のお赤飯を染め上げているのでしょうか?

 この記事では、和菓子屋さんのお赤飯の作り方の秘密を紹介しながら、綺麗な色のお赤飯を作る方法について、みていきたいと思います。

和菓子屋で赤飯を作っているのは何故?

 お赤飯を、なぜ和菓子屋さんで作っているか、疑問に感じる人も多いと思います。

 和菓子屋さんは、もともと、和菓子のメイン素材であるもち米と豆類を扱うプロです。で、お赤飯の材料も、また、もち米とお豆です。和菓子とお赤飯は、同じ素材ですので、和菓子さんにとって、お赤飯は得意中の得意分野なのです。

 また、和菓子屋さんは、お茶席やお祝い、法事などの席でいただく「上菓子」を作るところ。つまり、特別な席やハレの日の食べ物を提供するのが、和菓子屋さんの仕事でもあるわけです。

 和菓子屋さんの職人技の積み重ねで、「究極のお赤飯」作りが、ブラッシュアップされてきたのです。

 もち米の絶妙な炊き方はもちろん、なんと言っても、文字通り「あずき色」に染まった美しいお赤飯の色合い・・・これは、なかなか、ご家庭では出せない色合いです。

 そこで、和菓子屋さんがやっている、お赤飯の色の出し方を、一般的な家庭のレシピと比較しながら、解説していこうと思います。

お赤飯のお豆は、「あずき」それとも「ささげ」?

 お赤飯を、きれいな色に炊き上げるには、「小豆(あずき)」よりも「ささげ(大角豆)」が良いと、言われています。

 ささげは、小豆よりも色が濃ゆく、皮も固くお豆も割れにくいため、とくに関東では、小豆よりも好まれています。

 和菓子屋さんも「ささげ」を材料にして、さらに、ご家庭ではあまりやらない裏技を駆使して、しっかりと色を出しているお店が多いですね。

 一方で、お豆の味は「小豆」の方が良いため、小豆を使う和菓子屋さんもあります。

 しかし、小豆は色が出にくいので、「あるもの」を使って色をつけます。食紅ではないですよ、きちんんと天然のものです。

 ・・・こうした和菓子屋さんの裏技を紹介していこうと思うのですが、その前にまず、ふつうご家庭では、どうやってお赤飯を作るか、確認しておきたいと思います。

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一般なご家庭での赤飯の炊き方

 一般的なご家庭の赤飯レシピでは、お豆を炊いた煮汁を使って、炊飯器のおこわモードなどで炊き上げます。

 お赤飯は、もち米100%で、せいろで蒸して作るのが、ほんらいの作り方ですが、ご家庭では、もち米とうるち米をブレンドして、炊飯器で炊くことがほとんどです。

家庭で作る赤飯のレシピ例

・もち米とうるち米(1:2くらいの割合)を30分〜60分水につけざるで水気をきる

・ささげ(または小豆)を、軽く洗い、水から茹で、沸騰したら一度お湯を捨てる(あく抜きの意味)

・新たにお湯を足して、20分ほど茹でる(煮崩れないようにちょくちょく様子をみる)

・お豆が柔らかくなる手前(食べられるけど固い、という程度)になったら、煮汁をボールで受け、豆をザルにとる

・炊飯器にお米を入れ、上に煮豆をのせ、煮汁を炊飯器の目盛りにあわせて入れる。(おこわモードがあればその目盛りに。無い場合は、やや少なめの水分にする)

・おこわモードで炊く(なければ普通に炊く)

※水分量は炊飯器の説明書などに従ってください

 家庭用で炊飯器を使って赤飯を炊く場合の標準的なレシピは、こんな感じですね。

 この方法だと、ほんのりと淡い薄紫色のお赤飯になります。

 より、しっかり色を付けたい場合は、もち米を一晩、ササゲ(または小豆)の煮汁に漬けておくやり方もあります。

 また、もっと簡単に気軽に作るには、炊いた小豆と煮汁がセットになっている「赤飯の素(煮た小豆+小豆の煮汁)」や「赤飯の素缶詰」が便利ですね。

 一方で、、和菓子屋さんでは、どんな方法を使っているか、次に見ていきましょう。

お赤飯に、しっかり色をつける、和菓子屋さんの技

 和菓子屋さんが、ささげを使ってお赤飯を炊く場合、重曹や泡立て器を駆使して、手の込んだ方法で、ささげの色素を引き出していきます。
何度も差し水をする
重曹で色を定着させる
泡立て器で煮汁を泡立てる
・水を切ったもち米にすり込むようにして馴染ませる。

 ・・・このあたりは、ご家庭ではあまりやらないプロの技と言えそうですね。

 豆の煮汁は、空気に触れさせて酸化させるほうが、色が鮮やかになります。そのため、「茹で汁を、おたまなどで切り返す」というのは、一般のレシピでもよく言われています。

 一方で、和菓子職人の技では、泡だて器まで使って、徹底してやることで、より濃ゆい色を作っていくのです。

 食材の力を最大限に引き出す、こだわりの職人芸ですね。

 以下がより、詳しい手順です。

和菓子屋さんで作るささげを使った赤飯の色の出し方

・もち米は一晩(3時間以上)水に浸し他のざるにあげておく

・沸騰した水に軽く洗ったささげを入れ、弱火〜中火で、沸騰している状態を2〜3分続ける→水50mlほど一気に入れふたたび、2〜3分沸騰させる

・「差し水←→沸騰」を3〜4回繰り返す。

・最後に火を止めたら、重曹を数グラム加える→ブワッと泡立ちするので、軽く混ぜ、泡を鎮める

・煮汁をボールで受け、豆をザルにとる

・豆は冷水にくぐらせて(割れ防止になる)、ざるにあげ水気を切っておく

・煮汁を、泡立器で、細かい気泡がでるまで、ゆっくり3分ほどかきまぜる

・ボールにもち米をとり、煮豆と煮汁を加えて、研ぐようにして馴染ませる

・ふきんを敷いた蒸し器に移し40分ほど蒸す

・途中バッドにあげ、打ち水をする

・ふたたび30分ほど蒸して、完成

◎さらに詳しいレシピが知りたい方は、下記の本がおすすめです。

 お豆の色を最大限引き出すための、手の込んだ技の数々は、なかなかご家庭では真似できない部分かもしれません。

 逆に言えば、手の込んだ和菓子屋さんのお赤飯は、よりスペシャルなお赤飯として、ご家庭の手作りのお赤飯と、TPOで使い分けていくのも良いと思います。

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小豆のお赤飯を、綺麗な色で染める「きび殻」とは?

 さて、もうひとつ、お赤飯の色の出し方を紹介したいうと思います。

 それは「たかきびの殻」を使って、鮮やかな紅色に染める方法です。

 この方法だと、お豆は、ささげではなく小豆でも大丈夫です。

 小豆のお赤飯で、色が綺麗に濃ゆく染まっていれば、「たかきび」で染めている場合がほとんどです。

 お豆の味は、ささげよりも、小豆の方が良いので、このやり方にこだわる和菓子屋さんも多いです。

 「たかきび」は、モロコシなどと呼ばれる雑穀のひとつですが、中国のコウリャンと言ったほうがイメージがわくかもしれませんね。

 たかきびそのものもお米にまぜて、雑穀米とすることもありますし、食感が「ひき肉」と同じなので、ビーガン料理でハンバーグの材料に使われています。

 その、「たかきび」を脱穀した時に出る「きび殻」にも、赤い色素がたっぷり含まれているので、これを使ってお赤飯の色を染めるのです。

 

「たかきび」の「キビ殻」を使った赤飯の色の出し方

・たかきびのキビ殻を沸騰したお湯に一掴み入れる

・お湯が赤く染まるまで火をとめ、ザルで濾してキビ殻を除く

・赤い水に一晩餅米を漬けておく。

・蒸す時の打ち水にもキビから煮出した赤い水を使う

・その他の手順は、通常のレシピと同じです

 この方法は、家庭の炊飯器でお赤飯を炊くときにも、応用できますね。

 炊く時のお水を、お豆の煮汁でなく、キビ殻の煮出し水に変えればよいだけです。

 お豆の煮汁の栄養分が少しもったいないですが、キビ殻の煮出し水の赤も、ポリフェノールのひとつアントシアニンですので、抗酸化成分は損なわれません。
「たかきびの殻」は、乾物専門店などでも購入できます。

もっと簡単に、お赤飯を染める「黒紫米」

 ここまで、和菓子屋さんのお赤飯の炊き方の技をみてきました。

 なかなか凝った方法ですので、ご家庭での再現性は、あまり高くはないですね。

 そこで、お赤飯を炊く時に、もっと簡単に、鮮やかな赤紫のお赤飯を作る方法も紹介しておきたいと思います。

 それは、「黒紫米」を使うことです。

 黒紫米は古代米の一種で、九州や沖縄などで作られています。

 色がとても濃ゆいので、お米3合に対して、大さじ一杯混ぜれば充分です。

 とても簡単に、鮮やかな色のお赤飯になります。

 そもそも、お赤飯の由来は、古代に食べられていた赤米です。

 古くは朝廷や神事などで、儀式の時に赤米を奉納していた、とされています。

 白米を食べる時代になって、赤米を模して、白米に色を付けるために、あずきやささげが使われはじめたようでようです。

 こうしたお赤飯の歴史を見てみると、お赤飯に赤米と同じ古代米である黒紫米を使うことは、ぜんぜん不自然ではありません。

 お豆抜きで、黒紫米だけでもオッケーということになりますね。

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 以上、お赤飯の色の付け方についてみてきました。

 地方によっては、「食紅」で、お赤飯を着色するところがありますが(たとえば北海道の「甘納豆赤飯」)、食紅で染まったお赤飯は、抵抗がある人も多いと思います。

 そんな時は、ここで紹介した方法を、ぜひ試してみてください。

 もちろん、お赤飯は、その家庭や地方の独特のやり方が伝承されてきているものです。とはいえ、もともと庶民がハレの日にお赤飯を食べる文化は、江戸時代後期に形成された、比較的新しい習慣です。

 ですので、お赤飯の作り方も、時代に合わせて、臨機応変に変化していっても良いのかなと思います。

 それぞれの生活スタイルやバックボーンに合わせながら、お赤飯の文化を、後世に受け継いでいきたいものですね。

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