耐震診断の義務化はどうなる? マンションや木造一戸建の診断は?
2018/06/26
耐震診断は、住宅の耐震性を、設計図面や現地調査をしながら診断するものです。
震度7の強い地震が頻繁に起き、多くの家屋が倒壊するなか、耐震診断の義務化という声も聞こえています。
自分がいま住んでいる家に、耐震診断が必要かどうか? それを知ることは、実は、防災を考えるうえでも、とても大切なポイントです。持ち家でなくても、賃貸でも要チェックすべきことなのです。
この記事では、耐震診断の義務と努力義務の範囲について、また耐震診断の必要性や耐震診断の受け方などについても、木造住宅とマンションそれぞれについて、詳しくみていきたいと思います。
耐震診断の義務と努力義務
耐震診断には、法的な「義務」と「努力義務」があります。
2017年現在では、小学校、病院、老人ホーム、大規模な文化施設・商業施設などに、耐震診断を受ける義務があります。
一方、個人の住宅は、戸建て・集合住宅ともに「努力義務」となっています。
ただし、個人の住宅についても、努力義務だからといってスルーできる状況ではありません。
現在の日本には、耐震改修を必要としている家屋が1,000万戸以上あると推定されています。日本の総戸数は約5200万戸ですので、20%近くが、耐震改修を必要としていることになります。
これは、もし震度7クラスの地震が来たら、5棟に1棟は全壊する、という意味にも解釈できます。
住宅種別 | 戸数 | うち耐震改修が必要 | |
戸数 | 割合 | ||
木造一戸建て | 2,700万 | 680万 | 25% |
木造・鉄骨アパート | 1,440万 | 216万 | 15% |
マンション(RC、SRC) | 590万 | 106万 | 18% |
その他(プレハブ住宅など) | 480万 | – | – |
合計 | 5,210万 | 1,002万 | 19% |
上の表は、阪神大震災や熊本地震で倒壊(全壊)した住宅のデーターから、割り出したものです。
比率から言えば、これだけの家が、最大震度7クラスの地震で、全壊します。
最大震度7クラスの地震は、南海トラフなどのプレート性地震だけでなく、活断層による地震でいつ起きてもおかしくない状況です。
上の表は耐震改修が必要とされる数です。それ以前に、耐震改修が必要かどうか?をチェックする耐震診断は、1000万戸よりもっと多い住宅で行われるべき、とも言えるわけです。
耐震診断を受けるべき建物の種類
耐震診断と耐震改修促進法ができた流れ
1981年に建築基準法の改正があり、それまで震度5を想定していた耐震基準を、震度7に引き上げました。この1981年の改正が、旧耐震と新耐震の境目になります。(耐震基準についての詳細は⇒「耐震基準の変遷」についての記事を参照ください)
耐震基準の引き上げで、旧耐震の建物は、新しい耐震基準にあわせて耐震性をアップするために、耐震診断と耐震改修をすることが望ましい、ということになりました。しかし、耐震改修はそれなりの費用がかかるものですし、そんなに簡単に耐震化が進むものでもないですよね。
そんななか、1995年(平成7年)に、それまで日本が経験したことのなかった現代都市直下地震・阪神淡路大震災が起きます。最大震度7で、10万戸以上の家屋が全壊しました。
この全壊した家屋の大多数は、旧耐震基準で建てられ、未だ耐震改修がされていない建物だったのです。
旧耐震基準の家屋の危険性が、阪神淡路震災で証明されたわけです。その直後に、「耐震改修促進法」が制定され、それまで、あまり進んでいなかった耐震診断と耐震改修を、法律にもとづいて推進していく流れになりました。
2020年には、すべての建物の「耐震化率」を95%までもっていくことを目標に、国をあげて取り組んでいます。
耐震診断の義務化と、診断が必要な建物の種類
耐震改修促進法は2013年(平成25年)に改正されて、一部の建物で、耐震診断が一部「義務化」されました。
2017年現在、最新の耐震改修促進法で「耐震診断の義務」が定められているのは、次のような建物です。
・ある程度の規模以上の小学校や病院・老人ホーム
・3階建以上で、総床面積が5000平米の大型のホテルやショッピングプラザ、映画館・美術館・コンサートホールなど
・公式の「避難路」に面した建物(ある程度の規模以上)
・ガソリンや塗料など可燃物を扱う施設
これらの建物は、平成27年中に耐震診断を受け、その結果を行政に報告することが義務づけられています。
一方、それより小規模の商業施設や個人の住居では、耐震診断は義務ではなく「努力義務」です。
しかし、以下にあてはまる建物は、努力義務だとしても、早めに耐震診断をする必要があります。
・1…旧耐震基準で建てられているもの
・2…4号住宅(500平米以下の木造2階建て)
「旧耐震基準」と「4号住宅」の建物は、法律上は義務化はされていないのですが、実は、震度7クラスの地震で倒壊する可能性がとても高いです。
2016年の熊本地震でも、倒壊した建物の大部分が、旧耐震基準または4号住宅でした。
また、都市型地震で命を落とす原因は、倒壊した建物の下敷きになることです(阪神淡路では約80%、熊本で約75%)
家屋の耐震性は、震災時に命を守るために、最も必要なことです。なので、「旧耐震基準」および「4号住宅」の建物は、できるだけで早く耐震診断を受け、必要なら耐震改修をするべきです。
耐震診断や耐震改修は、行政が補助金を出して、できるだけお金がかからずに、診断を受けられるようになっています。
各自治体に必ず相談窓口があるので、まずは、相談をしてみましょう。
耐震診断が必要?不要?ざっくり判断する基準
住宅の状態に表れる耐震住宅が必要かも?のサイン
耐震診断をしなければならいと判断する要素は、「旧耐震法」「4号住宅」など、建設された時期や法的基準だけではありません。
住宅の随所に見え隠れする表情や様子をチェックすることで、「これは耐震性が落ちてるかも?」と推測できることがあります。
以下のような状態が見受けられれば、耐震診断を考えたほうがよさそうです。
・増改築を2回以上繰り返していいる
・埋立地・低湿地・造成地などもともと地盤が弱いところ
・基礎が鉄筋コンクリートでない。
・柱と柱の間が全面が窓になっている部分がある
・家の形が上から見てL字T字
・吹き抜けがある
・床が傾むいている
・戸や窓の立て付けが悪い
・壁にひびがはいっている
これらの要因がある住宅は、耐震性が弱っている疑いがあります。
新耐震基準の時代に建てられていたとしても、耐震診断を受けた方が良いかもしれませんので、いちど相談してみることをおすすめします。
耐震診断を受けなくてもよさそうな住宅の種類
一方で、次のような家は、木造や戸建てでも、もともと耐震性能が高いため、耐震診断の必要が無いかもしれません。
・枠組み壁工法…2×4。いわゆるツーバイフォー
・木質プレハブ…ミサワホームなど
・軽量鉄骨…パナホーム トヨタホーム ダイワホームなど
ツーバイフォーといわゆるプレハブ住宅は、耐震性に不安がある場合は、メーカーや施工業者に相談してみましょう。
木造住宅の耐震診断
2000年以前の木造住宅は要注意
ここで耐震基準の変遷をもういちど見ておきましょう。
西暦 | 元号 | 震災 | 木造 | 鉄筋コンクリート |
1950 | S25 | ●建築基準法制定 | ||
1968 | S43 | 十勝沖 | ↑ 耐震性ほぼなし ↓ |
↑ 耐震性極弱い ↓ |
1971 | S46 | ●鉄筋コンクリート基準強化 | ||
1978 | S53 | 宮城沖 | ↑ 耐震性ややある ↓ |
|
1981 | S56 | ●新耐震基準の制定 (旧耐震→新耐震の境目) |
||
1995 | H7 | 阪神淡路 | ↑ 新耐震 ↓ |
↑ 新耐震 ↓ |
2000 | H12 | ●木造の耐震基準強化 | ||
2005 | H17 | 耐震偽装事件 | ↑ 新・新耐震 (現行耐震基準) ↓ |
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2007 | H19 | ●構造計算適合判定 | ||
2011 | H23 | 東日本 | ↑ 新耐震 (チェック強化) ↓ |
|
2016 | H28 | 熊本 |
この表で注意したポイントがひとつあります。
それは、木造住宅については、1981年の改正の後、神戸での結果を取り入れて2000年にも改修されているところです。
熊本地震の震源付近では、倒壊した家屋について次のようなデーターがあります。
・旧耐震の家屋のうち50%が全壊
・1981年~2000年に建てられた家屋のうち19%が全壊
このことから、1981年以前の旧耐震基準のものはもちろん、2000年以前の建築についても、耐震診断を行ったほうが良い、ということになります。
2000年の基準改正では、柱と梁や土台をつなぐ補強金具の基準が強化されています。ですので、1981年~2000年建築のものは、耐震化金具類の再度チェックが必要になるわけです。
無数にある4号住宅
熊本地震の震源地では、2000年以降に建てられた家屋のうち7%が全壊しました。これらは、どうやら、ほとんど4号住宅のようです。
このことは、4号住宅は、築年数に関係なく、倒壊の危険性が高いことを示しています。
そもそも4号住宅とは、建築基準法の特例を根拠に建てられている家屋のことです。
特例は、ざっくり言えば「小さ目の一戸建て木造住宅は、厳密な耐震基準を守らなくても建築許可がおりる」というものです。
小さ目と言っても、
「木造2階建て以下・述べ床面積500平米以下・高さ13m以下・軒高9m以下」
という基準ですので、よっぽどの大邸宅でなければ、ほとんどの戸建て木造住宅は、4号住宅にあてはまります。
つまり、ほとんどの個人の一戸建ては、4号住宅なので、耐震基準は厳格に守らなくてもよい、ということなのです。
耐震化率を上げるために、4号住宅特例の廃止は、これまで何度も検討されましたが、結局、2017年現在この特例は残っています。
新耐震基準の1981年以後、または、新・新耐震基準の2000年以後に建てられた木造住宅のなかにも、「4号住宅」の特例で建てられている住宅は無数にあるわけです。
4号住宅の耐震性は?
住居の耐震設計は、ほんらいは許容応力度計算にもとづく構造計算をしなければ、耐震性を確保できません。
しかし、構造計算は、とても時間と手間とコストがかかります。そこを簡略化するために、4号住宅では、壁量計算・N値計算など簡易な計算にもとづいて設計してもよいことになっています。
さらに4号住宅では、設計図面が建築基準法に合致しているかをチェックする「建築確認」の時にも特例があります。4号住宅は、耐震基準につては、とくにチェックされないのです。
つまり、建築士がきちんとやることを前提に、審査の過程も省略しているのです。
このことから、4号住宅は、次のような問題を抱えることになってしまいました。
・1…完璧な耐震性が得られる許容応力度計算をやっていない
⇒ 耐震性にブレが大きく、ちょっとしたことで当たり外れがでる。
・2…建築確認で耐震基準チェックがない
⇒ 悪い業者にあたったらアウト
4号住宅は、設計基準や申請の手続きを簡素化することで、少なからず住宅のコストは下げられています。安く大量に、庶民の住宅を供給しなければならない、という住宅政策のなかから生まれた特例が、4号住宅なのですね。
また、伝統的な大工さんの技術のなかには、経験的に、地震に強い木造家屋作ってきたという実績もあります。いわゆる経験と勘の生み出す技が、耐震性のある日本の木造住宅作りを支えてきた歴史があります。そうした、大工さんの伝承技術を評価して信頼することから、この4号住宅のシステムが生まれてきたわけです。
しかし、近年は、大工さんの伝統的な技も、徒弟制度がなくなることで、徐々にすたれてきました。ですので、いまでは、4号住宅できちんとした家を建てられるかどうか?は、建築士や施工業者次第です。手抜き業者や能力が低い建築士であれば、壁量計算が不充分で、結果として、耐震性が極めて弱い木造2階建てが量産されてしまう危険があるのです。
4号住宅は絶対に耐震診断をするべき理由は、まさにここにあるわけです。
もっとも最近は、施主も施工業者も耐震意識が高まっているので、高い耐震性を備えた「長期優良住宅」として新築するケースが増えています。
しかし、一方で、設計費や建築費を安く抑えたり、格安の建売住宅のなかには、まだまだ無数に4号住宅が潜んでいることに、注意しなければなりません。
木造住宅の耐震診断とIw値
さて、木造住宅を耐震診断は、専門知識のある建築士などが検査にあたります。
まずは、図面上で、壁量やN値を精査し、現場で確認をします。
現場では、床下や屋根裏に入り、現況の痛み具合や不具合をチェックします。
特に壁については、支えとなる耐力壁の位置や耐力壁を支える基礎などが厳しくチェックされます。
また、耐力壁の配置と家全体の重心とのバランスが取れているか?も重要なチェックポイントとなります。
これらの診断の結果は評点にまとめられます。
木造住宅では、Iw値という数値になります。
0.7未満…倒壊の可能性高い
0.7~1未満…倒壊の可能性ある
1以上…可能性低い(=建築基準法の耐震基準に合致)
1.5以上…倒壊しない(=耐震等級3に相当)
木造の耐震改修は耐力壁の追加で、耐震等級3までレベルアップ可能!
さて、旧耐震基準の木造住宅が、耐震診断を受けると、ほとんどは耐震改修が必要という結果になります。
また、4号住宅でも、それなりの割合で耐震補強が必要になるでしょう。
木造の個人住宅を耐震改修する方法としてスタンダードなのは、耐力壁を、外壁に追加するかたちで、外側からどんどん強くするものです。
耐力壁の合板と、耐震ガゼットと呼ばれる金具で補強していきます。
こうした方法では、耐震診断でIw値が0.6のものを、1.5まで耐震改修で高めることもできます。
つまり耐震改修することで、不適合から一気に耐震等級3までレベルアップすることも、狙えるのです。(耐震等級については⇒「耐震基準と耐震等級」の記事を参照してください。
もともと、伝統的な日本の木造家屋は、大工さんに伝わる技術の集大成です。
少しだけ手を加えれば、ほんらい木材が持っているパワーと良さを生かして、地震にも強くさらに長持ちする住宅に生まれかわらせることができるのです。
マンションの耐震診断と改修
構造計算が無いと建築許可がおりないマンション
木造戸建て住宅にくらべると、マンションのRCやSRC(鉄筋コンクリート・鉄骨コンクリート造)は耐震性が高い建物です。
そもそも、コンクリート建築物は、耐震性を確保する許容応力度計算を含む構造計算がきちんとできていないと、建築許可すらおりないからです。
つまり、RC,SRCの場合は、旧耐震基準でも、手抜きさえなければ、震度5で倒壊しないことは保障されているわけです。
その点では、いまだに耐震設計がノーチェックで建てられている木造の4号住宅に比べれば、マンションの耐震化問題はそれほど深刻ではないように思えます。
マンションにつきまとう構造計算偽装の不安は無くならない?
しかし、2005年に発覚した構造計算偽装のような、人為的ミスや手抜きが無いか?ということは、心配です。構造計算のミスなどは、致命的な欠陥をもたらします。
最近は、マンション購入や入居の時には、「設計図書」を確認して、構造計算が正しくおこなわれているか、第三者の専門家にチェックしてもらうことがよく行われるようになりました。
居住者で運営するマンション管理組合が、きちんと構造計算に問題がないか把握していることが大切です。
2000年以後は、住宅品確法で、マンション売主が瑕疵(かし)担保責任保険への加入が義務付けられたため、何か問題が生じた場合は、売主に診断や修理などの対策を請求し、売主は保険で改修などを行えるような仕組みが整いつつあります。
旧耐震のマンションの80%は、耐震診断をしない
問題が根深いのは、やはり、旧耐震基準で建てられているものです。
まず、マンションの耐震診断は、300万円ほどの費用がかかるケースがあります。
旧耐震のマンションは、構造計算書そのものが紛失していて、構造計算をやり直す必要がある場合もあります。
また、構造を調べるのにはコンクリート内部の鉄筋をスキャンするような特殊な機械を使うため、診断だけでも、そうとうな経費がかかるわけです。
診断費用までは、なんとか管理組合の積み立てから捻出できたとしても、問題は多額の改修費用です。
近年の建築のように、瑕疵保険も無く、管理組合や入居者の負担となります。
木造に比べれば地震に強いマンションですが、全国の165万戸のうち、約20%にあたる36万戸は、旧耐震基準で建てられ耐震診断が必要なものです。
しかし、東京都で行われたある調査では、旧耐震マンションのうち耐震診断を行ったのは2割以下で、8割は「今後も耐震診断を行う予定はない」との結論を出しています。
それはなぜでしょう?
宅建法では耐震診断の有無とその結果を公表することが義務づけられています。古いマンションは診断をすれば、ほぼ改修が必要となります。
宅建法上、診断の結果、要改修であることを公表しなければなりません。しかし、ほとんどその改修費用を捻出する目途は立たないため、耐震診断を受けてしまうと「耐震改修が必要だが直せないマンションであること」を公言せざるをえないのです。
一方、耐震診断を受けなければ、宅建法上の公表は、「耐震診断の有無⇒無し」だけですみます。
これが、多くの旧耐震マンションが敢えて耐震診断を受けない理由です。マンションの価値を少しでも下げないために、耐震診断は受けない、という皮肉な現象がおきているのです。
このことから言えるのは、築35年以上の古いマンションに入居する場合は、必ず、耐震診断の有無を確認することです。
やはり、マンションに関しては新耐震のものが、安心で安全だということですね。
旧耐震の木造は耐震補強で耐震等級3までランクアップさせて蘇らせることが可能です。しかし、旧耐震のマンションを蘇らせるのは、現実問題、かなり難しいことだ、ということは、頭に入れておきましょう。
耐震診断の受け方
さて、ここからは、耐震診断を受けるための、実務的なポイントについて、かいつまんで説明していきます。
耐震診断は、誰に頼むべきか?
耐震診断の相談窓口は、必ず、地方自治体に設けられています。
耐震診断は、耐震改修法により積極的に行うことが推奨されているものですので、どこの役所の窓口でも相談は歓迎されるはずです。
役所の窓口では、次のような耐震診断の実施者を紹介してくれます。
・指定確認検査機関
・建築家協会
・建築事務所協会
・日本建築構造技術者協会(JSCA)
…このように、役所の紹介にしたがって耐震診断を受けるのが最も安心です。
なお、民間資格の「木造住宅耐震診断士」などもありますが、行政からの紹介がないかぎり、こうした民間資格の業者やサービスに頼む必要は、とくにありません。
ただし、プレハブやツーバイフォーは、まずメーカーに問い合わせをしてみましょう。
また「耐震診断士」と言われる資格保持者がいますが、こちらは、中古物件売買で必要な「耐震診断適合証明書」を発行する場合に必要な資格ですので、通常の耐震診断では、必須の資格ではありません。
耐震診断の費用と補助
耐震診断には、図面と目視で行う一般診断と、実際に壁や基礎を壊して内部を確認する精密検査があります。
相場は、
一般診断:5万円~6万円
精密診断:15万円~30万円
ほどです。
自治体によっては、耐震診断だけでなく、耐震化工事の設計・施工費まで補助金を出してくれるところは、数多くあります。
まずは、市町村役場の窓口に相談してみてください。
なお、「無料耐震診断」と称して、リフォーム会社が飛び込み営業をしていることも多いです。怪しい業者も確かにいるので、門前払いするのも手ですが、なかには、優秀な耐震改修のノウハウを持った業者がいるかもしれません。
無料耐震相談は、そのリフォーム会社が持っている耐震化技術がどういったものか? しっかり確認できれば、利用するのもありです。耐震補強の工法に納得したうえで、無料診断を利用しましょう。
違法建築でも耐震診断と耐震化工事はできる
建築基準法は、都市部ではとくに厳しく複雑な規制があるため、現実と乖離(かいり)している面もあります。とくに建蔽率・容積率・接道では、事実上違法建築になっている家屋が多数あります。
これらは、ほんらいは、改修などが認められないのですが、耐震改修だけは特例で、違法建築物でも改修が認められます。
過去に、違法建築や既存不適格建造物と認定された家屋でも、耐震診断については、役所に相談してみましょう。
耐震診断適合証明書
耐震診断適合証明書は、中古物件を売買する時に、税制上の優遇措置を受けるために取得する書類です。
マイホームを耐震診断して、耐震改修するだけなら、とくにこの証明書は必要ありません。
中古物件の売買では、耐震診断の有無の公表と、有る場合はその結果の公表が義務づけられています。
中古物件の買い手が、耐震診断適合証明書を使って、住宅ローン控除、登録免許税・不動産取得税、地震保険の減税や割引が得られるものです。
耐震診断や耐震改修が終わっていない中古物件を敢えて購入する人は、通常はいないでしょう。ですので、耐震診断適合証明を発行する時は、既に耐震改修が終わったものを、いわゆる「耐震診断士」に再チェックしてもらう場合がほとんどでしょう。
耐震診断士は、「日本建築防災協会の講習を受け自治体の自治体を受けた建築士」の通称です。
耐震診断適合証明書を発行できるのは、耐震診断士のみです。既に、耐震改修などが終わっている場合は、証明書の発行料金は1万5千円~数万円ほどです。
以上、耐震診断についてポイントを説明してきました。また、耐震診断の後、必要になるであろう耐震改修についても触れました。
古いマンションについては、なかなか難しい点があるものも、木造一戸建ての耐震改修は、伝統の木材建築の寿命をフル活用できる、環境にもやさしいリフォームが可能です。
防災面からはもちろん、総合的な意味で、旧耐震や4号住宅の耐震化リフォームを、積極的にすすめたほうがよいかもしれません。
命を守るだけでなく、マイホームを守るための第一歩が、耐震診断なのです。p>