大黒様、恵比寿様、布袋様。ご利益の違いや見分け方。金運を呼べる?

      2019/07/20

大黒様 恵比寿様

 大黒様、恵比寿様、布袋様。この3神は、七福神のメンバーでもあり、代表的な福の神です。

 3人とも「福耳のぽっちゃり系の笑顔のおじさん」という風体なので、区別がつかない?と悩む人も多いかと思います。

 そこで、この記事では、大黒様、恵比寿様、布袋様それぞれの特徴を整理していきたいと思います。

 ご利益があるように、神様の特徴をしっかり学んでおきましょう。

大黒様、恵比寿様、布袋様の区別の付け方は?

 「福の神」というと、「にこやかで、福耳で、かっぷくの良い、おじさん(おじいさん)の神様」というイメージだと思います。

 幸運をもたらしてくれる福の神は、七福神メンバーをはじめ、ほかにも数多くいますが、ぽっちゃり系の福の神といえば、大黒様、恵比寿様、布袋様の3名になります。(神様を数える場合はほんとうは「3人、3名」ではなく、「柱」「尊」「神」などを用いるべきですが、ここでは親しみをこめて、人・名を使わせていただきます)

 まずは、大黒(だいこく)様、恵比寿(えびす)様、布袋(ほてい)様3人の神様を見分け方をおぼえていきましょう。特徴についてまとめた、下の表をみてください。

福の神3名の見分け方
大黒様 恵比寿様 布袋様
頭巾 風折烏帽子 スキンヘッド
持ってる なし 持ってる
持ち物 打ち出の小槌 釣り竿と鯛 軍配または数珠
得意分野 農業・商売 漁業・商売 夢・人格
出身 インド 日本 中国

 見分け方のポイントとしては、上の表にあるように、まず、頭のかぶりものや持ち物です。

 大黒様は農業神ですので米俵に乗っていること、恵比寿様は漁業神なので釣り竿や鯛、そして恵比寿様はもともとお坊さんですので坊主頭で数珠をもっています。

 まずはここをしっかりおさえておきましょう。

▲大黒様…頭巾、打ち出の小槌、袋

▲恵比寿様…烏帽子、釣竿、鯛

▲布袋様…スキンヘッド、数珠、袋

 外見が似通っている3名の神様ですが、それぞれ由来はまったく違います。出身地も、インド、日本、中国とバラバラですね。

 では、さらに詳しく、3名の神様それぞれの由来やご利益についてみてゆきましょう。

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大黒さまの袋のなかには幸せが詰まっている

闘いの神から農業の神へ

 大黒様は、福の神、商売の神、金運の神様として人気があります。

 なにしろ、何でも欲しいものを出してくれる「打ち出の小槌」を持っている神様ですから、金運祈願などでお願いをする人も多いでしょう。

 しかし、もともと大黒様の由来となっている「大黒天」は、ヒンドゥー教のマハーカラーで、とても怖い形相をした闘いの神でした。

 それが中国で台所の神へと変化したのち、密教を通じて日本へ伝えられました。

 ところで日本古来の神で有名な大国主命(おおくにぬしのみこと)がいます。大国主は出雲大社にまつられている神様ですが、因幡(いなば)の白ウサギの逸話で、ウサギを助けた神様としても有名ですね。因幡の白ウサギの話のなかでは、大国主命は大きな袋かついでいました。

 さて、大黒天と大国主のふたつの神様は、時が立つにつれ「だいこく」「おおくに」の字が混同されて、大黒様というキャラクターへと変化していきます。江戸時代には、米俵の上に乗る今の大黒様のかたちになったと言われています。

 このように、中国から伝わった台所の神が、日本の神とミックスされながら、食べ物の神、やがて農業の神へと変化していた結果、大黒様となったのです。

 打ち出の小槌の由来はよくわかっていませんが、大黒様は広く民衆に愛されるうちに、なんでも願いを叶えてくれる身近な神様として、小槌を持つようになったようです。

 かついでいる袋のなかには「七宝」と呼ばれるモノではない宝物が入っているとされています。「寿命」「人望」「清麗」「威光」「愛嬌」「大量」が七宝ですが、簡単に言えば、「人類の希望」といったところでしょうか。

▲たしかにサンタとの接点を疑いたくなる大黒様。袋の中には、気持ちのプレゼントが。東京・神田明神の大黒像

「定期預金」は大黒様が生み出した!?

 大黒様は農業の神であると同時に、商売の神としても親しまれていました。

 なかでも、明治〜昭和にかけて活躍した牧野元次郎という、のちの協和銀行・りそな銀行の創業者である実業家がいます。牧野元次郎は、大黒信仰を信奉したことでも有名で、銀行で社員一同毎朝業務前に、大黒様にお祈りをしていたそうです。

 牧野基次郎は、大黒様の「節約しましょう」という教えから、日本発の定期預金「ニコニコ貯金」を創出して、庶民が貯蓄をする習慣を定着させたといわれています。

 大黒様は金運の神様として宝くじ祈願などもしますが、ほんとうに大黒様の教えに従うなら、ただお祈りするだけでなく、きちんと貯蓄をするべきなのかもしれませんね。

▲群馬県下仁田・中之獄神社の金色の大黒像は日本一の大きさとされる。打ち出の小槌ではなく刀を持っているところが、大黒様の由来が「大黒天」や「大国主」であることを物語っている。
大黒様のポイント

・もとはインドの大黒天だが、日本の大国主命とミックスされ、現在の農業神の姿に

・願いを叶える打ち出の小槌と、人々の希望が入った袋を持っている

・農業神であると同時に商売の神でもある。定期預金ができたきっかけを作ったのは大黒様

▲岐阜県中津川の出雲福徳神社。大黒様と恵比寿様が並んで鎮座。お腹をさすると、宝くじが当たる!としてバスツアーも来るほどの人気ぶり

恵比寿様は、ずっと日本の民衆を見守っている

海からの恵を象徴した恵比寿様は日本独自の神様

 恵比寿様は、釣り竿と鯛を持っているので、すぐ見分けがつくと思います。ビールのブランドでもですよね。

 大黒様はインド、布袋様は中国に由来する神様ですが、恵比寿様は純日本生まれの神様です。戎、蛭子とも書きます。

 恵比寿様は、もともと古事記に登場する神様イザナミとイザナギの間に生まれた神の子、蛭子(ヒルコ)でした。しかし、未熟児だったため、両親は捨てることにして、船に載せて流してしまいました。

 海をさまよった蛭子が流れ着いたのが、現在の兵庫県西宮で、地元の人間は、蛭子さまを助けて恵比寿様として祀るようになったのです。それが恵比寿信仰の総本山である西宮神社です。

▲兵庫県・西宮神社が恵比寿様誕生の地。

 もともと海洋国日本では、海から流れ着くものは縁起が良いもの、幸や富をもたらすものとされていました。

 クジラなどが漂着し飢饉を免れたということが実際に多くあったようです。

 そのため、海から流れ着いたとされる恵比寿様が、幸や富をもたらす福の神とされたのです。

 恵比寿様は釣り竿を持っていますが、網ではなく竿であることには、つつましやかで「欲張らない」という教えが含まれています。このため、漁業の神であると同時に商売繁盛の神として人気が出たようです。

 やがて、恵比寿様は、もうひとつの人気神である大黒様とペアを組むことになり、全国へ広まっていき農村地帯では、もともと漁業の神である恵比寿様も農業の神であるとされているところもあります。

 ただし、大黒請が農村で今も行われる行事であるのに対して、エビス講は、都会の商人の家で伝統的に行われることが多いようです。

▲栃木県真岡市・大前神社のデカすぎる恵比寿像。縁結びや種銭も人気。

ヱビスビールと恵比寿様の関係は?

 ところで、すっかりお洒落な街としての地位を確立している山手線の恵比寿。これはもともとここに「ヱビスビール」の工場があったことから付けられた地名です。

 ヱビスビールはサッポロビールの前身である日本麦酒醸造會社が、ドイツから職人を呼んで開発した名門ビール。今でも日本のプレミアムビールの最高峰として誰もが認めるヱビスビールですが、1900年頃に世界的な評価を得ていたという歴史もあり、日本が世界に誇るビールと言ってよいでしょう。

 そもそも恵比寿ビールを名付ける時に、はじめは「大黒天」としようとしたところ、すでに「大黒ビール」というものが横浜で発売されていたため、恵比寿様から名前をとったとのことです。

▲ヱビスビールはもちろん恵比寿様が由来。駅名や地名は、ヱビスビールから付いたもの。

 第二候補だった名前が、まさか駅名にまでなるとは、当時は想像もつかなかったことでしょう。恵比寿ビールの売れ行きが好調となり、工場に引き込み線を引いて貨物列車で出荷をしてたそうです。その後、ビール工場は移転して、貨物は廃止されましたが、1985年から96年までのあいだは、貨物線に客車を置いたビアガーデン「恵比寿ビヤステーション」が人気を博しました。

 恵比寿には商店街のなかに恵比寿神社がありますが、恵比寿ガーデンプレイス内にももうひとつの恵比寿神社があります。こちらはサッポロビールがヱビスビールをはじめた時に、恵比寿様の本家、西宮から勧請(かんじょう)して作られた神社です。まさにヱビスビールのための恵比寿神社といったところですが、現在はガーデンプレースの神様として祀られています。

 このように、ヱビスビールから恵比寿ガーデンプレイスまでの流れを、恵比寿様はずっと見守っているというわけです。もちろんヱビスビールや恵比寿の街の発展は恵比寿様のご利益だけではありません。ヱビスビールも商品としては何度も浮き沈みを繰り返しながら、紆余曲折のうえに今の地位を確立しています。ビジネスが成功するためには、たゆまぬ努力が必要です。努力した人を後押ししてくれるのが、恵比寿様なのかもしれませんね

恵比寿様のポイント

・もともとは捨て子の神様が海から流れ着いたところを人に助けられた。

・海つながりで漁業の神様。網ではなく竿をもっているのは欲ばらないという教え

・欲張らないという教えから商業の神様として活躍中。ヱビスビールや恵比寿駅の由来ともなっている

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ポジティブな布袋様は実はあの超越した存在だったという・・・

布袋様の袋の中身は何?

 布袋様は、七福神のメンバーですが、大黒様と恵比寿様がペアーで全国津々浦々まで浸透しているのに比べると、ちょっとマイナーですが、案外、実家や祖父母の家に置物があったりする頻度が多いのが、布袋さまです。

 もともと中国の禅僧・契此(かいし)ほか何名かの有名なお坊さんが神格化したものです。

 布袋様はお坊さんですのでスキンヘッドですし、数珠を持っていることも多いです。

 ただ、お坊さんといっても、放浪の乞食坊主的なやつで、背負っている袋には恵んでもらった生活必需品などが入っているそうです。

 大黒様の袋に「七福」が入っているのとは対照的で、実は、布袋さんの袋は不満や嫌なことを溜め込む堪忍袋、だということです。

 いつもニコニコ笑顔を絶やさず、貧しくても、常にポジティブ。ネガティブなことはすべて堪忍袋に閉じ込めてしまう、前向きキャラクターというのが、布袋様の位置づけといった感じですね。

▲いつもにこやかでポジティヴシンキングの布袋様。実は、ただの貧しい旅のお坊さんではなかった・・・

布袋様と波照間島の「ミルク」のつながりとは?

 布袋様がすごいところは、弥勒菩薩の化身ともされているところです。弥勒菩薩といえば、この世の終わりに地上に現れて、生きとし生ける物すべてを救済するという、神仏を超えた、究極の存在ともいえるものです。特別な存在ですので、「未来仏」と呼ばれます。

 布袋さまは、雪のなかで寝ても大丈夫、など奇跡的な行動をしました。そのため、ただの坊主ではないとされ、布袋様=菩薩、という説が広まっていったそうです。ぱっとみ乞食坊主の布袋様が、弥勒菩薩の化身というミスマッチ感が、かえって真実味をましていますね。

 弥勒菩薩を寺院は数多くありますが、日本では、ふつうは、スラッとして思慮深く慈悲深い美しい中性的な弥勒菩薩像が本尊として据えられます。

 ところが京都宇治の黄檗宗大本山・萬福寺には、なんと布袋様のお姿をしたご本尊がいらっしゃいます。七福神の一人である神様がお寺のご本尊になっているインパクトもなかなかです。

Sukegawa Toruさん(@goroco)が投稿した写真

▲京都宇治・黄檗宗萬福寺の布袋尊像。布袋様は弥勒菩薩の化身。

 日本では異質な感じがする、布袋様の弥勒像ですが、台湾では、弥勒といえば布袋様タイプになります。

Megu*さん(@i.m_megu)が投稿した写真

▲台湾台中の宝覚寺の弥勒菩薩像。布袋様そのもの。

 また、沖縄県の八重山地方の波照間島や石垣島では、ミルク信仰というのがあります。豊作を祝う豊年祭でミルク、すなわち弥勒のお面をつけた神が登場するのですが、このお面が福耳ニコニコの眉毛の太いおっさん顔で、まさに布袋様のお顔になっているのです。

 このように布袋様は、弥勒菩薩の化身として各地に根を下ろしているわけです。

 布袋様は金運の神様ともされていますが、もともとは乞食坊主のホームレスです。ましてや、究極の未来仏弥勒の化身であれば、俗世のお金なんて、どちらかというと無縁のはずです。

 一方、金持ちの豪邸には、大黒様や恵比寿様ではなく、布袋様の置物が必ずある、といわれています。それが事実だとしたら、やはり、布袋さまの「ポジティブシンキング」がビジネスを成功させて、結果としてお金がまわってくるということなのかもしれませんね。

布袋様のポイント

・実在した中国の禅宗の僧侶がモデルだが、弥勒菩薩の化身でもある。

・もっている袋は堪忍袋。怒りや恨みは心の内にとどめ、いつも笑顔でポジティブにすることが成功の秘密?

・台湾や沖縄にも広がる布袋系弥勒。文化の伝播を知るうえでも貴重な存在。

 

 

 以上、大黒様、恵比寿様、布袋様についてみてみました。

 いずれの神様も、金運の神としてご利益を期待したいところですが、金運は、神仏にお願いするだけでは巡ってきません。

 神仏にお願いしながらも、「自分はどうありたいか? どうするのか?」という、主体性のある意思をもたねば、何事も成就しません。

 ご利益に授かるのはけっこうですが、ほんらいの神仏の教えが説いているのは「何事も自分の努力や反省が必要だ」ということを、忘れないようにしましょう。

  

【参考記事】 お願いごとをするなら、神さまだけでなく、「お不動様」もありですね。詳しくは⇒「お不動様の基礎知識と訪れてみたい不動尊14選」の記事も参考にしてみてください。
また、お不動様、観音様の違いについては⇒「大観音像10選&観音様の基礎知識」も参照してください。

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