米軍台風情報と気象庁の違いと使い分け方。良く当たるのはどちら?
2018/09/28
台風予報のセカンドオピニオンとして、定番となっているのが、アメリカ海軍により公開されている台風予報、JTWC(ジョイント・タイフーン・ワーニング・センター)です。
海軍の台風予報JTWCは、日本の気象庁とは別なデータにもとづく独自の予報ですので、ふたつの予報を見比べることで、より台風の状況がわかるようになります。
この記事では、前回より2回にわたり、米軍の台風予報を読み解くポイントなどについて、詳細を書いています。前回の記事⇒「米軍の台風の情報…時差や風速の換算方法」では、台風番号の違い、時差、トロピカルストーム、米軍の風速(WINDS)と日本の風速の違い、について説明しました。
今回の記事では、日米の強風域・暴風域設定の違いやテキストデーターの読み方、瞬間最大風速(GUST)、気象庁予報と米軍予報はどちらがよく当たるのか?について見ていきます。
【関連記事】⇒「米軍台風情報の時差、風速(WINDS)の換算方法などはこちら」
【参考記事】⇒「案外知らない気象庁の台風情報を読みこなすコツ」
米軍台風予報の強風域・暴風域設定の違い
米軍の予報と気象庁の予報では、最大風速の基準が異なることは前回、述べました。
ただたんに単位が違う(ノットと秒速)という話ではなく、風速の平均値をとる基準が異なるため、ふたつの予報を比較する場合には、誤差の修正が必要だということです。
今回も、そのあたりは注意しながら、情報を見ていきましょう。
気象庁の台風情報では、台風は、強風域と暴風域の2種類の円で描かれます。気象庁の基準では、強風域は風速15m/s以上、暴風域は風速25m/s以上です。
台風の強さの基準のひとつとして、暴風域があるか?ないか?というのは、重要な目安になります。沖縄地方では暴風域は日常ですが、本州に上陸する台風では、暴風域を伴う場合と、暴風域が消えている場合があります。今後は温暖化の影響で、暴風域を維持したまま北上する可能性が増えて来るので、注意が必要です。
さて、海軍の予報では、円は3つ描かれています。最大風速による、台風の強さの領域です。
- 外側の円(赤)…34knot
- 内側の円(紅色)…50knot
- 中心の円(ピンク)…64knot
気象庁の基準の最大風速に換算すると、
- 外側の円(赤)…15.5m/s
- 内側の円(紅色)…23m/s
- 中心の円(ピンク)…28m/s
となっています。
強風域の基準はほぼ同じですが、暴風域基準は異なります。ピンクの円は気象庁の暴風域よりやや強い範囲、紅色の線は気象庁の暴風域よりやや弱い範囲、となります。
ちなみに、アメリカの台風基準は日本より細かく分かれていて、米軍風速64ノット(気象庁風速換算28m/s)以下はトロピカルストーム、64ノット以上がタイフーンになっています(参考記事⇒トロピカルストーム)。つまり、米軍台風予報の図では、中心のピンクの円が無いものはトロピカルストーム、ピンクの円が有るものがタイフーンになるわけです。
米軍台風予報の位置情報の読み解き方
JTWC(米国海軍の台風予報)では、図版のなかに、テキストで詳細情報が記載されています。英語だからといって敬遠せず、読むコツを掴んでしまえば、豊富な情報がゲットできます。気象庁の情報と比較しながら、自分なりの台風予測を考えていくこともできると思います。
以下に具体的な見方を見ていきましょう。
台風の基本情報/位置やスペック
まず一行目に、台風番号があり、続いて台風名があります。(台風番号は日米で違う場合もある⇒日米の台風の情報についての記事も参照ください)
2行目WRNNING 〜PGTWまでは警報のコードですので、スルーして構いません。
3行目に現在位置がかかれています。例では、8日0時(日本時間8日午前9時)で北緯25.0度、東径126.0度にあります。
4行目は方位と移動スピードです。方位は度数で表しています。日本の東西南北表記との早見表は以下です。
Dgrees | 東西南北 |
0 , 360 | 北 |
22.5 | 北北東 |
45 | 北東 |
67.5 | 東北東 |
90 | 東 |
112.5 | 東南東 |
135 | 南東 |
157.5 | 南南東 |
180 | 南 |
202.5 | 南南西 |
225 | 南西 |
247.5 | 西南西 |
270 | 西 |
292.5 | 西北西 |
315 | 北西 |
337.5 | 北北西 |
スピードはKNOTS(ノット)で表しています。気象庁の移動スピードは時速です。ノットに1.852をかけるとkm/h時速になります。下記のノットと時速の変換表をも参照ください。
ノットKnot | 時速km/s |
5 | 9 |
6 | 11 |
7 | 13 |
8 | 15 |
9 | 17 |
10 | 19 |
11 | 20 |
12 | 22 |
13 | 24 |
14 | 26 |
15 | 28 |
16 | 30 |
17 | 31 |
18 | 33 |
19 | 35 |
20 | 37 |
21 | 39 |
22 | 41 |
23 | 43 |
24 | 44 |
25 | 46 |
26 | 48 |
27 | 50 |
28 | 52 |
29 | 54 |
30 | 56 |
31 | 57 |
次にMXIMUM SIGNIFICANT WAVE HEIGHT は波の高さです。単位はフィートですが、0.3を掛けるとメートルになります。
台風の勢力(最大風速/最大瞬間風速)の変遷
その次からは、台風の勢力の変化が書かれています。
08/00Z WINDS 110 KTS, GUSTS TO 135 KTS
これらは、日時・ 最大風速 ・最大瞬間風速の順です。
日時と最大風速(WIND)については、前回の記事「米軍の台風の情報…時差や風速の換算方法」を参照してください。また、そもそも最大風速と最大瞬間風速の違いについては⇒「風速の基礎知識」の記事を確認ください。
さて、JTWCの見方で注意したいのは、最大風速(WIND)と最大瞬間風速(GUSTS)の日米換算の方法がそれぞれ違うことです。最大風速(WIND)は日米の計測方法の違いによる誤差を修正する必要がありましたが、最大瞬間風速(GUSTS)は、計測方法はおおむね同じであるため、ノットをそのまま秒速に直せば、米軍予報と気象庁予報を比較することができます。
米軍の最大瞬間風速(ノットKnot) | 気象庁の最大瞬間風速(秒速m/s) | 35 | 18 | 40 | 21 | 45 | 23 | 48 | 25 | 55 | 28 | 60 | 31 | 65 | 33 | 70 | 36 | 75 | 39 | 80 | 41 | 85 | 44 | 90 | 46 | 95 | 49 | 100 | 51 | 105 | 54 | 110 | 57 | 115 | 59 | 120 | 62 | 125 | 64 | 130 | 67 | 135 | 69 | 140 | 72 | 145 | 75 | 150 | 77 | 155 | 80 | 160 | 82 | 165 | 85 | 170 | 87 |
データーの読み解き方の例としては、以下のような読みとなります
08/00Z WINDS 110 KTS, GUSTS TO 135 KTS
↓ ↓ ↓
日本時間9日午前9時 最大風速50m 最大瞬間風速69m
各地からの台風への距離など
CPA TOの後には、主要都市や主要基地がリストアップされています。それぞれの都市や米軍基地への最接近の時刻と距離が書かれています。
距離の単位はNM(ノーティカルマイル=海里)ですので、1.852を掛けるとkmになります。
TAIPEI NM=244 DTG=08/01Z
は、台北への最接近は国際共通時で8日の午前1時、距離は451kmとなります。
BEARING AND DISTANCEの項では、主要都市や主要基地からみた、一定時間後の台風の方位と距離が示されています。方位の単位は度数、距離は海里です。TAUの数値が一定時間数を表しています。
SASEBO DIR=218 DIST=263 TAU=24
の例では
24時間後の台風の位置は、佐世保の南西、約487kmにある
と読み解けます。
以上、米軍台風予報の情報の読み解き方について、説明しました。
最大風速と最大瞬間風速の換算表を使い分けて、正しい数値をもとに、気象庁のデータと見比べるようにしてみてください。
気象庁予報vs米軍予報は、どちらが正確?
さて、最後に、米軍の台風予報は気象庁より正確か? というテーマについて。
「米軍の方がよく当たる」と言う人も多いですが、気象庁も年々予報精度をあげていますので、実際の的中率は変わらない、というのが事実ですね。
ただ、予報の出し方として、米軍はコースを最も可能性の高いラインで示しているのに対して、気象庁は予報円での予報になっているため、イメージとして、米軍の方がはっきりしています。
だから、よく当たるような印象を与えるのでしょう。(気象庁も円ではなくラインによるコースも発表しています。こちらの記事⇒台風情報の詳細をゲットする方法」を参照ください)
また、日本の気象庁の予報の傾向として、日本の有人地域は、「とりあえず予報円には入れておく」という傾向で予報円を書いてくることもあります。
一方、米軍予報でも、「わざと嘉手納基地直撃のコースで発表しているのではないか?」 と思わせる時があります。
それぞれの予報で、できるだけ警戒を促すような表現方法を使っていることは、事実のようですね。
いずれにせよ、どちらもそれなりに正確ですし、参考になる予報を出しています。
しかし、台風接近時には、米軍の予報よりも気象庁の詳細データの方が、はるかに役立ちます。長期的な予報は米軍、接近時の予報は気象庁、という使い分けをするのがよいかもしれませんね。
ところで、気象庁の詳細データを上手く活用できていない人も多いので、気象庁の台風情報の徹底活用については、⇒「最新で正確な台風状況や現在位置を知る方法」の記事も参照してください。
また、米軍の台風予報の元ネタとなっている、⇒「米軍の天気シュミレーションWXMAP」も見逃せない情報源です。WXMAPを見れば、誰よりも早く、台風の発生予報を手に入れることができますので、要チェックです。
以上、米軍の台風情報の見方について詳細を述べてきました。
正しい情報をゲットして、台風に備えていきましょう。