米軍の台風の情報(JTWC)…時差や風速の換算方法について

      2018/09/26

米軍台風情報

 米軍の台風情報JTWC(Joint Typhoon Warning Center)は、ハワイにあるアメリカ海軍の気象センターが発表しているもので、一般でも見れるように公開されています。

 国内の台風予報はすべて元ネタは気象庁なのでどれも同じ内容ですが、米軍の台風予報は、気象庁とは違った方法で予報されているので、気象庁発表予報のセカンドオピニオンとしてたいへん役立ちます。

 ただ、米軍の台風情報を読み解くには、時差や風速の単位など、日米の違いに注意が必要です。

 たとえば時差は、JTWCの時間表記は国際標準時なので9時間を足せば日本時間となります。また、風速と瞬間最大風速では単位の換算方法が違うなど、若干ややこしい部分もあります…この記事では、米軍台風情報を正確に読み取るためのポイントについて、詳細を説明していきます。

【関連記事】⇒「瞬間最大風速(GUST)の換算表、日米使い分けのポイントなど」

米軍の台風情報と気象庁で、台風番号が違う場合がある

 米軍の台風情報は、「JTWC」で検索すれば出てきます。トップページは、台風が発生している場合は、たとえば以下のように表示されています。

米軍台風情報

サイクロンやハリケーンが同時に表示されている場合もありますが、その場合は、タイフーンを探します。台風は

Typhoon 04W(Songda) Warning #34

などと出ています。この場合は台風4号の34番目の情報ということになります。

 注意したいのは、台風の番号が、日米でズレる場合があることです。台風の成りかけのものなどを、台風として認定するかしないか?の判断の違いがあるため、少しずつ番号がずれてくることが多いのです。

 ですので、()内の「国際共通名」で、見たい台風の情報かどうか?を確認をしておきましょう。

さて、上の例で、

Typhoon 04W(Songda) Warning #34
の2つ下に

●TC Warining Graphic

 というリンクがあります。これをクリックすると、下の台風進路図が出てきます。

米軍台風進路図

 この米軍発表の台風進路図を読み解いていく場合の注意点やポイントを、さらに詳しくみていきましょう。

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アメリカ海軍台風情報JTWCの時差は?

米軍の台風進路図では、台風の予想位置ごとに、

09/00Z

などと時間が表現されています。

 ZはZuluTimeの略で、国際標準時のことです。国際標準時はUTCと書かれることも多いです。UTCとZuluTimeは同じです。

 国際標準時に対して、日本は+9ですので、9時間を足せば日本時間となります。

  • 09/00Z ⇒ 9日午前9時
  • 09/06Z ⇒ 9日15時
  • 09/12Z ⇒ 9日21時
  • 09/18Z ⇒ 10日午前3時

熱低と台風の中間にある、もうひとつの台風

 台風の図のなかで、台風の中心が、3種類の記号で表現されています。

 日本では、熱帯低気圧と台風という2種類の分類ですが、アメリカでは、熱低と台風の間に、もうひとつの段階があります。それがトロピカルストームです。

米軍での台風の3段階分類

米国の台風の3段階
熱帯低気圧 Tropical Depression 米軍風速33ノット以下
トロピカルストーム Tropical Storm 米軍風速63ノット以下
台風 Typhoon 米軍風速64ノット以上

の3段階に分類しています。

風速(WINDS)の換算

 さて、ここで、米軍のノット表記による風速と、気象庁の秒速の風速について、換算するための注意するべきポイントがあります。

 ノットは船舶関係や航空関係で使われるスピードの単位で海里を基準とした単位ですが、日本の風速は秒速です。1ノットは時速1.852km/hと決まっていますので、ノットから秒速へは、とりあえず計算すれば換算できます。

 とりあえず単純計算すれば、風速63ノットは、秒速では32m/sとなります。

 しかし、これだけでは誤差が生じるのです。

 ここが注意するべきポイントなのですが、アメリカの最大風速と日本の最大風速は、基準が違うため、ただ換算するだけでは、誤差が出るということです。

 つまり、「米軍風速」と「気象庁風速」を、区別して考えるべきなのです。

 台風の強さを表す風速は、正確には最大風速といいます。最大風速は、風速の平均値をいくつかとって、そのなかで最大のものをピックアップして、最大風速とするわけです。ところが、風速の平均値をとる基準が日米で異なるため、最大風速にも誤差が出てくるのです。

 日本の最大風速は10分間の平均風速をベースにしているのに対して、米軍の台風情報では1分間の平均風速をもとにしています。

 日本の10分平均の測定の方が、国際基準に則した、グローバルスタンダードな方法なのですが、米軍の1分間平均値の方が、より細かく測定できるということで、米軍は1分平均を採用しています。

 1分平均の方が、10分平均に比べて、高い数字が出ます。

 この誤差を修正するには、米軍の1分平均風速に0.88を掛け、日本の10分平均に換算する必要があります。

 平均風速の誤差を修正した「米軍風速」と「気象庁風速」の換算表は以下となります。

気象庁の最大風速(10分平均)と米軍の最大風速(1分平均)の誤差を修正した風速換算表
米軍の最大風速(ノットKnot) 気象庁の最大風速(秒速m/s)
33 15
35 16
40 18
45 20
48 22
50 23
55 25
60 27
65 29
70 32
75 34
80 36
85 38
90 41
95 43
100 45
105 48
110 50
115 52
120 54
125 57
130 59
135 61
140 63
145 66
150 68
155 70
160 72
165 75
170 77
175 79
180 81
185 84
190 86
195 88
200 91

なお、「風速=最大風速=winds」と「瞬間最大風速=gust」は別のものです。「瞬間最大風速」の日米換算につては、次のページ⇒「米軍台風予報と(JTWC)の詳しい見方2」を参照ください。

 

 この換算方法に基づいて計算すると、米軍の台風のランクは、気象庁の風速で言うと、下記のようになります。

米国の台風の3段階と気象庁風速の比較
熱帯低気圧 Tropical Depression 気象庁風速15m/s以下
トロピカルストーム Tropical Storm 気象庁風速28m/s以下
台風 Typhoon 気象庁風速28m/s以上

  

 以上、米軍の台風情報と日本の気象庁の台風情報の違いについてみてみました。

 時差の修正は簡単ですが、風速の単位が違うということは、少し注意が必要ですね。

 また、日本では、風速17m/s以上の熱帯低気圧が台風となりますが、アメリカでは、風速15m/s〜28m/sのトロピカルストームという台風と熱低の中間のランクがある、ということです。

 JTWCの見方は、次のページ⇒「米軍台風予報と(JTWC)の詳しい見方2 より詳しい味方と気象庁予報との使い分けのポイント」に続きます。

 

  なお、国内の台風情報をより正確に詳しく把握するためには⇒「案外知らない気象庁の台風情報を読みこなすコツ」の記事も参照してください。

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