ヒハツ(ピパーツ)の香辛料としての実力…石垣島で食べた絶品料理!

      2018/06/25

ヒハツの実

 ヒハツという植物が、冷え性やアンチエイジングに効果があるとされ、話題になっていますね。

 ヒハツは、沖縄県の八重山地方(石垣島・竹富島・西表島など)では「ぴぱーつ」「ぴーやーし」と呼ばれ、名物「八重山そば」には必須のスパイスとして愛用されています。

 もともとご当地限定の香辛料として利用されてきたヒハツですが、その成分にいろいろな機能があることが、最近の研究でわかってきて、注目を集めています。

 沖縄以外ではほとんど馴染みのないヒハツとは、どんな植物なのか? また、ヒハツがアンチエイジングや冷えなどに効果がある理由などについて、みていきたいと思います。

ヒハツは胡椒の仲間

 ヒハツは八重山地方では「ぴぱーつ」「ピパーチ」「ヒバーチ」「ヒバーツ」「島胡椒」と、呼び名がたくさんあります。

 石垣島では「ぴーやーし」「ぴぱーつ」 と呼ばれることが多いようです。沖縄本島では八重山地方に比べるとヒハツはあまり馴染みが無いのですが「ヒバーチ」「ヒバーツ」と呼ばれます。

 コショウ科コショウ属に分類される植物なので、ヒハツはコショウにかなり近いもの、といえます。味と香りは、胡椒にシナモンやオールスパイスの香りを加えたような独特の香りがあり、胡椒よりはやや辛い感じがします。

 ヒハツは、英語名はロングペッパーです。

 ロングペッパーには2種類あります。

・Indian long pepper…インド原産のもの…学名:Piper longum 和名:ヒハツ

・Javanese long pepper …インドネシア原産のもの…学名:Piper retrofractum 和名:ヒハツモドキ

 八重山地方で栽培され食材として利用されているのは、インドネシア系のヒハツモドキのほうです。

 一方、最近、健康食品などの原料として使われているのは、インド系のヒハツのほうです。

 「ヒハツ」と「ヒハツモドキ」は学名れべるで違うので、区別して考えたほうが良さそうですね。

▲石垣島で撮影したヒハツモドキ。竹富島・西表島では、屋敷の塀などに茂っていることが多いピパーツ(ヒハツ)。いざ畑で作ろうとすると栽培は簡単ではないとこのこと。
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沖縄・八重山地方名物のピパーツ(ヒハツ)

 つぎに、八重山地方の名産・特産品としてのヒハツ=ピパーツについて、みていきたいと思います。

 八重山地方での香辛料としての利用方法では、
・八重山そばのスパイス
・炊き込みご飯(クワージューシー)の香り付け
・お菓子のスパイス
…あたりが、主な用途です。

 胡椒と違って、辛みが強く香りも癖があるので、一般家庭では料理で胡椒のように日常使いで使われることはあまりないようです。居酒屋さんがチャンプルーの隠し味で使ったりするぐらいみたいですね。

八重山そばとピパーツ

 実は、ヒハツを香辛料として利用することは沖縄の伝統というわけではなさそうです。八重山地方でのヒハツ利用の歴史は新しく、竹富島にあるそば屋「竹の子」のオバアが、はじめてピパーツを八重山そばのスパイスとして使ったのが話題になり、そこから広まったとの説があります。

 実際、石垣島のそば屋では、ピパーツを置いていないところもあります。泡盛の唐辛子漬け(コーレーグース)が置いてない無いそば屋はありませんが、ピパーツは100%ではないようですね。

▲やえやまそば。コーレグース(泡盛唐辛子漬け)を薬味にしていただくのが定番。ピパーツを薬味に使うのは、わりと新しめの流行らしい。

ピパーツ・ジューシー

 ピパーツの炊き込みご飯(ジューシー)は、人気の八重山グルメです。石垣島では、料理上手なお母さんのいるご家庭でさりげなく出てくる料理です。最近では、おそばやさんなどのセットで出てくることも増えてきているようですね。

 とくにピパーツの香りが好きな人は、食べ出したら止まらない、癖になる美味しさです。わたしは、石垣島の田舎に住む知人のお宅でいただいたことがあるのですが、今でも印象に強く残っていて、自分史上10位に入る美味しいお米料理となっています。(その時は写真撮ってなかったので今回は「ピパーツジューシー」の例としてインスタから引用させていただきました)

今日もピパーツの葉をたっぷり入れて、 ジューシーごはん炊きませう。

CHIHOさん(@chihobanana)が投稿した写真 –

隠れた銘菓ピパーツかりんとう

 それから、もうひとつピパーツといえば、ピパーツかりんとうという、これまた知る人ぞ知る銘菓があります。「まるたか」という小さな食品加工場のタマ子おばあが手作りで作っている、ピパーツのスパイシーな香りが効いた、固めのかりんとうです。あまり甘くないので、ビールのつまみにする人もいるとか。

 石垣島でも一部のお店にしかおいていないようですので、見つけたら即買いおすすめです。

 ヒハツは石垣島の特産品として売り出していこうということで、おみやげもののアイテムも増えてきているようですね。ところが、実は、まだ、石垣島では栽培が少なく、お土産品のなかには東南アジアや台湾からの輸入原料を使っているものもあるそうです。

 もともと庭などに生えているピパーツですが、畑で作ろうとすると枯れることが多く、案外栽培するのが難しく、生産量が間に合っていないんだそうです。

★石垣島の特産品として販売されているピパーツ。島産の原料が不足しているため、海外産とミックスして販売されていることが多い。

健康食品の材料として注目のヒハツ

アユールヴェーダの薬草ヒハツの効果

 さて、石垣島など八重山地方の特産品として、「知る人ぞ知る」的なヒハツ(ピパーツ)だったのですが、ここ数年、健康食品の原料として使われるようになり、注目を集めています。

 もともとヒハツは、原産地のインドでは、アーユルヴェーダ(インドの伝統医学大系)でもとりあげられている薬草です。アーユルヴェーダでは、消化を助け食欲を増進する効果があるとされていました。

 最近注目されているのは、ヒハツがもたらす毛細血管の拡張効果や皮膚表面温度を上昇させるはたらきです。これは業務用のヒハツパウダーを製造する丸善製薬と静岡県立大学との共同研究であきらかにされているヒハツの作用です。

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ヒハツは血流をよくする

 毛細血管の拡張効果では、抹消神経の働きをよくするeNOSという物質の生成を促進する働きがヒハツにあることが実験でわかっています。つまり血流を良くすることで、結果としてむくみや冷え性の改善につながると考えられます。

体温の上昇

 また、皮膚表面温度の上昇ということでいえば、トウガラシのカプサイシンと同様に、交換神経の受容体TRPV1に働きかけ副腎からのアドレナリン分泌を促すごとで体温を上昇させる効果がわかっています。ヒハツ成分のTRPV1への作用は、カプサイシンに比べて穏やかです。そのため、とうがらしのように汗をかくように体温が上昇するのではなく、ゆっくりと内面からポカポカしてくるような作用があると考えられます。

毛細血管の老化防止

 さらに、ヒハツの効果として注目されているのが、アンチエイジングです。

 毛細血管のまわりは、壁細胞という細胞でしっかり包まれていることで、血液から養分が漏れ出すことなく、必要なところへ養分を運ぶ役割が可能となっています。しかし、加齢などによって、毛細血管と壁細胞をひっつける力が弱ると、血液から余計な養分が漏れ出して、結果、リンパのめぐりを悪化させます。このことが、むくみの原因はもちろん、シワや肌の劣化などの主要原因になると言われています。

 毛細血管と壁細胞は、血管の外側にあるTie2(タイツー)という受容体に、壁細胞から分泌されるアンジオポエチン-1という物質が作用することで、しっかりと結びついています。アンジオポエチン-1が減るなどして、Tie2(タイツー)の活動が弱ることで、毛細血管の老化が起こることが最近の研究でわかってきました。

 逆にいえば、Tie2(タイツー)に働きかけて作用する物質を積極的に取り入れることで、毛細血管と壁細胞の結びつきを強め、結果、むくみや肌の老化防止につながるわけです。

 そして、ヒハツの植物エキスが、このTie2(タイツー)に作用することが、実験結果よりわかっています。このためヒハツがアンチエンジングにも効果があると期待されているのです。

 ちなみに、Tie2(タイツー)に作用する植物エキスは、ヒハツ以外にも、ツルレンゲ、スターフルーツ ハス胚芽、月桃葉、サンザシ、シジュウムグァバ、インディアンデーツ、カリン、ルイボスなどがあります。

ヒハツに期待される効果

・毛細血管の拡張(←eNOS産生促進作用)
 ↓ ↓ ↓
血行の改善・むくみや冷え性の改善

・皮膚表面温度の上昇(←TRPV1への作用)
 ↓ ↓ ↓
冷え性の改善

・Tie2(タイツー)への作用(アンジオポエチン-1の代替効果)
 ↓ ↓ ↓
肌・しわなど肌の老化防止・改善、むくみの改善

 以上、話題の植物ヒハツ(ピパーツ・ピーヤーシ・ヒバーチ・島胡椒)について、その利用法法などを見てきました。

 石垣島に行った際は、そばのスパイスとしてはもちろん、ピパーツ・ジューシーやピパーツかりんとうをぜひ味わってみてください。

 また、冷え性やむくみ、肌の老化防止に、ヒハツの植物エキス成分を含んだ健康食品を利用してみるのも良いかと思います。

 古来から伝わる薬草ヒハツを、この機会に、もういちど見直してみましょう!

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