おわら風の盆2018年、前夜祭や町流しを楽しむベストプランは?

      2018/09/01

おわら風の盆

 日本の秋祭りを訪ねるシリーズ。今回は、秋祭のトップを飾る富山の伝統民謡行事「おわら風の盆
」をご紹介します。

 二百十日の風が吹く頃、豊作を願って踊り継がれてきた越中八尾おわら風の盆。

 踊り手たちの目深にかぶった花笠、胡弓が奏でる哀愁のあるメロディ、八尾の町のたたずまい…すべてがおもむき深い風情のある民謡行事です。

 他では決して味わえない、おわら風の盆の魅力と楽しみ方について、みていきましょう。

おわら風の盆の洗練された美しさの理由は八尾の歴史にある

 おわら風の盆は、越中八尾の伝統的で、独特の踊りです。なぜこの地で、このユニークで美しい踊りが伝統行事として根付いていったのか? まずは八尾の歴史をひもといてみましょう。

 富山県の八尾(やつお)市は、富山と岐阜の県境にある、山あいの町です。今では人口2万人の小さな町ですが、江戸時代には、富山藩の財政をささえた、北陸有数の経済都市として栄えました。

 八尾は飛騨と富山を結ぶ交通の要所として、また富山の薬売りの拠点として、越中和紙の産地として、そして養蚕業の盛んな地域として、発展してきました。

 独特の美しさを持つ「坂の町:八尾」の街並は、山合いに石積みをして細長い土地を造成し、そのうえに作られたています。大規模な土木工事を必要とする当時としてはたいへん手のこんだ町づくりも、そうした経済的繁栄があったからこそです。

 八尾の町は明治から大正にかけて、海外に輸出されるシルクの産地として、さらに活気づきます。

 そうした中、八尾の伝統的な民謡である「おわら節の唄と踊りを、よりスタイリッシュなものに洗練しようという動きがありました。

 時代は大正デモクラシーのなか、優雅な文化が華開いた時代です。全国の文化人が八尾の「おわら節」に注目し、スタイリッシュな唄と踊りにアレンジを加えて仕上げていったのです。

 おわら風の盆が、伝統行事でありながら、艶やかな洗練された踊りなのは、このためです。

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風の盆の由来と八尾の歴史

「風の盆」の由来は二百十日にあります。二百十日は立春から数えて210日目で、9月1日前後にあたります。この頃は台風など風が吹くころとから、風の厄払いをすることが多いのが二百十日です。

 八尾はもともと風が強い町で、米の収穫を前にした9月10日頃は、地元で「ダシ」と呼ばれる強い季節風が吹きます。この風は農作物にとっては、ありがたいものではありません。風を鎮めるために、踊りはじめたのが、「風の盆」の発祥と伝えられています。

 八尾は江戸末期から昭和初期まで、養蚕業が栄えた地域です。養蚕は、カイコが育つ環境を良くするため、風通しが大事で、風が強い地域で発展するとも言われています。

 養蚕業が主力産業であった八尾では、8月のお盆の頃は、養蚕の忙しい時期だったので、時期をずらして9月に盆踊りをするようになった…それが「風の盆」だという説もあります。

 風の盆の由来は、いろいろな意味合いがあって、伝統ができあがってきているようですが、いずれにせよ、風と関係が深い八尾の人々が、風に対していろいろな想いを込めて踊る行事になっています。

おわら風の盆を観に行こう! 鑑賞プランのポイント

 さて、「おわら風の盆」を鑑賞するためのコツをお伝えしていきましょう。

 おわら風の盆の本祭は9月1日,2日,3日の三日間。八尾の11の町内を、地方と踊り手が移動しながら辻々で踊る「町流し」、さらには観客も混じって踊る「輪踊り」というかたちが本祭のメインの部分です。

 それだけでは、「おわら風の盆」を観に集まる毎年20万人以上の観光客に対応できないため、「町流し」「輪踊り」に加え、「おわら演舞場(9月1日〜3日)」「前夜祭(8月20日~8月30日)」が設けられています。

おわら風の盆・本祭と演舞場の楽しみ方

 「おわら演舞場」は小学校グラウンドの特設ステージで、9月1日〜3日の3日間、午後7時〜9時頃まで開演されます。指定席3,600円 自由席2,100円となっています。毎日4組の支部が順番に出演します。

 おわら風の盆は、八尾の11の町内が、支部というかたちでそれぞれ踊りを繰り広げていますが、各支部は順番に演舞場のステージに出たあと、また、おのおの町内へ戻って、「町流し」を続けるというスタイルになっています。

 町流しは、いつどこで踊られるかわかりませんので、町を歩いていて、踊りに出くわすと見れる、という感じになります。が、本祭の3日間は町内がとても混雑しますので、じっくりと踊りが見れるタイミングがなかなか掴みにくいかもしれません。

 町流しは23時頃までやっていますので、まずは演舞場で9時頃までじっくりステージでの踊りを鑑賞したあと、町へ出て「町流し」や「輪踊り」を探して観るという流れが良いでしょう。

 以前は、最終日の3日は、各町内での「町流し」や「輪踊り」がメインとなりますので演舞場は開催されていませんでしが、2018年は3日目も演舞場の公演も行われます。

 また、最終日は23時に終了のアナウンスがあった後も、夜通し踊りや唄が辻々で繰り広げられる、ディープな地元の後夜祭的な展開となっていきます。あくまで、見せ物ではなく、自分たちの祭りとしてやっていることですので、余所者が積極的に観に行く場ではないですが、おわらに宿泊できれば、地元の人に混じって、祭りのアフターの盛り上がりを体験することができるでしょう。

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穴場かも? おわら前夜祭の楽しみ方

 本祭に先立って行われる前夜祭でも、「おわら風の盆」を堪能できます。

 8月20日〜30日の間、越中八尾観光会館(八尾曳山展示館)で、6時30分〜7時50分まで、「おわら前夜祭ステージ」が開催されます。

 ステージのプログラムは、映像上映、踊り方解説、1支部が舞台での演舞を繰り広げるという内容で、おわらについてじっくり学ぶことができます。

 前夜祭期間中は、8時〜10時の間、11ある町内が順番で毎晩1町内で、町流しと輪踊り、が繰り広げられます。

 前夜祭では、ステージが終ったあと、町流しや輪踊りを楽しむことができるわけです。コンパクトながら、たっぷりじっくりと「おわら風の盆」に触れるには、前夜祭も良いと思います。混雑も、本祭に比べると比較的少ないです。

 何より、前夜祭は、おわらが開催される地域のすぐ近くに特設駐車場(八尾総合行政センター町民広場1,000円)があるため、車でのアクセスが良いのが嬉しいところです。本祭では、数km離れたスポーツアリーナが特設駐車場となるので、車でのアクセスが格段に悪くなりますから、前夜祭の駐車場は魅力ですね。

  

 以上、おわら風の盆について、ポイントを解説しました。

おわら風の盆・鑑賞の注意点

 おわら風の盆は、ほんらい観せるための行事ではなく、あくまで、地元の方々による地元の方々のための祭りだというこうとです。おわら風の盆は、踊り手はみな地元出身・在住の未婚の若者たちです。彼らにとっては、地域の伝統行事でみな地元への思いや家族や友人たちなどへの想いを込め、夏の終わりの青春の1ページとして、この行事があるわけです。

 あくまでも、そうした地元の人たちのプライベートな思いの中にある行事だということを決して忘れないようにしましょう。観客は、謙虚な姿勢で鑑賞するように、心がけてください。

 以上の注意点を守ったうえで、趣深いおわら風の盆を、たっぷり楽しんで来て下さいね。

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