紅はるか、安納いも、鳴門金時、紅あずま…サツマイモ品種を徹底解説

      2018/06/24

サツマイモの品種

 さつまいもは品種やブランドがたくさんあり、どれを選べばよいか?悩んでしまいますよね。

 「べにあずま」「鳴門金時」などが古くから定番でしたが、蜜芋ブームに火をつけた「安納芋」以後、「紅はるか」「クイックスイート」「ひめあやか」など、さらに甘い新品種もぞくぞく登場しています。

 さつまいもは、品種ごとで、甘みや食感がだいぶ違ってきます。料理に向く適度な甘みのものや、いわゆる「蜜芋」と呼ばれる高糖度のもの、ホクホクした食感のものや、しっとり・ねっとりした食感のもの、などさまざまです。ですから、品種の特長をきちんと知って、好みや用途によって使いわけていきたいものです。

 この記事では、サツマイモの数有る種類(品種・ブランド)を紹介しながら、それぞれの品種の魅力に迫っていきます。いろいろなサツマイモがあるので、どれも食べてみたくなってしまいますよ〜!

サツマイモはどんな種類のお芋なの?

 サツマイモの品種紹介に入る前に、「サツマイモとはそもそもどんな種類のお芋なのか?」ということについて、簡単にふれておきましょう。

 サツマイモはヒルガオ科の植物で、アサガオと同じ仲間です。

 野菜のなかのイモ類に分類されますが、イモ類といっても、ジャガイモはナス科目、里芋はサトイモ科、長芋やジネンジョはヤマノイモ科と、さまざまです。

 ジャガイモは茎が太ったものですが、サツマイモは根の一部が太ったもの。サトイモは始めからイモで親イモが分裂して小イモになります。サツマイモは里芋のようにイモそのものは分裂しないので、種イモではなくツルを植えて育てます。苗を作る時は種イモを植えます。

 サツマイモは中南米原産で、日本に伝わったのは1600年頃。はじめ沖縄や鹿児島で栽培され江戸時代に全国に広まりました。

 もっともスタンダードなサツマイモは、皮が紅紫色で、中が薄い黄色をしていますが、中が紫色やオレンジ色の種類もあります。

 また、サツマイモは野菜として食べられるだけではなく、お菓子の原料にしたり、焼酎を作ったり、またデンプンをとる目的で栽培されることがあり、それぞれに適した種類(品種)があります。

 戦前までは、食糧難などに対応するために、収穫量が高いサツマイモの品種が多かったのですが、最近は、甘みや食感を重視した、より美味しいサツマイモの品種がいろいろ揃っています。

 それでは、野菜として生食用で流通している主なサツマイモの品種について具体的に、みていきましょう。

サツマイモの東の横綱「ベニアズマ」

ベニアズマの特長

 現在、最も多く流通しているサツマイモ品種が「ベニアズマ(紅東)」です。ベニアズマは青果用の品種ですが、加工用やデンプン用品種を含むすべてのサツマイモのなかでも30%くらいの生産量を占めています。

 紫の鮮やかな皮に、黄色いみ細長めのスラッとしたかたち。適度にホクホクした粉質と少しネットリ感もあり、食感のバランスが良いサツマイモとして定評があります。ふかしいもや天ぷらに最適。。

 1984年に発表された、比較的新しい品種で、現在では、関東中心にスタンダードな品種になっています。関東では、サツマイモと言えばベニアズマと言っても良いでしょう。ベニアズマの主要産地は茨城と千葉です。

ベニアズマの旬と美味しい時期

 ベニアズマの収穫期は10月〜11月頃。出はじめはの10月頃は、ほっこりで甘さがのっていないので料理向きです。収穫後に一定期間貯蔵して熟してきたものが12月〜2月頃から出回りますが、こちらが甘みが増し、適度なしっとり感もあり、焼き芋向きです。

 ベニアズマは12月〜2月が最も美味しい時期になるわけです。

サツマイモの西の横綱「高系14号」

 「高系(こうけい)14号」は関西でスタンダードの定番品種です。

 みかけはベニアズマにくらべるとむっくりしていて皮の紫も色も若干薄めで、芋の色も白いです。が、味は抜群。高系14号の特長はしっとり感のありとても糖度が高いということです。甘いサツマイモは繊維質が強いのが一般的ですが、高系14号は繊維が気になりません。

 また、サツマイモは収穫後2カ月ほど貯蔵することで甘みが増しますが、高系14号は穫り立てでもかなり甘いのが特長です。収穫時期の8月〜11月から美味しく、貯蔵で甘みがのる2月頃までが食べごろです。

 「高系14号」は高知県で戦後間もなくの頃に誕生した品種ですが、その後各地で選抜や突然変異種が生まれ、「高系14号」系列の、有名なサツマイモが、日本各地で多数誕生しています。

鳴門金時(なるときんとき・徳島)
五郎島金時(ごろうじまきんとき・石川)
土佐紅(高知)
ことぶき(宮崎)
ベニサツマ(鹿児島)
千葉紅(千葉)
大栄愛娘(だいえいまなむすめ・千葉)
坂出金時(香川)
紅高系(静岡)

 …などなど。これらの品種はみな「高系14号」そのものか、その選抜種、改良種です。以下、これらの高系のなかから特に特長のある品種をピックアップして、さらに詳しくみてみましょう。

鳴門金時

 「高系14号」系列なかでも徳島の「鳴門金時」は特に有名で、糖度が高く、火を通すと黄金色で、焼き芋にも最適の品種とされています。

 鳴門金時は高系14号の特に美味しい変異種を選抜していったもので、徳島県内で栽培されたもののみ「鳴門金時」を名乗れるブランドです。

 鳴門金時の収穫期は、8月〜11月。高系の特長として9月10月の出始めでも甘さがのっています。11月以後のものはしっとり感が増しますので、11月から2月に出回るものが最も美味しくなります。

 なお、「金時」と「鳴門金時」は別の品種なので注意が必要です。

大栄愛娘

 最近とても評判が良いのが、千葉の「大栄愛娘」。これは品種名ではなくブランド名です。高系14号を千葉県・成田市大栄地区の農家が再選抜したもの。現在70名ほどの農家が、落ち葉堆肥や米ぬかなど肥料にもこだわりの基準をもって栽培しています。

 秋の収穫後に寝かせて年明けから出荷されるため、1月中旬が「旬の時期」となります。成田市の大栄産直センターで1月に入手可能です。

五郎島金時

 石川県・石川市の海沿いの五郎島とよばれる砂丘地帯で作られている「高系14号。砂地での栽培のため、とくに上質のさつまいもになるため、五郎島金時のファンは全国にも多いです。加賀野菜ブランドのひとつとしてしても有名な品種です。

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古くから伝わる各地の美味しいサツマイモ

 サツマイモ品種の二大潮流は、ベニアズマと高系なのですが、他にも古くから各地に伝わっている特長のある品種が、いろいろあります。そうしたユニークなサツマイモをいくつか次に紹介します。

黄金千貫

 黄金千貫(こがねせんがん)は鹿児島の特産サツマイモで、皮の色はじゃがいものような色をしています。主に焼酎用として作られていることが多いのですが、肉質の良さには定評があり、その血筋はベニアズマに受け継がれています。

紅赤(金時)

古くからある品種・紅赤は金時とも言われています。「金時」は紅赤のことで、「なると金時」はまったく別ものなので注意してください。

 紅赤(金時)は、きんとんを作るのに最適の品種と言われています。

 埼玉県の小江戸・川越はサツマイモの産地として江戸時代から有名で、今でも川越といえばサツマイモの和菓子やスイーツが大人気です。川越近くの三富新田でとれる「富の川越イモ」の品種が、この紅赤(金時)です。

安納いも

 安納(あんのう)いもは種子島(たねがしま)の名産で、ふつうのサツマイモの3倍といわれる甘さと、ねっとり感が特長です。安納ゴールド、安納芋、安納紫という各品種をまとめて安納いもと呼んでいます。

 あまりにも甘くクリーミーなことから「みついも」とも呼ばれます。

安納芋は、戦後直後から種子島で栽培されていますが、もともとはスマトラ島から伝わった品種とのこと。それを平成元年にさらに選抜しブランド化したものです。近年、マスコミなどでも話題になり大ヒットしました。

寺田いも

京都府城陽市に江戸時代から伝わる、「栗より甘い」サツマイモ

木津川流域の肥沃な砂地だからこそできる特産品です。「あらす観光いも掘り農園」ではこの寺田芋のいも掘りができるので、京都へ行く方は是非立ち寄ってみてください。あらす観光いも掘り農園は、例年9月20日〜10月末。

紅芋

 沖縄でサツマイモといえば、中が紫色の紅芋(ベニイモ)のことを指します。

 ベニイモタルトなど沖縄定番のお菓子でも有名です。外の皮は白っぽい茶色ですが、中身は鮮やかな紫。沖縄方言では「ウベ」と呼ばれていますが、これはフィリピン語から来ているもの。

 そもそもサツマイモは、中南米原産で、コロンブスがヨーロッパに持ち帰ったものが、東アジア経由で日本に入ってきたとされています。しかし、沖縄のベニイモは、別ルートで伝わっています。中南米から太平洋の島々をたどって伝わったとの説が有力です。

美味しいサツマイモ品種の良いとこどりしたニュー交配品種

 さて、各地の伝統品種も魅力がいっぱいですが、今でも新しいサツマイモイの品種は、次々と産み出されています。ベニアズマや高系よりも、さらに美味しく、特長あるサツマイモが、たくさんあります。

 とくに、優良な品種どうしをかけあわせて作る「交配種」は、こだわりの特性をもった強者ぞろいです。

ベニコマチ(紅小町)

 ベニコマチは高系14号と黄金千貫を交配させた最強のサツマイモといわれデビューしましたが、栽培が難しく、農家の間で広がりませんでした。

 しかし、ただ一カ所ベニコマチにこだわり続けた産地があり、難しいベニコマチを作りこなし、幻のサツマイモとして人気を博しています。それが「ふるさとイモ祭り」で有名な千葉香取市栗源(くりもと)です。

べにはるか

 ベニハルカは鹿児島県を中心に栽培が増えている2007年発表の新しい品種で、高系14号を超える美味しさ。何より高系より作りやすく良品の出来が良いので、作付け面積が増えて来ている、時期スタンダード品種ともいえます。しっとりタイプで、九州産は10月、本州産は11月頃から出回り、食べごろは11月〜1月です。

べにまさり

 ベニマサリは2001年発表の新品種で、従来のサツマイモにはない、果糖やブドウ糖が含まれていて、上品な甘さが特長です。しっとりなめらかな肉質で、次世代の焼き芋品種として定着しつつあります。茨城が主要産地。

クイックスイート

 クイックスイートは、ベニアズマと九州30号の交配種で2002年に誕生した品種です。

 サツマイモのデンプンは熱にかけると、糖に変化しますが、クイックスイートは、とても低い温度でもデンプンが糖に変化します。石焼き芋のように超高温で焼かなくても、たとえば電子レンジで調理しても、充分に甘くなるという特長です。

 現代のニーズにあった品種として、熊本や静岡など全国で栽培が広がっており、九州産は8月頃より市場に出回っています。いま最も注目度がたかい品種ですね。

ひめあやか

 ふつうのさつまいもは1個が200g〜300gありますが、ひめあやかは、100g前後のミニ・さつまいも。食べきりサイズを意識して開発された品種なのですが、その食感の良さととても甘いので、注目を集めています。

 一般には小さいいもは、すじっぽくて良くないのですが、べにはるかの場合は、50gくらいの小さいのでもスジが無く美味しく食べられるのも特長。ホールで使うスイーツなど、利用のアイデアがふくらみますね。

 2010年ごろから出回りはじめて、全国のこだわり系農家が栽培しているほか、埼玉県では産地化を目指して生産が拡大している感じです。

サツマイモの品種はどうやって作るのか?

 ところで、サツマイモの種類はどうやってできるのでしょうか? 

 サツマイモは、ツルや種イモから増やしていくものです。おいいしサツマイモが出来たら、それを種イモとして翌年植えれば、おいいしい芋が増えていきます。そうした「選抜」を繰り返すことで、土地それぞれに美味しいサツマイモの品種が受け継がれていきます。

 また、農業試験場などで、美味しいサツマイモ同士をかけあわせて、「交配」でサツマイモを作ることもあります。サツマイモは日本本土では自然状態では、あまり花が咲かないので、アサガオに接木をして花を咲かし、種を育ててツルを作り、それが苗となります。

 

 

 以上、サツマイモの品種について見てきました。

 それぞれ特長や歴史があり、とても魅力的ですよね。

 ぜひ、いろいろ品種を食べくらべて、さつまいもにハマってみてください。

さつまいもを食べ過ぎると太るのでは? という懸念のある方は、さつまいもの栄養価についてのこちらの記事⇒「さつまいもの栄養価」もぜひ参考にしてみてください。ますます、さつまいもがダイエット食としても有効なことがよくわかりますよ。

また、さつまいもを選ぶ場合は、品種だけではなく、時期や状態などポイントがあります⇒「さつまいもの選び方」もぜひ参考にしてみてください。ますます、さつまいものスゴさがわかってくると思います。

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