ハッカパイプの使い方やリスク。縁日、大人用、ガラス製〜各種を解説
2017/11/13
ハッカパイプといえば、ひと昔前は縁日の定番でした。近頃は定番というほどではないにしても、まだまだ根強い人気がある縁日のおもちゃ(お菓子?)ですよね。
また、最近は、禁煙ブームの流れで、生ハッカ(きはっか)の刺激的な香りを楽しむ「大人用のハッカパイプ」も販売されています。
実は、ハッカは、日本固有のミントの一種で、かつては世界のミント生産量の、なんと70%を北海道産のハッカで占めていたこもあるのです。ハッカパイプの背景には、そうした日本産ミントの歴史があるわけです。
この記事では、ハッカパイプとハッカの歴史、そしてハッカの主要成分「メントール」について知っておきたい基礎知識をまとめてみました。
ハッカパイプは3つのタイプがある
ハッカパイプは縁日のものが有名ですが、実は、ほかにも2タイプのハッカパイプがあります。つまり、ハッカパイプには三つの種類があるのです。
1・縁日のおもちゃであるハッカパイプ
2・薄荷脳(生はっか=きはっか)を火を点けずに吸うハッカパイプ・ハッカホルダー
3・ガラスのパイプを使い、薄荷脳を炙(あぶ)りながら、煙を吸うもの
ハッカパイプの種類によって、目的や特徴、また害の有無も違ってきますので、それぞれについてみていきましょう。
縁日のハッカパイプ。最新キャラもいるが、中身が昔と違う
手作り感にあふれる往年のハッカパイプ
縁日のハッカパイプって、その場で吸って美味しく楽しいだけでなく、キャラグッズが手に入ってお祭りのあとも末永く楽しめるので「絶対にお得感がある!」・・・幼少のわたしはそう思っていました。だから、お祭りではまっ先にハッカパイプをチェックしていました。
縁日のハッカパイプは、ストラップのついたプラスチックのキャラター人形で、下の方が笛になっていて、人形のなかに仕込んであるハッカ砂糖を吸い込むと甘くてスッとする、やみつきになる独特の味がするものです。
わたしが子供のころは、キャラクターの顔が手書きだったのか、一体ごとに表情が微妙に異なるのが好きで、どの子にしようかな〜と、選ぶのもの楽しみでした。
気に入ったヤツを首からぶら下げて、ずっとスパスパしながら祭り会場を歩きまわっていました。当時はまだ「喫煙がカッコいい」みたいな時代だったので、タバコを吸ってる大人気分を味わえる特別なものだったと記憶しています。
けっこう刺激が強いハッカ砂糖の味も、ちょっと大人な味で癖になる感じが、とっても印象深い思い出となっているのです。
2017年のアニキャラもハッカパイプに!
大人になって縁日でもハッカパイプを、しばらく見かけなかったのですが、最近また復活しているようですね。
キャラクターも、ポケモンや妖怪ウォッチはもちろん、ミニオンズやアナ雪、なんと、2017年最新のプリキュアである「キュアホイップ」のハッカパイプもあるようです。
つまりハッカパイプは過去のものではなく、アップデートされ続けている、まだまだ現在進行形のアイテムだと言ってよいでしょう。
昔のハッカパイプは、キャラ的にも微妙で、オバQとか当時のアニキャラもありはしたのですが、絵的に微妙でした。たぶん、著作権外の非公式グッズだったのではないでしょうか。
その点、最近のものは、マルシー関係はきちんとしているようで、逆に怪しくて微妙なキャラを見つけると、超レアでうれしくなっていまいますよね・・・まぁそんなこともお祭りの縁日ならでは、だと思います。
お店によっては、どこで見つけてくるのか、昭和30年代じゃね?と思える超レトロなハッカパイプを揃えているところもあって、そんなこんなで、今、縁日のハッカパイプ・シーンはなかなか盛り上がっている、と言えそうです。
ただ、残念なことに、かんじんの「中身」が、ハッカじゃなくなってしまっているようなのです。
ハッカパイプの中身
実は、今のハッカパイプは、中身はほとんど「粉ジュース」に替わってしまっています。しかも別袋のコーラ味とかラムネ味とかグレープ味の粉ジュースをくれる。それをセルフでハッカパイプに充填する仕様に変更されているのです。
昔はその場で、謎の白い粉を入れてくれたのですが、今では、たぶん衛生的にどうのこうのということと、あと、ハッカ味そのもの人気が無くなっているようで、「別添の袋ジュースセット」のかたちに落ち着いついているようです。
ハッカパイプとは言え、ハッカ味はしない・・・と、いうなんとも残念な状況になってしまっています。
衛生面の問題があるなら粉ジュースのセルフ充填方式でもかまいませんが、せめて、味のラインナップのなかに「元祖・ハッカ味」を復活させてほしいものです。
わたしの子供の頃のハッカパイプの中身は、はっきりしたことはわかりませんが、たぶん「はっか糖」の粉状のものだと推測されます。
ハッカのなかのスッとする成分は、有名な「メントール」なのですが、ハッカの葉からとれるハッカ精油をさらに精製して、メントール成分だけを抽出・結晶させたものが「ハッカ結晶」または「薄荷脳(はっかのう)」または「生はっか(きはっか)」と呼ばれるものです。
今では、医療用や化粧品用などのメントールのほとんどは化学合成して作られるのですが、天然のハッカから抽出して作る薄荷脳も一部健在で、これらは安心して食用に使えます。
この天然の薄荷脳を水飴とともに固めて飴にしたものが「ハッカ糖」で、新潟・塩沢の名産品としても知られています。
縁日のハッカパイプに入ったハッカ粉砂糖も、ほぼこの「ハッカ糖」と同じ味がしていたと記憶しています。
普通の砂糖に、天然抽出の食用の薄荷脳を砕いたものを混ぜても、ハッカパイプの中身は作れそうですが、薄荷脳はやや刺激が強すぎます。あくまで水飴と混ぜて若干マイルドにしたものの方が、やはりハッカパイプの中身としては、最適なような気がします。
ハッカ糖を砕いたものであれば、粉ジュースよりも、ぜんぜん安全性も高くヘルシーで、子供にも安心してハッカパイプを吸わせられます。
ぜひとも、復活してほしいですね。
ハッカパイプは喫煙に替わる、新たな大人のたしなみ?
さて、ここまで縁日のハッカパイプについてみてきましたが、ここからは「大人の」ハッカパイプについて。
大人用のハッカパイプは、薄荷脳(=生はっか)をパイプの先端に詰めて、薄荷の香りと清涼感のある空気を吸って楽しむものです。浅草の老舗のパイプ職人工房TSUGE(柘製作所)などが、こだわりの品として販売しています。
メントール系は、眠気覚ましや気分転換、そして日常のちょっとしたストレス解消に、使えますよね。
メントールと言えば「フリスク」「ミンティア」などのリフレッシュ・タブレットが定番ですが、中毒かよ!?というレベルのヘビーユーザーも少なくないと思います。
また、最近は、タイの超定番メントール・グッズである「ヤードム」も日本でユーザーが増えているようです。この「ヤードム」は、容器を鼻に突っ込んで鼻からメントールガスを吸い込むもので、かなり強烈です。
このようなメントール人気のなかで、メントールを吸うためだけのハッカパイプが誕生したのは、ごくごく自然な流れでしょう。
ハッカを楽しむハッカパイプは、いわゆるパイプの形をしたものだけでなく、太目の筒になっているパイプホルダーと呼ばれるものもあります。
先端に薄荷脳(ハッカ結晶)を仕込み、火は点けずに、そのままスパーと吸います。
薄荷脳は38度で揮発するため、火を点けて煙にしななくても、充分に薄荷の清涼感は楽しめます。
また、煙管(キセル)に薄荷脳を仕込んで薄荷煙管(はっかきせる)を粋に楽しんでいる人もいるようですね。
禁煙はしたけれども、パイプをくゆらす感覚がどうしても忘れられない!という人たち、あるいは、タバコは吸わないけど、おしゃれに煙管をもってみたい!などというひとたちの間で、密かにブームになっているのが、ハッカパイプというわけなのです。
なお、禁煙をするためにハッカパイプを使おうと考えている人もいるかもしれません。
しかし、代替品で禁煙をするのはとても難易度が高いです。禁煙なら、迷わず「禁煙外来」を受診しましょう。わたしも経験しましたが、禁煙外来で処方される、チャンピックスで思いのほか簡単にやめられます。
メンソールには、タバコのような中毒性は一切ありません。中毒性が無いということは、逆に言えば、タバコの替わりにはならない、ということでもあります。タバコをやめるなら禁煙外来でサッとぱっと辞めて、喫煙で衰えた嗅覚を取り戻してから、それからハッカパイプを楽しむのが王道ですね。
これはダメなやつ? ハッカの煙を吸引するガラス製の・・・
さて、ここまで、「縁日のハッカパイプ」「大人のハッカパイプ」について見てきました。これらはいずれも、ハッカが揮発する成分を吸ってスースーするものです。
しかし、ハッカの揮発成分だけではものたらない、さらに強いハッカの刺激が欲し・・・そういう最上級クラス向けのハッカパイプがあるのです。
クリエイターやマニアな人たちが使うのが、球体の煙溜まりがついたガラス製のハッカパイプです。球体の部分に入れた薄荷脳をいぶしながら、煙を吸って楽しむもので、揮発性のハッカパイプよりも、より強い刺激が得られます。
この前RTで回ってきたハッカパイプ。
普段から原稿中にミンティアバリバリ食べる人だから眠気覚ましになるかなって買って見たんだけど思った以上に見た目がアウト過ぎた(
これ持って職質受けたらやばそう。 pic.twitter.com/hQwSIkDn8V— らら@コミケ落ちた (@urekemo) 2017年4月29日
火を使わないハッカパイプよりも、さらに強烈な刺激が得られるようですね。
ハッカを炙ってその煙を吸引することは、江戸時代の漢方の文献などにも「喉に良い」として紹介されています。
ただ、ハッカの煙を吸うことは、刺激が強すぎるため、むやに行うのは、やめておいた方が良いでしょう。漢方で言われていることであれば、それは薬になるということですから、適度な量を守らなければ、害にもなると考えるべきです。
また、ハッカの主成分l-メントールのMSDS(=安全データーシート=化学物質の取り扱い基準を定めた文書)のなかでは、メントールの煙の吸引は避けること、と書かれています。
メントールを口径で摂取した場合、少量であれば胃の粘膜に適度な刺激を与えて、消化を助ける効果があります。量が多い場合は、胃の粘膜を鈍化させます。このことで胃の痛みや吐き気を抑えることができますが、逆に言えば、胃が健康の時の過度のメントール内服は、刺激が強すぎるということです。
以上のことから、刺激の強いメントールの煙吸引は、量や頻度次第では、害になる可能性があるということは、十分に知っておきましょう。
ハッカにはもちろん中毒性などは一切ありませんし、ハッカを炙って吸っても法的にももちろん何ら問題はないのですが、いかんせん見かけが、危ない薬を吸っているようにしか見えないです。
どうしてもハッカの煙を吸引したい、という人はそのあたりは気を付けながら、自己責任で楽しみましょう。
ハッカの歴史とメントール
ハッカとは、「日本ミント」のこと
ハッカは、平安時代ごろに中国から伝わって、日本各地に自生した帰化植物ですが、今では、ミントの変種のひとつ、つまり、ペパーミントやスペアミントとならぶ日本固有の在来種、和種薄荷(ワシュハッカ)またはjapanese mintとして、西洋でも広く知られています。
ハッカが世界的に有名なミントの一種である理由は、実は、薄荷は明治時代から第二次戦争直前まで、海外に盛んに輸出されていたことにあるのです。
世界一のミント産地・北海道北見
ハッカは通常の作物の10倍の値段が付くこともあって、北海道北見地方では一大産地となり、ハッカ油や薄荷脳(メントール)に加工され、海外に輸出されていました。ハッカはあらゆるミントの品種のなかでも、最もメントールの抽出効率が高い…それも、ハッカ栽培が盛んになった理由です。
ピーク時の昭和14年には、世界のミント生産の70%を生産するにまでなりました。
つまり、北海道の北見地方はミントの「世界的な産地」だったのです。
しかし、その後すぐ、日独伊の三国同盟へ参加したことから、米英からのハッカの注文が無くなり、世界トップ産地の夢もつかのま、第二次大戦へと突入し、薄荷生産は衰退します。
戦後はブラジル産など他産地におされ、1960年には合成メントールが登場したことから、北海道・北見のミント産地としての歴史は、戦前の隆盛を取り戻すことなく、1970年頃に幕を閉じます。
薄荷蒸留釜。 pic.twitter.com/2jXllBzx3D
— yamatanuki (@yamatanuki) 2016年8月10日
当時の薄荷工場は、現在、「北見ハッカ記念館」として、薄荷産業の歴史を今に伝えています。
また北見市内の「二頃ハッカ公園」内にはハッカ精油の蒸留小屋があり、体験などもできるようなっています。
以上のように、ハッカは、世界一の輸出量を誇るという、日本の歴史のなかでも特筆すべき植物だったのです。
ハッカは日本全国どこでも育つ
ハッカは現在では大規模な栽培は行われていませんが、和種薄荷は、北海道から沖縄まで日本全国どこでも良く育ちます。
庭に植えておけば、冬の間は地下茎で越冬する丈夫な植物なので、庭などに植えれば雑草のように生えてきます。
山野草の苗/ニホンハッカ(日本薄荷)3号ポット
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お庭にハッカを育てておけば、ハッカの香りや清涼感を思う存分楽しむことができますし、虫よけなどにもふんだんに使えるので良いと思います。
とくにゴキブリやブヨなどの害虫に、ハッカは良く効くと言われています。
もちろん自家製ですので、安心して食用にできますよね。天日でドライハーブにして、細かく粉末状にしたものを、砂糖と混ぜれば、自家製のハッカ砂糖ができあがります。
縁日のハッカパイプそのものは通販で買えるのですが、中身が手に入りません。自家製で作ってしまうのが簡単かもしれませんね。
さて、ここまで、ハッカパイプの歴史について、いろいろ見てきました。
かつて世界一の産地だったハッカという文化を、ハッカパイプとともに大切に守っていきたいものですね。
なお、妊婦や3歳児以下の幼児は、ハッカー(メントール)刺激が強すぎるため避けておいた方がよいとされています。また、オイルや結晶などが眼に入らないように注意してください。
それでは、ハッカパイプを楽しみましょう!