地震予知は不可能なのか? 最新の予知の方法について調べてみた。
2018/06/21
地震は、日本に住んでいる以上、いつどこで遭遇してもおかしくない災害です。
必ず起こる地震が、もし事前にはっきりと予知できれば、どれだけ多くの命が救われ、積み重ねてきたものを失わずにすむでしょうか。
ところが、今の科学の力では、地震予知は、まだまだ的中率が低い未熟な段階です。
この記事では、地震予知はどの程度までできるようになっているのか? 現在の日本でおこなわれている地震予知・予測ついて、具体例を挙げながら整理しています。デマや流言に惑わされず、正しい地震情報を得るためにも、ぜひとも知っておきたい基礎知識です。
地震予知の現状〜占いから科学まで
現在のところ、地震予知(予測)の種類には次のようなものがあります。
・政府系機関の発表する長期の確率予測など
・地震情報サービス会社や研究所が発表する民間の短期予知
・古くからいわれている前兆など研究中のもの
・預言や占い
地震予知では、いまだに、預言や占いが、人々の大きな関心を集めています。それだけ、科学的な根拠にもとづく予測が、未発達だということです。天気予報の精度は上がっているので、今では、誰も投げた靴で明日の天気を予測しようとはしません。一方、地震予知では、まだまだ預言や占いのほうが盛んだったりするわけです。
しかし、まだまだ未熟だとはいえ、科学的な根拠のある地震予知や予測は、少しずつ増えてきています。
現在の日本でおこなわれている科学的な裏付けのある地震予知は、政府系のものと民間系のものに分かれます。
政府系の地震予知研究は、地震のメカニズムを解明する「地震学」や「測地学」をベースにしてきました。しかし政府系の地震予知では、阪神淡路や東日本の震災をはじめ、なにひとつ地震を予知できたことがありません。その現実を受けて、地震学会では、現在のところ「短期的な地震予知はできない」と結論づけたのです。
現在、長期的な確率予測を発表していますが、これは地震学の成果というより統計学的な手法をメインにして予測しているものです。
一方、民間系では、より柔軟な発想で予知研究に取り組むことで、地震予知の実用化を進めています。電磁気変化など地震の予兆を観測することで、短期的な地震予知を行っています。しかし、まだ的中率は決して高くはありません。
このように、いろいろな地震予知が入り乱れている状態ですが、以下に、それぞれの地震情報の実情を、整理しながら詳しくみていきたいと思います。
政府系の地震予知(予測)は案外当たっているのでは?
現在、政府系の機関が発表する公式な地震予知(予測)としては次があります。
●固有地震の長期確率予報…周期的に起こる海溝型と活断層型の地震について、今後10年、30年、50年内の発生確率を発表。
●全国地震動予測地図…30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率が、Webの地図上で検索可能。
●東海地震の警戒宣言…東海地震の発生が予知された場合、大震法にもとづき政府が警戒宣言を発令し避難を促す。
●緊急地震速報…地震発生直後に先に到達する地震波(P波)を捉えて出す即時警報。
これらの地震情報は、文部科学省管轄の地震調査研究推進本部(=地震本部)や測地学審議会が発信しています。
気象庁、国土地理院、海上保安庁、防災科学技術研究所などの独立行政法人、そして全国の各大学の研究室……と、各関係機関とも連携しながら、予測・予知を進めています。
ところで、地震予測と地震予知の違いについて、情報の正確さを期するために確認しておきましょう。
国際的な地震学会では、地震予知の定義について次のように述べています。
地震予知=
具体的に近いういちにほぼ確実に来ると予測できて、避難を促せるもの
この定義からすると、現在、政府が発表している地震情報のなかで、予知にあたるのは「東海地震の警戒宣言」だけです。
長期確率予報は、可能性を知るだけであって、確率予報を聞いてすぐ避難ができるわけでもありません。ですので、長期確率予報は、「予知」ではなく「予測」になります。
また、緊急地震速報は、地震が実際に起きてからの事後速報ですので、予知・予測にはあたりません。
さて、これらの政府系の地震情報のなかでは、現在メインになっているのは「長期の確率予測」です。この確率予測は、それなりに当たっているようなので、詳しくみていきましょう。
固有地震の長期確率予報
地震の発生確率
最近の地震情報では、たとえば「南海トラフ地震は、向こう30年間で80%の発生確率」などと、耳にすることが多いと思います。
これが地震本部が発表する長期確率予測です。
日本で発生する地震は、主に内陸部の活断層でおきる地震(たとえば阪神淡路地震、熊本地震)、プレート境界で発生する海溝型の地震(たとえば東日本大震災、関東大震災)があります。
地震本部では、全国の100以上の活断層と、数十の海溝を、周期的に繰り返して起きる固有地震と位置付けていて、それぞれについて、10年後、30年後、50年後の確率を出し、さらに危険度のランク付けをしています。
長期確率予報は3.11を予測していた?
ところで、東日本大震災が起きる前、この長期確率予報は、どうなっていたのでしょうか?
2011年1月1日発表のむこう30年間の長期予想では、次のような予報がありました。
【2011年1月1日発表】
宮城県沖地震
…M7.5前後,発生確率99%,三陸沖南部海溝よりの領域と同時発生の場合はM8前後
となっていたのです。
3.11の地震は、M9と予想をはるかに超える規模だったのですが、30年以内に99%という確率の部分は、はずれてはいなかったわけです。
しかし、99%の発生を予測していたにもかかわらず、想定外の被害となってしまいました。
これは、「長期確率予報の限界」を示していると言えるでしょう。
もうひとつ実例を見てみましょう。
実は、平成28年の熊本地震も、予測されていた地震です。
布田川(ふたがわ)断層
…30年以内の発生確率 0〜0.9% 集積確率0〜30%
ランク:やや高い
日奈久(ひなぐ)断層…
30年以内 0〜6%
集積確率0〜100%
ランク:高い
上記の例では、30年以内の確率が0〜6%などと決して高いようには見えないのですが、実は、断層形地震は、周期スパンが数千年単位と長いため、発生確率の数値は小さくなってしまいます。ですが、断層の危険度ランクは「やや高い」「高い」に分類されるレベルでした。
つまり、熊本地震の発生はある程度予測できていたのです。
しかし、地元では「断層地震が起きる可能性が高い」という認識は、ほとんどありませんでした。発生確率の数字のイメージからして、高いようには思えないので、危険度ランクが「高い」と言われても、ピンと来なかっためんもあるようです。
こうしてみると、長期予測そのものは、はずれてはいない、しかし、長期確率予測を、どうやって防災に結び付けるのか?が、あらためて問われる結果となったのです。
いま最も警戒するべき地震は?
さて、ではここで最新の長期確率予測をチェックしてみましょう。
現時点で最も発生確率が高くなっているのは、海溝型では
南海トラフ、活断層では糸魚川〜静岡構造線断層帯中北部区間(安曇野・松本市・岡谷市付近)です。その他、とくに確率が高いものをピックアップしてみました。
下記表は、地震本部発表の「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価一覧」(平成29年3月3日現在)のなかから、とくに発生確率が高いものをピックアップしたものです。あくまで、長期確率予測の実例として参考にしてください。詳細については元データー(pdf)を参照してください。 | |||||
地震発生箇所 | 予想マグニチュード | 30年以内 | 50年以内 | 100年以内 | |
活断層 | 糸魚川-静岡構造線断層帯・中北部区間(長野県・松本市周辺) | M7.6程度 | 13%〜30% | 20%〜50% | 40%〜70% |
阿寺断層帯(岐阜県・中津川市) | M6.9程度 | 6%〜11% | 10%〜20% | 20%〜30% | |
三浦半島断層群(神奈川県・横須賀市) | M6.6以上 | 6%〜11% | 9%〜20% | 20%〜30% | |
海溝型 | 南海トラフ | M8〜9 | 20%〜30% | 70%程度 | 90%以上 |
三陸沖北部 | M7.1〜7.6 | 50%程度 | 90%程度 | 90%以上 | |
宮城沖 | M7.0 〜7.3 |
30%程度 | 60%程度 | 80%以上 | |
茨城沖 | M6.9〜7.6 | 30%程度 | 70%程度 | 80%以上 | |
十勝・根室沖 | M7.1前後 | 40%程度 | 80%程度 | 90%以上 | |
日向灘 | M7.1前後 | 30〜40% | 70〜80% | 80〜90% | |
相模トラフ | M7程度 | 30%程度 | 70%程度 | 80%以上 |
いずれの地震も、東日本大震災や熊本地震と比べても、高い発生確率となっています。
ちなみに、10年で30%という確率は、高いのか?低いのかちょっとわかりにくいですよね。そこで、他のアクシデントの確率と比較したものが以下の表をみてください。
南海トラフ | 20%〜30% |
交通事故で負傷 | 24% |
ガンで死亡 | 6.8% |
空き巣被害 | 3.4% |
火災に罹災 | 1.9% |
交通事故で死亡 | 0.2% |
飛行機事故で負傷 | 0.002% |
この表をみると、先にピックアップした地震は、かなり高い確率で起こると、考えてよいでしょう。
もうひとつ、注意しなければならないのは、確率が低いからといって、地震が起きないとは限らないことです。上記以外にも、警戒が必要な断層はあります。
自分の家の近くに活断層がないか? 地震のリスクはどれくらいか? 以下の表で改めてチェックしてください。
↓↓↓↓
今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧
地震は、過去の教訓に学ぶことで防災できる
さて、こうしてみると、長期確率予測は「まんざら外れていない」ということが言えそうです。長期確率予測については、方向性は間違っていないようです。
周期的な地震の予測は、測地学的な調査だけでなく、過去の発生履歴など統計的なデーターを加えて予測を出しています。
予測の精度をあげるため、最近では、考古学や歴史学の研究とも情報を共有して、過去の地震発生の事例との照らし合わせにも力を入れています。
このように、地震を考える時、過去の履歴はとても大事です。
東日本大震災でも、明治や昭和初期の津波被害の教訓を伝える石碑の教えを守った地域で、被害が少なかったことが、記憶に新しいと思います。
周期的に繰り返す地震について歴史的な知識を得ることが、防災につながります。いまいちど、自分の住む地域の地震の歴史について確認しておく必要がありそうですね。
全国地震動予測地図
地震発生の長期確率予測は、海溝や断層など固有地震だけでなく、全国的に、どれくらいの揺れが来る可能性があるか?予測されています。
それが全国地震動予測地図です。
WEBサイトのJ-SHIS(地震ハザードステーション)から、データーを見ることができます。
全国各地の住所から検索できるので、その地域の向こう30年間の震度5〜6の地震が発生する確率を詳細に知ることができます。
まずは、自分の現住所や実家や職場など関係する場所が、どのくらいの危険度なのか? あらためて確認しておきましょう。
東海地震の警戒宣言
さて、ここまで長期確率予報について説明してきました。長期確率予報は、「くるかもしれない・くるであろう」を示す、あくまでおおまかな予測です。
一方、警戒宣言は、完全な「地震予知」です。
東海地震が発生する可能性が極限まで高まった時に、気象庁が発表する明確な予知にもとづき発令されるのが警戒宣言です。
東海地震は「発生が迫っている」という学説をもとに、昭和53年からモニタリングを強化して、重点的に地震予知が試みられてきました。まずは、最も緊急性が高い東海地震を徹底的にマークして、地震予知の糸口をつかもうという方針でした。
大地震が起こる前に観測される地すべり(プレスリップ)を観測することで、地震予知が可能と、当初は考えられてきたのです。
研究の結果、プレスリップが発生すれば、ある程度正確な予知ができるようになりました。
しかし一方で、プレスリップが起きない、あるいは観測されない状態でも、地震が発生することもわかったのです。
つまり、プレスリップは地震の前兆であることは証明されたものの、必ずしも絶対条件ではないので、それだけで「予知はできない」というわけです。
このことは、地震学・測地学の方法論では「現在のところ地震予知はできない」という、敗北宣言につながりました。
この結果を受けて「警戒宣言」と「大震法」は見直されることになり、2017年現在、その見直し作業が進められています。
このように、政府公式の唯一の「地震予知」は、事実上、姿を消すことになります。
緊急地震速報
緊急地震速報は、もっとも身近な地震情報かもしれませんね。ただ、緊急地震速報は、実際に地震が起きた後に、先に到達するP波を捉えて警報を鳴らすものですのですので、予知や予測ではありません。
震源近いと、警報が実際の揺れより遅くでることもありますが、揺れる数秒前から数十秒前になります。
P波は、エレベーターや電車の緊急停止にも使われています。
東日本大震災の時は、東京では、一発目の揺れの前には鳴らず、その後の余震で鳴りまくっていたため、「使えない」という印象を持った人も多いかもしれません。
しかし、場合によっては、瞬時に身構えたり、たとえば赤ん坊を守ったり、有効に使える面も少なくありません。
ケースバイケースで、揺れの到達に間に合わないこともありますが、有効な場合もあることを頭に入れておきましょう。
・政府系の地震予測は、長期確率予測がメイン。
・周期的な地震についての長期確率予測は、案外あたっている(はずれてはいない)
・長期確率予報のデーターを、どのように活かし防災・現災につなげるかが課題
・東海地震の予知である「警戒宣言」は見直しの方向に。
・緊急地震速報は役に立つこともある。
民間の地震予知
政府系の研究機関が進めてきた地震学ベースの地震予知が行き詰ってしまったことは、前章で説明しました。
さて、その一方で、民間の研究者のあいだでは、積極的な短期予知を発表する動きが盛んになってきました。
これらの予知は、権威的な地震学にとらわれることなく自由な発想で行われているところが、大きな特徴です。
原因や理屈を調べることよりも、まずは地震の「前兆」を捉えて、予知をしながら精度を高めていこうという実践的なものです。
「地震の前兆」を捉えた予知について、長らく地震学会は「疑似科学」など否定的な見解を示して、研究対象からはずしていました。
しかし、政府は平成25年には「統計的に有意な先行現象について物理的・化学的根拠を探っていく」として、前兆現象についても積極的に検証をして予知の研究に活かしていく方針を打ち出しています(平成25年「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究」建議による)
それまで、「眉唾(マユツバ)もの」として過小評価されてきた前兆現象の研究に、政府も力を入れはじめてきたのです。
今後の地震予知の鍵をにぎるであろう前兆現象について、民間主導で進められている具体例をいくつかみてみましょう。
世界発の本格的な前兆地震予知…VAN法
VAN法は、電磁気を利用した地震予知を世界ではじめて実用化したものです。ギリシャで、1980年代に研究がはじま、1990年代から実用化されています。
地震は地殻が割れたりズレたりする「断層」により起きるとされています。断層が割れる前には、断層にに力がかかり、徐々に地殻が、ゆがんでいきます。この時、地殻内部の電流や磁力の量が変化しています。こうした電磁気の変化を、上手くとらえることで地震を予知できるのです。
電磁気変化をとらえるには、いくつかの方法がありますが、VAN法では地面に刺した電極から地電流の電位差を測定し、そこから膨大なノイズを取り除いて地震の兆候を見つけます。
的中率は60%ほどですが、ギリシャでは実際に地震被害を防いだ実例もあるため、今後の精度アップが期待されています。
日本では、東京大学名誉教授の上田誠也博士がVAN法を認め、日本でも電磁気を使った地震予知を推進することを主張しています。
上田博士はプレートテクト二クスの研究の第一人者で、地震学会の重鎮です。電磁気による地震予知について疑問視する地震学者が多いなかで、上田博士のような柔軟考えで積極的に予知を進める方向性に期待が高まっています。
串田嘉男氏のFM流星エコーによる地震予知
串田氏は、八ヶ岳南麓で私設の体験型天文台を運営しながら、小惑星発見などの実績があるアマチュア天文家です。
流星を観測する時に、FM電波の反射を利用した「流星エコー」という観測方法を使います。流星エコーで流星群の観測をしていた串田氏は、1993年に、流星エコーのデーターのなかに、地震発生と関連する前兆現象を発見します。以来、予知精度を高めるために研究を続けています。
ギリシャのVAN法は直接地面の電流を測定しますが、日本は電気的なノイズが多いため、上空の電離層から電磁気変化を読み取る方法が有望とされています。
串田氏の方法もそうした電離層の電磁気変化を読み取る地震予知です。
予知精度はまだまだ高くはないようですが、日本における電磁気地震予知を実践している草分け的存在として、串田氏の研究は歴史的なものと言えます。
串田氏の研究状況と予知情報は、有料FAX情報会員に提供されています。
早川正士博士・地震解析ラボ
電通大名誉教授・早川正士 は、インフォメーションシステムズ株式会社が運営する「地震解析ラボ」を立ち上げるなど、地震予知サービス普及の第一人者として注目されています。
串田氏の地震予知と同様の、電離層の変化を観測する手法のひとつ「VLF/LF電波観測」を中心に、地面からの電磁放射(ULF)やGPS電波など複数の方法を組み合わせて、予知をおこなっています。
地震解析ラボでは、有料アプリ「地震サーチ」(月額240円)で、個人向けに地震予知情報を配信しているほか、より詳しい情報を法人向けにも提供しています。
的中率は、60%〜70%ほどと言われており、予知情報の防災へ活用が注目されています。
村井俊治博士・JESEA(地震科学探査機構)
東大名誉教授の村井俊治博士は測量学の権威です。
実用化されている地震予知は「電磁気」によるものが盛んですが、村井博士は、GPSのデータを使う独自の方法により、短期の地震予知方法を開発しています。
全国1300箇所の国土地理院の電子基準点のGPSデーターから、基準点の動きを分析。変動の傾向から前兆をつかんで、予知に結びつけています。
予知情報は有料メルマガやアプリ(docomoのみ)で配信しています。
静穏期間や前震をもとにした予測
大きな地震は突然、起こるのではなく、前触れとなる「前震」が必ずあると言われています。
大地震が起きた後から調べると、「これが前震だったんだ」とわかるわけですが、小さな地震が絶え間なく起きている日本では、大地震と前震の関係を、あらかじめつかむことが簡単でありません。
そうしたなか、前震の前にある「静穏期間」に注目して、大地震につながる前震を見つける地震予知の方法が研究されています。
こうした方法を用いて、地震予知をしているのが、琉球大学教授・木村政昭氏、立命館大学・高橋学氏、東海大教授・長尾年恭氏などです。
これらの研究者は、よく週刊誌などに予知情報を発表していますが、的中精度はあまり高くなく、まだまだ研究段階と言ったところでしょうか。
地震の前兆は解明されてるか?
ここまでみてきたように、民間ではすでに、電磁気の変化(地電流や電離層の変化)のなかに地震の前兆を捉えて、予知に利用する方法が実践されています。
地震の前兆現象(=宏観現象「こうかんげんしょう」ともいう)は、ほかにも昔からいろいろ言われていて、研究が進められています。
かつては、非科学的として否定されていた前兆現象ですが、最近は政府も有望な前兆現象については研究を進めるとしています。
一時は、「地震予知はできない」というあきらめムードもあったようですが、ありとあらゆる可能性を糸口にして、地震予知を研究する姿勢に転換してきたのは、とても良いことだと思います。
では、地震の前兆現象について、研究の実情などについて簡単に見てみましょう。
地下水の変化・ラドン濃度の変化
地下水位の動きや、地中のラドン濃度は、地震の前兆として古くから注目されていてます。
政府系の機関でもかつて研究されたことがあります。その時は、関係性が認められたものの予知に結び付くほどではない、という結論でした。
地下水については、地震以外の要因でも変化するため予知に結び付けるのは難しいようですが、ラドン濃度は可能性があるとして、研究は続けられています。
ラドンは天然の微量ウランが放出する放射性物質で、地殻が動くことで濃度変化が起き、それが地震の予兆となるのでは?という仮説です。
また地震の前に、空気中のイオン濃度が変化することがありますが、それは、地中から放出されたラドンが、イオン濃度に変化を与えているとも考えられています。
大気重力波とさざなみ雲
大気重力波は、大気中の波動のことで、近年研究が進み、異常気象や温暖化などの解明・対策に期待されている分野です。
電離層に地震の予兆が現れるのと同じように、大気重力波にも予兆が現れると主張するのが、元東大地震研究所の宇田進一氏です。
「さざなみ雲」という現象を予兆のひとつしています。
さざなみ雲は、いわゆる地震雲とは少し違い、必ずしも地上から見れるものではないため、衛星画像を解析することで予知を行っています。
よく言われている、いわゆる地震雲は、地震の前兆といえる科学的根拠はなさそうです。地震雲目撃談は、ほとんどが、疑似相関(=関係があると思い込んでしまうこと)だとされています。
動物や植物の第六感
3.11に先立つ3月4日に茨城でイルカが50頭、打ち上げられたことが話題になりましたが、動物が事前に地震を察知するのではないか?ということは、大昔から言われていることです。鳥が騒いだり、犬が遠吠えしたり、ナマズが暴れたり……
人間でも、耳鳴りや頭痛などの低周波を感じるという人もいます。
こうした予兆には、「疑似相関(思い込み)」も多数含まれるので、はっきりとしたことはわからないですが、まったく関係が無いとも言いきれません。
実は、植物が地震を感知するのではないか?という研究は、大学などでも行われています。
植物は細胞液のイオンにより電位をもっていて、それが、動物で言うと神経のような働きをすると考えられています。
これを植物電位と言います。 たとえば植物は、太陽の動きに合わせて葉や花を動かしますが、それは植物電位の働きによるものです。
大地震の前には、植物電位の動きに兆候が見られるようで、その因果関係をつかむための研究が進められているのです。
プレートテクトニクスは間違い?
地震の宏観現象には次のようなものがあります。
地下水の変化
地中のラドン濃度変化
空気中のイオン濃度変化
動物の異常行動
電離層の変化
植物電位
発光現象
地震雲
これら地震の前兆として関連づけられるものは、実は、すべて電気的な作用で説明がつくと、最近、言われはじめています。「地震の原因は地殻変動でではなく電気的な動き」と考える方が、理にかなっている、という考え方です。
地震の原因としては、プレートテクトニクス論が、定説となっています。地殻が地下内部のマントル対流により動いていて、そこで地面にさまざまな圧力が加わり、はじけた時に地震になる、という説です。学校で習ったこの地震の原因が、いまでも、地震を考えるうえの大前提となっています。
ところが、最近の研究では、実は、マントルは動いていないのでは?という疑問が出始めています。マントルが動いていなければ、それに地殻が引っ張られるプレートテクトニクス論は成りたたなくなってしまいます。
そもそも、プレートテクトニクスも、あくまで50年以上前にできたて仮説のひとつにすぎません。
それに対して、地震が起きるのは、地殻の動きではなく、むしろ電気的な動きが原因だとする、新しい考え方が出てきくるのは、不自然なことではありません。
地下に溜まった電気が放電される時に、地震となる、という考え方です。簡単に言えば地下で起きる雷のようなものでしょうか。地殻が動くことが先なのではなく、地面に電気的エネルギーが蓄えられ、それが放電されることで地面が動く……このように考えた方が、ありとあらゆることの説明が付きやすい、として注目されています。
地球は、宇宙レベルで見るとプラズマ、電離層、太陽風など、電気の流れにぐるりと囲まれています。地震も、そうした、電気的な流れの一部なのではないか?というわけです。そう考えると、さまざま宏観現象も、だいたい説明が付くわけです。
ひょっとすると、50年以上も前の古い仮説にとらわれないで、新たな発想をした時に、人類は、地震予知に大きく一歩近づくのかもしれませんね。
以上、地震予知や予測について、現在、公的機関で発表されているものから、オカルト的(?)といわれているものまで、さまざまな地震予知についてみてきました。
政府の地震研究がメインとしている地震学会が「予知はできない」との見解を発表する一方で、民間の研究者や大学教授などが独自に地震予知を発表して、TVや週刊誌上をにぎわせています。
また、WEBやスマホの発達で、預言者や占い師など地震予知もますます盛んになってきている感があります。
こうしたなかで、われわれは正しく情報を理解して取捨選択することで、冷静な行動を取っていくことが最も大切でしょう。
地震関係でデマやパニックが起こることは、最も恐ろしいことだということが、過去の事例(関東大震災の朝鮮人虐殺など)が証明しています。
また、確実な地震予知ができない現状では、とにかく防災に備えることがいちばんです。
いつ地震が起きるかやきもきしても仕方がありません。それによりも、いつでも地震に対応できるように、防災力をあげることが、われわれが成すべきことなのです。
防災力をあげる具体的な方法については、たとえば個人なら⇒「防災士と災害ボランティア」、企業なら⇒「BCP(事業継続計画)」など、あらかじめ取り組めることはたくさんあります。防災への行動を後回しせずに、積極的におこなうことがたいせつです。