マジックアワーとは?夕焼けとの違いや、マジックアワーの名所20選

      2018/09/14

マジックアワー

マジックアワー」は、日の出や日没前後の時間帯を指す言葉です。もともとは、写真撮影の用語で、撮影にほどよい光線の状態になり美しい写真がとれるという意味ですが、今では、日没前後の魔法のように美しい夕焼け〜黄昏(たそがれ)を「マジックアワー」と表現することが多くなってきました。

 夕焼け〜黄昏時間は、マジックアワーの他にも、ゴールデンアワー、ブルーアワー、シビルトワイライト、薄暮、薄明などいろいろな呼び方があります。

 この記事では、夕暮れ〜黄昏時の呼び方や時間帯ごとの特徴、夕焼けの仕組みなど、美しく幻想的な「マジックアワー」を楽しむために知っておきたいことをまとめました。

 また、マジックアワーは自分の住む町でもどこでも楽しめますが、有名な「マジックアワーの名所」を20ヵ所ピックアップして紹介しています。

マジックアワーとトワイライト~夕暮れ時間の基礎知識

マジックアワー~ゴールデンアワーとブルーアワー

 マジックアワーは、夕焼け~黄昏のこと全般を指す言葉として使われています。とくに、トワイライト、つまり太陽が水平線や地平線に沈んだ後に、空がドラマチックな色彩の変化を見せてくれる時間帯のことを「マジックアワー」と呼ぶことが多いです。トワイライトの空の表情は、まさに魔法のようですからね。

 ほんらい「マジックアワー」は、写真や映像撮影で使われる言葉です。写真や映像が独特の雰囲気で魔法のように撮影できることから、映像撮影にちょうどよい明け方や夕方の光線量の時間帯のことを呼んでいるのです。

 「マジックアワー」は「ゴールデンアワー」と「ブルーアワー」のふたつに分けられます。厳密な定義はありませんが、ざっくり、太陽の高さ(高度)で、時間帯を区切ると、次のようになります。

ゴールデンアワー…日没を挟んで、太陽の高さがプラス6度とマイナス4度の、約40分間。いわゆる夕焼けの時間帯。

ブルーアワー…夕焼けの終わりごろ、水平線・地平線のオレンジ部分と、天空の夜の暗い影の間が深いブルーになる時間帯。日没後、太陽の高さがマイナス4度~6度の約10分弱のあいだ。日によってブルーが出ないこともあるので、レアな時間帯と言えます。

ブルーアワー

▲日没から20〜30分後。深い青が空に一瞬戻る時間がある。それがマジックアワーのなかでもとくにマジカルな「ブルーアワー」

 ゴールデンアワーとブルーアワーからなるマジックアワーは、その美しい風景だけでなく、光の量が、昼間に比べて少なくなっていることが特徴です。光量を表す尺度として「色温度」がありますが、色温度で言えば、昼間が5000ケルビンなのに対して、ゴールデンアワーは3500ケルビンとなります。自然光が減るぶん、撮影では光の量がいろいと調整可能になり、美しい写真が魔法のようにとれる、というわけです。

スポンサーリンク

3種類のトワイライト

 さて、マジックアワーはもともと写真関係の用語です。

 夕暮れ時を表す言葉としては、「トワイライト」という言葉があります。トワイライトは日本語では「薄明」と訳されますが、日没後に、だんだん暗くなって、夜になるまでの間がトワイライトです。

 日本語では「黄昏(たそがれ)」時や、「逢魔が時(おうまがとき)」という言い方もあり、異世界とつながる、ちょっと怖い時間帯というイメージもあります。

 一方で、トワイライトは、昔の航海技術において、まだ真っ暗にならないけれども星が見えはじめる重要な時間帯でした。航海用語では、トワイライトは、次の三つの段階に分けられています。

シビル・トワイライト…Civil Twilight 市民薄明。日没から太陽の高さがマイナス6度になるまでの日没から30分前後の時間。まだ、屋外のものを肉眼で区別することはできる段階です。

ノーティカル・トワイライト…Nautical Twilight 航海薄明。太陽高度マイナス6度~マイナス12度。日没から1時間くらいまで。水平線が区別できなおかつ星も出ている段階。昔の航海では、水平線と星が同時に見えることで現在位置を確認できる、貴重なタイミングでした。

アストロノミカル・トワイライト…Astronomical Twilight 天文薄明。太陽高度マイナス12度~マイナス18度。日没から1時間半くらいまで。水平線の区別がつかなくなり、なおかつ、太陽光線が完全に届かなくなるまでの間。人工光が無いところでは6等星までの星が見分けられるくらいとなります。

 以上の3種類のトワイライトの分類は、昔の航海に用いられた考え方ですが、とにかく、「日没してからの、明るい時間が、案外まだまだ長い」ということがよくわかると思います。

 太陽高度と時間の関係は、緯度によって変わってくるので一概に言えませんが、日没後のトワイライトは、おおむね1時間前後続くものなのです。

太陽の高さとマジックアワー、トワイライトの関係

マジックアワーの楽しみ方

「サンセット」と「マジックアワー」の違いは?

 マジックアワーやトワイライトは、もともと写真や航海など専門分野で夕方の時間帯を区別している言葉でした。ところが、最近は、夕焼け時間を楽しむ人が増えてきたこともあって、「マジックアワー」という言葉が定着しつつあります。

 この場合の「マジックアワー」は、太陽の高さが何度からという厳密な決まりはありません。ただし、夕焼けまでの時間だけでなく、日没後のトワイライトを主に指す言葉として、使われていることが多いようです。夕焼けを表す言葉としては「サンセットビュー」などがこれまで使われていましたが、「サンセット」というと日没までに限定される感じです。それに対して、日没後の時間をより強調した表現が「マジックアワー」となるわけです。

マジックアワー

▲マジックアワーの厳密な定義はないが、一般には、日没後の光のおりなす空のショータイムを指すことが多い

マジックアワーをアクティブに楽しむのが温暖化時代ならでは

 さて、ドラマチックな夕焼けと日没後の空の変化を満喫する「マジックアワー」の楽しみ方について、少し見てみましょう。

 昔は、「逢魔が時」とされ、「早くお家に帰りましょう」的な雰囲気だったのですが、近年は、このマジックアワー~トワイライトの時間帯を積極的に楽しむ傾向が強くなっています。

 とくに春~夏は、温暖化の影響で、昼間が暑すぎてなかなか快適な活動ができない状況です。そこで、夕暮れ時の、陽差しが落ち着いて過ごしやすいこの時間帯をたっぷり楽しむことが増えてきているのです。

 マジックアワーにスポーツを楽しむのも良いですね。とくに沖縄などリゾート地で大人気のマジックアワーのシーカヤックや⇒SUPなどこれから全国的にブレイクしていくと思われます。

 マジックアワーにランニングを楽しむ人も多いと思いますが、有名な沖縄今帰仁村・古宇利島マジックアワーランのようなランイベントも、増えてきそうです。

マジックアワーに、ぼっとして心の洗濯を

 さて、マジックアワーにアクティブにスポーツをするのもありですが、もちろん「ぼーっと空を眺める」というのもありです。

夕日を観に行くことはけっこうあると思うのですが、たいていは日没を確認すると、その場を立ち去ってしまうパターンです。

 「マジックアワー」をぞんぶんに楽しむには、日没後もそこに留まって、じっくり空を観察することです。天候や大気の状態にもよりますが、日没直後よりも、20分から40分後のブルーアワーにあたる時間帯のほうが、空の色彩がより濃ゆくなって幻想的な光景となることもあります。

 夕陽が途中で雲のなかに沈んでしまい、いまひとつ動きの少ない夕焼けだったとしても、日没後のマジックアワ―が、とてもマジカルな光景のこともあります。

 西の空のオレンジと、天空のコントラすごがだんだん強くなり、星がポツリポツリと姿を表す空を眺めてると、地球と宇宙との一体感を味わうことができます。

 月夜であれば、黄昏時の太陽の光のマジックから、月あかりのマジックへ、空の大スクリーンの映像が移り変わっていく様を、ダイナミックに楽しむことができます。

 こんな感じで、マジックアワーは、1時間以上たっぷりとかけて楽しむのが、コツです。夕日の名所などを訪れた時は、日が沈んですぐ立ち去ってしまってはもったいない、ということですね。

 なお、夏場にマジックアワーを鑑賞する場合、陽が落ちた瞬間から蚊が増えてくることも多いので、蚊取り線香の用意はマストです。蚊対策をして、じっくりマジックアワー鑑賞に臨みましょう。

 それから、マジックアワーを鑑賞しにわざわざどこかへ出かける場合は、日没の時間と、方位を確認しておきましょう。とくに、日没の方角は、季節によってかなり大きく変化します。日没の方位を地図上で観れるサイトやアプリがあるので、確認するようにしましょう。

マジックアワーを楽しむコツまとめ

・夕陽の名所に行ったら、日没後も「マジックアワー」を楽しもう

・日没から15分〜20分してのブルーアワーがとくに綺麗なのでそれまでねばる

・サンセットがイマイチでも、マジックアワーが素晴らしいことも。

・月夜や星空へと変わる光景を堪能するなら、日没から1時間以上、楽しめる

・夏は日没からの蚊対策

・日没時間だけでなく方角をアプリやサイトで事前確認!

・春〜夏はとくにマジックアワー・ランがおすすめ

・海のリゾート地に行ったら、マジックアワーのSUPまたはシーカヤックはマスト!

より美しいマジックアワーが観られる条件は?

 マジックアワーを楽しむには、もちろん晴れの日であることが条件です。

 できるだけ空気が乾燥しているほうが、色合いがはっきりします。とくに、夕焼け時の赤系統の光線は、乾燥しているほうが美しく見えます。

 湿度が高い、つまり空気中の水蒸気が多いと、光が全体に散乱され白が強まります(科学的に言えば「ミー散乱」という現象です)。結果、色がぼやけたパステルカラーに近い夕焼けとなります。湿度が高い場合は、少しおとなしめの光景となりますが、これはこれで味わい深いマジックアワーとなります。

 台風などが接近して波が高く風が強くなおかつ晴れているときは、とても真っ赤な夕焼けになることがあります。これは、海水中の塩など海水飛沫と呼ばれる粒子が空気中に巻き上がることが原因です。海水粒子は水蒸気よりも小いため、青い光だけ反射するレイリー散乱となり、青い光が取り除かれることで、赤味が増すのです。

 このように、空気中の粒子の大きさによって、光の見え方が変わってきます。

 光の仕組みを理解すると、より深くマジックアワーを楽しむことができるわけですね。光の散乱や夕焼けについては⇒『夕焼けの仕組み』の項でより詳しくのべています。

スポンサーリンク

激ヤバなマジックアワーの風景が見られる名所20選

では、ここからマジックアワーの名所をいくつか紹介していきます。マジックアワーはもともと写真用語であることから、夕景の写真撮影のメッカとなっている夕陽ポイントを中心にピックアップしました。

 やはり、夕焼けのマジックアワーをじっくり鑑賞するには、「西向きの海岸」という条件がベストです。ですので、「夕陽が見える有名海岸」的なリストとなっています。もちろん、マジックアワーはどこでも鑑賞できますが、とくに素晴らしいと言われる、夕陽とマジックアワーの名所について、見ていきましょう。

網走郡大空町・メルヘンの丘

 西に網走湖を望む丘陵地に広がる畑作地帯と7本のカラマツが印象的な景勝地です。地平線に沈む夕日をたっぷりと。無料のビューポイントパーキングがあるため車でアクセスしマジックアワーを心行くまで堪能しましょう。

しゅしゅさん(@marihikita)がシェアした投稿

●所在地:北海道大空町
●アクセス:JR女満別駅徒歩20分、国道39号線沿いに駐車場ビューポイントあり

釧路川・幣舞橋

 釧路川は道東にありながら、西に向かって海に川が注いでいるため、川から海にそそぐ雄大な夕陽が観られます。釧路港の夕日は船乗りたちが選んだ世界の三大夕陽に数えられているほど。緯度が高く湿度も低いため、鮮やかな赤い夕陽が観られます。なかでも幣舞橋(ぬさまいばし)からの夕景が有名です。

●所在地:北海道根室市
●アクセス:JR根室本線釧路駅徒歩10分、釧路空港より車30分

小樽・祝津パノラマ展望台

 ニセコ積丹小樽海岸国定公園内の標高70mの日本海に突き出た展望台。近くにおたる水族館やリゾートホテルもあり、ゆっくりと北のマジックアワーを楽しめる。

●所在地:北海道小樽市
●アクセス:JR小樽駅よりバス25分徒歩10分、札幌自動車道小樽ICより20分

奥羽本線・間島駅

 新潟の日JR間島駅からは、線路沿いに長い海岸線が続き、越後早川駅まで歩くことができます。かつて大阪札幌間を走った寝台特急トワイライトエキスプレスがちょうど日没時間に通過する場所として知る人ぞ知る穴場です。鉄道でのアクセスが最も良いマジックアワースポット。

Jun Saitohさん(@ifsaitoh)がシェアした投稿

●所在地:新潟県村上市
●アクセス:JR間島駅すぐ

佐渡・外海府

 尖閣湾や平根崎などがある海蝕崖による海岸線。背後の大佐渡山脈を照らしながら日本海に沈む夕陽は圧巻です。離島ならではのゆったり時間で、マジックアワーを堪能し、そのまま星空観測へとシフトするのも自然な流れです。

●所在地:新潟県佐渡市
●アクセス:両津港より車で80分

福井・越前海岸

 越前岬を中心に日本海に断崖が迫る越前海岸。高さ130mの越前岬展望台からの日本海への夕日は絶景ポイントとして有名ですが、ほかにも東尋坊、三国サンセットビーチ、和歌沢田海岸など夕陽ポイントが連なります。

●所在地:福井県越前町
●アクセス:JR福井駅からバス70分徒歩15分、北陸自動車道鯖江IC50分

千葉・原岡桟橋

 房総半島の先端に近い西海岸・富浦海岸にある木製の桟橋。遠くに富士山を望む相模湾に突き出た桟橋と、富士さんのシルエットのコラボは抜群です。アクセスも良いので、ゆっくりとマジックアワーを楽しみましょう。

Kousuke Ishiiさん(@isi_kusk)がシェアした投稿

●所在地:千葉県南房総市
●アクセス:JR内房線富浦駅徒歩10分、富津館山自動車道富浦IC5分

葉山町・森戸海岸

 葉山の森戸海岸は海水浴場として、また夕陽の見えるビーチとして有名です。森戸海岸からちょっと歩いて森戸神社の裏の小さな浜まで出れば、海に浮かぶ鳥居と富士山が夕陽に照らされる光景を目にすることができます。駐車場料金が高いので注意。

●所在地:神奈川県葉山町
●アクセス:JR逗子駅・京急新逗子駅よりバス25分、横浜横須賀道路逗子IC20分

伊豆半島西海岸各地

 関東で夕陽のメッカといえばやはり伊豆半島の西岸。石廊崎(南伊豆町)、雲見海岸(松崎町)堂ヶ島(西伊豆町)、、大田古海岸(西伊豆)、恋人岬(伊豆市)など、夕陽の名所だらけです。自家用車やレンタカーでのアクセスが必要なため不便ですが、それだけにゆっくりマイペースでマジックアワーを楽しめます。夕陽ポイントへの到達も道が悪く時間がかるため、早めの行動でマジックアワーを逃さないように注意しましょう。

●所在地:静岡県南伊豆町、松崎町、西伊豆町
●アクセス:東名長泉沼津ICより伊豆縦貫道・伊豆中央道経由で約60分~100分

山中湖パノラマ台からの富士山

 富士山と湖の夕景セットの定番なのが、山中湖の東岸三国山途中にある山中湖パノラマ台で、写真愛好家のメッカになっています。また、湖畔には夕焼けの渚や、森の中にひっそりとある「山中湖夕焼けの渚展望台」もおすすめです。

manamiさん(@167cm42kg)がシェアした投稿

●所在地:山梨県山中湖村
●アクセス:富士急富士山駅よりバス35分、JR御殿場線御殿場駅より45分、東富士五湖道路山中湖ICより10分

伊勢志摩・英虞湾

 伊勢志摩国立公園。リアス式海岸独特の岬と海がタペストリーのように織り成す風景に真珠養殖アクセントが加わり、夕凪になると美しい水鏡となります。朝焼けの写真撮影のメッカとしても知られています。水登茂山半島の登茂山園地・慕情が丘展望台から。

●所在地:三重県志摩市
●アクセス:近鉄志摩線鵜方駅20分 伊勢自動車道伊勢西IC45km

南紀白浜・円月島

 関西を代表する夕陽スポットのひとつ和歌山白浜の円月島高さ25m長さ130mほどの小さな岩の小島に開いた自然のトンネル海食洞が空いている。春秋のお彼岸時期には、このトンネル内に夕陽が沈むのが観られるが、年に何度あるか?という奇跡。トンネルの日没には出会えなくても、壮大な夕陽とマジックアワーが堪能できる。

●所在地:和歌山県白浜市
●アクセス:JR白浜駅バス20分 阪和自動車道みなべIC24km

大阪港・中央突堤

 日本では珍しい、西海岸をもつ大都市大阪のベイリア。ウッドデッキのある中央突堤からの港の夕日は絶景で「ダイアモンドポイント」と呼ばれます。天保山大観覧車・水族館「海遊館」・赤れんが倉庫などある海岸通で、まったりとお洒落にマジックアワーを過ごせます。

glogg_osakakoさん(@glogg_osakako)がシェアした投稿

●所在地:大阪府大阪市港区
●アクセス:大阪市営地下鉄大阪港徒歩10分、阪神高速4号湾岸線天保山IC10分

新舞子海岸

 瀬戸内国立公園にある、関西随一の遠浅海岸。干潟に紋様のように映る朝日と夕陽は有名です。とくに朝陽が写真撮影のメッカとなっているためカメラマンで混雑するため、夕陽とマジックアワーを楽しむほうがゆっくりできます。

●所在地:兵庫県たつの市
●アクセス:山陽鉄道山陽網干駅バス15分、山陽自動車道龍野IC20分

宍道湖夕陽スポット

 時間ごとに刻々と表情を変える夕陽の名所としても全国的に有名な松江の宍道湖(しんじこ)。湖に浮かぶ嫁ヶ島を入れた夕景を望める国道9号線沿いの宍道湖夕日テラスがおすすめポイントです。湖畔を歩く遊歩道や、腰かけられる観覧席のようなテラスが整備されています。国道を地下通路で渡れるため反対車線からのアクセスも便利。

●所在地:島根県松江市
●アクセス:JR松江駅よりバス15分、山陰自動車道松江玉造IC10分

湯谷 東後畑

 日本海に面した棚田がある珍しい風景。5月中旬~6月の棚田に水が張られた時期は、海と棚田の水鏡がおりなす夕景を観ることができます。また、5月中旬はイカ釣り漁船の漁火が間近に無数に見られるため、ブルーアワーの水田と海と漁火という神秘的なコラボレーションが観られます。

●所在地:山口県長門市
●アクセス:JR山陰本線長門古市駅タクシー20分、中国自動車道美弥IC60分

大分恋叶ロード真玉海岸

 干潟の横縞模様が夕日に映える真玉海岸は国東半島北西沿岸にあり大分県ながら水平線に沈む夕陽が観られます。縁結びで知られる粟嶋社から長咲鼻まで恋叶ロードが走り、インスタ映えする風景の連続。デートコースに最高です。

●所在地:大分県豊後市
●アクセス:JR宇佐駅車20分、国道10号線宇佐市岩崎交差点よりR213へ入り10分

佐世保・南九十九島

 佐世保から平戸にかけて200を超える小島が点在する九十九島。夕陽ポイントはいくつかありますが、佐世保亜熱帯植物園近くの石岳展望台が有名です。

●所在地:長崎県佐世保市
●アクセス:JR佐世保駅バス20分徒歩20分 西九州自動車道佐世保西IC8km

御輿来海岸

 有明海につきでる宇土半島の穏やかな海岸。干満の差が激しく、干潮時には三日月形の独特の砂紋が多数出現します。干潮の前後1時間と夕景が重なる時がねらい目です。天草街道沿いの「干潟景勝の地」がアクセスしやすいポイントです。

●所在地:熊本県宇土市
●アクセス:JR三角線網田駅より徒歩20分

天草西海岸サンセットライン

 天草西海岸を走る国道389号線は「天草サンセットライン」と呼ばれ鵜、西の水平線に沈む夕陽を満喫できる美しい道。大賀瀬、妙見浦、十三仏公園、遠見山公園など有名夕陽スポットのどこで見るか迷う。世界遺産に登録された崎津集落のマリア像など隠れキリシタンにちなんだマジックアワー体験もできます。

●所在地:熊本県天草市
●アクセス:九州自動車道松橋ICより2時間30分

マジックアワーを彩る光の不思議

夕焼けが赤いのは? 空が青いのは? 雲が白のいは? 光の散乱

 太陽の光は赤・オレンジ・黄色・黄緑・青・紫の各色の光線が集まっています。色は、赤外線や電波と同じような空間を伝わる波で、波長により色の違いがでてきます。

 赤が波長が長い色、青が波長が短い色です。

 さて、光は、ものに当たると反射をします。大きな雨粒などに反射すると、屈折が起き、虹のような現象となります。波長により屈折の角度が変わるため、色が分かれて見えるのです。

 ところが、小さな水蒸気にぶつかると、光は様々な方向に乱反射します。これを散乱と呼びます。雲が白く見えるのは、水蒸気にすべての波長の光が散乱しているからです。すべての波長の光が散乱することを「ミー散乱」
と呼びます。色々な色がさまざまな方角に反射されるのが入り混じって、結果、白く見えます。

 一方、空が青く見えるのは、太陽光線のなかの青い光が主に散乱しているからです。青~紫の光線が、空気中の酸素分子・窒素分子にぶつかって散乱するため、空は青く見えています。水蒸気よりもはるかに小さい分子にぶつかっておきる「レイリー散乱」によるものです。光の波長よりも小さい粒子にぶつかると、短い波長の色だけが散乱され、長い波長の色は、粒子にぶつからず素通りしていく現象が、レイリー散乱です。

 日没近くになると、太陽光線が通る空気の層はとても厚くなります。日没時の光は、昼間の光にくらべると、空気の中を長い間通ってきた光です。そのため、青系の光は途中ですべて散乱されてしまい、残った黄色~赤系の光だけが届くようになります。日没前に太陽が赤く見えるのはこのためです。

 赤い光は青い光にくらべると散乱しにくい性質ですが、夕暮れ時の光は長時間飛んできているため、赤系光線も散乱されるようになります。その結果、空全体が赤系に染まります。

 このように、夕焼けが赤いのは、光の散乱の性質によるものなのです。

ブルーアワーの青が特別な理由

 ブルーアワーは、日没後にあらわれる現象で、オレンジに残る夕焼けの残像の上の部分の空が、深いブルーに染まる現象です。

 日没前後の空は、赤系に染まった夕焼け以外の部分は、やや緑がかった薄水色をしています。

 ところが日没から40分ほどたつと、暗くなりはじめた空と、残る夕焼けの間が、真っ青な深い深いブルーになります。これがブルーアワーの空です。

 太陽はすでに、沈み、もはや青系の光線は届いていないはずなのに、なぜ、ブルーが復活するのでしょうか?

 これは、地平線に沈んた太陽からの光が、オゾン層に反射することで青く見える現象です。昼間のレイリー散乱による青とは、違った理由で生まれる青色なので、青の感じも、独特の美しい色あいを出しています。まさに、この時間だけにしか見えない青色だと言えるでしょう。

沈む行く太陽は、まぼろし? 光の屈折の不思議

 日没にまつわるトピックスとして、もうひとつ知っておきたいのが、「太陽が沈む瞬間、実際の太陽はすでに沈んでいる」という現象です。

 太陽が水平線や地平線に沈むことは、滅多に見れることではありませんが、たとえ見れたとしても、それは幻というか、実際の太陽は、既に沈んでいるのです。

 これは大気の密度の濃淡によって光が屈折するためです。これを「大気差」による屈折と呼びます。

 空気は上空に行くほど、薄くなっていきます。光の進行速度は、空気が薄いところは早くみ、空気濃度が高いところでは遅くなります。空気の濃淡によって、スピードが異なるため、大気中を通る空気は曲がります。これが屈折です。

 大気中の濃度の変化は必ずありますから、遠くにあるものは、みな屈折して見えています。夜空の星も、実際にある位置からほんの少しだけずれて見えているのです。

 さてこの大気差による屈折がもっとも大きくなるのが、夕暮れ時です。夕暮れ時は、光が通る大気の層は昼間よりも厚くなります。高さ40度の時の大気差は0.017度なのに対して、水平線の方向の大気さは、0.5度にもなります。0.5度というのは見かけ上の太陽の直径とほぼ同じです。

 つまり、太陽の下の端が水平線に達している時、すでに太陽は沈んでいることを意味しています。

 そもそも「見える」ということは、実際にそこで起きていることではなく、光の運動を人間が知覚したことによる脳の働きです。そう考えると、ほんとうに起こっている現象でも、目にすることができないわけで、「観たものはみな真実なのか?」という、哲学的な禅問答的な疑問に発展していきますね。

ヴィーナスベルトと地球の影(夕焼けの反対側がまた美しすぎる)

 マジックアワーの楽しみは、西側の空を楽しむだけではりません。日没と反対側の東側の空の、繊細な美しい色の変化も見逃せません。

 日没直後の反対側の東の空に、ピンク色の色の帯が見ることができます。これは、日没時の赤系の光線が、大気の反対側まで届いているこために見える現象です。時と場合によっては、西の空から東のまで、ピンクのベルトがぐるっと一周して見えることがあるため、ヴィーナスベルト

 ヴィーナスベルトのすぐ下側には青暗い層が観察されることもあります。これは、地球の影(太陽の光が届いてない部分)が見えている現象です。

 ちなみに、ヴィーナスベルトに、さらに、光が放射状の帯に伸びるような光景が加わることがあります。これは「反薄明光線」と呼びます。

  

 

 以上、ダイナミックな美しい光のマジックを見せてくれる夕暮れの時間、マジックアワーについて述べてきました。

 光は、物理的な波動により生まれますが、あくまでも目で見て脳で知覚する現象という意味では、実は、スピリチュアルなものでもあります。

マジックアワーの光景に、誰もが魅了され癒されるのは、「光とは、脳が知覚してはじめて存在する概念のようなもの」だからなのかもしれません。夕陽やマジックアワーを時間をかけて楽しむのは、脳の健康にとっても、良い効果がありそうですね。

 記事中では、マジックアワーの名所も紹介しましたが、自分の住む街のなかにも、美しいマジックアワーを感じられるポイントがあるはずです。心で感じるマジックアワーを楽しみましょう。

スポンサーリンク

 - アウトドア, 季節と自然