台風と雨。台風で記録的な大雨が降る理由
2018/07/18
台風といえば、強い風だけではなく、雨にも注意が必要です。台風に大雨はつきものですが、日本の本州に台風が上陸したり近づいたりする場合、とくに記録的な大雨となることが少なくありません。
このページでは、台風の雨に関する情報を正しく読み取るために、まず標準的な雨量について整理してみたいと思います。
その上で、台風ではどれくらい大雨が降るのか? そして、その原因についても述べていきたいと思います。
大雨の基準て、何ミリの降水量?
雨の降る量は降水量として、ミリ単位で測られます。「○ミリの雨量」という言葉は、ニュースや天気予報で頻繁に耳にすると思います。が、なかなかピンと来ないのも事実ですよね。
降水量は、降った雨を容器に溜めた場合、どれくらいの高さまで水が溜まるか? という単位ですが、1時間で測るか、1日で測るかで、ぜんぜん違ってきます。
そのため、降水量が何ミリ、と聞いてもピントこないので、まず、降水量の多い少ないを判断する基準をみてみましょう。
まず日本の年間降水量、すなわち1年間で降る雨の総雨量をみてみましょう。
年間降水量は全国平均1,757mmですが、地域によって、とても大きな差があって、最多の高知では3,659mm、最少の長野では902mmとなっています。
さて次に、大雨の基準として、1時間あたりの降水量の大雨基準をみていきましょう。
10mmから20mm | ザーザーと降り、声が聞こえにくい |
20mm〜50mm | どしゃぶりで、傘をさしていても濡れる。ワイパーを早くしても見えない |
50mm以上 | 滝のような雨。寝ていても雨の音で目が覚める。車の運転が危険 |
次に1日あたりの降水量について。
1日あたりの降水量が多いかどうかを知る基準として、100年に一度の大雨、とか30年に一度の大雨、などの表現が使われます。これは確率降水量というデーターの取り方で、統計的に大雨の基準を表す指標として、使われます。
この基準値は地域によって大きく違うのですが、おおまかな目安では、以下のようになります。
北日本 | 24時間で100mm〜200mm 多い所では300mm |
西日本太平洋側 | 24時間で200mm〜400mm 多い所では600mm |
以上から、注意を要するような尋常ではない大雨の基準は、かなりざっくりですが、1時間雨量では50mm以上、24時間雨量では、雨が少ないところでは150mm以上、多い所では300mm以上ぐらいが記録的な大雨、と言うことができます。
また、台風や大雨の記録が発表される場合は、1時間や24時間の区切りではなく、「期間降水量」という単位もよく使われます。たとえば、台風の期間降水量であれば、その台風がもたらした雨の総量となります。
期間降水量が多いか少ないか? についても、上記のデーターを基準にすれば、イメージがつかめると思います。
台風の大雨では、1年ぶんの雨が降る?
さて、台風による大雨で、これまで、どれくらいの大雨が記録されているのでしょうか?
たとえば、平成2年の台風19号では、期間降水量で600mm〜1,100mmを記録しました。
昭和51年の台風17号では、徳島県で24時間雨量が1,114mmの記録があります。この台風の期間降水量の最高値は2,781mm。全国平均の年間降水量が1,757mmですので、1年ぶん以上の雨がひとつの台風で降ったことになります。
この例だけではなく、特に日本の本州に接近する台風は、大雨が降ることがとても多いです。1時間雨量で50mmを超えたり期間で500ミリ以上の記録的な大雨となることが、少なくありません。
この原因は、台風そのものの雨だけではなく、梅雨前線や、台風が温帯低気圧に変わったあとの前線に対して、南から湿った空気が供給され、前線が活発化してさらに大雨になることによります。
台風の雨を考える場合は、台風そのもの雨だけではなく、前線の活動が活発になり大雨をもたらす、ということを頭にしっかりと入れておく必要があります。
大雨による災害が、最も危険で、台風による人的被害が水害によるものがほとんであることも、改めて認識する必要があります。
以上みてきたように、台風が上陸しなくても、前線を刺激することで、災害が起きるほどの記録的大雨になることも少なくありません。台風の進路や予報を見る場合には、台風そのもの動きだけではなく、「前線による大雨」について、常に注意をするようにしましょう。
【参考記事】台風なみの水害をもたらす集中豪雨の原因は?⇒『積乱雲とバックビルディング型線状降水帯』。