レスキューチューブ(ライフセーバーが持っている浮き)の使い方。

      2018/06/18

レスキューチューブ

 海水浴やプールに行くと、ライフセーバー(監視員)の足元には、細長くて赤い浮きのようなものが置いてありますよね?

 これは、レスキューチューブライフガードチューブと呼ばれる、ライフセーバーなら誰もが持っている、救助用の浮きです。

 なぜ、丸い浮き輪ではなく、細長い浮きなのでしょう? どうやって使うものなのでしょうか?

 この記事では、水の事故で命を救うレスキューチューブのこと、そして、水の事故について知っておきたい基礎知識をまとめています。

 レスキューチューブとは? なぜ浮き輪ではだめなのか?

レスキューチューブの特徴

 レスキューチューブは、ライフセーバーやライフガードは、必ず常備している、救助用の浮きです。

 なぜ、浮き輪ではなく、棒のような形をしたレスキューチューブなのでしょうか?

 それは、より早くより確実に、溺れている人を救助するためです。

▲ライフセーバーの必携アイテム、レスキューチューブ。

 長さ1mのレスキューチューブには3mほどのリシュー(ひも)がついていて、ひものはじはストラップになっています。ライフセーバーは、このストラップを肩からたすき掛けして、チューブを引っ張って泳いで、救助者のところへ向かうという仕様になっています。

 溺れている人を助ける場合は、一秒でも早く現場に到着することが生死にかかわってきます。浮き輪の形だと水の抵抗があり、泳ぐスピードが落ちてしまいますが、棒状になっているレスキューチューブですと、水の抵抗が少ないぶん、早く現場に到達できるわけですね。

 実は、レスキューチューブは、棒のように長い状態で使うだけでなく、水中で丸めて浮き輪状にできるのも最大の特徴なのです。

レスキューチューブの歴史

 レスキューチューブは30年ほど前から普及しだした、比較的新しい道具です。もともと、救助用の浮きには、レスキューブイと呼ばれるプラスチック製の浮きが使われていました。

 レスキューブイの特徴は、溺れかけた人がつかまりやすいように、とってがつけられていること。

▲レスキューブイはレスキューチューブの前身。いまでも、ダイバーやサーファーが使っている。

 レスキューブイは、これはこれでとても機能的で、今でもダイビングやスノーケル時の補助用の浮きとして、よく使われています。

 しかし、ライフセーバーが常時身に着けているアイテムとしては、今では、レスキューブイではなくレスキューチューブでが定番になっています。

 それは、レスキューブイには無い、レスキューチューブならではの「水中で輪っか状に丸めることができる」という機能のためです。

 レスキューチューブの両端にはフックが付いていてます。チューブは弾力性があり曲がりますので、丸めて両端のフックをつなぐと、浮き輪のようになるのです。

 溺れている人のわきの下からチューブを通してまるめて、背中側でチューブのフックをとめることで、水の中で、浮き輪を装着できるのです。

 浮き輪やレスキューブイは、溺れている人が、体力が残っていて意識がはっきりしている時は、充分に役立ちます。

 しかし、パニックや体力の消耗で、自分でブイや浮き輪につかまることができない遭難者もいるわけです。

 こうした人に、浮き輪を被せて、浮き輪の穴に体を通すことは、かなり困難なことです。

 その点、レスキューチューブは、水の中で体を巻くようにして、浮き輪を後から付けて、溺れている人を浮き上がらせることができるのです。

レスキューチューブの使い方

レスキューチューブを使う手順の一例

 実際の救助手順を簡単に見てみましょう。

 まず、ライフセイバーは、レスキューチューブを引っ張りながら泳いで、溺れている人に近づきます。2mくらいのところまで近づいたら、まずチューブを海面をすべらすようにして、溺れている人へ差し出します。

 この時たいせつなのは、遭難者とあくまで一定の距離を保つことです。溺れている人はパニックになっているので、そのまま抱きつかれたりすると、助けようとしている人も一緒に溺れてしまう可能性がとても高いです。

 訓練を積み、泳ぎが達者なライフセーバーであっても溺れている人の手が届く範囲まで近づくことは危険なのです。

 レスキューチューブは1mの長さがありますので、溺れている人から一定の距離を保ったまま、救助活動ができるようになっているわけですね。

 溺者がチューブにつかまりいったん落ち着いたことを確認した後、溺れている人の背後にまわり、わきの下からチューブを通し、救助者の背中側でチューブの両端のフックを止めて浮き輪状に巻きます。

 これで溺れていた人は、顔がしっかりと浮き上がる状態になるので、安心です。

 その後、ライフセーバーは泳いで引っ張りながら、溺れていた人を岸へ戻します。溺れていた人は後ろ向きに引っ張られるようなかたちになります。

 以上が、レスキューチューブを使った救出手順の一例です。

 実際には、溺れている人がすでに意識を失っている場合などは、はじめから近づいて浮き輪にして遭難者を確保する、逆に、体力が残っている場合は、浮き輪にはせずつかまらせた状態で曳航するなど、ケースバイケースでいろいろな状況がありますが、この基本な救出方法は頭に入れておきましょう。

溺れている人の発見の仕方

 溺れかけている人は、手を振りながら助けを呼んでいるようなイメージがありますが、実際は、「静かに沈んでいく」ことがほとんどです。

 助けを呼ぶ余裕がある場合は稀で、たいていは、溺れそうになっている場合、顔だけ水面に出し、空を見上げるように顔をあげて、口をパクパクさせていることが多いです。

 この状態は、訓練を受けたライフセーバーでないとなかなか発見することはできませんが、知識とし知っておいてください。

 とくに、子供を見守る場合など、「静かになったら要注意」というふうに覚えておくと、良いでしょう。いざという時に発見が遅れずにすみます。

レスキューチューブは誰でも使えるの?

素人が溺れる人の救助に飛び込んではいけない理由

 レスキューチューブの使い方を前項で説明しましたが、「そもそもライフセーバーやライフガードでもない人が、レスキューチューブを使っても良いのか?
」という、疑問もあると思います。

 結論を先にいえば、法的な規制はないが、ライフセーバーなど一定の訓練を受けた人が使うのが望ましいと言えます。

 レスキューチューブは、ライフセーバーが持つものという前提で「LIFEGURRD」と大きくプリントされています。

 レスキューチューブは特に資格が無くても購入することはできますが、持っていれば、周囲から「この人はライフセーバーなんだ」と思われることは間違いありません。ですので今の日本では、資格が無い人が面白半分で敢えて持つべきものではない、と考えるのが常識的でしょう。

そもそも救助訓練を受けていない素人が、溺れている人の救助に正義感だけで飛び込むのは危険ということは、覚えておきましょう。泳ぎに自信がある人でも、救出方法の訓練を受けていない限り、溺れている人に引きずり込まれてしまう可能性がとても高いからです。

 溺れている人を見たら、まずは、近くのライフセーバーや監視員を呼ぶ、監視員がいない場合は119番通報するなどをします。また、自分が飛び込み救助に向かう前に、浮きになりそうなものを投げ入れます。(浮きについては次項で後述)

 どうしても水に入る場合は、救助者が遭難者に引きずり込まれないように、岸にいる人たちで「人間の鎖」を作るなどして、救助を試みます。

ライフセーバーの資格をとるには?

 ところでライフセーバーやライフガードの資格は、どういうものでしょうか?

 海外では、プロの職業としてやっている人を「ライフガード」、一定の講習を受けボランティアで行う人を「ライフセーバー」と区別して呼ぶことが多いですが、日本では、区別なく「ライフセーバー」と呼ぶことの方が多いようです。(日本でライフガードといえば、某エナージドリンクのことを指すことが多いです)

 日本ではライフセーバーは民間資格で、日本ライフセービング協会(JLA)日本赤十字がそれぞれ講習を行い資格を付与しています。

 ひとつの資格というよりも、人命救助に関するさまざまな知識と技能を持つことが趣旨ですので、あわせて、日本水泳場安全協会、日本救急蘇生普及協会などの講習を受けたりするのが一般的です。

スポーツ競技としてのライフセービング

 また、ライフセービングはスポーツとしても行われています。ライフセーバーがより早く正確に救助するためのスキルアップのレースが、スポーツにまで発展して、競技になっているのです。欧米で盛んで、なんと、オーストラリアではライフセービングは国技にもなっています。

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▲スポーツとしてのライフセービングのなかのレスキューチューブ競技。

 砂浜で旗をとるスピードを競う「ビーチフラッグ」も、もともとライフセービングの競技のひとつです。

 ライフセービングの競技メニューのなかに、レスキューチューブを使ったレースももちろんあります。まず溺れる人の役がスタートするところからレースははじまります。溺れ役がポイントに到着すると、ライフセーバー役が、レスキューチューブをもって海に飛び込み、救助に向かい、戻ってくるスピードと正確さを競うのです。

 ライフセービング競技は、日本でも近年盛んで、小学生のうちから慣れ親しんでいる人も少なくありません。スポーツを通して、レスキューチューブの使い方や救助の方法を学ぶケースもあるわけですね。

 

素人がレスキューチューブを使うとどうなる?

 ライフセーバーやライフガードの資格は、日本では公的資格ではないため、逆に言えば、資格を持っていない人が、レスキューチューブを使って救助活動・救命行為を勝手に行っても法的な絡みはとくにありません

 かといって、ライフセーバーの資格がない人が、無闇に持つものではありません。でも、たとえばシーカヤックやSUPが趣味の人が、いざというときのために船やボードに、レスキューチューブを積んでおくというのは、ぜんぜんありだと思います。

 米国では、むしろ、レスキューチューブを誰もが使えるようにしよう、という流れになっています。ハワイやフロリダのビーチでは、レスキューチューブをかけたポールが、ビーチにずらっと設置されています。近くにライフセーバーがいない時でも、機転をきかせて救助に使えるようになっているわけでね。

 ちょうどAEDのように、誰でも使える救助機器として設置されているわけですが、日本でも今後このようなスタイルで普及してくる可能性もあるでしょう。

▲フロリダのココアビーチに常設されたレスキューチューブ。

レスキューチューブの素材と浮力

 さて、レスキューチューブの使い方についてひととおり説明しましたが、もうすこしだけ、「浮力」についての知識を学んでおきましょう。

レスキューチューブの素材

 レスキューチューブはエンソライトと言う素材でできています。エンソライトは、小さな気泡の粒を中に閉じ込めてある合成樹脂です。クローズドセル(独立気泡)とも呼ばれています。

 断熱効果もあることから、テントのシートなどに使われることも多い素材ですが、その柔軟な弾力性と浮力を利用して、レスキューチューブが開発されました。

レスキューチューブの浮力

 レスキューチューブは大人ふたりがつかまっても沈まないことを想定して設計されています。浮力は製品により変わるようですが10kg〜20kgほどあります・・・と言ってもピンとこないと思いますので、少し浮力についてイメージできる解説をしてみましょう。

 たとえば空気が詰った1.5リットルのペットボトルの浮力は1.5kgとなります。

 ライフジャケットの規格は浮力が7.5kg以上と定められています。いいかえれば、空気を入れキャップをしっかりしめた1.5リットルのペットボトルを5本抱えていれば、ライジャケと同じ浮力になるため、まず水に沈んでしまう危険はないわけですね。

 水の事故を防ぐのに必要な浮力は、体重の10%がひとつの目安とされています。この理由は、人間の首から上の重量が、体重の8%〜12%だから、そのぶんの浮力のものを持っていれば、それ以上は沈まない、ということなのです。

 もうひとつ浮力の考え方として、以下のような計算で、人間が浮くために必要な浮力を求めることができます。

 まず、人間の体内の80%は水ですので、水は水のなかでは重量はもちませんので、仮に体重100kgの人でも、まず80kgは除外できます。さらに、人間の体の15%は脂肪で、これは水よりも軽い性質をもっているので、この15%も除外します。つまり100kgの人でも80kgは水、15kgは脂肪分ですので、それを除外するとわずか5kgだけとなります。

 つまり、5kgの浮力さえあれば、体重100kgの人でも沈まないという理屈が成り立つのです。(あくまで理屈のうえですが)

 レスキューチューブの浮力は10kg〜20kgありますので、体重100kgの人がふたりつかまっても大丈夫、ということなのですね。

 以上のことから、案外ちょっとした浮力のものがあれば、人は浮いていられるということがわかると思います。

 たとえば体重30kgの小学生であれば、1.5リットルの空のペットボトルでも、沈まないだけの浮力となるわけです。

 これはあくまで理屈上の話ですが、とりあえずちょっとしたものでも浮力として役に立つわけです。ですので、溺れかけている人を発見した場合は、まず何よりも、とりあえず浮力がありそうなものを投げて、つかまれるようにすることが、効果が高いということを覚えておきましょう。

最新のレスキューチューブ

ボード的に使えるレスキューチューブ

 レスキューチューブも日進月歩で、最近は少し大型のレスキューチューブが新しいスタンダードとなりそうな感じです。

 従来の棒状のものより、幅が広く、ボードに近い状態になっていて、遭難者がつかまることができる溝がいくつ付けられています。

 幅が広いので遭難者がつかりやすくボードのようにしても使えるのですが、薄い方を丸めると、体に巻いて浮き輪状にもなります。

▲最新のレスキューチューブは幅広でボードのようにしても使える。

「レスチューブ」は、空気で膨らむ安全浮力体

 「レスチューブ」はレスキューチューブと名前が似ていますが、インフレータブル式(空気で膨らます式)の非常用の浮きです。

 ウェストポーチのなかにコンパクトに収納されているため、シーカヤックやSUPはもちろん、スノーケルやフリーダイビングなどあらゆるウォータースポーツ時に、邪魔にならずに身に着けておくことができます。

 いざという時には、ひもをひっぱれば、膨らんで、ちょうどレスキューチューブのような棒状の浮きになります。

 膨らますのには二酸化炭素カートリッジが使われていて、カートリッジは一回使うごとに交換となります。

 トライアスロン大会などで、公式のグッズとして採用されるなど、今、もっとも急速に広がっているフローティングデバイスのひとつです。

 ライフセーバー以外の人には、レスキューチューブよりも、むしろ「レスチューブ」が要チェックするべきアイテムとなってくるかもしれませんね。

 

 

 以上、レスキューチューブについて、また、溺れている人を救出する際に知っておきたい知識について、まとめて解説しました。

 万が一溺れている人を発見したら、自分がどう行動したら良いか? ふだんからイメージをもっておくと、いざという時に慌てずにすむと思います。

 この機会に水難救助の知識を深めて、楽しく安全に海や水辺のレジャーを楽しみましょう!

 

 

【参考記事】海関係なら次の記事も参照になりますよ~!!

⇒「本州・四国・九州の近場に案外あるサンゴのシュノーケルポイント」

⇒「スタンドアップパドルボード(SUP)を安全に楽しむため入門者が知っておくべきこと」

⇒『シュノーケルの安全な使い方と練習のコツ』

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