台風の気圧の見方。気圧が低いときに注意するべきことは?

      2018/09/28

台風の気圧

 台風の強さをチェックしたいとき、中心気圧で、だいたいの強さを知ることができます。

 よく台風情報などで、「中心気圧は930ヘクトパスカル…」などと出てきますが、930hPaが、台風として、強いのか?弱いのか? いまひとつピンとこないと思います。そこで、この記事では台風と気圧の関係について説明していきます。

 また、気圧が低いことによっておきる重大な災害についても最低限知っておくべきことを述べています。

 なお、台風の強さは正式には、気圧ではなく、風速でランク付けされています。風速と台風の強さについてはこちらの記事⇒「台風の強さの段階と基準」にも目を通しておいてください。

気圧とは? 低気圧で天気が悪い理由

 そもそも気圧とは、なんでしょうか? 気圧は、水圧などと同じような重さの圧力がかかることです。気圧とは、「大気の重さ」と考えてもいいでしょう。

 大気圏のなかには、空気が濃ゆく集まっているところと、空気が薄いところがあります。空気が薄いところは、それだけ空気の量が少ないので、軽くなり、低気圧となります。

 低気圧の部分には、空気が濃い高気圧から空気が流れ込んできます。風が、高気圧から低気圧に向かって吹くのと同じ原理です。

 低気圧へと流れこんだ空気は、上昇気流となって低気圧の上へ上へと集まっていきます、やがてそれが雲となり、雨が降ります。台風も基本的にいえば同じような仕組みで、上へ向かう上昇気圧が積乱雲をかたちづくり、その積乱雲が集まって台風へと発展します。(積乱雲について詳しくは、⇒「積乱雲と入道雲、バックビルディング型降水帯の基礎知識」の記事もごらんください。)

 また、気圧は、大気中の高度を表すのにも使われます。高いところへ行けば行くほど空気が薄くなるので、気圧が下がります。

 特に気象予報で重要なデーターとなるものに、「高層天気図」があります。高層天気図は、850hPa、700hPa、500hPa、300hPaなどの各気圧が、高度何mにあるかという等高線が描かれたもので、高層の天気の状況を記したものです。これらの情報を地上の天気図と重ね合わせることで、大気の状態を立体的に把握して、天気予報が行われているのです。

 以上のように、「気圧」とは、大気の状態を知る基本となるもので、天気予報では欠かせないパラメーターなのです。

スポンサーリンク

気圧の低さで台風の強さは分類できる?

 さて、台風と気圧の関係ですが、気圧が低いほど、台風の力は強い、ということは言えます。

 しかし、何ヘクトパスカル以下なら強くて、何ヘクトパスカルなら弱いという、はっきりとした境界はありません。気圧は、あくまで、周囲の気圧との差が重要で、気圧が低くても周囲の気圧も低ければ、勢力は強くならないからです。

 ですので、台風の強さの定義は、中心気圧ではなく中心付近の最大風速をもとに決められています。なので、気圧で何ヘクトパスカル以下が熱低とか台風というふうにはなりません。

 それでも、今までの統計からみて、気圧と台風の勢力について、おまかに、分類することはできます。下の表が、気圧と台風の勢力を表したものです(注意;あくまで目安で正確な定義ではありません)

気圧と台風の勢力の目安
台風の強さ 中心気圧の目安
弱い 990hPa以下
ふつう 960~990
強い 930~960
とても強い 930以下

最も低い気圧を記録した台風は?

 それでは次に、低い気圧の記録を見ていきましょう。

 観測史上最も低い気圧を記録した台風は1979年の台風20号で、発生後9日目で沖ノ鳥島付近で、中心気圧870hPaまで低下しました。

 上陸した台風では、上陸時点での気圧が最も低くかったのが1961年の台風第18号で、高知県室戸岬で911hPaを記録し、この台風は「第二室戸台風」と名前がつくほどの猛威をふるいました。

 ところで「上陸」の定義には、沖縄や奄美地方の島を通過した台風はふくまれません。沖縄や奄美での観測データーをふくめた国内の最低気圧台風の記録は、1977年の台風9号(沖永良部台風)で沖永良部島で907hPa、二位は1959年の台風14号(宮古島台風)で908hPaとなっています。

 沖縄では910hPa台の台風は珍しいことではないようですね。910hPa近くまで下がると、気圧の急激な低下で、めまいがする、酔いが良く回わる、鼻水が出る、頭が痛くなる、虫歯が痛みだすなど、体調の変化がおきる人も多いようです。

気圧が低いことでおこる災害に注意

 さて、台風の気圧が低い場合、気圧の低さが直結する災害があります。

 それが「高潮」です。

 海の潮位は、月の引力によって基本生まれていますが、気圧によっても潮位は変化します。

 気圧が1hPa下がると海面が1cm上昇すると言われています。

 高気圧におおわれた夏の気圧は1100hPaくらいです。そこに、930hPaの台風が来た場合、170hPaの差がありますから、海面が170cm上昇することになります。低気圧による海面上昇は最高で280cmという記録もあります。

 これが、満潮時と重なれば、津波のように海が陸に押し寄せて来ます。

 さらに入り組んだ湾のようなところでは、台風の風で、波がかき集められるようになり、海岸の防波堤を越え、一気に押し寄せてきます。

 高潮災害が起こる可能性がある地域には、ハザードマップなどが用意されています。高潮の恐ろしさを知り、しっかりと対策し、場合によっては早めの避難をすることが大事です。

高潮の危険がある場合の避難については、こちらの記事「台風の高潮災害の避難」についての記事も参照してください。

 

 以上、台風の気圧について見てきました。

 台風の強さとの関係は、気圧が低いほど台風は強くなるが、あくまで目安であること、また気圧が低いために起こる高潮に注意が必要だということを、しっかりとおさえておいてほしいと思います。

 また、台風接近時に、正確で最新の台風情報を得るためのポイントについてまとめた記事⇒「最新の台風状況や現在位置を正確に知るには」にも、ぜひ目を通しておきましょう。

スポンサーリンク

 - 台風