防災公園とは? 一時避難所や広域避難場所の違いも知っておこう。
2018/08/04
防災公園は、大都市が災害にみまわれた時、人々を助けてくれる施設です。
ふだんは憩いの場として、ふつうに遊んだり、スポーツしたり、BBQやったりできる公園だけれど、災害時には、避難場所や救援活動の拠点となるのが防災公園。
この記事では、防災公園の果たす役割や、防災公園ならではの珍しい施設、そしてその活用方法につて、述べていこうと思います。
災害になる前に、ぜひ知っておきたい防災知識ですのです、いまのうちに目を通しておいてください。
「防災公園」は身近に案外たくさんある
防災公園といえば、関東の人なら東京ベイエリア有明の『東京臨海防災公園』、関西の人なら神戸市の『三木総合防災公園』など、有名な防災公園を思い浮かべる人も多いでしょう。
もちろん、これらの「~防災公園」と名のついている公園は、災害の時の防災主要拠点となる代表的な防災公園です。
ですが、「防災公園」と名が付いていない普通の公園にも、防災機能が備えられたり、災害時の活用方法が定められています。つまり、「防災公園」と名前が付いていなくても、事実上「防災公園」として位置づけられている公園が多数あるわけです。
むこう30年以内に70%の確率で起こるとされる、南海トラフ・相模トラフなどの大地震に備えて、国や各自治体が、防災公園の整備を積極的に進めています。
各地で増えてきている防災公園ですが、災害時には、どのような役割を果たすのでしょうか?
公園が火災や水害から守ってくれる
防災公園が火災時に果たす役割
公園は延焼を防ぐ
公園が防災に役立つポイントはいくつもありますが、まずはじめにあげておきたいのが、火災から、街や人々を守ってくれることです。
とくに都市部では、震災の時に同時に火災が発生することは避けられないことです。
そこで大都市では、延焼(えんしょう)を防ぐため、建物にいろいろな防火施設や延焼防止対策が義務付けられています(詳しくは⇒「防火シャッターや防火戸」の記事を参照ください)。
そして、公園は、延焼を防ぐための空間として、重要な働きをします。都市の防災の点からみれば、公園は絶対にかかせない防火施設とも言えるのです。
たとえば、30m四方(面積では0.1ヘクタール)の小さ目の公園でも、じゅうぶんに延焼を食い止める力があるとされています。
また、都市部には古い河川や廃線跡を利用した緑道が多くありますが、これらも延焼の防止に大きな役割を果たしています。
火災から避難する場合、安全な公園の広さは?
公園は、火の燃え広がりを防ぐだけでなく、もちろん火災からの避難場所として、災害時に活用できます。
ただし、安全に火災から避難するためには、ある程度の広さが必要です。
たとえば、一方向から炎が迫って来ている場合で、完全に安全を確保するには、1ヘクタール(10,000平米=100m×100m)ほどの面積が必要です。
もし4方向から火の手が迫ってきた場合、安全を確保するには50ヘクタールの広さが必要といわれています。
たいていの場合、一次避難所として、最寄りの小中学校に避難するケースが多いと思います。が、小中学校は2~5ヘクタールほどの広さしかありません。つまりこれは、火災が四方から迫ってくる場合には、火災にまきこまれる可能性があるということです。
このことから、大火災の心配がある時は、一次避難場所である狭い小中学校に長くとどまらないほうが良い場合があります。火災の発生具合や、火の広がり具合によっては、より広い防災公園などの広域避難地に移動する必要があるわけですね。広域避難地に指定される防災公園は、おおむね10ヘクタール(100,000平米=330m×330m)以上の面積があります。国交省の指標では半径2km圏内ごとに広域避難地である防災公園が設置されることが望ましいとしています。
実際に半径2km圏内という細かさで広域避難場所が無いことも多いですが、少なくとも歩いて1時間圏内には、広域避難場所が設定されています。
日頃から、自宅や職場の近くの一時避難場所だけではなく、少し離れたところにある、より大きな広域避難場所(防災公園)についても、場所や避難経路を確認しておきましょう。
狭い避難所で火災から身を守るには?
ところで、さきほど避難地の火災から逃れるための必要面積について、「四方から迫る火から安全に避難するには50ヘクタールが必要」と説明しました。
ところが、50ヘクタールというのは東京の代々木公園の広さですから、その規模の防災公園はそうそう多くはありません。
防災公園のメインとなるのは10haクラスの広域避難地です。あるいは1haクラスの一時避難地にとどまらなくてはならないケースもあるでしょう。
狭いスペースでは、火災にまきこまれてしまう心配があります。
でも、実は、狭い公園でも、火の手からわたしたちを守ってくれるものが、あります。
それは樹木です。
樹木は、火災になると、樹木中の水分を蒸発させて、自らの周囲にバリアーを作ります。
結果、樹木はかなりの防火能力を発揮します。
樹木のなかでも、とくに水分の蒸発能力が高かったり、油分が少ないことで、「より燃えにくい樹木」があります。
・イチョウ、モクレン、サンゴジュ、アオキ、キリ、、ムクゲ、など
・アオキ、イヌマキ、サンゴジュ、など
防災公園では、こうした燃えにくい樹木を植林することで、限られた面積でも、より安全に火災から避難できる空間を作り出しているのです。
実際に、同じ広さの避難場所でも樹木があると無いとでは、防火能力に大きな差が出ます。
たとえば、関東大震災のときに、緑に囲まれた深川岩崎亭(面積約1.7ha)に避難した2万人が助かったのに対して、そこから2kg離れた同面積の陸軍の工場跡地では3万人以上の方が命を落としています。工場跡地は樹木のない更地(さらち)であったため、防火能力に限りがあったわけです。
なお、広域避難場所に指定された防災公園のなかには、10ヘクタールより狭く、樹木も少ないところもあります。こうしたところは周囲の建物が強い耐火構造になっていて、防火壁のかわりになっています。
水害と防災公園
公園のなかには、水害に対して、防災公園として機能するものもあります。
ふだんは公園ですが、大雨が降ると遊水地として、河川からあふれ出た水を貯め込むことで、住宅地に雨水が流れ込むことを防いでいます。
このタイプの公園で有名なのは、関東では新横浜の日産スタジアム、関西では大阪の深北緑地があります。
また、こうした遊水地タイプの公園でなくても、コンクリートジャングルのなかの公園は、雨水を地中に染み込ませて洪水を軽減するはたらきをもっています。
このように、公園は、水害に対しても「防災力」を発揮するのです。
救援拠点としての防災公園
防災公園の役割のひとつに、広いスペースを活かした「防災拠点」として活かされること、があります。
震災時には、震災発生から数日で、被災者に対する救援活動が本格化してくるケースが多いようですが、そうした救済活動の基地が「防災拠点」です。
消防や自衛隊の救援部隊の駐留、救援物資の集積・配布などの基地として、ヘリポートを備えた広域防災拠点を、人口が50万人〜150万人あたりに一箇所、設置することを目標と定めています。たとえば東京なら人口が約1400万人として、十数箇所の広域防災拠点が定められています。
防災公園の代名詞でもある東京臨海防災公園・そなエリア東京(13ha)は、広域防災拠点のモデルとなる国営の防災公園です。映画の撮影に使われたことでも有名なオペレーションルームは、首都震災時には、緊急災害現地対策本部がおかれ、首都圏の救援・復旧作業の拠点となります。
また、首都圏の拠点としては、川崎市の「扇島東公園(15ha)」は、もともと周囲に食品会社や食糧倉庫が密集している地域であるため、救援物資の流通拠点としての役割がある防災公園です。
東京都 | 東京臨海防災公園(そなエリア東京) | 13ha |
神奈川県 | 東扇島公園 | 15ha |
名古屋市 | 稲永公園・稲永東公園 | 47ha |
京都府 | 山城総合運動公園 | 108ha |
大阪府 | 久宝寺緑地 | 38ha |
兵庫県 | 三木総合防災公園 | 202ha |
このように各自治体ごとに救援や、復旧の拠点として、防災公園が整備されているのです。
防災公園のライフライン設備
ライフラインの復旧までどれくらいかかる?
防災公園のもうひとつの機能として、災害後にライフラインを供給する、という役割があります。
上水道・下水道・電気・ガスのライフラインは、震災時には復旧までかなりの日数を要します。
阪神淡路 | 東日本(岩手・宮城・福島) | |
上水道 | 42日 | 120日 |
電気 | 6日 | 100日 |
ガス | 84日 | 84日 |
下水道 | 194日 | 194日 |
電話 | 14日 | 14日 |
上記は、阪神淡路と東日本の時のライフラインの復旧までにかかった日数ですが、首都圏を襲う震災の場合は、さらに日数がかかる可能性があります。
そこで、ライフラインが途絶えた状況下で役に立つ設備が、防災公園にはそなえつけられています。いくつか例を見てみましょう。
防災公園に備え付けられた防災グッズ
かまどベンチ
かまどベンチは、防災公園を象徴するアイテムです。平時はただのベンチですが、災害の救援活動時ににはベンチの土台部分が、炊き出し用の大きな鍋を置くための「かまど」となります。
阪神や東日本の教訓から生まれたアイテムですので、災害時にはとても重宝する仕組みです。
最近は防災公園だけでなく、マンションの敷地などにも備えるところが増えてきています。
マンホールトイレ
災害時にはトイレが不足する問題も深刻です。避難所に集まった人たちでごったがえして、もともとの公衆トイレでは間に合わないこと、そして、水洗機能が使えなくなる可能性が高いことも混乱を招く原因となりそうです。
災害時には、簡易に設置できる増設トイレが必要です。
そこで考え出されたのが「マンホールトイレ」です。下水道のマンホールの上に直接、可動式の便器を設置し、そこにテントを立てて、緊急用の増設トイレとします。
防火貯水槽
災害時のライフラインの断絶で、最も深刻なのが、飲料水です。防災公園には、100tクラスの飲料水を備蓄しておく耐震性貯水槽を設けて、飲料水を確保しているところがあります。
飲料水用の貯水槽は上水道の菅が太くなっている形状で、ふだんは常に新鮮な上水がタンク内を通過しています。地震を感知すると自動で弁が閉まり、上水を備蓄できる仕組みになっています。
一方、井戸が整備されているところもありますが、井戸水は、とくに災害時には飲料水としてそのまま使用できないと考えるのが無難です。
飲料水用の貯水槽は、どの防災公園にあるわけではないので、やはり、飲料水に関しては、防災公園などの備蓄に頼るのではなく、家庭の備蓄品のなかにミネラルウォーターを充分な量おいておくこと、あるいは非常袋のなかに浄化装置を入れておくなど、自助の努力が必要となりそうです。
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そのほかにも、防災公園には、発電装置、備蓄燃料、防災パーゴラ(あづま屋やパーゴラがテントとなり、救護施設などとして使える機能)、ゲートシャワー(火災からの避難者の身体を冷却したり延焼を防ぐ機能)などが整備されています。
こうした防災公園に特有の装備を、災害時に正しく使いこなせるよう、防災公園でおこなわれる避難訓練には、積極的に参加するのが望ましいといえそうです。
ここまで見てきたように、防災公園には、
●火災から身を守る
●救援基地や物資流通拠点
●ライフラインの供給
といった役割で、わたしたちを災害から守ってくれます。
自宅や職場の近くの防災公園の状況について、日頃から確認しておくことが、災害時にかなり役に立つことをイメージしていただけたのではないでしょうか?
近くの防災公園の状況を把握して、防災力を高めておきましょう。