萩の花の名所14ヵ所と、秋を代表する花木、萩(ハギ)の基礎知識

      2018/09/25

萩の名所

 萩(ハギ)は、秋の七草にも数えられている、日本の秋を代表する花木です。

 しかし、現代ではあまり目立つ花ではありません。たとえば桜とか梅とかにくらべると、あきらかにマイナーな立ち位置になってしまっています。

 この記事では全国の有名なハギの名所を紹介するとともに、日本人と萩のかかわりの歴史についてみていきます。

 古くから日本人に愛されてきた萩の魅力を再発見してみましょう。

萩の花の楽しみ方

萩の美しさと風情に触れてみよう

 萩は、マメ科のハギ属の総称です。日本には、20種類ほどのハギの仲間があり、さらに園芸用に選抜改良された品種もあります。

 もともと日本に自生している種類は8種類ほどで、なかでも代表的なものはヤマハギです。

 秋の七草だったり、万葉集に詠まれているのも、このヤマハギだとされています。(萩の品種について詳しくは⇒「萩の種類」の記事を参照してください)

 ハギは、野趣あふれる可憐な花を8月~9月にかけて咲かせます。

 緑の小葉をレースのようにつけた枝が、しんなりと枝垂(しだ)れています。晩夏~秋には蝶型のマメ科特有の小さな花をさかせます。花色は紅紫ベースで、桃色や、白ものもあります。

 緑に混じる小さな花のつつましさと、次々と花が咲いてくるたくましさを兼ねそなえています。花は小さいながら存在感のある形と色あいです。遠目から見ても、近づいてしっかり見ても、どちらでも楽しめる花です。

 枝垂れた枝がたゆたう姿、そして、小さな花が一面に散っている様が、なんとも秋を感じさせる風情です。

 日本を代表するほかの花木…椿、梅、桜、皐月、藤などにくらべると、だいぶ渋めで派手さはありませんが、そのぶん、暑さを収めて秋へ向かう、落ち着いた雰囲気の季節感にマッチしているともいえるのでしょう。

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▲見直したい萩の魅力。日本の秋を代表する花木の実力。

日本の秋と萩

 万葉集に読まれたハギのうたは138首とされ、万葉集のなかで最も多く歌われている花が、萩なのです。その後も和歌や俳句の題材として、愛され続けてきました。

秋風は涼しくなりぬ馬並めていざ野に行かな、萩の花見に(万葉集・詠み人知らず)

草枕旅行く人も行き触(ふ)ればにほひぬべくも咲ける萩かも(万葉集・笠朝臣金村)

宮城野のもとあらの小萩露をおもみ風を待つごと君をこそ待て(古今集・詠み人知らず)

しら露もこぼさぬはぎのうねりかな(松尾芭蕉)

白萩のしきりに露をこぼしけり(正岡子規)

 歳時記ではもちろん秋の季語になっていますが、ハギといえば花札の絵柄を思い浮かべる人もいるかもしれません。

 花札の「萩と猪」は、初秋である7月のカードになっています。

 萩は、猪が寝床にすることが多いことから、萩と猪の組み合わせになっています。

 また、古くからの定番の意匠(デザイン)では「萩と鹿」の組み合わせも、とても趣があるもので、かつて、日本の山野ここかしこで見られたであろう純和風のアウトドア風景を今に伝えるものといえるでしょう。

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萩の花を見るには? 萩の名所14箇所

 さて、萩の花は、都会住みの人には、いまでは、あまり目にすることのない花かもしれません。都市部では、お寺の境内や、庭の片隅などにひっそりとあるくらいです。

 ところが、ちょっと郊外に行けば、ハギの姿を目にすることができます。ハギはマメ科の樹木なので、生育は旺盛です。あるところには雑木・雑草的な雰囲気で生えているのです。

 萩が多いのは、河原、畑の周囲、ダムや湖の周囲、里山の雑木林の入り口、登山道際、などです。少し郊外にでかけて、秋の訪れを告げる花を探してみましょう。

 もともとハギは、パイオニアプランツで、山を切り開いた後とか、山火事の後に、まっさきに生えてくるタイプの植物です。ですから、山林と里が接する林縁(りんえん)部には、よく自生しています。どちらかといえば田舎では、雑木雑草に近い、繁殖力の強い植物なのです。

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▲ハギは郊外に行けば見つけられる。草原に自生するマルバハギ。

 さて、少しアウトドア的に動けば一気に身近になるハギの花なのですが、やはり、ボリューミーに庭や公園で植えられている、いわゆる「名所」のハギは、野生のものとはまた違った趣を見せてくれます。

 名所では、ふりつもる萩の花吹雪だたっり、いろいろな種類のハギの花の色合いや風合いの違いを楽しんだりと、奥の深い楽しみ方ができます。

 そんな萩の名所を、以下にまとめてみました。

仙台市野草園

●見頃時期:9月上~下
●所在地:仙台市太白区 ●アクセス:JR仙台駅よりバス20分、東北自動車道仙台南IC8km

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仙台は、「みやぎの」が萩の枕詞として使われていたほど、古来からの萩の名所とされて知られていました。それにちなんだ「ミヤギノハギ」という改良品種が宮城県の県花にもなっています。仙台郊外の大年寺山麓にある仙台野草園には1300株の萩。萩のトンネル、萩の道、萩の滝など萩の見せ方もなかなか。9月中~下旬の「萩まつり」期間中は野点や琴の演奏など。

はぎ公園

●見頃時期:8月下~9月中
●所在地:山形県長井市 ●アクセス:山形鉄道長井駅徒歩15分、東北道山形上IC40km

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ヤマハギ、シロバナハギ、ミヤギノハギなど7種2万本が咲き誇る萩の道。白、薄紫、紅紫と繊細なバリエーションの萩の花を楽しめます。旅館「はぎ苑」が管理しているので、卯の花温泉萩の湯の日帰り温泉とセットで楽しむのがおすすめです。

向島百花園

●見頃時期:9月中~9月下
●所在地:東京都墨田区 ●アクセス:東武伊勢崎線東向島駅徒歩8分、京成曳舟駅より徒歩13分

都会の真ん中の1万平米の敷地の山野草や梅が有名な公園。晩夏から初秋は前長30mの萩のトンネル。9月中旬の萩祭では野点や新内流しや句会など。

大悲願寺

●見頃時期:9月中~10月上
●所在地:東京都あきるの市 ●アクセス:五日市線武蔵増戸駅徒歩20分

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古くから白萩に埋め尽くされる名刹。伊達政宗がこのお寺を訪れた時、白萩に感動し、宮城に戻ったあと白萩の株を分けてほしいと申し出た「白萩文書」が残っています。

海蔵寺・宝戒寺

●見頃時期:9月~9月下
●所在地:神奈川県鎌倉市 ●アクセス:JR鎌倉駅徒歩15~20分

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鎌倉で萩の寺として知られるのは宝戒寺と海蔵寺。海蔵寺は山門に登る石段の両脇に植えられた赤と白の萩が、おおいつくすように咲き誇ります。萩をかきわけながら石段を上る。宝戒寺は北条氏にまつわる寺院で本堂の横の大きな白い萩が有名です。

蓮華寺(れんげじ)

●見頃時期:4月~10月
●所在地:静岡県森町 ●アクセス:天竜浜名湖鉄道遠州森駅徒歩15分、東名袋井IC8km

遠州の小京都と呼ばれる森町の古刹。萩の品種が豊富で、4月から開花する千代萩など15種類3000株。見頃ピークは秋のお彼岸ごろで、9月第三日曜は萩まつりで野点や琴演奏。

神照寺(じんしょうじ)

●見頃時期:9月上~下
●所在地:滋賀県長浜市 ●アクセス:北陸本線長浜駅よりバス、北陸道長浜ICより

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参道~境内に群生する約2万本の萩は、室町時代から植えられているもの。国宝や重要文化財もある真言宗智山派の古刹。

常林寺

●見頃時期:9月中~下
●所在地:京都市左京区 ●アクセス:京阪出町柳駅すぐ

京都でも有名な萩の名所である常林寺は、鴨川沿いにあるため砂地で萩の生育に向いているようです。境内を埋め尽くす萩は見事です。敬老の日には「萩供養」があり、萩の写真コンテストが開催されることも。

梨木神社

●見頃時期:9月中~下
●所在地:京都市上京区 ●アクセス:地下鉄烏丸線今出川駅徒歩5分

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萩の宮と呼ばれ、境内に500株の萩がうわる京都を代表する萩の名所。毎年九月のシルバーウィークには、萩まつりが盛大にもよおされ、句会や芸能の奉納など。

真如堂

●見頃時期:9月上~10月上
●所在地:京都市左京区 ●アクセス:京都駅からバス5系統真如堂前下車徒歩10分

 四季折々の花で有名な真如堂。初秋を告げる萩も境内に100株ほど植えられていて、三重塔を背景に咲く風景が人気です。

百毫寺

●見頃時期:9月中~下
●所在地:奈良県奈良市 ●アクセス:JR奈良駅より市内循環バス高畑町下車20分

石段を覆うような萩。散った花が石段を埋め尽くす様もまた見事。樹齢400年の五色椿でも有名なお寺です。

東光院萩の寺

●見頃時期:9月上~10月上
●所在地:大阪府豊中市 ●アクセス:阪急宝塚線曽根駅徒歩4分、名神豊中IC10分

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大阪みどりの百選にも選ばれた三千株の萩園「萩露園」がある萩の寺。9月23,24日は、萩まつり道了祭があり野点や芸能の奉納も。正岡子規が萩を句に詠んだことから、句碑があり、子規への供養祭もおこなわれます。

高照寺

●見頃時期:8月下~9月下
●所在地:兵庫県養父市 ●アクセス:JR八鹿駅バス15分徒歩10分、播但道和田山IC15km

芸術肌の住職が丹精こめて管理するモクレンが有名なお寺だが、初秋はハギで埋め尽くされます。9月第三日曜は白萩祭。

萩原寺

●見頃時期:9月中~下
●所在地:香川県観音寺市 ●アクセス:JR観音寺駅タクシー16分、高松自動車道大野原IC12分

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30種類2500株の萩の花。弘法大師に開かれた仏教興隆の拠点となった寺院。

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萩と伝統工芸

 萩は、観賞して秋の訪れを感じさせてくれるだけでなく、生活に身近なぶん、いろいろと利用されてきた植物です。

 まず、定番なのは花簪(はなかんざし)。今でも舞妓さんは秋には萩のかんざしで飾ります。

 また、萩には、邪気を払う力あるとされ、宮中では、節句の行事で用いるための箸を作っていました。

 萩の枝は枝垂れていて、草のようにやわらかいイメージですが、乾燥させるとなかなか強くなります。

 箸よりも、ポピュラーに利用されたのが「筆」です。

 豊臣秀吉の側室・秀吉の側室・淀君が大阪豊中市の東光院の萩に魅せられ、萩の枝で筆を作った、と伝えられています。

 また、仙台の伝統工芸として、今なお人気があるものに、萩の木を軸にした筆があります。宮城野萩筆と呼ばれるこの筆は、名君・伊達政宗が興したビジネスが今に続くものです。

 もともと仙台にある狩場であった宮城野(みやぎの)は、萩の美しいところとして全国に知れていました。萩の枕詞(まくらことば)が宮城野とされるほど、いえば、仙台の名物の花が萩だったのです。

 ここに注目した伊達政宗は、萩の枝で筆を作ることを思いつき、京都から筆職人を呼んで、宮城野萩筆を作った、とのことです。

 ちなみに、萩の品種で「ミヤギノハギ」というのがあり、これも仙台の宮城野にちなんで名付けられたものですが、実際には、宮城野に自生していた萩は別な品種だっと考えられています。萩の種類については、詳しくは、⇒「萩の種類」の記事を参照してください。

 

 

 以上、日本の秋を代表する萩の花について、その魅力や名所を紹介してきました。

 ノーチェックだった萩の花が、あなたの季節の一ページにくわわったのではないでしょうか?

 今年の秋は、逃さず、萩の花を楽しみましょう。

  

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