花木(かぼく)の種類と名前。開花時期や香りと特徴・86種一覧

      2019/03/17

花木の種類

 樹木のなかでも、とくに花が美しく見ごたえあるものを「花木(かぼく)」と言います。

 日本の気候は、花木が育ちやすい環境です。多くの花木が山野に自生し、梅・桜・皐月(さつき)・椿などなど、花木は、古くから日本人の生活文化に欠かせない存在です。

 とはいえ、「木や花の名前とか、ぜんぜんわからない…(汗)」という人も多いでしょう。

 そこで、この記事では、無数にある花木のなから86種をピックアップし、さらに特徴あるグループに分類しながら、花木に入門できるよう、情報をまとめました。この記事にひととおり目を通せば、まったくわからなかった樹木と花のことが、見えてくるはずです。

【参考記事】
雑木林や原生林の樹木については、
⇒「山にはえてる広葉樹の種類と名前」
の記事もぜひ参照ください。

花木とは何? 反対語は草花? その魅力は?

 花木(かぼく)とは、花が綺麗で庭や公園など植栽され利用されている樹木のことを指します。

 「花木」に対する言葉は、「草花」や「生花」になるでしょう。ガーデンに植える草花や、花束などに使う切り花と、樹木に咲く花とを、区別する時に使われる言葉です。(切り花・生花については⇒『代表的な切り花の種類』の記事も参照)

 植物には木と草、つまり木本(もくほん)草本(そうほん)があります。

 木本は、堅い幹の形成層を作りながら年ごとにどんどん太くなっていく植物です。

 一方、草本は、茎は一定以上太くなりません。基本的に草本は、1年で枯れてしまうか、多年草でも寿命が2〜3年ほどです。ガーデンで草花を楽しもうと思ったら、毎年、植え換えが必要です。

 寿命の短い草花に対して、木は、何年も何十年も生き続けるものなので、一度植えてしまえば、毎年時期になると、花を咲かせてくれます。

 このように、草本の花と花木の最も大きな違いは、植え替えが必要な草花に対して、花木は一度植えれば毎年咲いてくれるところです。もっとも、花木の開花には剪定などの手入れが必要なこともあったり、数年おきにしか開花しな種類があったりもしますが、原則、毎年毎年同じ時期に自然に花を咲かせて、時の移ろいを知らせてくれるのが花木なのです。花木が身近にあるだけで、季節をしっかりと感じさせてくれ、日常のなかにメリハリを与えてくれます。

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▲花木といえば、まず「ハナミズキ」が思い浮かぶ人も、最近では多いであろう。

 また、草よりも樹木の方が植物体が大きいので花の咲く量も大量になります。ガーデンの草花や活けた切り花では、一輪一輪を鑑賞しますが、花木の場合、何十何百という大量の花を、全体で大きく捉えて鑑賞することが多いです。このダイナミックさが花木の魅力のひとつです。

 花木と草花で、香りの感じ方も若干違ってきます。

 草花は花に顔を近づけて香りを嗅ぐようなイメージですが、花木の場合は、花の量が大量ですので、あたり一面その花の香りに包まれます。香りをたっぷり満喫できるのも、花木の特徴です。

 草花に比べると、花木の方が目線が高くなるのも大きなポイントです。花木のなかでも、低木・小高木・高木と樹木の大きさは1m以下のものから20mを超えるものまでさまざまですが、草花は見下ろすかたちなるのに対し、花木は、目線の高さか、あるいは見上げるようにして見ることになります。伝統的な茶庭などでは茶室から見える風景のなかで花木が効果的に活かされています。

 もうひとつ、とくに冬〜早春に咲く落葉樹の花木には、葉より先に花をつけるものが多く、すべてが花に覆われた樹木を見ることができます。桜(ソメイヨシノ)・梅・桃・モクレン・ロウバイなどがこのタイプになります。

 このように、花木には、草花とは違った魅力や鑑賞のポイントがあるわけですね。

花木の特徴とは?

・毎年、花が咲くことで季節を感じられる

・香りが強いものが多い

・樹全体が花でおおわれ、ボリューム感がすごい

・庭の花木は室内からも鑑賞しやすい

 では、次に、数ある花木の種類や名前を、把握しやすいように、いくつかのテーマごとに分けながら、代表的な花木について見ていきましょう。

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これだけはおさえておきたい代表的な花木

春を告げる花木

バラ科:ウメ、サクラ、ヤマザクラ、モモ、ボケ、スモモ、アンズ
モクセイ科:レンギョウ、オウバイ
ミズキ科:サンシュユ
ジンチョウゲ科:ミツマタ
マンサク科:マンサク、トサミズキ
マメ科:ギンヨウアカシア(ミモザ
ロウバイ科:ロウバイ
モクレン科:コブシ、モクレン
ミズキ科:ハナミズキ

 春を告げる花木としては、梅・桜・桃がまず思い浮かぶでしょう。いずれもバラ科サクラ属の花木で白・桃色・赤の5弁の花を咲かせます。ウメ、モモ、ソメイヨシノなどは葉が出るより先に花が咲いてくるため、木が花で覆われるのが特徴です。同じくサクラ屬に、果樹のスモモアンズがあり、こちらも同様の咲き方をし、地域によっては春には欠かせない花木になっています。またバラ科のボケ(木瓜)も、花先の咲き方で春の訪れを告げてくれます。

▲ボケ(木瓜)も、梅や桜とならぶ、伝統的な春を告げる花木。

 春先の花木は黄色い花が多いのも特徴です。それぞれ科は違いますが、ロウバイ、オウバイ、マンサク、サンシュユ、ミモザ、ミツマタなどが、冬〜3月頃の早春に開花します。これらも葉より先に花が咲くタイプです。春先に黄色い花が多い理由は定かではありませんが、春先にいち早く活動し花粉を媒介するハエやアブにアピールしやすくするためだと考えられています。

 また、紅紫のモクレンも花が先に咲く春の花の代表で、「北国の春」の歌でも有名な近縁種のコブシは花と葉が同時です。歌といえば、ハナミズキも桜に入れ替わるようにして咲く春の花木です。

なお、早春の花木については、こちらの記事⇒『花梅の種類と実梅との違い』⇒『ロウバイの種類と香り』⇒「山桜の名所と基礎知識」
も参照してください

▲早春に咲く黄色い花木は多い。サンシュユ(春黄金)もそのひとつ。

ツツジの仲間

ツツジ科ツツジ属:サツキ、ツツジ、ミツバツツジ、シャクナゲ
ツツジ科アセビ属:アセビ
ツツジ科ドウダンツツジ属:ドウダンツツジ
ツツジ科スノキ属:ブルーベリー

 ツツジは春〜初夏を代表する花木です。庭や公園や街路樹や寺社などに多数植えられ、濃い緑の葉とコントラスとで咲く白・ピンク・紫の花は、春の花木のイメージそのものです。とくに和式の庭園では、サツキ・ツツジ・シャクナゲの各品種を丸く刈り込んで、美しい花のタペストリーを作り出しています。サツキとツツジはは分類学上は同じ種類なのですが、園芸では下の表のように区別されます。シャクナゲは花びらがフリル状になり数個の花がまとまって花序を作りながら咲きます。(ツツジについて詳しくは、⇒「野生ツツジの種類と時期」

の記事を参照してください)

ツツジ・サツキ・シャクナゲの違い
種類 開花時期 葉の特徴 落葉
ツツジ 4〜5月 柔らかく光沢なし 常緑・落葉
サツキ 5〜6月 硬く光沢あり 常緑
シャクナゲ 4〜5月 光沢あり 常緑

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▲丸く刈り込まれたツツジは日本庭園の定番。写真は東京・青梅市の塩船観音寺。

 ツツジ類はもともと日本の山野に自生するものですが、西洋で改良されたアザレアも含めてたくさんの種類があります。たとえば原種に近いミツバツツジは落葉性で花が葉より一足先に咲きだすタイプ。紫〜ピンクの花が一斉に咲く様子は野趣あふれる花木としておすすめです。

▲山に自生するミツバツツジ。ツツジには常緑と落葉があるがミツバツツジは落葉して花が先に咲くタイプ。

 紅葉で有名なドウダンツツジ、馬が酔うような毒性があるアセビは、ツツジ科ですが、スズランのような壺状の花を咲かせます。意外なことに、ブルーベリーもツツジ科で、アセビやドウダンと同じタイプの花を咲かせるため、花木でも果樹でも楽しめる庭木として、人気です。

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▲ブルーベリーは実だけでなく花も楽しめるツツジ科の花木。

モクセイ科の花木

モクセイ科:キンモクセイ、ギンモクセイ、ジャスミン、ライラック、ブリベット、レンギョウ、オウバイ、アオダモ、ヒイラギ

 ひとくちにモクセイ科といっても多種多様で花の時期や形もさまざまなのですが、特徴ある花木が多いので、花木を覚える時には、まずモクセイ科をおさえておくと、全体の整理がつきやすいですね。

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▲香りが印象的なキンモクセイは、ふだん花木に関心が無い人を振り向かせる。

 モクセイ科には、キンモクセイ、ジャスミン、ライラックと代表的な香りの花木が名前を連ねています。また誰もが知っているオリーブヒイラギもモクセイ科です。オリーブとヒイラギは花のイメージは少ないですが、とても清楚な花を楽しめます。

 庭木のシンボルツリーとして定番のアオダモ(トネリコ)、生垣としてよく植えられているプリペットは、一般には聞きなれないですが、庭木としてはポピュラーで、身近なところに発見できるはずです。この機会に覚えておきましょう。

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▲白いフワフワでとても美しいアイダモの花は、5年おきに咲く珍しいもの。

雑木の花木

エゴノキ科:エゴノキ
ガマズミ科:チョウジガマズミ
アジサイ科:バイカウヅキ
ニシキギ科:ツリバナ
ツバキ科:ヒメシャラ
バラ科:シモツケ
…など

 近年は、日本に自生する樹木をメインにして構成する「雑木の庭」が庭造りのスタンダードのひとつになりつつあります。その土地にあったナチュラルな樹種を選ぶため、メンテナンスも少なくて済むメリットがあります。そんな雑木類にも可憐な花を咲かせるものが沢山あります。

 雑木系の花木で代表的なものにエゴノキがあります。エゴノキは北海道から沖縄まで全国の雑木林のなかによく見られる樹木ですが、かすみのような花や樹形のナチュラルな美しさから庭木のシンボルツリーとして人気です。またツバキ科で夏に花をつけるナツツバキの仲間であるヒメシャラも、雑木の花木として定番です。

(注;厳密に言えば雑木林の樹種はもっと限定的なものを指すことが多いです。詳しくは⇒「雑木林とは?その種類と成り立ち」の記事も参照ください。)

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▲雑木の花木の代表であるエゴノキの可憐でナチュラルな花。

 低木で可憐な花を咲かせる雑木にはツリバナ、バイカウヅキ、チョウジガマズミ、シモツケなどがあります。品種改良があまり進んでいない野生に近いこれらの素朴な花は、自然林を身近に感じさせてくれます。

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▲チョウジガマズミはインパクトのある花木。日本原産でヨーロッパでも改良され園芸品種が生まれている。

蔓(つる)性の花木

マメ科:ふじ
ノウゼンカズラ科:ノウゼンカズラ
バラ科:つるバラ
キンポウゲ科:クレマチス
…など

 庭作りには欠かせない蔓植物にも、花を咲かせ、美しい色彩と心地良い香りを届けてくれるものがあります。蔓系花木は、他の花木に比べて改良が進み園芸品種が多いのも特徴です。

 日本原産でその美しさで世界を魅了するフジ、平安時代に中国から伝わり夏にオレンジの色を咲かすノウゼンカズラは、伝統的に花木として親しまれてきたものです。

 一方で、洋風ガーデンで欠かせないのがつるバラクレマチスです。つるバラもクレマチスもそれだけでひとつのジャンルを確立するほど奥が深い世界です。ガーデニングを追及するには、欠かせない花木といえるでしょう。

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▲洋風ガーデンに欠かせない、クレマチスとつるバラのコラボ。

香りの花木

アカネ科:クチナシ
ジンチョウゲ科:ジンチョウゲ、ミツマタ
モクセイ科:キンモクセイ、ジャスミン、ライラック
モクレン科:モクレン、カラタネオガダマ、オオヤマレンゲ
バラ科:ウメ、ボケ
スイカズラ科:アベリア
…など

 花の香りは、花粉を媒介する昆虫などにアピールするためのものです。切り花用の品種では日持ちを良くするために、香りを減らすような品種改良をしているので、案外香りが少ないものです。(詳しくは⇒『香りのある切り花の一覧』も参照) それに対して、花木は惜しげなくその香りで周囲を充たしてくれます。香りがある品種は多数ありますので、次項の表を参照してください。以下の表のなかから、ぜひ覚えておきたい香りの花木をいくつかピックアップしてご紹介しましょう。

 香りのある花木として、有名なのは、三大香木と言われる、ジンチョウゲ、クチナシ、キンモクセイです。また、三大香花をバラ、クチナシ(ガーデニア)、ジャスミンとする説もあります。

 科別で香りが強い花木が多いのは、モクセイ科(キンモクセイ、ジャスミン、ライラック)、バラ科(バラ、ウメ)、そしてモクレン科です。モクレン科のなでは、バナナの香りがするカラタネオガダマ、日本の山奥に自生するオオヤマレンゲなどが、おさえておきたい香花木です。

 また、公園や屋敷の生垣にもよく使われている小さなトランペット状の花が咲くアベリアも、香る庭木として注目するべき種類です。

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▲香りの良い花木は多いが、カラタネオガダマもぜひ覚えておきたい香りの花木。

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▲生垣などで、なにげよく見かけるアベリアも香りのよい花木。

花木86種一覧表

 ここまで、いくつか特徴のある花木を紹介してきました。もちろんこれ以外にも無数に花木はありますが、既出のものも含めて、ぜひこれだけは把握しておきたい花木を86種類ピックアップし、一覧表にしてみました。

 表のなかで香りがあるものは◎◯で示しています。また樹高の分類方法として、学術的には「低木・小高木・高木」との表現が使われますが、ここではざっくりと「低・中・高」で分類しています。

代表的な花木のリスト
樹木名 落葉または常緑 樹高 花の香り 花期 花色 特徴
春の花木
アオダモ
モクセイ科トリネコ属
3-5月 庭木や公園・街路樹で良く植えられている。野球のバットの材料になる木。
アセビ
ツツジ科アセビ属
3-4月 白・ピンク 庭の低木との定番。アケボノアセビはピンク色の花
カイドウ
バラ科リンゴ属
4-5月 ピンク ハナカイドウと同じ。中国でも楊貴妃を例えるなど美人の代名詞として和風洋風に合う、春の花
カエデ
カエデ科カエデ属
3-4月 白・黄・赤 もみじといえば紅葉のイメージだが、ぶら下がるような赤い可憐な花も魅力
カラタネオガダマ
モクレン科ミケリア属
4-5月 バナナの香りがする花として生垣などに。。紫色の品種もある。
カルミア
ツツジ科カルミア属
4-5月 白・ピンク・赤 五角形の特徴ある花がゴージャスに咲く。アメリカシャクナゲとも。
コブシ
モクレン科モクレン属
3-4月 白・赤 遠目には桜と見違える春の花木。モクレンと近縁種だが花のかたちがまったく違う。
サクラ
バラ科サクラ属
2-4月 白・ピンク 庭木向きの品種としては、マメザクラ、オカメザクラ、ヨコハマヒザクラ、ケイオウザクラ、トウカイザクラ、天の川
サンシュユ
ミズキ科ミズキ属
3-4月 ハルコガネ・アキサンゴとも言われる春の黄色花と秋の赤い実が楽しめ庭木として利用される。
シャクナゲ
ツツジ科ツツジ属
4-6月 白・ピンク・赤 日本の高山が原産で改良された。西洋シャクナゲ(ロードデンドロン)の方が色など豊富ゴージャス。
シャリンバイ
バラ科シャリンバイ属
4-5月 厚い照りのある丈夫な葉っぱに梅のような花。悪環境にも強い木として庭木や街路樹で。
ジューンベリー
バラ科ザイフリボク属
4-5月 6月に収穫できるベリーだが、遠目には、かすみのような美しい花も綺麗で、近年、庭木として人気
ジンチョウゲ
ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属
3-4月 白・紅紫 香りのする庭木の代名詞。枝先にまとまって咲く花はこれぞ花木という感じ。
ドウダンツツジ
ツツジ科ドウダンツツジ属
4-5月 紅葉を楽しめ、刈り込みでいろいろな形ができることで定番の庭木。ツボがぶら下がるような小さな花が咲く
トキワマンサク
マンサク科トキワマンサク属
4-5月 ピンク・白 リボンを結んだような花が株全体に咲く。生垣にも向く。
トサミズキ
マンサク科トサミズキ属
3-4月 春先に枝に、少し白っぽい黄色花が小さな房状になった咲く。ニオイトサミズキ種は香り高い。
ハクサンボク
スイカズラ科ガマズミ属
4-5月 ガクアジサイに似た花木。雑木の庭のネジめとして使われる。
ハナズオウ
マメ科ジャッケイバラ属
4月 赤紫 赤紫の花で株全体が埋まる。豆科特有の蝶形の花。葉っぱはハート形。
ハナミズキ
ミズキ科ミズキ属
4-5月 白・ピンク・赤 花びらはガク。中の黄緑色部分が花。米国では春を告げる花木。
ハナモモ
バラ科サクラ属
3-4月 ピンク モモのなかでも実ではなく、花の美しさを重視して選抜した品種。香りはとても高い。
バラ
バラ科バラ属
5-11月
(四季咲き)
ピンク 花木と言えばバラ。切り花のイメージもあるが、ほんらいは、花木である。ガーデンローズ系のものは香りも強い。
ヒメウヅキ
ユキノシタ科ウヅキ属
4-5月 房状の白い花が枝先につく半ほふく性の丈夫な花。
フジ
マメ科フジ属
4-6月 青紫 長いものでは1mにもなる花房で魅了する日本固有のとても美しい花。世界的に評価も高い。
ボケ
バラ科ボケ属
3-4月 赤・白 日本の花木の代表のひとつでシドミとも呼ばれる。梅や桜のように春を告げる。
ボタン
ボタン科ボタン属
4-5月 ピンク・赤・紫・白 花の王様。春の花だが、園芸では開花時期をコントロールして冬牡丹・寒牡丹を楽しむ。シャクヤクは草本性の近縁種。
ミツマタ
ジンチョウゲ科ミツマタ属
3-4月 黄・橙 和紙の原料としても有名だが、春に咲くぼんぼり状の黄色い花は可憐
ミモザ(銀葉アカシア)
マメ科オジギソウ属
3-4月 黄色のボンボリ状の花を咲かす洋風のシンボルツリー。アカシアの一種。
モクレン(マグノリア)
モクレン科モクレン属
4-5月 薄紅 蘭に似たような特徴ある花と上品な香りが特徴。代表的な春を告げる花木のひとつ。
ヤマザクラ
バラ科サクラ属
3-4月 ピンク・白 花と葉が同時に生えてくる
ヤマボウシ
ミズキ科ミズキ属
4-5月 純白・ピンク ハナミズキに似ているがとがっている花はそうほうへん 常緑タイプも
ユキヤナギ
バラ科シモツケ属
3-4月 枝全体に白い小さな花が咲き枝垂れる低木。
リキュウバイ
バラ科ヤナギザクラ属
4-5月 茶花としてよく利用されている梅に似た花。控え目に開花する
レンギョウ
モクセイ科レンギョウ属
なし 3-4月 4つの十字型の花弁が春の訪れを告げる。葉が出る前に一斉に開花するタイプ。半蔓性
初夏の花木
アジサイ
ユキノシタ科アジサイ属
6-7月 青・紫・白・ピンク 梅雨の花木の定番だが、秋枯れするアンティークカラーも人気。
エゴノキ
エゴノキ科エゴノキ属
5-6月 山野に自生する雑木。房状の純白の花が印象的
エニシダ
マメ科エニシダ属
5-6月 株全体が黄色で覆われる。公園や街路樹などで。
オオオヤマレンゲ
モクレン科モクレン属
5-6月 芳香のあるハスに似た花。奈良県の自生地は天然記念物指定
オトコヨウゾメ
スイカズラ科ガマズミ属
5-6月 日本自生の花木で、白い花、実、紅葉と変化が楽しめる
オリーブ
モクセイ科オリーブ属
6月 ひとつの花はとても小さいが花序としてまとまって咲くさまは綺麗。
ギョリュウ
ギョウリュウ科タマリクス属
5月8月 淡紫 枝先に小さな花がみっしりと付く。湿地に強い樹木
キングサリ
マメ科キングサリ属
5-6月 ヨーロッパ原産。藤のように垂れ下がる黄色花が印象的。木花藤・ゴールドチェーンとも。日本での栽培は難しいとされている。
ギンバイカ
フトモモ科ギンバイカ属
5-6月 雄しべが長くフワフワのブラシのように見える梅に似た花。葉も香りがあり「マートル」と呼ばれハーブ利用される。
クチナシ
アカネ科クチナシ属
5-7月 三大香木のひとつで、6枚花弁の花も印象的。ガーデニアと呼ばれる大型で八重の改良種もある。
コデマリ
バラ科シモツケ属
5-7月 小さな花が集まって手毬(てまり)状態の花が枝垂れて咲く。花木の定番のひとつ。 
サツキ
ツツジ科ツツジ属
5-6月 ピンク・赤・紫 5月を彩る花の代表。近縁種のツツジに比べてサツキはやや控えめに咲き、サツキの方が和風に合う。
サンザシ
バラ科サンザシ属
5-6月 赤い実がハーブ的に利用される。白い小さな花が10こほどまとまって開花
スモークツリー
ウルシ科ハグナノキ属
5-6月 白・ピンク~オレンジ 枝先にできる花序に小さな花がついて花穂となり、遠目ではカスミのような美しさとなる。
タイサンボク
モクレン科モクレン属
5-7月 大型の白い花が咲くモクレン科の花。公園樹として良くある。
チョウジガマズミ
スイカズラ科ガマズミ属
5月 ピンク 微かな香りがする可愛らしい花。山野に自生するガマズミのなかま
ツツジ
ツツジ科ツツジ属

4-6月 白・ピンク・赤・オレンジ・紫 花木の代表。刈り込みにも強い。ヤマツツジ・ウルメツツジ・キリシマツツジ・ミツバツツジなど多種。
ツリバナ
ニシキギ科ニシキギ属
5-6月 黄緑~白 つりさがる緑白色の花。秋の赤い実も美しい。ナチュラルガーデンや雑木の庭向け
テイカカズラ
キョウチクトウ科テイカズラ属
5-6月 キョウチクトウを小さくしたようなクリーム色の花のツル植物。紅葉も綺麗。
ニオイバンマツリ
ナス科ブルンフェルシア属
4-7月 紫~白 花が紫から白へ変化しながら長く咲く熱帯性の花木。さわやかな芳香
ハクウンボク
エゴノキ科エゴノキ属
5-6月 白い垂れ下がる花は遠くから見ると、木に綿が載ったようで綺麗。エゴノキの仲間。
ヒメシャラ
ツバキ科ナツツバキ属
6-7月 ナツツバキ(シャラ)の近縁種。幹肌の美しさで、庭木のシンボルツリーとして人気。
フェイジョア
フトモモ科フェイジョア属
6月 耐寒性のある熱帯果樹として人気。しべが派手な花も楽しめ、10月に実を収穫できる。近年の花木の定番のひとつ
ブラシノキ
フトモト科ブラシノキ属
5-6月 白、赤 赤いタワシのような初夏に咲く花がユニーク。庭木のシンボルツリーとしても人気。
プリペット
モクセイ科イボタノキ属
5-6月 シルバープリペット種が定番。初夏の白い花と繊細な葉、切り込みに強く生垣品種として普及。香りは微妙。
ブルーベリー
ツツジ科スノキ属
4-6月 庭でも案外、簡単に作れるベリーとして人気。壺のような形の小さな花や紅葉も楽しめる。
ベニバナトチノキ
トチノキ科トチノキ属
5月 朱紅 トチノキは日本原産の雑木だが、ベニバナトチノキはセイヨウトチノキ(=マロニエ)系統の品種。
ボダイジュ
アオイ科シナノキ属
6-7月 淡黄 小さな黄色花がぶら下がるように咲く。花は目立たないが香りは良い。お釈迦様の菩提樹とは別種だがお寺に多い。
ミツバツツジ
ツツジ科ツツジ属
4-5月 もともと日本の山野に自生する花木。ツツジに比べて原種に近い。
ライラック
モクセイ科ハシドイ属
4-5月 紫・白・赤・青 香水の原料としても代表的な東京でも良く育つ
夏の花木
アベリア
スイカズラ科ツクバネウヅキ属
5-10月 白・ピンク 小さなラッパ形の花が春から秋の長期間咲く。昆虫も集まる。香りも良い
キョウチクトウ
キョウチクトウ科キョウチクトウ属
7-9月 白・黄色・ピンク・赤 毒のある植物として知られるが、街路樹などでは代表的な花木
クレマチス
キンポウゲ科クレマチス属

5月~11月 白 赤 ピンク 紫 ガーデンでは定番のツル性花木。多品種あるがモンタナ系がとくに芳香。
サルスベリ
ミソハギ科サルスベリ属
7-9月 白・ピンク・赤 夏の間じゅうずっと開花してくれる夏の花木の代表種
シモツケ
バラ科シモツケ属
5-8月 ピンク・白 小さな花が集まり花序を形成。山に自生する。北関東にあった下野国(しもつけ)に多い花木だった
ジャスミン
モクセイ科ソケイ属
7-9月 人気のある香木のひとつで、庭木で植えられるものはハゴロモジャスミン。ジャスミン茶や香水の原料とは別品種。
ツキヌキニンドウ
スイカズラ科スイカズラ属
5-10月 オレンジ 葉がはっぱをつきぬけたようなかたち。生け花の花材としても。近縁種のハニーサックルには香りあり。
ナツツバキ
ツバキ科ナツツバキ属
6-8月 落葉性のツバキで夏に開花。沙羅(シャラ)の木とも言われ、庭木では定番のひとつ。ヒメシャラは近縁種。
ナナカマド
バラ科ナナカマド属
6-7月 白花・赤い実・紅葉と6月-11月にかけて楽しめる。高原や山地の紅葉の木としても有名。
ノウセンカズラ
ノウゼンカズラ科属
6-8月 オレンジ
猛暑に強い花は、ひと花一日だけだが次々咲く。フェンスやパーゴラに誘引。
ブッドレア
ゴマノハグサ科フジウズキ属
7-10月 白、紫、青 長い円錐形の花序が、突き出すように咲く夏の花。香り良く蝶が集まるためバタフライブッシュとも
フヨウ
アオイ科フヨウ属
7-10月 白 ピンク 真夏に次々と花を咲かせる。ムクゲの近縁。ハイビスカスと同属。
ムクゲ
アオイ科フヨウ属
7-10月 白 ピンク 真夏に次々と花を咲かせる。フヨウの近縁。ハイビスカスと同属。
秋の花木
キンモクセイ
モクセイ科モクセイ属
9-10月 オレンジ 三大香木のひとつとして知られ、刈り込みにも強いため生垣の定番でもある。色の白いものはギンモクセイと呼ばれる。
ツバキ
ツバキ科ツバキ属
10-4月 白・ピンク・赤 品種により開花期変わる。葉にギザギザがあるサザンカ、ないのがつばき
ハギ
マメ科ハギ属
7-9月 赤紫 秋に咲く赤紫の花で、古くから親しまれる花木。秋の七草に数えられる。詳しくは、⇒「萩の花の種類」⇒「萩の花の名所14選」
マルバノキ
マンサク科マルバノキ属
10-11月 ハート形の葉っぱ星形の花。紅葉しながら開花する珍しいタイプ
冬〜早春の花木
ヒイラギ
モクセイ科モクセイ属
11-12月 魔よけとして定番の庭木。年末に咲く花は金木犀の香り。金木犀との交配種ヒイラギモクセイもある。
サザンカ
ツバキ科ツバキ属
10-12月 白・ピンク・赤 冬のシンボル的な花木。ツバキとの違いは、咲く時期が冬なのと花びらが一枚一枚落ちる、そして香りがあること
マンサク
マンサク科マンサク属
2-3月 早春に特徴的な形の黄色花を咲かせる。枝の色や葉色も良く、庭のシンボルツリーとしても。
ロウバイ
ロウバイ科ロウバイ属
12-3月 花が少ない時期に香りとともに楽しめる花木
オウバイ
モクセイ科ソケイ属
2-4月 春先にかけて咲く黄色の5枚花弁の花。ジャスミンの仲間だが香りは無い。
ウメ
バラ科サクラ属
2-3月 白・ピンク・赤 いわずとしれた日本を代表する花木のひとつ。香りの花木としても代表。
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花木の文化は日本人の心

 ここまで代表的な花木の種類について紹介してきました。

 ここからは、もう少し突っ込んで、花木の花と、それ以外の草花とには、どんな違いがあるか?についてみてみましょう。花木の楽しみ方を深めていくヒントになるはずですよ。

 まず、お庭に植わっている草花や花束やディスプレイで飾られる草花を思い浮かべてみましょう。たとえば、チューリップ・ガーベラ・パンジー・サルビア・カーネーション……花の色も、オレンジ・ブラウン・紫・青・緑などと色とりどりで、花も大きく、八重咲きだったり、花びらがフリル状だったり、ととてもきらびやかな感じがします。草本は成長も早く品種改良もしやすいことから、鑑賞用の園芸品種が次々と生み出されているのです。

 それに対して、花木というと、どちらかというと落ち着いたシックな印象を受けるかもしれません。たとえば梅(ウメ)、桜(サクラ)、皐月(サツキ)、紫陽花(アジサイ)、椿(ツバキ)、山茶花(サザンカ)……花の色も白・赤・黄が中心でシンプルな色使いのイメージで、和テイストを感じさせるものが多いですね。

 実は、花が咲く木を庭に植えて鑑賞する文化は、ヨーロッパよりも日本で盛んになりました。

 ヨーロッパは亜寒帯〜寒帯のため樹木といえば針葉樹が多く、綺麗な花が咲くものがあまりありません。それに対して、日本の温暖湿潤な気候(アジアモンスーン気候)では、広葉樹が豊富で、花が美しい樹木も多く自生しているわけです。

 これは、落葉樹が豊富なため日本の紅葉が世界のなかでも最も美しいといわれるのと、同じでような日本の自然環境の特徴ですね。

 季節の移ろいのなかで、おりおりの花木を愛でる日本ならではの文化は、茶道や華道とも結びつきながら、茶庭や日本庭園の様式美のなかで熟成されます。こうした文化的背景から、花木は、日本人特有の繊細な心遣いやセンスを育んできたともいえるのです。

▲伝統的な花木のひとつ「サザンカ」 日本は多様性に富んだ花木が育つ豊な国。

花の無い木もある?

 ところで、樹木というと、「そういえば花が咲くっけ」という感じで、花の印象がほとんどないものも少なくありません。

 広葉樹の雑木などでは高いところにごく小さな花をつけるため、花が咲いていても気づかない場合も多いです。

 また、マツやイチョウなど裸子植物の花は、花びらやめしべ・おしべがありません。というのも、マツやイチョウは、風の力で授粉する「風媒(ふうばい)」の花だからです。

 ほんらい花びらや花の香りは、授粉を手伝ってくれる昆虫などポリネーターを誘うためのもので、雄しべや雌めしべは、昆虫たちの力を借りて授粉するための仕組みです。風の力で花粉を飛ばして授粉させる植物には、花びらやしべは必要ないわけです。

 裸子植物以外の樹木は、みな被子植物になります。

 被子植物の特徴を簡単に言えば、「実を作る」植物です。実を鳥などに食べてもらい、種を遠くに移動させて、自分たちが育つ場所を広げていくための仕組みです。

 このように、花木の花には、樹木が生き残り、森林のなかで自分の種のテリトリーを維持・拡大していくための仕組みが託されているのですね。

 美しい花を見て、香りに癒されるだけでなく、花木を見ながら、大自然の神秘的な仕組みについても思いを馳せていきたいものです。

 

 

 以上、花木について、代表的な種類をピックアップするとともに、花木の花の楽しみ方や特徴について述べてきました。

 「樹木の名前とか覚えるのハードル高そうだなー」と思って敬遠していた人も、ここまで読み進んでいれば、花木に入門できる基礎知識を最低限身に付けられたはずです。

 ただ、知識で得た名前を、実際の木々と照らしあわせて覚えていくのは、また別な作業です。はじめのうちは、よくわからないはずなので、植物園や公園などで名前を確認したり、詳しい人に聞いたりして、ひとつひとつ確認していきましょう。

 花木の名前や種類などは知らなくても生活に困るものでもありません。スルーしてしまえばそれまでですが、ちょっとだけ覚えよう!と思えば、それだけで世界がぐっと広がります。人生が豊になること間違いなしです。

  

 なお、樹木といえば花とならんで見所である「新緑」も見のがせません。新緑については、⇒「新緑の時期や名所」

⇒「広葉樹の種類と名前」

の記事も参照してください。

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