上高地の紅葉のピーク時期と初心者向けコース。涸沢カールは大丈夫?
2018/08/16
上高地の紅葉といえば、最近ではすっかり「涸沢カール」(からさわかーる)が有名ですね。日本一とも言われるその紅葉を一目見ようと、涸沢カールの紅葉シーズンである9月下旬には、多くの人が、テントやシュラフを背負って涸沢カールの紅葉を目指します。
一方、大正池や河童橋や明神池など、ほんらいの上高地の紅葉は10月中旬〜下旬が見ごろ。こちらは、ハイキング的な軽装備で気軽に楽しめます。
最近は、涸沢カールが上高地の一部で上高地のハイキングのノリで涸沢カールの紅葉を観に行けるのでは?と勘違させるようなWEB情報も多いようですね。実際、勘違いして気軽に涸沢カールを目指してしまう人も少なくないようです。が、それはちょっとマズい感じです。
この記事では、「涸沢カール」が「上高地」とはいろんな面で違うということを説明したうえで、気軽に楽しめる上高地の紅葉狩りプランを提案していきます。
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涸沢カールのようなナナカマドやダケカンバの紅葉が観れる場所は、他にもたくさんあります!⇒「紅葉登山の穴場と初心者向けのルートは?」の記事は要チェックです!。
涸沢カールの紅葉時期は、準冬山の装備が必要
涸沢カールは上高地の一部ではない
そもそも、「涸沢カール」は「上高地」ではなく、ぜんぜん違う場所です。
「上高地」とは、穂高岳の南側のふもと。梓川流域に広がる標高1,500mの平地のことを指しています。谷が自然にせき止められて長い年月の間に土砂が溜まってできた、谷間の平坦地です。大正池〜横尾あたりまでを「上高地」と呼びます。
一方、「涸沢カール」は穂高連峰に囲まれた標高2,300mの氷河圏谷です。位置的には上高地を流れる梓川の上流にはなりますが、上高地とは穂高岳を挟んで反対側にあり、穂高岳の北側のふもとにあたります。
涸沢カールの紅葉は行く価値あり?
昔から、涸沢カールは穂高登山のベースキャンプとしてにぎわい、もちろん涸沢カールの紅葉も登山する人の間では有名でしたが、今ほど一般に広く知られてはいませんでした。近年の登山ブームなどで涸沢カールの紅葉が一躍有名になり、9月下旬の紅葉見頃時期には人が渋滞するほどの人気となっています。
混雑がたいへんなのですが、もちろん、「日本一の紅葉」の名に恥じないその美しさは、ぜったいに訪れる価値がある場所です。
ナナカマドの赤やオレンジ、ダケカンバの黄葉に、雪渓の白と青い空……その自然が作り出す芸術を、実際に自分の肉眼で目のあたりにする経験は、何ごとにも替えられません。(ナナカマどダケカンバの山岳地帯特有の紅葉については『森林限界とナナカマドやダケカンバの紅葉について』の記事も参照してください。)
涸沢カールへ行くにはトレッキングとキャンプの心得が必要
しかし、注意したいのは、紅葉時期の涸沢カールは朝は10度以下で0度近くまで冷え込む、「準冬山」に近い環境だということです。
たとえば、です。「涸沢カール」は、北側山麓で午後の早い時間からほとんど日陰になります。そこで、天気が崩れ雨に濡れでもしたら、濡れた体が乾かないまま、夜に向け気温がどんどん下がっていき、体温を奪われてしまいます。本格的な防寒装備が必要なんですね。
山小屋なら寒い心配は無いでしょうが、涸沢カールにある2つの山小屋は、紅葉の期間は激混みで、ひとつの布団に3人寝るような、文字通りのすし詰め状態です。いくら日本一の紅葉を観にいくためとは言え、そんな山小屋泊はあまりにも過酷すぎます。
ですので、テントやシュラフを持って「テン泊」するのが涸沢カールの紅葉を楽しむ定番となっています。しかし、夏のキャンプセットでは通用しません。
突風で夜中テントが飛ばされることもありますし、シュラフもマイナス4度対応クラスの防寒性の高いものでないと、寒さのため一睡もできません。
つまり、「涸沢カール」の紅葉を観に行くには、本格的な装備が必要だということ。そうなると、重さ15kgくらいの本格的なキャンプ装備を担いで標高差800mを5時間〜6時間歩くという、ある程度のトレッキング経験が無いと、無理、だということです。山歩きはほとんどしたことないという人が、涸沢カールを目指すのは、厳しいと思います
そういうことですので、涸沢カールの紅葉を観に行くには、まず、地元の近場の山でトレッキングの数をこなし、テン泊も経験してからのほうが良いと思います。トレッキングの「入門者」から、「初心者」といえるレベルまで経験をつんだ後に、涸沢カールの紅葉を目指してください。
もっとも、紅葉時期は、万が一トラブルがあっても、なにしろ人が多いので「遭難」の危険はありません。が、かといって、あなどったスキルや装備で入山することは危険です。
涸沢カール」の素晴らしい自然の芸術に出会うには、それなりの準備が必要だということですね。
紅葉の上高地へ早朝入りして、たっぷりと楽しむコース
上高地の紅葉が見頃になったら夜行バスに飛び乗ろう!
さて、「涸沢カール」の紅葉を観るコースが本格的なトレッキングであるのに対して、上高地(大正池〜河童橋〜明神池)の紅葉は、ハイキング感覚で気軽に楽しめるものです。見頃は10月中旬〜下旬。1,500mの高原の紅葉ですので、最盛期の見頃期間は1週間ほどと、長くはありません。常に、最新の紅葉情報をおさえておきましょう。
上高地の紅葉を観るハイキングは、都心から行く場合、行きに夜行バスを利用すれば、車中一泊の日帰りでたっぷり楽しむことができます。
紅葉はタイミングが命。今が見頃!という上高地の地元が発信する情報をつかんだら、迷わず夜行バスに飛び乗り、思い切って上高地を目指してみましょう。
夜行バスが満席でとれない場合は、松本市内に前泊するか、前日夜にマイカーで沢渡(さわんど)駐車場付近まで行き仮眠します。
大正池から河童橋へ
早朝に松本や沢渡駐車場から始発を利用して上高地を目指せば、高速バスやマイカー場合は5時過ぎ、松本前泊の場合は7時〜8時頃に、大正池に到着することができます。
大正池からは、自然研究路と呼ばれる整備され歩きやすい道を、田代池、田代橋、ウェストン碑、河童橋、バスターミナルと1時間半〜2時間ほどかけてゆっくり探索しましょう。
とくに早朝の大正池や田代池は朝もやのなか独特の美しい光景が観られることも多いようです。
大正池から河童橋付近は、カツラ、シラカバ、カラマツが多く、全体に「黄葉」がみられます。なかでも、シラカバの幹と葉の白と黄色のコントラストや、カラマツの黄金に輝く「黄金葉」は、見応えがある美しさです。
河童橋付近ではお店をのぞいたり何か食べたりして、高原リゾートの雰囲気を楽しんでください。
注意したいのは、帰りのバスの整理券を必ず、ゲットしておくこと。
新宿まで日帰りするには、16時45分または17時25分発の新島々行きのバスに乗る必要があります。
河童橋から明神池へ
それまでは時間がありますので、河童橋付近で遊んだら、梓川右岸をさらに明神池方面へ進んでいきましょう。岳沢湿原〜嘉門次小屋〜明神池まで約1時間。
明神池は拝観料300円がかかりますが、迷わず池を観にいきましょう。神社の池だけあって、神秘的な静寂感があり、雰囲気が違います。紅葉もそれまでとは少し趣が違っていて、このあたりはカラマツ中心の黄色一色ではなく、色とりどりの紅葉が楽しめます。
明神橋から、バスターミナルへ戻りは1時間ほど。
帰りのバスの時間をみながら、余裕があれば、明神橋から徳沢まで足を伸ばすことができます。
このコースで、ひととおり上高地は一周したことになります。
全部で(歩く時間だけで)4時間ほどのコースですが、途中、休憩やのんびりしたり、写真をとったりしながら散策をしていると、時間が足りないほど。多彩な表情を見せる上高地の風景に飽きることなく、大自然を満喫することができます。
以上、上高地の紅葉を観る散策コースについてでした。このコースの場合は、装備は、はきなれたトレッキングシューズやスニーカー、しっかりした雨河童上下、水筒、フリースなどの防寒着の軽装で充分です。
上高地を何時に出ればその日のうちに都心に帰れる?
上高地からの都心への帰路の時間を書いておきます。早朝に上高地入りすれば、充分に上高地の紅葉を楽しんで、余裕で都心まで帰れますね。(時刻は変更の可能性があるため、最終的に各会社へ確認をお願いします)
●上高地→新宿直通バス
上高地バスターミナル15:00発〜新宿19:42着
上高地バスターミナル16:15発〜新宿20:57着
●上高地→松本
上高地16:45発〜バス〜新島々17時50着18:01発〜アルピコ電鉄〜松本18:31着
上高地17:25発〜バス〜新島々18時30着18:42発〜アルピコ電鉄〜松本19:11着
●松本→新宿
松本19:21発〜JRあずさ34号〜22:07着
松本20:00発〜JRスーパーあずさ36号〜22:37着
松本20:20発〜J中央高速バス〜新宿23:32着
松本21:00発〜J中央高速バス〜新宿0:12着
以上、上高地の紅葉を楽しむ車中泊日帰りプランについてお伝えしました。
また、大人気の涸沢カールの紅葉は、トレッキング経験を積み、装備をきちんとしてから挑みましょう、ということについても説明いたしました。
いずれにせよ、上高地はすばらしい北アルプスの自然を肌で感じられる素晴らしい空間です。この機会に本格的トレッキングをはじめて、来年は涸沢カールの紅葉を観にいきましょう!