防寒着の選び方。最強を見つけるための、生地や素材の基礎知識。
2017/11/13
防寒着とひと口に言っても、作業用の防寒着からアウトドア用、街で着るコート、防寒インナーなど服のタイプはさまざまです。
また、防寒着に使われる素材(生地)の種類も、とてもたくさんあります。ですので、防寒着をどんな基準で選べばよいか? なかなかわかりにくいものです。
そこでこの記事では、防寒着の選び方、代表的な防寒生地の種類と特徴、そして防寒着の種類と用途について、まとめてみました。
カタログ・スペックや品質タグを見た時に、その製品の特長や機能が、ある程度イメージできるようになると思います。自分にとって「最強」の防寒着を選び出す基礎知識です。
防寒着の選び方
防寒着選びの大原則とは?
防寒着を選ぶにあたって、まず大前提として、チェックしておきたいポイントがあります。
それは防寒着を着たときに
・動きまわり、汗をかく
か?
それとも
・動きが少なく、汗をかくほどではない
か?
……このどちらにあてはまるか?が大事なポイントになります。
つまり、「汗をかくか?かかないか?」によって、防寒着の選び方の方向性が大きく変わってくるのです。
具体的に、寒い時に汗をかく・かかないってどういう状況?
防寒着が必要な野外での仕事やレジャーのシーンを、この大原則に沿って、分類してみましょう。
・仕事…屋外の店舗での販促、荷物の運搬や配達、土木作業や屋外の建築作業、農作業、etc…
・遊び…登山、ハイキング、自転車、釣り(磯つり、ルアー)、etc…
●寒い野外で汗をかかないシーン
・日常生活…普段着のタウンユース、通勤通学
・仕事…機械オペレーター作業、現場監督、工場ライン軽作業、etc…
・遊び…キャンプ、バイク、釣り(防波堤、船釣)、etc…
このように、屋外の活動で「汗をかく?汗をかかないか?」は、けっこうシーンごとによって微妙に異なってきます。
たとえば釣りの場合なら、動的な動きが多い磯釣りと、静的な防波堤釣りとがあります。狙う獲物によっても、アクションが多いか? それとも、じっと待つことが多いか? が変わってくるでしょう。
つまり、同じ釣りでも、シーンによって選ぶべき防寒着のタイプが違うのです。
防寒着を選ぶ際には、「どういう状況で使用するか?」をきちんとイメージしながら、どの程度の汗をかくのか?想定する必要があるわけです。
では、汗をかく場合と汗をかかない場合ごとに、それぞれの防寒着の選び方について、みていきましょう。
汗をかく場合の防寒着選び
アクティブに動きまわり、汗をかく場合は、「透湿性」がポイントになります。
「透湿性」は、防寒着の中でかいた汗の水分を、防寒着の外に逃がすために、必要な機能です。
もし汗をかくシーンで、防寒着の透湿性が充分でなかったら、どうなるでしょう?
汗が防寒着のなかに水分として溜まってしまい、なかに着ている下着やフリースが湿ってしまいます。フリースは比較的乾きやすい素材ですが、フリースの外に着ている防寒着に透湿性がなければ、乾きやすいフリースでも乾くことはありません。
フリースの湿り気は、やがてアウターの防寒着にも内側から移っていきます。透湿性のない防寒着が湿っていまうと、もう防寒能力を失ってしまいます。
さらに、その水分が蒸発する時に「気化熱」となって、体温をどんどん奪ていきます。この状態を「汗冷え」と言います。
「汗冷え」は、寒い時期の長時間の野外活動では、とくに気をつけなければなりません。汗冷えは寒くて体が動かなくなるばかりか、筋肉の動きを著しく鈍くするので、ケガのもとにもなります。腸など内臓にも負担がかかり、免疫力も低下します。
最悪の場合、低体温症で、生命にかかわる状態になってしまいます。
このように危険な汗冷えを防ぐには、透湿性のある防寒着を着用する必要があります。下着やミドルレイヤーにも透湿性と速乾性のものを選びます。
汗をかくシーンでは、全体としてドライな防寒着を選ぶ必要があるわけです。
●アウトドア活動で汗をかく場合
・アウター:ゴアテックスなどの防水透湿性のアウター
・ミドル:化繊インシュレーション(=中綿)
・インナー:メリノウール
●作業現場などで汗をかく場合
・アウター:透湿性のヤッケやウィンドブレーカー
・ミドル:フリース
・インナー:速乾性の発熱下着やメッシュ
※生地の説明は次の章で詳しく述べています。
汗をかかない場合の防寒着選び
動きが少なく汗をそれほどかかない場合は、防寒着の「保湿性」や「防風性」を重視します。
寒さ対策の基本は、まず、風をよけることです。
風速1m/sの風があたると体感温度が1度C下がると言われています。たとえば木枯らしは風速8m/s以上の北風のことですので、ふきっさらしの木枯らしにあたるだけで、少なくとも8度Cも体感温度が下がってしまうのです。
まず、防寒の前提として、風をよけることの効果が高いことがよくわかると思います。
さらに、動かない場合は、しばらくするとしんしんと底冷えしてきます。この底冷え対策の鍵となるのが、「保湿性」です。
湿度があると汗冷えするのでは?と思うかもしれませんが、汗冷えは衣服が濡れるほど水分がたまった場合におきます。
適度な湿度は、保温の方向に働きます。というのも、水は空気の20倍も熱を伝える力をもっています。なので、防寒着内に適度な湿気があれば、その湿気は体温を伝えて、防寒着のなか全体に温かさをひろげていきます。
この防寒着内にたまった熱が、体に輻射されて、さらに温かく感じます。ヒートテックなど発熱性の生地は、まさにこの仕組みを利用したものです。
動きが少ないときの防寒着は、防寒着内部の「保湿性」と、アウターの「防風性」を重視した組み合わせがよいでしょう。
●汗をあまりかかない野外作業
アウター:ドカジャンなど防寒ブルゾン(防風性表地+中綿+裏地ボア)
ミドル:ワイシャツや作業着
インナー:ヒートテックなど発熱性下着
●バイクや防波堤釣り
アウター:防水防風性の防寒ウェア(防風性表地+中綿+裏地アルミ蒸着)
ミドル:フリース
インナー:光電子インナー
※生地の説明は次の章で詳しく述べています。
レイヤリングの大切さ
ここまでみてきたように、防寒着では、汗をかく場合は速乾性と透湿性、汗をかかない場合は防風性・保湿性と、逆方向の性能が求められるわけです。
ということは、動き回るシーンと動かないシーンの両方を一度にカバーできる防寒着は少ない、ということも覚えておきましょう。
ですから、動く・動かないの両方の状況が生じる場合には、そのたびに、脱いだり着たりの調整がどうしても必要になってきます。
わかりやすいのは、サッカー選手のベンチコート。コートで走り回っていても、ベンチにいる間は、ひざ丈のダウンを着ないと寒いわけです。このように、動く場合と休む場合で、防寒着の一部を脱着する必要があります。
冬山の登山では「レイヤリング」という「重ね着の調整」が欠かせないのも、そのためです。
たとえば、登っている途中の汗をかくシーンでは透湿性のシェルを着ますが、休息中でとどまっている時は、保湿性の高いダウンを中に着たり、ビレイパーカーと呼ばれる防風性中綿入りアウターを羽織ます。
このように動いたり留まったりとシーンが変わる野外活動では、ウェアを着たり脱いだりして調整できるような「重ね着」が基本となります。
一方、あまり汗をかかない場合の防寒着は、防風性の高い表地・保温する中綿・体温を保持する裏地の、3層構造が一体になっているウェアが便利です。
マウンテンパーカーや作業用防寒着にはそうした3層のものが多く、部屋着の上から、その一枚を羽織っていけば、野外の寒さを防ぐことができるわけです。
防寒インナーを選ぶ基準は?
さて、冬の防寒では、防寒着のアウターだけでなく、下着選びもとても大切です。
防寒用の下着は、ヒートテックに代表されるよう保温性のものと、アウトドアやスポーツブランドが出す速乾性のものと、大きくふたつに分かれます。
汗をかく場合=ブレスサーモなど:速乾性のあるもの
汗をかかない場合=ヒートテックなど:保湿性の高いもの
汗をかくシーンで保温性の高いヒートテックなどを着ると、温かいのははじめだけで、しばらくすると汗冷えをおこしてしまいます。
汗をかく場合は、汗を次々逃がしていく速乾性の肌着に、透湿性のミドルレイヤーとアウターを組み合わせます。
一方、汗をかかない場合は、ヒートテックや光電子インナーなど、体温でさらに暖房をするタイプのインナーに、部屋着のシャツやフリース+保温性能の高い裏地・中綿の3層防寒着などの組み合わせとなります。
防寒素材の種類と特徴
では、次に、防寒着を選ぶ際に最低限知っておきたい、防寒素材について見ていきましょう。
表地・中綿(インサレーション)・裏地・インナー(下着)…それぞれでよく使われる生地や材質で、代表的なものをピックアップしてみました。
表地の防寒素材
透湿性素材
ゴアテックスに代表される防水秀湿性素材は、防寒着やレインウェアには欠かせないものです。
湿気を通して雨水を通さないのは不思議な感じがしますが、水蒸気の粒子は雨水の数百万ぶんの1の大きさなので、メッシュで水蒸気と雨水を振り分けることができるのです。
防水秀湿性素材は高価ですが、透湿性は汗をかく用の防寒着にはマストの素材となります。
ゴアテックスの他にも、各メーカーが次のような名前の防水透湿性生地を製造しています。
・ゴアテックス(goa)
・イーベントE-vent(BHA)
・ハイベント(ザノースフェイス)
・ドライテック(モンベル)
・ネオゾイックドライ(テイジン)
・ネオシェルNeo-Shell(ポーラテック)
・エバーブレスEverBreath(ファイントラック)
・H2noパフォーマンススタンダード(パタゴニア)
・オム二ドライ(コロムビア)
また、防寒着の表地として使われることの多い、防風性を重視した透湿素材に
・ウィンドストッパー(goa)
があります。ウィンドストッパーはヤッケ、ソフトシェル、ダウン、バイクウェアなど防風性重視の防寒着の表地に使われています。
ナイロン系素材
ナイロンを平織にしたナイロン・タフタがアウターの表地の定番です。
ナイロン100%のタフタもありますが、綿やポリエステルなど他の糸との混紡にすることで、保湿性や透湿性を高めることもあります。
ナイロンはポリエステルにくらべて軽い特徴があります。とくに近年のアウトドアウェアでは軽いものが好まれるため、ナイロンもトレンドになっています。
ぜひチェックしておきたいナイロン生地には、次のようなものがあります。
●リップストップナイロン…透湿性を重視しないふつうの防寒着の表地として多く採用されています。ナイロンを碁盤目状に織り込んで、避けにくしてある強化ナイロン。パラシュートやパラグライダーに使われています。コットンやポリエステルとの混紡もあります。
●60/40クロス(シックスティー・フォーティー)…コットン60%ナイロン40%の混紡で、日本語では「ロクヨンクロス」と呼びます。1960年代にアメリカのアウトドアブランド・シェラデザインがリリースした元祖「マウンテンパーカー」の生地として有名です。適度な通気性と防水性があり、独特の風合いで通好みの素材。とくにタウンユースの春秋の防寒着にぴったりの素材です。
●シルナイロン…ナイロンにシリコンを染み込ませることで防水性と強度を増しています。軽さのわりに高い防水性や強度があるためテントやタープ生地としてよく使われます。防寒着では、軽さを重視するソフトシェルやウィンドジャケットに。
●コーデュラナイロン…強化型ナイロン生地の一種で、ミリタリー用品やバッグなど向け。防寒着では、防寒ブルゾンなど作業着用防寒着の素材として。
●バリスティックナイロン…強度と防水性を強化したナイロン生地。カバンの素材として使われることが多いですが、防寒着では、ダウンの表地などに使われます。
ポリエステル系素材
ポリエステルはナイロンに次ぐ強度をもつ化繊。ナイロンに比べて耐熱性が高く、ハリやコシもあります。
またリサイクルしやすいことも特徴で、ペットボトルを再生して作れることから、環境にこだわるアウトドアメーカーで積極的に使われます。
●ポリエステル混紡…ポリエステルは安価な素材で扱いやすいため、一般の衣服によく使われます。ポリエステル+綿の混紡生地が、もっとも一般的な生地と言ってもよいくらいです。防寒着でもトレンチコートやPコートなどでポリエステル100%の生地もあります。ツイード地などにして防寒性を高めてはありますが、ウールやレーヨンなどとポリエステルの混紡のほうが、より暖かいです。作業用防寒着・アウトドア用防寒着の表地の場合は、ナイロンとの混紡が多く使われます。
●吸水性ポリエステル…フリースや速乾性インナーなどで使われるポリエステルはこのタイプになります。ほんらいポリエステルは吸水性がありませんが、最近はポリエステル繊維の断面に溝があるような構造にしたり、親水性の物質を繊維に添付するなどして、吸水性のあるポリエステルの開発が盛んです。汗を吸水して拡散する速乾性をもった素材は、ほとんどポリエステルで作られています。
●テフロン加工ポリエステル…ポリエステルとテフロン(PTFE)を組み合わせ生地もあります。ゴアテックスやE-Ventなどは、防水透湿性をもたせたテフロンの被膜を、ポリエステル生地に貼り合わせた構造になっています。また、ポリエステル系生地の表面にテフロン加工をして撥水性をや防風性を高めたテフロン・ファブリックも、バイクや作業用の防寒着でよく使われます。
ウール系素材
ウール地は羊の毛を織物にしたもので、化繊が登場する前は、防寒生地の主役でした。
羊以外の、カシミヤ(ヤギ)、アルパカ、アンゴラなどの毛織物をまとめてウールと呼ぶ場合もありますし、羊毛に他の動物の毛を混ぜたものもあります。
防寒着でよく使われるウール生地には次があります。
●ツイード…ツイードはウールを太目の糸に紡いでから織ったものもので、最も古い防寒素材のひとつ。19世紀に貴族たちの狩猟などアウトドアコートの生地として使われていました。冬物ジャケットやコートの生地とて使われます。
●メルトン…メルトンは、太くよった羊毛を硬く織って表面をケバ立たせたものです。折り目が見えず、フェルトのような圧縮不織布のような質感になります。ウールを中心に綿やアクリルなどを少し混ぜて肌触りを調整したメルトンは、最近のPコートやダッフルコートなど、タウンユースの防寒着のメインの素材になっています。
中綿の防寒素材
中綿(なかわた)は、防寒着の表地・裏地の間にはさんでフカフカにして空気の隙間を作り、保温をするものです。
その際、キルティングで中綿を閉じ込め、中綿がズレないようにしてあります。
ほんらいは、文字どおりコットン素材のものですが、ダウンや化繊をふくめて綿(わた)状態の防寒素材を中綿と呼んでいます。
むしろ近年は、防寒着の中綿といえば、コットンではなくダウンや化繊インサレーションなどのことを指すことが多いです。
コットンの中綿
ほんらいの中綿の素材ですが、重たさや保温力のめんから、防寒着ではあまりみかけません。
しかし、和装では、褞袍(どてら)、丹前(たんぜん)、ちゃんちゃんこなどメインの防寒素材です。
ダウン
中綿にはポリエステルやナイロンのものもありますが、温かさや軽さでは天然のダウンがいちばんです。
アヒルやグース(ガチョウ)のダウンは以前は高級品でしたが、ユニクロのウルトラライト・ダウンの影響で安く手に入るようになり、また軽量化や薄型化も進んで、アウターとしてだけでなく、ミッドレイヤーとしても着られるようになりました。
ダウンの性能を示す単位がFP(フィルパー)で、羽毛の復元度を数値化したものです。FPが高いほど保湿性が高く、薄型化が可能です。
ダウンの最大の欠点は湿気に弱いことです。汗をかくシーンでは使い方に注意が必要です。
化繊インサレーション
濡れると乾かないというダウンの最大かつ致命的な欠点を補った新素材が、化繊インサレーションです。
耐水性だけでなく、透湿性をもたせて、水分を内側から外側へ運び出す吸汗拡散の機能を高めています。
とくに汗をかくシーンでは、フリースに次ぐ次世代のミドルレイヤーとして要注目です。
代表的な化繊インサレーションには次のようなものがあります。
・アルファ(ポーラテック)
・シンサレート(3M)
・プリマロフト
・ファインポリゴン(ファイントラック)
・フルレンジインサレーション(パタゴニア)
・コアロフト
光電子ポリエステル中綿
ポリエステルの中綿は、速乾性があり、安価に作れることから、作業用防寒着でよく使われています。
しかし、ダウンに比べると保温性はだいぶ劣ります。
そこで最近は、光電子繊維を組み合わせたポリエステルの中綿が、防寒着の新しい素材として注目されています。光電子繊維は、体から出る遠赤外線を繊維に蓄積し輻射することで肌をあたためる集熱繊維です。
裏地の防寒素材
防寒着の裏地は、フカフカした裏起毛やフリース地になっていることが多いですね。フカフカの裏地には、体温を逃さず蓄熱させて、服のなかの温度を維持する狙いがあります。
●フリース地…フリースは、そもそもポリエステルの一種ポリエチレンテレフタレート(=PET)でできた起毛生地のことを指します。保温性と速乾性の両方をかねそろえているので、ミドルレイヤーとして人気があります。
フリースの材料となるPETはペットボトルの素材と同じで、ペットボトルをリサイクルして作れることから環境に良いのもポイントです。
●ボア…アクリルやポリエステルで、綿毛のようなモコモコを作り、羊毛を再現した裏地。フリースや裏起毛よりも温かい。
●裏起毛(うらきもう)…ケバ立たすことで空気の層を作り保湿性と温かさを出す生地。ちなみに裏毛(うらけ)は、毛をループ状立たせた、タオルなどのパイル地のこと。
●アルミ裏地…裏地にアルミを蒸着させて、体内から発せられる遠赤外線を輻射するもの。ちょうど魔法瓶のように、体が冷めることがありません。倉庫や工場でのライン作業など、あまり汗をかかない現場の防寒作業着やバイクウェアで注目されています。
防寒インナーの生地
防寒着選びでインナーはとても大事です。
とくに、汗をかくようなシーンでは、防インナーの選び方を間違えると、汗冷えして、場合によっては生命の危険すらあります。
水は空気の20倍も熱伝導率が高いため、濡れるとすぐ冷える、逆に、適度な湿度があれば保温されます。
ですから、汗をかく場合は速乾性のインナー、かかない場合は保温性のインナーと使い分けましょう。
インナーの素材は混同してしまう場合も多いので、注意が必要です。
吸湿発熱素材
ヒートテックはポリエステル35%、アクリル35%、レーヨン20%、ポリウレタン10%の組成でできた生地です。
スーパー各社のブランド名でも、同様の組成の発熱型インナーが発売されていますが、ヒートテックと効果にほとんど差はありません。
・ヒートテック(ユニクロ)
・ヒートファクト(イオン)
・ボディーヒーター(イトーヨーカドー)
・スマートヒート(セシール)
など。
これらの吸湿発熱素材は、体の湿度を吸収し、その水分を体温で温めて、下着まわりが温かくなるようにした素材です。
湿度が適当な場合は、温かさキープされるのですが、ウェアが湿りすぎてしまうと、気化熱で温度が下がってしまいます。ヒートテックなどは、乾きにくいレーヨンを含んでいるため、速乾性がありません。
ですから、登山など大量に汗をかく場合にヒートテックを身に着けると、汗冷えのもとになってしまいます。
ヒートテックなどは、あまり汗をかかないシーンで使うべきインナーなのです。
速乾性吸湿発熱素材
乾きにくいヒートテック系のインナーを改善したものが速乾性の吸湿発熱生地です。アウトドアメーカーや釣り具メーカーか開発しています。
汗をかくシーンでは、以下のようなインナーを使います。
・ブレスサーモ(ミズノ)
・ジオライン(モンベル)
・ブレスハイパー(シマノ)
・ブレスマジック(ダイワ)
・ひだまり(ひだまり本舗)
これらのインナーの速乾性の特徴を生かすには、その外に着るミドルレイヤーとアウターにも透湿性が求められます。化繊インシュレーションと防水透湿性の素材のものを組み合わせましょう。
メリノウール
細く柔らかい羊毛をもったメリノ種の羊からとった羊毛がメリノウール。とくに、保湿性、速乾性が高く、チクチク感もない肌触りのよいウール地が作れます。
ウールには抗菌性や防臭効果もあることから、アウトドアのベースレイヤー(インナー)として定評があります。
やや高価ですが、発熱性が高く、ヒートテックなど化繊の発熱性下着などをはるかにしのぐスペックです。
・スーパーメリノウール(モンベル)
・ウーリーズ(アイベックス)
・スピア(アイスブレーカー)
・メリノ250ベース(スマートウール)
光電子インナー
中綿のところでも紹介した光電子素材。インナーでも活用されています。保温系のウェアなので汗をかかないシーンで着用しましょう。
バイクウェアブランドのゴールドウィンや釣りウェアブランドのフリーノットから発売されています。
ババシャツ
ババシャツは昔ながらの綿やシルク地の女性用長袖下着。いまでは、ヒートテックやブレスサーモなどの機能性インナーが主流だが、肌にやさしい天然素材のババシャツには根強い人気があります。
ただし、とくに綿は乾燥性が悪く一度濡れると乾かないため、汗をかくシーンでババシャツを着ると汗冷えしてしまうので注意しましょう。
スキンレイヤー・メッシュ
メッシュ地の下着は、もちろんそれそのものには保温性はないですが、ヒートテックなどの保温性のものと組み合わせると効果を発揮します。
ヒートテックのような乾燥性が弱い保温インナーの下にドライメッシュを付けると、ヒートテックが乾きやすくなり、また湿ったヒートテックが肌に直接ふれないので、汗冷えをしにくくなります。
このように、いちばん肌に近いところにドライメッシュを着用すると、汗をかいた場合の不快感もなく保温も続けられるので、汗をかくシーンでは便利です。
もちろんその場合、上着は秀湿性のもので汗の湿気を外に逃がす必要があります。
防寒着の種類。おすすめのタイプはどれ?
前章では、防寒着で使われる代表的な生地や素材についてみてきました。
この章では、防寒着の種類やタイプを整理しながら、どの防寒着にどんな素材がよく使われるのかを、ざっくりまとめてみます。
ただし、服の名称やカテゴリー分けについては、けっこう曖昧なところもあります。
実際の商品選びでは、名称などに捕らわれず、実際の質や機能についてよく確認しながら選んでいきましょう。
タウンユースの防寒着
マウンテンパーカー
マウンテンパーカーはフード付きのアウトドア系のアウターの総称。ほんらいはシェラデザインの60/40クロスのパーカーのことを指していました。今では、リップストップナイロン、ゴアテックス、ウィンドストッパーなどの表地のものがアウトドアブランドから出されています。一方、なかにはパーカーとドローコードの形状だけを真似た安価なものもあり、一口にマウンテンパーカーといっても実にさまざまなので選ぶ時はじっくり吟味しましょう。詳しくは、⇒「マウンテンパーカーの選び方」の記事へどうぞ。
フライトジャケット
フライトジャケットはもともと米空軍戦闘機用のジャケットMA-1が定番。ほんものはノーメックスという耐火性生地で作られています。中綿があるものと無いものなどバリエーション多数。
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モッズコート
モッズコートは1950年代の米軍のパーカー付きロング丈の防寒着。イギリスのストリートのモッズ・カルチャーで愛されたことから定番となっている。生地はナイロンとコットンのタフタ。
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トレンチコート
トレンチコートは
ハードボイルドの代名詞で、通勤用にもふつうに使われるが、もともとは第一次世界大戦時の英国軍の軍用コート。トレンチは塹壕(ざんごう)の意味。ほんらいはギャバジンというう防水加工した綿の生地。
Pコート
ピーコートは通学用コートして定番。英国海軍の防寒着で、フランスブルターニュ地方の漁師が着るコートとしても有名。ほんらいはウール地だが、最近ははナイロンやポリエステルのものも。
ダッフルコート
ダッフルコートももともとは、ピーコート同様、海軍や漁師など船乗りの防寒着。羊毛を隙間なく圧縮織したメルトン地が使われる。
ランチコート
ランチコートのランチ(ranch)は牧場という意味。カウボーイの防寒着で、毛皮を毛付きのまま裏返して作ったもの。現在はそれを模して、裏地にボアをたっぷり使ったショート丈の皮のジャンパーのことを指しています。デニム地のものも。
野外作業やアウトドア用の防寒着(汗をかく場合)
ウィンドブレーカー・アノラック・ヤッケ
ウィンドブレーカー、アノラック、ヤッケと名称はさまざまですが、ナイロン地の薄手の防風防寒着です。
防水性は無く、安価なこともあり、野外作業着の定番になっています。少し良いやつはリップストップナイロンで耐久性が高くなっています。
汗をかき体が温まる前提なので、保湿性や保温性は無く、防風性がメインですが、防水性が無い分、多少の透湿性があります。下着にはブレスサーモのような乾燥性保温下着、あいだにフリースを着る組み合わせがよいでしょう。
安価なこともあり、作業用防寒着の定番となっています。
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ソフトシェル
ソフトシェルはアウトドアブランドが機能性生地を使って作る高機能ヤッケのようなものです。一般に防水性はありませんが、防風性に高い透湿性が加わっています。また、ストレッチ性が高いのも特徴で、アウトドア・スポーツ向けの防寒着といえます。自転車やトレイルラン、ボルタリング、低山ハイキングング、バックカントリーなど天候が良い条件下で使います。
高価なので作業着には向きません。
ハードシェル
ハードシェルは本格的な雪山登山用のアウター。防水透湿性能はもちろん、脇下やポケット内がベンチレーターとして開閉できるようになっていて、ウェア内部の湿度を排出できるようになっています。また、表地にざらざらとした摩擦のある生地を採用して、万が一雪上で滑落した時に、すべりにくくしてあります。
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インサレーション・ウェア
インサレーション・ウェアは、プリマロフトやシンサレートなど新素材の中綿を使った、速乾性・透湿性・吸汗発散機能があるミドルレイヤーです。
これまで、インナーとアウターの間に着るものとして、フリースがありましたが、透湿性が充分ではないフリースに替わるものとして、インサレーションが急速に普及しています。しっかりと保温しながら、湿度をウェアの外に出して行く、まさに汗かく場合の防寒着にぴったりの素材です。
インサレーションウェアは、ミドルレイヤー専門だけでなく、表地にゴアなどを使ったものもあり、春秋のアウターとしても今後ますます増えていくものと思われます。
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野外作業やアウトドア用の防寒着(汗をかかない場合)
防寒ブルゾン
防寒ブルゾンは、「ワークマン」「」「ジーベック」などの作業着系ブランドでおなじみの現場系の防寒着。いわゆる「ドカジャン」なども定番です。防風・撥水性の表地に、ポリエステルの中綿をはさみ、裏地はボアなど、保温性を重視したものが多いです。
監督作業や機械オペレーターなど、あまり汗をかかかないシーンに向いています。
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綿の防寒作業着
綿100%の防寒作業着は、溶接や鉄鋼工作など、火花が散る現場では欠かせません。通常のヤッケや防寒ブルゾンは、火の粉ですぐ溶けて穴が開いていまうからです。綿防寒着はどちらかという屋内の作業用に使われることが多いです。
防寒つなぎ
防寒つなぎは、主にバイクツーリング用に作られれている防寒つなぎ。バイク用では、風よけのためのポリウレタンコーティングの表地や、輻射熱で温めるアルミ蒸着の裏地を採用し、とにかく温かい仕様にしてあるものが多いです。
もちろん、こうした超あったかい系のバイクウェアは、バイクを降りて歩く場合などは暑すぎです。歩く時に羽織るソフトシェルなどを別に用意しておくべきです。
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ベンチコート
ベンチコートは、サッカーのベンチ入り選手が羽織るものですが、スポーツ観戦や部活の父母活動などでは定番の防寒ウェアです。裏地ボアのものやダウンのものがあります。
電熱ベスト
電熱ベストは、スマホバッテリーなどから電気をとり、電熱線で温めるベストです。防波堤釣りなどで用いられる防寒着です。もちろん釣りだけでなく、動きが少ないシーンでぬくぬく温まることができ、ミドルエイジ以上にはおすすめです。
以上、防寒着の選び方、生地の種類、防寒着の種類についてみてきました。
これで、防寒着を正しく選ぶための基礎知識は、ひととおり身についたと思います。
もちろん、防寒着はこのほかにも多種多様なものがありますが、ここまでの情報をおさえておけば、カタログスペックなども、ある程度読み解けると思います。
ただ、やはり、衣服は最終的には手に取って確認することがいちばんです。ネット通販を利用する場合でも、返品可能なショップを選ぶよう、注意しましょう。
それでは、それぞれのシーンにあわせて、防寒着を着こなしていきましょう!