白い虹(霧虹)を見つけやすい場所や条件。霧虹のできる仕組みは?

      2018/07/26

「白い虹」が各地で観測され話題になっています。

 「白い虹」(ホワイトレインボー)は正式には「霧虹(きりにじ)」と言います。英語ではレイン・ボウならぬフォグ・ボウ(fogbow、fog=霧)となります。

 「白い虹」はどういう仕組みでできるのでしょうか? また、霧虹は、どういう場所でどんな条件がそろうと見れるのでしょうか? この記事ではその疑問に答えていこうと思います。

 また、「霧虹」と似た現象「光輪(ブロッケン)」との違い、噂される白虹と地震の関係についてもふれています。

【関連記事】
光線がおりなす美しい光景といえば、夕焼けもですね。夕焼けのなかでも「マジックアワー」をたっぷり楽しむコツについては、こちら⇒『マジックアワーの楽しみ方と名所20選』の記事も参照ください。

虹と霧虹は、ともに水滴と太陽光線が生み出す現象

 白虹は、虹の一種です。白虹の仕組みを理解するには、まず、虹の仕組みを知る必要があります。

 虹は、太陽光線が雨粒にあたることで見える現象です。雨が残っていることと、反対側に太陽が出ていることが、虹が出る前提条件となります。自分の後ろに太陽があり、視線の先に雨が残っている時に、虹が見えます

 太陽光線が雨粒に約40度の角度であたると、水滴のなかで光が反射・屈折します。光線は色によって屈折する角度が異なることから、太陽光線が、虹色に分解されて見えます。弓のように見えるのは、光が屈折するのは、約40度の角度で当たった光だけが屈折するためです。とても不思議な現象ですが、科学的には理由がはっきりしているものです。

 霧虹は「晴れていて霧が出ている」という条件がないと見ることはできません。逆に、次のような場所では、霧虹が見られる可能性があります。

白い虹(霧虹)が出そうな場所

・山の尾根や山頂

・山すそや林道

・高原や高層湿原

・海上

・平野を流れる広い川の上

 霧虹の仕組みについて学びつつ、霧虹発生を見つけるコツについて、もう少し詳しくみていきましょう。

@maru3_saがシェアした投稿

▲日本で白い虹(fogbow)の名所といえば、尾瀬ヶ原が有名

 白い虹は、雨粒ではなく、霧粒に太陽光線があった時に、見える現象です。ですので霧虹と呼びます。

 霧粒は、雨粒の100分の1〜1000分の1ほどの大きさです。霧虹の場合は、光を屈折させる粒が小さいために、光の屈折角度の幅が広くなります。雨粒の場合はシャープに屈折するので虹色がはっきり出ますが、霧虹の場合は、屈折が分散されるます。そのため、色が分かれずに重なって混じり合って、白く見えるのです。

スポンサーリンク

虹と白虹の違いは? 水滴の大きさの違いと屈折の関係

霧虹は「回折による」は間違い

虹と白虹は、基本的には同じ現象で、ポイントは、水の粒が大きいか小さいか? だけの違いになります。

 「虹が屈折によっておき、霧虹は回折によっておきる」という説明がネットや書籍で時折見られますが、それは間違いです。後に説明する光輪(ブロッケン)は回折によるものですが、白虹は回折は関係ありません。

白虹と虹は原則同じ現象です。そのことは、霧粒の大きさが大きめの場合、パステルカラーの虹色にほんのり色づいた白虹が生まれることでもわかります。

水滴の大きさによって見える現象が違う
〜虹と霧虹とブロッケンの違い

虹と霧虹とブロッケンの違い

▲雨〜霧・雲と光があたる水の粒子の大きさにより、見える現象がことなる。虹は雨粒が大きほどくっきりと見える。

水滴の大きさと虹の見え方

虹の場合も、雨の粒が大きいほど、くっきりとしたカラーの虹が生まれ、雨が霧雨に近くなるとカラーがぼやけてきます。虹色がはっきり出るのは直径1mmほどの雨粒です。その約100ぶんの1の0.01mm(=100マイクロメートル)の雨粒と霧のあいだの大きさでは、ほんのり、パステルカラーの霧虹が見えます。さらに小さくなり0.05mm(=50マイクロメートル)になると、白い虹となります。

このように、虹と霧虹は、連続した現象であることがわかります。

霧虹は、あくまで、虹と同じものですが、虹の7色がくっきりと別れずに、重なりあったために、白く見えているものです。

白虹も、色の重なり合いが少ない端っこの部分は、虹と同じように、赤(外側)や紫(内側)の色がほんのり見えることがあります。これはつまり、虹と同じように分解された色が重なって白く見えているだけだ、ということの証拠です。

虹と霧虹の屈折の違い

虹と霧虹の違い

▲白虹(霧虹)も虹も反射と屈折による現象。水滴が小さくなると、屈折の反射角度がぼやけて色が混じり白くなる。それが霧虹。

水滴の大きさと虹の見え方

ではここで、霧虹の屈折が虹の屈折とどう違うのか?もう少し詳しく見てみましょう。

光が水滴のなかで屈折するときに、色ごとに、曲がる角度が特定の角度に集中する現象があります。この角度のことを「最小偏角」と言います。水の粒が大きいほど、最小偏角で屈折する光が多くなり、逆に水の粒が小さいと最小偏角への集中が弱まります。言い換えれば、水の粒が大きいほど光がシャープに屈折するため、はっきりとした虹色が出て、水の粒が小さいと、屈折のブレが大きくなるため、光が重なってぼやけてみえるのです。

 つまり、ふつうの虹が、ぼやけたものが霧虹だというわけです。ぼやけたことで、光が重なり白く見えるのです。また、ぼやけているぶん、白虹はふつうの虹よりも幅が広く見えるのも特徴でになっています。

霧虹とブロッケンの違い。屈折とMIE散乱

霧虹とは別なメカニズム=回折によるブロッケン現象

 ここまで、虹と霧虹が、太陽光線が水滴によって反射・屈折されて見える、基本的には同じ現象であることを説明してきました。

 次に、「回折」によるブロッケン現象についてもみてみましょう。

 水の粒が霧よりもさらに小さい10マイクロメートルから約1マイクロメートルくらいになると、屈折ではなく、回折という現象がおきます。

 回折は、光が障害物に当たる時に、進む角度を変える現象です。光の波長ごとによって変える角度が異なるため、回折が起きると、虹色に見えます。CDが虹色に光るのはこの現象です。CDの表面がデーターを記録する細かいスリットになっていて、そのスリットに光があたる時、スリットの角が障害物となって回折をおこすためです。

 さて、霧のなかでもとくに細かい5マイクロメートルほどの水の粒子に光が当たると、光は水滴の中で屈折をするのでなくて、粒子の間で回折するようになります。回折により分かれた虹色の光が、さらに反射や散乱が加わって、光はより複雑な動きをするようになります。この現象をMIE散乱と呼びます。

▲ブロッケンと霧虹が同時に見れる現象。霧の粒子が10マイクロメートルぐらいの時に起きる。

 山の尾根などで雲の中に入ると、自分の影が長く伸び、そのまわりに虹色の輪ができることがあります。ドイツ語でブロッケン、日本語ではご御来迎 (ごらいごう)と呼ばれ、まさに仏様の後光のようで、古くから修験道者たちにも、ありがたがられてきた現象です。

 霧虹とブロッケンは、まったく別な原因で起こる現象ですが、どちらも光が霧にあたることで発生します。そのため、霧の粒の大きさが10μmあたりのときは、白虹とブロッケン現象が同時に観察されることもあります。

レイリー散乱と青空

 さて、光があたる粒子が、光の波長(0.4〜0.7マイクロメートル)よりも小さくなると、こんどは、MIE散乱ではなくレイリー散乱とよばれる状態になります。レイリー散乱は波長の短い色(つまり青色)の光を激しく散乱させます。そのため、レイリー散乱がおきているところは青く見えます。

 実は、空が青く見えるのは、大気中の酸素や窒素の分子の粒子に光がぶつかり、レイリー散乱を起こしているためのです。

 ここまで見てきたように、虹→白虹→ブロッケン→青空は、すべて、光が水や空気中の分子など粒子にぶつっかった時に、光がどう動くか?によって起こる現象なのですね。

 虹や青空など、美しい「大自然の現象」は、実は、光の屈折や散乱という物理的な法則にしたがっておきていることなのです。

霧虹が見える条件とは?

霧虹の出現と、太陽の角度(高さ)の関係

 ところで、虹にしろ白虹にしろ、弓を描くのはなぜでしょうか?

 光の屈折の特徴のひとつなのですが、雨や霧などの水の粒のなかで、光の反射と屈折が起こるのは、ある特定の角度から光が差し込んだ場合に限ります。それ以外の角度から入った光は、水の粒に反射したり、通り抜けたりします。特定の角度から入った光のみが、水滴のなかで反射と屈折をして、虹となって見えるのです。

 このため、虹が見れるのは、太陽を背にした時に、自分にあたる太陽光線と、自分の目線との角度が、40度〜42度の時だけとなります。言いかえれば、自分を中心にして、約40度の角度の水滴からのみ、反射と屈折による光が届きます。つまり、自分を中心にして、約40度の位置にある水滴だけが虹色を映し出し、その角度40度をつないでいくと、弧を描がくわけです。

 ここまでみてきた虹や白虹ができる仕組みから、白虹ができる条件は、次のふたつとなることがわかります。

白い虹(霧虹)ができる条件

1.太陽を背にして反対側に霧が出ていること

2.太陽の高さが約40度よりも低いこと。(自分が霧虹を見降せる高台にいる場合は、そのぶん太陽が高くても大丈夫)

スポンサーリンク

霧の種類と、霧虹を見つけるポイント

虹は、太陽の反対側に、水滴や霧のスクリーンがあって、はじめて見えます。つまり、太陽がある側は晴れていて、反対側は雨や霧、という条件が揃わないといけません。ここが、いちばんのポイントです。

では、霧と太陽という、一見矛盾するようなふたつの条件がどんな時にそろうのでしょうか? 霧の発生の仕方を見ながら、探ってみましょう。

霧にはいくつかのタイプがあります。

1.前線による霧

2.放射冷却による朝霧(盆地や谷で起きやすい)

3.川・湖などの蒸気流(川霧)

4.山はだの上昇流(山霧)

5.暖かい空気が冷たい水に冷やされる移流霧

…これらの霧の種類と、霧虹の出現の関係はどうなるでしょうか?

1.前線の霧では霧虹は期待出来ません、前線ですので天気は曇りか雨。太陽がないため霧虹は発生しません

2.朝霧は昼間暖められた地面が、朝方に冷えることで、地面近くの空気が冷やされ霧が出ます。天候は晴れですので、朝の太陽が高さ35度〜40度くらいになる頃まで霧が残っていれば、白い虹が出現するはずです。朝方に太陽高度が40度になるのは春〜夏ですので、朝霧の霧虹は、春から初夏の時期のほうが観察しやすくなります。ところが、放射冷却で朝霧が出やすいのは秋。秋は昼間にならないと太陽が40度まで登ってきません。ですので、初夏までの朝霧という少し難しいタイミングをつかまないと、朝霧で霧虹を観察することはできません。このへんが霧虹がレアだといわれる理由のひとつなのですね。

MASAさん(@masaforester)がシェアした投稿

▲高原は昼と夜の気温差が大きいため、朝霧が出やすい(日光・戦場ヶ原)。

3.川霧も、どちらかといえば秋に発生しやすいですが、どでは春〜初夏にも川霧がでます山あいの渓谷な。しかし、渓谷は方向によっては太陽が谷の影に入ってしまうため、うまく東側が開けたポイントを見つけることが重要になってきますね。逆に、そのポイントを見つけられれば、霧虹に出会える可能性が高まります。

4.山の上昇気流の霧は、山にかかる雲とほぼ同じものです。低い山でも雲がかかりやすいところがあるため、朝方に林道ドライブなどをすれば、霧虹に出会うかもしれません。こちらも、東が開けたポイントを探すことがポイントとなります。

チドリさん(@hakusan_chidori)がシェアした投稿

▲林道も白い虹が出る条件がそろいやすい(白山白川郷ホワイトロード)。

5.移流霧は、春〜初夏に出やすい霧です。比較的暖かい湿った空気が、川や海や湖などの冷たい冷気に冷やされてできます。海上や雪解け水の流れる川の上などに発生する霧です。この移流霧が朝方に出やすい川や湖や海岸がわかれば、霧虹と出会える確率はかなり増しそうです。また、朝方でなくても、霧を高台から見降ろすことができれば、見降ろす角度のぶん太陽が高い位置に来ていても、大丈夫です。自分の影の目の位置から約40度上を向いたところに霧があれば、そこに霧虹が見える可能性があります。

Yusukeさん(@usk428)がシェアした投稿

▲湖にできた白い虹(箱根・芦ノ湖)

 

 ここまで、霧と太陽光線の位置関係から、霧虹を探すポイントをみてきました。霧が発生するタイミングや場所を見つけ、太陽の角度の関係から時間帯をチェックしていけば、白虹に出会える確率は格段に増しますので、参考にしてみてください。

白い虹と地震の関係は?

 さて、最近、白い虹の発生と「地震との関係」が取りざたされています。というか、ちょっと珍しい気象情報や自然現象があると、「地震の前触れ」として扱われることが多いですね。

 こうした地震の前触れは「宏観現象」と言われ、以前は科学的根拠のない迷信と否定されていましたが、最近では、なんらかの関係がある可能性そのものは否定できないとされていて、地震予知の観点から、宏観現象の情報を公的機関が収集・記録することもはじまっています。ただし、関係が証明されたものは、いまのところまだありません。(地震の宏観現象については、⇒「地震予知は不可能なのか?」の記事も参照してください)

 さて、白い虹(霧虹)と地震の因果関係があるかどうか?ですが、基本的に、霧虹は、霧の出る時間帯・方角・太陽の位置などの条件が揃えば、物理的に出現するものです。虹は「見え方の現象」です。逆の言い方をすれば、そこに見る人が誰もいなければ出現しない、とも言えるわけです。そうした意味で、白い虹と地震との因果関係に結びつけるのは無理があるようです。

強いて言うならば、地震の前触れの現象として、地熱に変化があり、その関係で霧の発生が促されるということなら、あるかもしれません。宏観現象として霧が出やすくなり、その結果、霧虹が観測された、ということは言えるかもしれません。ただし、もともとが条件が揃わずレアなものだけに、地震との関係は無いと考えるのが妥当だと思われます。

 

 

 以上、白い虹=霧虹について、その仕組みや、出やすい条件などについて見てきました。

 霧虹については、とくに「縁起が良いとか悪いとか」、「幸運を呼ぶうんぬん」みたいなおまじない的なことは言われていません。ただ、自然の織りなす仕組み、そして、光の屈折という物理の不思議を感じさせられるレアな自然現象であることは変わりません。もし、霧虹に出そうなタイミングに遭遇したら、霧虹を探してみましょう。森羅万象がすべて仕組みをもって存在している不思議さに感動を覚えるにちがいありません。

スポンサーリンク

 - アウトドア, 季節と自然