ハーバリウムの浮かない作り方。オイルと花材を選ぶポイントは?

      2018/09/19

ハーバリウム

 ハーバリウムは、色鮮やかな植物が、瓶のなかでゆらゆらとゆらめく、とても存在感のあるインテリアです。

 2017年春頃から大ブレイクしているハーバリウム。センスの良いショップの作品を買ったりプレゼントするもよし、自作するもよしで、ハーバリウムを楽しむ人が急増中です。

 この記事では、ハーバリウムを楽しむポイントや、知っておきたい有名ブランド、手作りする時必ず問題になる「花が浮いてしまう」件、オイルの選び方などについて、詳しく述べています。

 忙しい日常に、癒しを与えてくれるハーバリウムについての基礎知識を、たっぷりどうぞ。

また、ハーバリウムに使える花を探すにも、生花(切り花)の知識がベースになります。
⇒「絶対に覚えておきたい切り花32種類」
⇒『切り花を長持ちさせるコツと長持ちする品種リスト』
⇒「押し花の色褪せを防ぎ長持ちさせるには?」
の記事も、ぜひ参照してください。

ハーバリウムの魅力と誤解されがちなポイントは?

ハーバリウムの魅力とは?

 ハーバリウムは、透明のオイルのなかに、ドライフラワープリザーブドフラワーを入れて、独特の雰囲気を楽しむものです。

 もともとプリザーブドフラワーやドライフラワーを、オイルに漬けて、より長持ちさせる保存方法は以前からありました。それが、数年前から「ハーバリウム」や「フラワーアクアリウム」などの名前で商品化され、いわゆる「インスタ映え」するきらびやかな雰囲気で、大人気となっているものです。

▲ドライフラワーのナチュラルな色彩を惹き立たせるハーバリウム。

▲プリザーブドフラワーのハーバリウムは、自由な色使いで世界感を作れるインテリア

 ドライフラワーやプリザードフラワーは、長持ちさせるためにフラワードームのような容器に入れてあるものも多いですが、それを容器ではなくオイル漬けにしたものが「ハーバリウム」です。

 ハーバリウムは、ほんらい「植物標本」という意味ですので、生の植物をオイルに閉じ込めたもの?と誤解しがちですが、あくまで、今ブームになっているハーバリウムは、ドライやプリザードフラワーをオイルに漬けたものです。

ハーバリウムの特徴と魅力

・ハーバリウムは、ドライフラワーやプリザーブドフラワーのバリエーションのひとつ。

・オイルに漬けこんであるため、中の植物のフレッシュ感が引き立っている。

・オイルのなかで、かすかにゆらめく、動きのある雰囲気が独特。

・光線との相性が良く、生活空間にキラキラした感じを与えてくれる。写真との相性も良く、いわゆる「インスタ映え」する。

・瓶という限られた空間のなかに、花々を立体的にデザインする新しい表現手法。

・気軽に手作りできるので、自作のものを楽しんだり、プレゼントできる。

このように、なかなか奥の深い楽しみができるハーバリウムですが、手作りするのは、一見簡単なようで、綺麗なものに仕上げるのは、なかなか経験とセンスが要求されるものです。ですから、極めた人は、ハーバリウムのハンドメイド作家としてデビューもできるかも? みたいな広がりがあるところも、人気の秘密です。

ハーバリウムは植物標本ではない?

さて、ハーバリウムは、その取り扱いなど、少しだけ気を使うべきこともありますので、注意点としてまとめました。

ハーバリウムの注意点

・ハーバリウムは生花では作れない。生花を色のついたまま漬けこんで保存する植物標本は科学の力をしても無理。

・「永久に持つ」などと言われているが、実際には1年くらいで変色がはじまるものもある(中の植物の種類などによる)

・窓際に置いて楽しむイメージだが、直射日光には弱い(変色が早まる)

・ハーバリウムはあくまで和製英語。ほんらいのハーバリウムは植物標本という意味。正式なハーバリウムは押し花(腊葉標本・さくようひょうほん)やホルマリン漬け。

・オイルの種類によっては火気に注意が必要のものある。

 ハーバリウムの位置付けとして、ひとつ注意したいのは「植物標本」として呼んでいいか?という点です。

 ハーバリウムはオイルのなかの花材が、ドライフラワーのものもありますが、人工的に着色したプリザーブドフラワーも使われます。ですので、「植物標本」という言い方をすると誤解が生じることがあります。

 ですので、少なくとも「植物標本」と呼ぶならば、中身が自然乾燥のものなのか? プリザーブドフラワーなのか?銘記しておきたいものです。

 いずれにせよ、生の植物の色素を、フレッシュな状態で残すことは、残念ながら、今の技術でもできないというところは、誤解が生じないようにしておきたいものです。

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ハーバリウムの有名ブランドを見て、センスを磨こう

 ここで、ハーバリウム・ブームの火付け役になった先駆け的なブランドの作品をいくつか紹介しておきましょう。

 ハーバリウムは自作して楽しむのも良いですが、まずは、人気のあるプロの作品をよく鑑賞して、センスを掴むのが第一歩です。

 そっくり真似しようと思っても、まったく同じものは作れないのが、ハーバリウムの面白いところ。お気に入りの作品を見つけて、それを目指して作っているうちに、「自分風」のテイストが出てくるでしょう。

LUFF Flower & Plants WORKS

●ショップ:所在地 東京・清澄白河 ●ネット通販:おまかせの限定販売のみ ●4.5cm〜21cm 1,800円(税抜き)etc●

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  ハーバリウム・ブームのきっけとなった東京のフラワー&プランツショップ「LUFF」のハーバリウム。ひとつひとつ手作りされるハーバリウムは、店主のセンスと思いが凝縮されたもの。通販は限定的に「受取日指定不可の種類おまかせ品」のみ。ハーバリウムは一期一会のものでもあるので、ぜひ、お店に足を運んで、自分のためのハーバリウムを選んでみましょう。

CocueNá(コキュナ) BotanicalFlowerShop

●ネット通販:Creemaやminneなどのハンドメイドのマーケットプレイスで購入可能 ●4cm〜21.5cm 2,000円(税抜き)etc●

  北海道のハンドメイド作家さんのブランドCocueNá(コキュナ)。花を閉じ込めたiphoneカバーなどボタニカルをテーマにハイセンスな作品を作っている方。なかでも「ピンポンフラワー」のハーバリウムは、印象的で、ハーバリウムを代表するイメージとなっています。

amifa-fleur(アミファフルール) Flower Aquarium

●アミファ青山・ショールーム ●ネット通販:瓶・オイル・花材およびハーバリウムについての情報

  プリザーブドフラワーとハンドメイドのショップ・アミファは、はやくから「フラワー・アクアリウム」としてハーバリウムを提案していました。ネット通販では、瓶やオイルがリーズナブルナ価格で入手できます。

ハーバリウムオイルの選び方

 ここからは、ハーバリウムの作り方の説明に入っていきますが、まず、最も悩むポイントである「ハーバリウム・オイルの選択」について詳しくみていきましょう。

市販されているハーバリウムオイルの成分は?

 ハーバリウムの漬け込み液は、ハンドメイド・メーカーなどから「ハーバリウムオイル」として専用のものが販売されています。

 その中身は原則、「ミネラルオイル(流動性パラフィン)」または、「シリコンオイル」のどちらかになります。

 ハーバリウムで求められるオイルの特性と、それぞれのオイルの特徴を見ていきましょう。

▲光によってさまざまな表情を見せるハーバリウム。光を活かすには、オイルの特性を知っておくこともだいじ。

 ハーバリウム・オイルに求められる特性としては、以下のようなものがあります。

ハーブオイルでチェックしたいポイント

・オイルの屈折率…光に関係

・オイルの比重…沈みやすさに関係

・オイルの粘度…配置のしやすさに関係

・オイルの引火点…安全性に関係

・オイルの流動点…寒さに関係

 少しだけ科学的な話しになりますが、それぞれについて説明していきましょう。より美しく安全なハーバリウムを作るためには必要な知識なので、目を通しておいてくださいね。

オイルの屈折率

 ハーバリウムの最大の特徴は、瓶のなかのドライフラワーやプリザーブドフラワーが、鮮やかにきらめいて見えることです。

 これにはオイルの屈折率が関わっています。

 屈折率は物体が光を通す時に光がすんなりと通るかどうか?を表す数値です。屈折率が高いほど、内部に入った光を反射させる効果があります。

 空気(真空)の屈折率は1ですが、ダイヤモンドは2.4です。ダイヤモンドがキラキラ輝いて見えるのは、屈折率が高いため、中にとりこまれた光が内部で反射するからです。

 水の屈折率は1.33、ガラスは1.45ですので、空気中よりも、ガラス瓶の水に入った物のほうが、きらきらと輝いて見えることになります。

 さて、ハーバリウムもこの、光の屈折で、空気中よりも輝いて見える効果を利用したものです。

 ハーバリウムに使われるオイルの屈折率は以下です。

ハーバリウムオイルの屈折率
空気 約1
ミネラルオイル 1.48
シリコンオイル 1.3~1.4

 屈折率の点からすると、ミネラルオイルがベターなようですね。わずかな差ですが、シリコンオイルに比べミネラルオイルのほうが「透明感が高い」という評価もあるようです。

オイルの比重

 オイルの比重は、ハーバリウムの中に入れる植物が、浮きやすいか?沈みやすいか?に関わってきます。

 ハーバリウム作りのポイントのひとつは、オイルの中の花などが、全部、浮いてしまわないように工夫することです。そのテクニックは後に述べるとして、オイル選びの段階でも、できるだけ浮かないようなオイルの選択が考えられます。

 草木がオイルに浮くか沈むか?は、比重が関係しています。

 草木の比重がオイルより小さければ浮き、重ければ沈みます。

ハーバリウムオイルの比重
ミネラルオイル 0.8
シリコンオイル 約1

 ミネラルオイルとシリコンオイルを比較した場合、ミネラルオイルの方が比重が0.8と軽くなっています

 もし仮に、ドライにした草木の比重が0.9だとすると、水やシリコンオイルには浮くけれども、ミネラルオイルには沈む、ということになります。

 あくまで、わずかな差ですが、ミネラルオイルの方が中に入れる植物が沈みやすいオイルだということがいえます。

オイルの粘度

 オイルの粘度は、ハーバリウムのなかの植物の花の向きの固定や、なかのゆらめき具合に関わってきます。

 粘度が高いオイルを使った方が、動きが少なく、花の向きなど配置も固定しやすいです。

 粘度を表す単位は、オイルの種類によってバラバラで温度によりも左右されます。

 メーカーごとの共通のオイル単位がありませんので、比較する時は注意が必要です。

 比較したり基準を考える場合は、ざっくりと、「オリーブオイルの粘度」、「マヨネーズの粘度」、などと身近なものに例えて表現するのが分かりやすいですね。

 ハーバリウムの場合は「サラダ油」~「オリーブオイル」~「メープルシロップ」相当の粘度のものがよく使われます。

 オイル購入時に粘度をチェックする場合は、「サラダ油」「オリーブオイル」「メープルシロップ」のどれに近いか?をメーカに問い合わせるとよいでしょう。

オイルの引火点

 オイルの取り扱いで注意したいものに引火点があります。

 引火点は揮発したオイルに火が点く温度です。

 たとえば、灯油の引火点は40~60度C、機械油で200度C前後、食用油はは300度C前後です。

 ハーバリウムオイルとして使われるミネラルオイルは引火点は200度C、シリコンオイルは300度Cほどです。

 ハーバリウムオイルの引火点は、高めですので、ふつうに考えて、機械油やオリーブオイルに着火することはあまり考えられません。通常の感覚でハーバリウムオイルを扱う場合は、とくに引火点を気にする必要はないでしょう。

 ただし、引火点250度Cを下回る油類をまとめて1200リットル以上扱う場合は、消防法で定める「危険物」扱いとなります。

 個人でハーバリウムを楽しむ場合はとくに気にしなくても大丈夫ですが、商品としてハーバリウムを扱う場合は引火点250度以上の「危険物に該当しない」オイルを使ったほうが無難です。

オイルの流動点

 流動点は、固まったオイルが溶け出す温度のことです。

 逆に、流動点以下だと、固まってしまうので、寒い地域などでは注意が必要です。

 ミネラルオイルでは、マイナス9度~マイナス24度ほど幅がありますが、粘度が高いオイルほど、流動点は高くなっています。

 注意したいのは、流動点に近づくにつれ、オイルが白く濁ってしまうことがあることです。

 もし流動点がマイナス9度のオイルですと、気温がゼロ度近くになると濁ってきてしまう可能性があるわけです。

 このことから北国では、流動点がマイナ50度と固まりにくいシリコンオイルを使った方が無難でしょう。

▲ミネラルオイル(流動性パラフィン)と形を選べるボトルのセット。

▲シリコンオイルと瓶のセット。

ハーバリウムオイルはパラフィンとシリコンどちらが良い?

 以上みてきたことから、屈折率・比重の点がから、ハーバリウムオイルにはミネラルオイル(流動性パラフィン)が使いやすいと言えましょう。

 ミネラルオイル(流動性パラフィン)は、粘度が高いほど引火点が高くなり安心ですが、逆に流動点が高くなるので寒い地域では注意が必要です。

 寒さが気になる地域では、流動点が低いシリコンオイル使いましょう。若干、屈折率などがミネラルオイルより低いですが僅かな差です。寒さでオイルが濁ってしまってはもともこもないので、気温が低くなりそうなところは、シリコンオイルを使ったほうが良いでしょう。

 ハーバリウムのオイルとして、ミネラルオイルやシリコンオイル以外にも、グリセリンや洗濯糊で代用する方法もあるようですが、仕上がりの綺麗さ、日持ち、安全性などの点から、ミネラルオイルまたはシリコンオイルを使うのが無難な選択です。

ハーバリウムオイルの捨て方

 ハーバリウムは、1年から数年すると、なかの花材の色が、どうしても褪せてきてしまう場合があります。

 その場合は、中身は廃棄して、作り直すことになりますが、ハーバリウムオイルはどのように捨てたらよいでしょうか?

 商品として扱っている場合は、産業廃棄物扱いになりますので、産廃業者に相談することになると思いますが、個人の場合は、家庭の揚げ油などと同じ扱いで構いません。牛乳パックに古新聞を詰めたものに染み込ませたり、油固めを使ったりで廃棄できます。

 また、オイルランプがある場合は、ミネラルオイルは燃料として燃やして再利用できます(アルコールランプでは使えません)。

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ハーバリウムを美しく仕上げるコツ

 オイル選びが定まったところで、次に、ハーバリウム作りのコツについて見ていきましょう。

 花材の選び方・浮き沈みのコントロール・瓶に充填する際のポイントなどです。

ハーバリウムの作り方のポイント

・色落ちの危険がないのはドライフラワー

・プリザーブドフラワーを使う場合は水溶性染料で染色したもののみ。

・花材が浮いてこないコツ(長めの瓶・小さく切らない)をおさえておく

・キャップを閉める前にエア抜きを

 以下、もう少し詳しく作り方のポイントを見ていきましょう。

ハーバリウムの花材選び

デザインの決め方

 花材選びは、ドライフラワーまたはプリザーブドフラワーであれば、花もの・枝物など自由に選べます。限られた空間のなかに、いかに配置するか?は、センスと主張の部分なのでルールーはありません。

 瓶を横にして、となりに花材をざっくり並べてみて、イメージをまとめていきましょう。

 はじめは、花材の種類は少ない方がまとめやすいです。

 慣れてきたら徐々に花材を増やし、大き目のボトルにも挑戦していきましょう。

花材を選ぶ注意点

 花材の状態で、まず注意したいことは、しっかりと乾燥していることです。

 水分のある状態でオイルに入れてしまうと、カビの原因になってしまうことがあるからです。

 ドライフラワーはハンギングンで自然乾燥したものではなく、ドライフラワーの場合シリカゲルを使ってしっかりドライにしたものを使う方が安心です。もっとも、ドライで花色を綺麗に残すには、シリカゲルに埋め込む方法しかありません。シリカゲルは粉末状のものを使います。

 さて、ハーバリウムで最も失敗しやすいのが「色落ち」です。

 シリカゲルでドライにしたものであれば、色落ちすることはありませんが、プリザーブドフラワーでは注意が必要です。

 プリザーブドフラワーは、アルコール系の液で脱色した後、色を付けて作ります。プリザの染色液には、油性と水性があり、油性のものは、ハーバリウムオイルで溶け出して色落ちし、ハーバリウムオイルそのものにも色が付いてしまうことがあります。

 もうひとつ、染色液には「顔料系」と「染料系」があります。

 顔料は色素を表面に付着させたものに対して、染料は組織のなかまでしっかりと染めるものです。性質の点からいっても、顔料よりも染料のほうが色落ちがしにくいです。

 ですので、ハーバーリウムの花材として安心して使えるプリーザーブドフラワーは「水溶性染料」で染めたもの、ということがいえます。

 自分でプリザーブドフラワーから作る場合は、プリザ専用の染色液や、プリンターインンクや服飾用の染料などのなかから「水溶性染料」を選んで、染色に使いましょう。

花材が浮かないために

 さて、ハーバリウムを作る場合に、案外難しいのは、花材がオイルのなかで浮いて、すべて上の方に集まってこないようにするところです。

 もちろんわざと浮かせる場合もありますが、ボトルの上から下まで、しっかりと花材が入っている方が、バランスが取れて、ハーバリウムらしくなります。

 できるだけ浮かさないようにするには、比重・瓶の形状・オイルのいれ方などのコツがあります。

花材とオイルの比重

 まず、できるだけ浮かないようにするには、オイルのところで述べた「比重」の問題があります。

 まず、乾燥して水分を飛ばしたあとの空気の隙間が多いドライフラワーよりも、水をアルコールに置換してあるプリザーブドフラワーの方が重くなるので、沈みやすくなります。

 ですので、花材はドライとプリザ、オイルはミネラルとシリコンの組み合わせで考えた場合、もっとも沈みやすく、配置がしやすいのは、プリザ+ミネラルオイルの組み合わせになります。

 ただ、これは、もともとの花材の重さや大きさにもよるので、一概には言えません。

 経験でつかんでいく部分ですので、あまり比重の理屈にはこだわらず、いろいろ実際にためしてみてください。

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▲花材がすべて浮いて上に集まってこないように、さりげない技が決め手となるハーバリウムのデザイン。

細めのボトルを使う

 花材を浮かせないコツとして、縦長で細身のボトルを使う、というのがあります。

 さらに、花材の茎を長めにとって、瓶の中に、やや詰めぎみに入れれば、軽い花材でも、瓶にひっかかるような感じになって、浮きにくくなります。

 このあたりが、センスと技法の組み合わせで面白い部分です。これについても、セオリーというよりも、トライ&エラーで経験のなかからコツをつかんでいきましょう。

オイルは段階的に入れる

 オイルを注ぐコツとして、花材をつめた後に一気に注ぐよりも、底の方に小さなピースを入れ、オイルを少し入れ、また花材を加えてオイルを足す、という手順を繰り返した方が、上手に配置でききる場合があります。

 段階的に入れれば絶対浮いてこないということではないですが、思った通りの配置を狙うテクニックとして、段階的にオイルを入れる、ということを覚えておきましょう。

花材以外の小物を使う

 ハーバリウムの中身は、何も、植物だけに限ったわけではなく、石や貝殻などを使って、テラリウム的な雰囲気を狙うのもありです。

 そして、そうした石や貝殻など重たいもので、こっそりと花材が浮いてこないように、押さえておく、という技もあります。

 長いピンセットを上手に使いこなすなど慣れが必要ですが、ハーバリウムの表現の幅が広がる技ですので、挑戦してみましょう。

ボトルの栓の仕方の注意点

エア抜きをする

 とくにドライフラワーを花材に使った場合、花のなかの空気ぶんが残っているため、すぐに栓をすると、後で空気が膨張して油漏れの原因となることがあります。

 オイルを入れてから栓をするまでに、15分~30分ほど時間をおいて、軽くエア抜きをするようにしましょう。

オイル漏れに注意

 ハーバリウムのボトルは、ねじ式のキャップを使うものが多いと思います。

 オイルは、ネジをしっかり締めても、どうしても漏れるリスクがあります(市販のオリーブオイルなどは、漏れないようにカシメの王冠キャップ)。プレゼントで渡す場合などは、やさしく取り扱い、夏場の車内の高温などにも注意しましょう。

 また、雰囲気的に、コルク栓のボトルもなかなか良いものです。

 この場合は、コルクとボトルの口の淵を、蝋燭の蝋やシーリングワックスで封をすると、ある程度のオイル漏れは防げます。

ハーバリウム大ヒットの理由と「水中花」の関係

 さて、ここまで、ハーバリウムの作り方のポイントについて述べてきましたが、最後に、「今なぜハーバリウムがブレイクしているのか?」について、歴史をふりかえりがなら考えてみましょう。

ハーバリウムの世界感は俳句や和歌に通じる?

 そもそも、花をオイルに漬ける文化は、ハーブオイルなど、西洋でも昔からあるものですが、ハーバリウムは日本ならではの、フラワーアレンジと言って良いでしょう。

 ドライフラワーやプリザーブドフラワーは、高温多湿の日本では、案外、長持ちしにくいものです。

 それをハーバリウムにすることで、長期保存が可能となるばかりではなく、ボトルのなかでデザインされる独特の世界感、というのが、日本人の琴線に触れる部分だと言えます。

 限られた空間での表現が、俳句や和歌などにも通じるものがあり、ハーバリウムが奥の深い楽しみができるポイントなのです。

水中花の歴史とハーバリウム

 ハーバリウムを見て、昭和時代の人なら、かつて流行った「水中花」を思い出す人も多いでしょう。ブームで各家庭に水中花が必ずといいて良いほど飾られていた時代がありました。

 五木寛之氏原作ドラマで主題歌を松坂慶子さんが歌った『愛の水中花』が大ヒットし、なぜか、タクシーのギアシフトノブは、水中花仕様になっていました。昭和にヒットした水中花は、造花をアクリルに閉じ込めたものでしたけれども。

 実は、水中花は、江戸時代から続く日本の伝統で、水の中に入れると、きれいに開く風流な遊び心のある造花です。

▲こちらはハーバリウムではなく、日本の伝統「水中花」。ハーバリウムへとつながる日本人の美意識が感じられる。

 水中花は、ウコギ科の低木・カミヤツデの髄から作られた、通草紙(つうそうし)で作られ、水に入れる前は折りたたまれています。

 まるで、水中の小さな花火のように開くさまは、海外でもとくに評価が高く、戦前は、西欧に数多く輸出されていたようです。

 こうした、水中花の歴史と伝統があって、今、ハーバリウムが大ブームになっているのは、自然な流れなのですね。

 

 以上、ハーバリウムの魅力や作り方など、いろいろな角度からハーバリウムについて見てきました。

 プレゼントにもぴったりで、自分で作って楽しむ趣味としても奥が深い、とあって、家庭はもちろん、店舗や職場などでも癒しのインテリアとして、さまざまなシーンで楽しんでいきましょう。

 

 

 【おまけ情報】ハーバリウムも良いですが、生花(切り花)のアレンジがやっぱり基本ですよね。切り花をお世話することで花の扱いにも慣れてきて、ハーバリウムの技術とセンスも磨かれてくるはずです。
⇒「絶対に覚えておきたい切り花32種類」
⇒『切り花を長持ちさせるコツと長持ちする品種リスト』
の記事も、ぜひ参照してください。

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