紅葉登山の穴場と初心者向けルート。高い山の森林限界の紅葉に感動!
2019/10/24
標高の高い山への紅葉登山では、下界の紅葉とは違った雰囲気の、とくべつに美しい錦繍(きんしゅう)の紅葉光景に出会うことができます。ナナカマドの赤とダケカンバの黄に埋め尽くされた尾根やカール、高山植物の草紅葉に染まる山頂や高層湿原です。
こうした美しい山岳紅葉を一目見ようと、多くの人が山を目指します。しかし、紅葉の見頃は2週間ほどととても短いため、人々が集中し、紅葉で有名な山は、大渋滞するほどの混雑ぶりです。
そこでこの記事では、山岳紅葉を比較的ゆったり静かに観れる「穴場」の山や登山ルートをいくつか紹介してきいます。またあわせて登山の初心者でもロープウェなどを使って手軽に観れる山岳紅葉も紹介していきます。
さらに、紅葉登山を安全に行うために絶対に知っておきたいことについてもまとめてあります。美しい山岳の紅葉を楽しむプラン作りの参考になれば幸いです。
【参考記事】高い山で紅葉する樹木や草紅葉については⇒『ナナカマドやダケカンバなど森林限界付近の紅葉する樹種一覧』の記事もぜひ参照してください。
紅葉登山でナナカマド、ダケカンバ、草紅葉を観に行こう〜高い山の紅葉の特徴
紅葉登山とひとくちに言っても、高尾山のような気軽に登れる低山だったり、涸沢カールのような本格登山だったり、山の標高によって、紅葉の表情ががらりとかわります。この記事では、標高が高い、あるいは緯度が高いところの「山岳紅葉」のルートについて紹介していきます。
高い山の山頂付近は、ここから先は高い木が生えない「森林限界」があります。森林限界付近は、ダケカンバやナナカマドの低木化した落葉樹や、高山植物の草紅葉など独特の植生があり、それが下界の紅葉とは違った独特の紅葉風景を生み出しています。
森林限界の紅葉の特徴について、詳しくは
⇒『ナナカマドやダケカンバなど森林限界の紅葉』
⇒「広葉樹の種類と名前?」
⇒「雑木林とは?その種類と成り立ち」
についての記事も参照。
高い山の紅葉時期は初冠雪の時期と重なることもあり、雪の白、高山独特のハイマツやシラビソなど亜高山針葉樹林の緑と、落葉低木樹の赤から、3段紅葉、と呼ばれたりもします。ただ実際には、山頂付近の紅葉風景は、空の青、岩肌のグレーが加わり、紅葉の色も赤、黄色、橙、茶色、赤黒とさまざまですので、3段ではおさまりきらない、とてもカラフルな自然の描く絵画を観ることになります。
こうした森林限界付近の独特の紅葉は、日本全国どこでも見られるわけではありません。標高が高い、あるいは緯度が高い地域の山で、冬に大雪が降る地域に限られます。具体的には、北アルプス、上信越の山、東北の山、そして北海道など。
森林限界付近の紅葉は、かつては、豊富な登山技術と経験を持ったベテランの登山者だけが眼にすることができる風景でした。
しかし近年、高山ロープウェイや登山リフトが整備されたり、登山ウェアや通信機能が発達することで、昔にくらべると、より多くの人が紅葉登山を手軽に安全に楽しめるようになってきたわけです。
それでは以下に、森林限界の山岳紅葉を楽しめる紅葉登山ルートを、「穴場」「初心者向け」などに分類しながら紹介していきましょう。
なお、ここの記事で言う「初心者」は、登山経験の無いまったくの入門者のことではありません。標高500m以上〜1000mくらいの山でトレッキングの経験を何度かして、山歩きそのものには慣れている人のことをここでは「初心者」と表記しています。まったくの入門者が紅葉登山にチャレンジしたい場合は⇒『ロープウェイで行く紅葉の山』の記事を参照にして、まずは低山で経験を積んでください。
また、「穴場」のなかには、2000m級以上の登山経験が何度かある中級者以上向のけルートも多いので、各自の経験、体力や運動能力に応じて難易度を判断してください。。
北海道・東北の山岳紅葉の山
北海道・東北の山は、標高が1500m付近で「森林限界」となっている山が多くあります。これは緯度が高いだけでなく、山頂効果といわれる現象や、冬の豪雪など、さまざまな要因によるものです。森林限界が低いだけに、手軽に山岳紅葉の独特の雰囲気を楽しめますが、天候が崩れれば3000m級の山のようになるので、天候判断と装備には十分注意が必要です。
また特に東北の山には「擬高山帯」という特殊な植生があって、針葉樹林帯が無く、全山が紅葉で染まる山が少なくありません。首都圏からは遠くても、わざわざ訪れる価値のある山も多いのがこのエリアです。
大雪山・沼ノ平〜安足間岳
●主な紅葉:ナナカマド、チングルマ、ダケカンバ、ミネヤナギ
●紅葉時期:9月上〜9月中 ●山頂標高:安足間岳2194m
●住所:北海道上川町 ●アクセス:愛山渓温泉登山口…JR石北線上川駅タクシー40分、旭川紋別道愛山上川ICより22km
大雪山の紅葉といえば、銀泉台、高原沼、または二つのロープウェイ周辺など、紅葉の名所だらけで、タイミングさえ合えば素晴らしい山岳紅葉に出会えます(⇒「大雪山をロープウェイで見る見ごろ時期」の記事を参照)。ただ、混雑も相当なもの。そこで、大雪山の紅葉の穴場コースとして紹介したいのが、愛山渓温泉から沼ノ平〜安足間岳(2194m)を回るコースです。大雪の主峰旭岳の広大な山容を望む稜線歩きと、沼ノ平の湖沼群とバリエーションに富んだ景色を、比較的静かに楽しめます。9時間で日帰りのコースですが天候の変化への対応など経験値が必要な中級者以上向けコースです。
八甲田 大岳〜下毛無岱・上毛無岱
●主な紅葉:ミヤマナラ、草紅葉
●紅葉時期:9月中〜10月中 ●山頂標高:八甲田大岳1564m
●住所:青森県十和田市 ●アクセス:八甲田ロープウェイ…青森駅よりバス60分、青森中央ICより19km
八甲田山は1500mから亜高山帯と高山帯の境であるハイマツ帯が広がるのが特徴ですがさまざまな植生がコンパクトに凝縮された山でもあります。ブナ林と東北特有のミヤマナラの広葉樹林帯、湿原の草紅葉と、アオモリトドマツ(オオシラビソのこと)の針葉樹群落、そしてハイマツにナナカマド、とさまざまな植生帯をいっぺんに見ることができます。ロープウェイから降りてすぐの田茂萢周辺はスニーカーでもハイキングできますが、大岳やの西に広がる下毛無岱、上毛無岱は本格的なトレッキングコースとなり、紅葉を満喫するには毛無岱方面へ足を延ばすことをおすすめします。火山情報には注意が必要です。
三ツ石山
●主な紅葉:ミネカエデ、ナナカマド
●紅葉時期:9月中〜10月中 ●山頂標高:三ツ石山1466m
●住所:岩手県八幡平市 ●アクセス:松川温泉まで…盛岡駅よりバス2時間、東北度松尾八幡ICより30分。松川温泉よりコースタイム9時間。
八幡平と岩手山の中間にある1466mの「東北の宝石」と呼ばれる三ツ石山。全山が紅葉する落葉樹に覆われ、紅葉が美しい東北の山地のなかでも、さらに目を引く山として、地元や登山者には人気の山です。八幡平のふもとにある松川温泉から日帰りで登りやすく、ミネカエデやダケカンバなどで染まった鮮やかな尾根歩きが楽しめます。本州でいち早く紅葉するエリアで、全山どこかで紅葉のピークに出会えるのも特徴です。紅葉シーズンには多くの登山者が集まりますので「穴場」というには人が多いかましれませんが、それでも栗駒山や月山にくらべるとゆったりと静かに紅葉を楽しめます。ただし、コースタイムがやや長く、避難小屋しかないため、急な天候変化などに対応できるある程度の登山経験が必要です。(登山入門者はまずは隣の八幡平で草紅葉など山岳紅葉を体験しましょう。詳しくは、⇒「八幡平とアスピーテラインの紅葉」の記事を参照ください)
栗駒山
●主な紅葉:ドウダン、ミネカエデ、ミネザクラ、ミヤマナラ、
●紅葉時期:9月下〜10月上 ●山頂標高:栗駒山1627m
●住所:宮城県栗原市 ●アクセス:いわかがみ平登山口…JR東宝新幹線栗駒高原駅よりバス70分、東北道若柳金成ICより38㎞ 須川温泉…東北新幹線一関駅よりバス90分
東北一・日本一と呼ばれる紅葉の山。1300m~1600m付近に森林限界の低木性落葉樹のバリエーションが多く、見事な紅葉をみせてくれます。北側の須川高原温泉からダケカンバの紅葉トンネルを通り天狗平をへて、山頂に向かいます。逆に、南側のいわかがみ平から登る「中央コース」「東栗駒コース」のふたつ。こちらから登り、須川温泉へ降りて温泉宿泊をセットで楽しむのもありです。
鳥海山
●紅葉時期:9月下〜10月上 ●山頂標高:新山2236m
●住所:秋田県本庄市・にかほ市、山形県遊佐町・酒田市 ●アクセス:矢島口登山口…由利高原鉄道矢島駅よりタクシー40分、日本海東北道酒田南ICより30分。
鳥海山の紅葉は5合目まで手軽にドライブできる鳥海ブルーラインから見るブナ林の紅葉が10月はじめからはじまります。それに先立って9月頃は山頂付近の草紅葉、ブルーラインの吹浦口をスタートし、鳥海湖周辺のナナカマド、ダケカンバを見ながら草紅葉に染まる山頂を目指すコースが一般的です。また、矢島口からの【穴場】的コースも、おすすめです。草紅葉の美しい龍ヶ原湿原を経て、ダケカンバ、ナナカマドの美し登山道を登り大雪路の残雪は紅葉時期には溶けていることが多いようです。
月山
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ、コミネカエデ
●紅葉時期:9月上〜10月上 ●山頂標高:月山1980m
●住所:山形県庄内町 ●アクセス:月山リフト口まで…山形駅より高速バス40分で山形道西川IC内西川バスストップ乗り換え姥沢まで50分
月山は世界有数の豪雪地帯にあり、雪田や高山植物のお花畑が有名な山ですが、秋の紅葉も高山植物の草紅葉をはじめ、森林限界の低木広葉林がたっぷり楽しめます。リフトを使っての往復なら、初心者にも安心して楽しめます。リフトから月山山頂(1980m)まで尾根伝いに草紅葉、コミネカデ、ミネカエデ、ミネザクラ、ダケカンバ、ナナカマドと低木化落葉樹の錦織が続きます。混雑を避けるには、リフトへ戻らずに、弥陀ヶ原のある八合目登山口へ抜けるルートから下山するのが良いですが、こちらは中級者向け。
大朝日岳
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ、ミネカエデ
●紅葉時期:9月下〜10月中 ●山頂標高:大朝日岳1872m
●住所:山形県西川町 ●アクセス:登山口アメリカ橋まで…JR佐沢線佐沢駅よりタクシー50分、山形道月山ICより30分。 アメリカ橋より連山縦走15時間(1泊)
標高が2000mに満たないにもかかわらず、アルプス級の高山形の紅葉が観られる大朝日連峰。豪雪と冬の強風という特殊な自然環境が1500mという低さで森林限界を産み出しています。最低でも2泊が必要な行程となるため、中級者以上向け。紅葉時は山小屋が混雑するため事前のテン泊許可など準備が必要です。
安達太良(あだたら)山
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ、ツツジ
●紅葉時期:9月中〜10月中 ●山頂標高:安達太良山1700m
●住所:福島県二本松市 ●アクセス:あだたら山ロープウェイまで…東北本線二本松駅よりバス30分で岳温泉→ロープウェイ乗り場までシャトルバス20分
東北の紅葉を代表する山のひとつ。1350mのロープウェイ山頂駅付近もすでに紅葉が美しく、ロープウェイ山頂駅付近だけで軽装で気軽に紅葉ハイキングをすることもできます。ただ、ロープウェイ付近から安達太良山山頂(1700m)方面の紅葉を見ると、必ず、先へ進みたくなるので、きちんとした登山装備で、山頂を目指すことをおすすめします。山頂の火口を見ながら、さらにくろがね小屋までナナカマドや草紅葉など高山紅葉を楽しみ、ロープウェイ乗り場まで下山できます。コースタイムそのものは充分日帰り可能ですが、東京など遠方から来る場合は、くろがね小屋での宿泊をすれば、余裕のある楽しい紅葉トレッキングになります。
上信越・北関東・長野東部の山岳紅葉の山
新潟と群馬や長野の境目である上信越地方は、豪雪地帯であることから、高山植物など山岳特有の植生をもった山が魅力です。一般の観光客には知られていない、いわゆる通好みの「穴場」的な山も多いのが特徴です。
一方、北関東や長野東部などは、道路やロープウェイなどで手軽にアクセスできる森林限界の紅葉ポイントがあります。登山装備無しでも、その風景をかいまみることができます。
八海山
●主な紅葉:ナナカマド、カエデ
●紅葉時期:10月中〜11月上 ●山頂標高:大日岳1710m
●住所:新潟県南魚沼市 ●アクセス:八海山ロープウェイまで…上越線六日町駅よりバス40分、関越六日町ICより29分。 ●八海山ロープウェイより大日岳(1710m)まで往復8時間
修験道の山で知られる八海山山頂付近は険しい岩場のなかにナナカマドの美しい紅葉が観られます。クサリ場などの急峻な崖の連続で中級者向けのコースですが、紅葉時期はクサリ場は渋滞するほどの人気です。ただ、紅葉に見とれていると足を踏み外すこともあるので、ゆっくり紅葉見物という雰囲気とも少し異なりますが、独特の険しい風景のなかの紅葉は見ごたえがあります。
越後駒ケ岳
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ
●紅葉時期:10月上〜10月中 ●山頂標高:越後駒ケ岳2003m
●住所:新潟県魚沼市 ●アクセス:登山口枝折峠…JR上越線小出駅よりバス80分、関越道小出ICより25km
奥只見を囲む人を容易に寄せつけない越後の山塊。ブナ自然林の美しい有数の自然保護区ですが、上級者向けの登山地域です。時折峠に車中泊して、越後駒ケ岳をアタックするコースは中級者でもチャレンジ可能。押しよせるよう圧倒的な紅葉の波を体感できます。道に迷いやすく天候異変もおきやすい地域のため、いざという時のツェルトやビバークなど対応が可能な人向けのコースです。
巻機(まきはた)山
●主な紅葉:ブナ、ダケカンバ、ダケカンバ
●紅葉時期:10月上〜11月上 ●山頂標高:巻機山1967m
●住所:新潟県南魚沼市 ●アクセス:清水登山口…JR上越線六日町駅よりバス30分、関越道六日町ICより18㎞
新潟と群馬県境にある日本百名山のひとつ巻機山(まきはた)は、豪雪地帯。かつて豪雪地帯ならではの雪田性の高山植物が生い茂る湿原が人気でした。しかしハイカーが増えすぎたため、湿原が壊滅状態になってしまい、現在、池塘湿原の復元が進められているという歴史のある山です。6合目までのブナ林と、ナナカマドなどの高山性紅葉、山頂付近の草紅葉が楽しめます。苗場山や谷川岳の眺望も見事です。コースは往復で9時間かかるため、健脚向けの日帰りコースです。
日光白根山
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ
●紅葉時期:9月下〜10月中 ●山頂標高:日光白根山2578m
●住所:群馬県片品村 ●アクセス:日光白根山ロープウェイまで…上越線沼田駅よりバス85分、関越沼田ICより50分 ロープゥエイより山頂〜五色まわりコースタイム6時間
360度の大展望が広がる関東最高峰、山頂付近は森林限界を超えたガレ場で草紅葉を楽しめます。また、山頂から下山しながら五色沼、弥陀ヶ原をまわるコースでナナカマド、ダケカンバが観られます。体力に問題なければ初心者にも取り組みやすいコースですが、ロープウェイの最終時間には注意が必要です。
谷川岳~一ノ倉岳~茂倉岳
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ
●紅葉時期:10月上〜10月中 ●山頂標高:谷川岳1977一ノ倉岳1974m
●住所:群馬県みなかみ町、新潟県湯沢町 ●アクセス:谷川岳ロープウェイ…JR水上駅よりバス25分
谷川岳はロープウェイとリフトをのりついでの天神平でもタイミングがあえば山岳紅葉を気軽に目にすることができます。ただ尾根伝の紅葉をたっぷり確実に楽しむなら谷川岳~一ノ倉岳~茂倉岳を経て土樽駅に降りる中級者以上向けの縦走コースおすすめです。とくに谷川岳のトマノ耳~オキノ耳の稜線の紅葉は美しく、一ノ倉の尾根からは⇒万年雪の一ノ倉沢を見下ろすことができます。さえぎるものがない尾根を長く歩くため天候の急変への備えと対応力はもちろん必須です。
苗場山
●主な紅葉:ダケカンバ、草紅葉
●紅葉時期:9月中〜10月中 ●山頂標高:苗場山2145m
●住所:新潟県津南町 ●アクセス:和田小屋登山口、小日橋登山口…越後湯沢駅よりタクシー30分〜50分
苗場はスキー場としてフジロックや日本最長ロープウェイ田代ロープェイのある苗場高原・田代高原が有名ですが、苗場山も隠れた名山です。紅葉は、山麓のブナやカツラからシラビソの亜高山針葉樹林、そしてダケカンバ林に変わり、山頂はオレンジの草紅葉に染まる池塘群の湿原となります。行程は6時間ほどで日帰り向きですが、苗場山自然定見交流センターに宿泊し月夜の池塘群などを楽しむのもなかなかです。ルート的には初心者でも問題のないコースですが、穴場コースゆえに人もまばらなため、ある程度山を歩き慣れている人向けのルートです。
妙高山
●紅葉時期:9月下〜10月中 ●山頂標高:妙高山2446m
●住所:新潟県妙高市 ●アクセス:笹ヶ峰登山口まで…JR信越本線妙高高原駅からバス50分、上信越道妙高高原ICより50分
亜高山性針葉樹林にダケカンバやナナカマドのコントラストが美しく、また、点在する池塘と湿原のクア紅葉を満喫できる山岳紅葉の名所です。笹ヶ峰登山口からブナ、ミズナラ、モミジの紅葉をみながら黒沢池の池塘群まで、そこからはダケカンバ、ナナカマド、ミネカエデの紅葉が山頂まで続きます。ヒュッテに一泊し、草紅葉の美しい天狗の庭から火打山(2462m)まで足を伸ばす余裕のあるコースで山紅葉を満喫するのがおすすめです。
芳ケ平・渋峠
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ
●紅葉時期:9月下〜10月上 ●山頂標高:芳ケ平1800m
●住所:群馬県中之条町、長野県山ノ内町 ●アクセス:渋峠まで…長野電鉄湯田中駅よりバス60分、チャツボミゴケ公園まで…JR長野原草津温泉駅よりバス25分で草津温泉バスターミナル→タクシー20分、関越道渋川伊香保ICより90分
草津白根山の北麓にある高層湿原。志賀高原の南端横手山の渋峠から見下ろすことのできる絶景紅葉ポイントで、ドライブがてらダケカンバ、ナナカマドの山岳紅葉が観れる貴重なポイントです。草津白根山の火山活動で周辺へは入山規制が多いですが、群馬側のチャツボミゴケ公園から渋峠へ抜けるハイキングコースは片道2時間で現在歩行可能。渋峠から眺めるだけではなく、ラムサール条約にも指定された湿原のなかを歩きワタスゲの草紅葉など満喫できます。渋峠は紅葉ピークはある程度混雑しますが湿原をハイキングする人はそれほ多くないので【穴場】と言えます。ただし、火山活動状況は最新情報に注意してください。
北横岳
●主な紅葉:クロマメノキやウラシマツツジ
●紅葉時期:9月下〜中 ●山頂標高:北横岳2472m
●住所:長野県茅野市 ●アクセス:ロープェイ山麓まで…JR茅野駅よりバス60分、中央道諏訪ICより50分
北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅からすぐの坪庭ではクロマメノキやウラシマツツジ、北横岳から見下ろす七つ池では針葉樹に混じるナナカマドなど低木落葉樹山岳紅葉が観られます。ロープウェイを使ってのスニーカーでのハイキングでも坪庭周遊は可能で、タイミングさえあえば、高山の紅葉に出会えます。北横岳は、さまざまなコースルートを設定できますが、シラビソなど針葉樹林帯がメインで、緑のなかに鮮やかに点在する亜高山帯紅葉を楽しめます。カラマツは10月下旬からです。
北アルプスの山岳紅葉の山
ナナカマドの赤、ダケカンバの黄色、ハイマツの緑の「ラスタカラー紅葉」だったり、雪・紅葉・針葉樹の「三段紅葉」だったり、ダイナミックで独特の紅葉光景が連なる、北アルプス。登山の聖地であると同時に、山岳紅葉の聖地でもあります。
近年はロープウェイやリフトも整備され、山小屋も充実し、いつも登山者で賑わっていますが、ほんらい、容易に人をよせつけない厳しい「アルプス」であることに違いありません。充分な情報と装備をもって臨みましょう。
白馬(しらうま)岳
●紅葉時期:9月下〜10月中 ●山頂標高:白馬岳2932m
●住所:長野県白馬村、富山県黒部市 ●アクセス:蓮華温泉まで…JR大糸線平岩駅よりバス1時間、上越同長野ICより2時間50分
白馬大池はナナカマド、ウラシマツツジ、チングルマなど赤が映える山岳紅葉の名所です。ロープェイを使って栂池自然園まであがり、天狗原を経て白馬乗鞍岳(2456m)を越えて白馬大池をへ出るルートが一般的です。白馬岳(2932m)からの下山は、白馬大雪渓を通るルートが一般的ですが、鉱山道とよばれる神ノ田園池塘を巡り蓮華温泉へ抜けるコースが中級者以上向けの【穴場】として知られています。ブナ、草紅葉、ナナカマドやチングルマの山岳紅葉とさまざまな紅葉の表情が楽しめます。
八方尾根〜唐松岳
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ,ミネカエデ、チングルマ
●紅葉時期:9月下〜10月上 ●山頂標高:唐松岳 2696m
●住所:長野県白馬村 ●アクセス:八方アルペンライン八方山麓駅まで…JR大糸線白馬駅よりバス5分+徒歩10分、上信越道長野ICより70分。
八方アルペンラインで手軽に山岳紅葉を観に行ける人気コース。紅葉の名所としても知られる八方池までは、リフト終点から1時間で、軽装で可能です。きちんとしたトレッキング装備があれば、さらに、下の樺、扇ノ雪渓、丸山ケルン東側などナナカマド、ウラシマツツジ、ミネカエデ、ダケカンバの紅葉ポイントが連続する八方尾根を楽しめます。このあたりはまさに山岳紅葉のメッカといえます。リフト終点から4時間半の唐松岳まで足を延ばせば剱岳など白馬連山の絶景が望めます。唐松岳山荘で一泊すれば五竜岳への縦走も可能です。初心者向けのコースですが八方池より先は、登山装備は必須です。また、八方尾根にケルンがあるのは、ガスがかかると尾根が広いため迷いやすいため目印とするためです。ですので天候変化時には道に迷うリスクもあるため、最低限の登山経験と知識が必要です。
遠見尾根〜五竜岳
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ,ミネカエデ、チングルマ
●紅葉時期:9月下〜10月上 ●山頂標高:五竜岳2815
●住所:長野県白馬村●アクセス:五龍テレキャビンとおみ駅まで…JR大糸線神城駅より徒歩20分、上信越道長野ICより70分。
遠見尾根は、ダケカンバやミネカエデの鮮やかな紅葉が、アルプスをバックにたり連続する、山岳紅葉を代表するポイントです。五竜テレキャビンロープウェイ駅から小遠見山〜西遠見山まで4つのピークを渡る3.5kmの尾根歩きは、紅葉に見とれていると、なかなか先へ進みません。ですので、五竜岳は攻めずに西遠見池または西遠見山を越えて尾根が終わる五竜岳への急登りの手前で引き返すというコースもぜんぜんありです。むしろ初心者は遠見尾根だけを目的に計画しましょう。テレキャビンを使っての五竜岳日帰り往復登山も可能ですが、ロープウェイの運転時間を考えるとかなりタイトですので、ふつうは、五竜岳へ登るのなら山小屋一泊にして、余裕のある日程にしましょう。
剱(つるぎ)岳・裏剱〜仙人峠
●主な紅葉:ダケカンバ、ミネカエデ、ナナカマド
●紅葉時期:9月中〜10月上 ●山頂標高:剱岳2997m
●住所:富山県立山町 ●アクセス:扇沢から室堂ターミナルまで…JR大糸線信濃大町よりバス40分または長野道安曇野ICより50分で扇沢→立山アルペンルート130分、富山鉄道立山から室堂ターミナルまで…富山鉄道立山駅よりアルペンルート90分、立山駅まで北陸道立山ICより40分。
北アルプスの秀峰・剱(つるぎ)岳へは、室堂から雷鳥平、剱沢を経る定番のコースの他、北側の馬場島から標高差2500mを登る早月尾根のコースなどがあります。いずれも途中山小屋泊が必要で健脚向けですが、中級者以上ならチャレンジできます。クサリ場など難所も多いですが、ハイマツにナナカマドとダケカンバが混ざる山岳紅葉独特の雰囲気を長時間楽しめます。長い行程となるので天候の変化への注意と万全の装備は必須です。また、中級者以上向けの【穴場】ルートとしては、剱岳の東麓にあたる「裏剱」の紅葉も見事です。裏剱は、剱沢から剣沢雪渓を降り、日本の氷河である小窓雪渓、三ノ窓雪渓の下側にあたる仙人池〜仙人峠付近ですが、ナナカマド、オオカメノキなどの山岳紅葉の他、池ノ平の池塘群周辺の草紅葉も満喫できます。(⇒「剱岳の多年生雪渓(万年雪)と氷河」の記事も参照!)
立山(室堂平・天狗平・立山三山)
●主な紅葉:ナナカマド、チングルマ
●紅葉時期:9月下〜10月中 ●山頂標高:室堂平2441m、雄山2992m
●住所:富山県立山町 ●アクセス:扇沢から室堂ターミナルまで…JR大糸線信濃大町よりバス40分または長野道安曇野ICより50分で扇沢→立山アルペンルート130分、富山鉄道立山から室堂ターミナルまで…富山鉄道立山駅よりアルペンルート90分、立山駅まで北陸道立山ICより40分。
室堂を中心にチングルマの草紅葉の美しい天狗平へ、また、みくりが池からナナカマド紅葉が見事な雷鳥平付近まで気軽にトレッキングをしながら高山紅葉を体験できます。立山三山(雄山・大汝山・富士ノ折立)も初心者向けの山ですが縦走には様小屋泊も必要で、天候のチェックなどは欠かせません。また、雷鳥平から立山三山には登らず一の越山へ抜ける「神の道」は、立山でも最も紅葉が美しい、なおかつ混雑の少ない【穴場】ルートです。
合戦尾根〜燕岳
●紅葉時期:9月中〜10月上 ●山頂標高:燕岳2763m
●住所:長野県安曇野市 ●アクセス:合戦尾根登山口中房温泉まで…JR大糸線穂高駅よりバス60分、長野ICより1時間駐車場混雑注意
燕(つばくろ)岳への登山道・合戦尾根。2500m付近の尾根筋に出るまではアルプス三大急登りのひとつに数えられる厳しい急登りが3時間続きますが、合戦尾根に出れば、ダケカンバ・ナナカマドの美しい高山紅葉に出会えます。少し登山に慣れてきた人がぜひ挑戦したいルートですね。紅葉登山の時期は日没時間や、急登での体力消耗など考えると日帰りは微妙なため、燕山荘に一泊して翌日に燕岳を攻めて下山するコースが一般的です。一泊すれば一気に余裕のある日程となるので、山岳紅葉やアルプスの眺望をじっくり楽しむことができます。「燕山荘」では山小屋でありながら「秋の紅葉とケーキフェア」が毎年好評です。
双六(すごろく)岳
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ
●紅葉時期:9月中〜下 ●山頂標高:双六2600m
●住所:岐阜県高山市 ●アクセス:新穂高温泉まで…JR松本駅からバス70分平尾温泉→新穂高温泉までバス45分、長野道松本ICから70分 新穂高温泉より全行程17時間(2泊)
奥黒部とも呼ばれる北アルプスの岐阜県側からのアプローチをする通好みのルートです。新穂高温泉からブナ林(ブナ紅葉は10月中旬)のなかをすすみ、双六岳(2600m)から三俣蓮華山(2841m)へのルートは槍や穂高を西から間近に見る尾根筋で、ダケカンバやナナカマド、草紅葉の山岳紅葉が楽しめます。なかでも双六岳の黄金に輝くイワスゲ、鏡平のナナナカマドごしに見る槍・穂高の風景が圧巻です。アクセスも遠いため、泊数を十分とって、ゆったりと山岳紅葉の旅を楽しみたいルートです。健脚向けには黒部五郎岳まで足を延ばすコースも。
槍沢氷河公園〜槍沢カール・天狗原
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ
●紅葉時期:9月下〜10月中 ●山頂標高:槍3180m
●住所:長野県松本市 ●アクセス:上高地〜横尾まで3時間 横尾から天狗原まで3時間 (上高地へのアクセスは⇒「涸沢カールと上高地」の記事を参照)
槍ヶ岳の南西麓の氷河公園とも呼ばれる槍沢カールは、激混みの涸沢を避けて山岳紅葉を楽しむ穴場ルートと言えます。槍ヶ岳を映す天狗池は、夏の間は雪渓で紅葉の時期だけ姿をあらわす幻の湖で、ダケカンバナナカマドとのコラボ風景はとても印象的です。パパ平から天狗原までのナナナカマどダケカンバ群に加え、パパ平より下流の梓川沿いのブナ、ダケカンバ高木、カエデ、サワグルミなどの落葉樹林の紅葉も見事です。横尾から天狗原までは約3時間ですので、槍アタックはせず、槍沢の紅葉目的だけなら横尾一泊のルート設定も可能です。槍登頂なら2泊となります。
涸沢カール〜穂高
穂高連山の西山麓に位置する涸沢カール。上高地から6時間ほどでたどり着く山岳紅葉のメッカ。涸沢カールはほんらい穂高アタックのベースキャンプとなる場所でしが、紅葉時期は紅葉目当てに多くの人が訪れ超過密状態となります。涸沢カールまでは比較的起伏もゆるかで入門者でも到達できることから気軽に訪れようとする人が多いようでうすが、装備はそれなりのものが必要です。というのも、軽井沢からの日帰りはできませんし、山小屋が満杯で泊まれないことも多くテント泊する場合は夜間がゼロ度となる日も多く、冬山級の装備を準備しないといけません(詳しくは⇒『涸沢カールと上高地』の記事も御覧ください)。そこまでしても、見る価値のある山岳紅葉として、訪れる人は年々増え続けているとのことです。涸沢から、奥穂高(3190m)または北穂高(3016m)へのアタックは上級者以上向けです。屏風のコルを越えて特沢に抜ける「パノラマコース」は、険しい岩場が連続するため中級者以上向けのルートですが、ここからの涸沢紅葉は素晴らしく、涸沢パノラマコースの紅葉だけを見てから横尾経由で上高地へ戻るコースどりもありです。
乗鞍〜位ヶ原・エコーライン
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ
●紅葉時期:9月中〜10月上 ●山頂標高:摩利支天岳2872m
●住所:長野県松本市 ●アクセス:乗鞍高原まで…アルピコ鉄道新島々駅よりバス50分、長野自動車道松本ICより50分 乗鞍高原より畳平までシャトルバス
乗鞍高原から畳平へと登る乗鞍エコーライン道中から、低木化したナナカマド、ダケカンバの山岳紅葉が観られます。位ヶ原、尾根板坂、エコーラインの7号カーブ、11号カーブあたりが紅葉の見所と言われます。車道をぬうようにして摩利支天岳2872mまで登山道があるため、エコーラインのバスを位ヶ原(くらいがはら)近辺で途中下車し紅葉を観ながら登山道を登り、剣ヶ峰(3026m)や恵比寿岳(2824m)を登り、畳平からバスで下山する日帰りコースも設定できます。
中央アルプス・南アルプス、他の山岳紅葉の山
中央アルプス、南アルプスにも森林限界の紅葉風景が見られるポイントがあります。ただ、北アルプスにくらべるとさすがに少なくなっていて、どちらかというと、森林限界以下のカラマツの紅葉や、低木化していなダケカンバの紅葉がメインだったりしますが、それはそれで明るい雰囲気の紅葉が楽しめます。
御嶽(おんたけ)山
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ
●紅葉時期:9月下〜10月上 ●山頂標高:剣ヶ峰3064m
●住所:長野県大滝村 ●アクセス:ロープウェイ山麓まで…JR中央線木曽福島駅バス60分、中央道伊那ICより70分。 ロープウェイ山頂駅より9号目まで往復約5時間30分
2014年に水蒸気爆発をおこし今なお山頂は入山禁止だが、8合目以上のナナカマドの紅葉は日本の山岳紅葉を代表するものです。
木曽駒ヶ岳〜千畳敷
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ、草紅葉
●紅葉時期:9月中〜10月中 ●山頂標高:木曽駒ヶ岳2955m
●住所:長野県駒ヶ根市、上松町 ●アクセス:ロープウェイしらび平駅まで…JR駒ケ根駅よりバス45分、中央道駒ケ根ICから5分菅の平バスセンターよりマイカー規制のため専用パス40分
ロープウェイで有名な千畳敷の山岳紅葉は普段着で見ることができ景観も見事ですが、登山装備をして、木曽駒ケ岳山頂付近の草紅葉が、そして濃ヶ池、駒飼ノ池周辺ではダケカンバ、ナナカマドの絶景が観られます。ロープゥエイ利用で日帰り登山が可能ですが、ロープウェイの混雑状況など把握する必要はあります。詳しくは、⇒「千畳敷カールの紅葉へのアプローチ方法」の記事を参照してください。
仙丈ヶ岳
●主な紅葉:ナナカマド、ダケカンバ
●紅葉時期:9月下〜10月上 ●山頂標高:仙丈ヶ岳3033m
●住所:山梨県南アルプス市 ●アクセス:北沢峠…JR飯田線伊那市駅~高遠駅~仙流荘~北沢峠までバス3本乗り継ぎ計120分、車の場合マイカー規制のため中央道伊那ICより仙流荘までで、北沢峠まではバス。
仙丈ヶ岳は北沢峠(2030m)をはさんで甲斐駒ケ岳(2967)の南西にある山。甲斐駒ケ岳も唐松やダケカンバの黄色で綺麗ですが、仙丈ヶ岳へのぼる藪沢沿いのナナカマド、ダケカンバはさらにバリエーション豊かな色彩に彩られます。野趣あふれる通好みの山のなかで、ゆっくりとした時間を過ごしたい通向けの穴場ルートです。
北岳・大樺沢ルート
●紅葉時期:9月上〜10月上 ●山頂標高:北岳3193m
●住所:山梨県南アルプス市 ●アクセス:登山口広河原まで…JR甲府駅よりバス110分、中部横断道白根ICから芦安駐車場まで13kmマイカー規制のためバス乗り換え1時間
北岳の定番登山ルート大樺沢沿いは9月下旬〜10月上旬に紅葉が見事なエリアですが、山岳紅葉なら9月上旬、小太郎尾根のウラシマツツジが有名です。北岳の山肌にウラシマツツジの赤が映えます。
白山
●紅葉時期:9月下〜10月上 ●山頂標高:お前峰2072m
●住所:岐阜県白川村・石川県白山市 ●アクセス:平瀬道登山口まで…東海北陸道白川郷ICより名古屋より高速バス150分で平瀬温泉。平瀬温泉よりタクシー45分。 登山ルート…10時間。登山口で車中泊・キャンプまたは白山室堂ビジターセンターで宿泊
霊山白山の岐阜県側からの登山道・平瀬道はブナの原生林から、高木のダケカンバ、そして低木のナナカマド・ハイマツ帯と、広葉樹の変化を歩きながら確認できます。
絶対に知っておきたい紅葉登山の安全対策
高山の紅葉登山で、必ず理解しておきたいこ、準備しておきたいこととして、次のポイントがあります。
・森林限界付近は「寒帯」の入り口
・秋の天気は変わりやすい
・秋は日が短い
・山小屋の営業を確認
・クマが活発になる
・レイヤリングを基本とした紅葉登山のウェア
これらの注意点について、以下により詳しく見ていきましょう。
標高が低くても森林限界は「寒帯」
ダケカンバやナナカマドの山岳紅葉は、森林限界付近にあります。
森林限界は亜高山と高山の境目にあり、気候区分で言えば「寒帯」の入り口です。(詳しくは、⇒『森林限界の植生と紅葉の種類と仕組み』の記事をご覧ください)
紅葉登山のピーク時期は9月〜10月頭で、平地ではまだ残暑まっさかりですが、森林限界付近では、天候が崩れるとほぼ「初冬」の気候になることがあります。
このため、紅葉登山では、天候の安定が続く時を選ぶ・天気が下り坂の時には行かない、ことが鉄則です。そして、コースによっては、万が一、悪天候に巻き込まれた時に「生き残る」ための装備が必要になってきます。
アルプスのロープウェイから少し歩いた尾根筋であっても、東北の標高1500mの山であっても、森林限界であれば、要注意ゾーンです。晴れていれば天国のような美しい風景を目にしますが、ひとたび天候が悪化すると、ほんとうに天国に行ってしまう可能性が充分にあります。そのことは、しっかりと頭に入れておきましょう。
秋の気候変化に応じた登山計画
秋の気候は変わりやすいといいますが、ひとつには移動性高気圧に覆われる日と、秋雨前線が通過する日が、短いスパンで交互に訪れるからです。
この交互パターンに、南の台風が低気圧化したものが流れ込んだりして、天候の急激な変化につながります。
秋でも、一時的に冬型の西高東低の気圧配置なることがあり、こうなると森林限界では10月初旬でも猛吹雪となることもあります。
現在は、数日後の天気の崩れがかなり正確に予測でき、その情報を素早く手に入れることができるようになっています。そうした気象情報を活かして、登山中に天候の崩れに捕まらないような、余裕のあるプランニングがとても大切です。
とくに尾根を縦走するロングルート場合は、迂回路やエスケープルートを必ずチェックして、天候の変化によって、早めに下山するプランを常にもっておくことは必須です。日帰りの場合も、天候の崩れが微妙な時には無理をせず、次の天候の安定を待つなど臨機応変で余裕のある紅葉登山のプランにするように心がけましょう。
紅葉登山では日没時間に注意
秋は日没時間が急に早くなります。たとえば8月上旬は19時前だった日没は、10月中旬には17時前となり、たった2カ月で2時間も早くなります。
山での行動は日没2時間前の行動終了が、基本中の基本です。そのことを念頭において、無理のないプラン立て、臨機応変にプランを変えていく判断力がとても重要になります。
また、ロープウェイやリフトを使った紅葉登山も多いですが、ロープウェイの最終便に余裕をもって間に合う計画作りもとても大切です。
タイトなコース日程をとる場合は、万が一ロープウェイ終電に間に合わなかった場合、徒歩で下山できるのか?あるいは、ビバークすることも想定して、エマージェンシーシートやツェルトを準備しておくことも検討しましょう。
★日が短く天候が変わりやすい秋の紅葉登山では、予定外に下山できなくなる可能性も。そんな万が一のために最低限エマージェンシーブランケットはザックに忍ばせておこう。 |
クマの活動が活発
これは高山に限ったことでなく、ブナ林帯はもちろん、里山の雑木林であっても充分に注意が必要なことですね。
冬眠前で行動は活発化していますのでクマ鈴は必携です。人が多いところではクマ鈴は止めるなど、クマ鈴のマナーも忘れずに。
山小屋の営業は?
縦走する場合はもちろん、万が一の天候変化やコース時間の遅れなどで、山小屋避難する可能性もあります。ただ、ルートによっては秋の早いうちから「冬季閉鎖」の期間に入ってしまう小屋も少なくありません。山小屋や避難小屋の状況については、最新の正確な情報にもとづいて、登山計画をたてましょう。
最新情報がネットであやふやな時は、「なんとかなる」とは思わずに、事前に山小屋や関係する市町村などに直接問い合わせて、確認しましょう。
紅葉登山のウェアのレイアリングのポイント
ベースレイヤ+ミドルレイヤー+ソフトシェル+レインウェアの4重レイアリング+ネックゲイター
変わりやすい紅葉時期の天候変化に対応するには、レイアリング(重ね着)をして、いざという時も想定した、平地から出発する時には「ちょっとおおげさかな?」というくらいの、装備にしておきましょう。
秋の高山登山では、歩くと暑いけれど、止まると冷える、というとても微妙なです。それに対応するには、細かく重ね着して、こまめにウェアを調整できるレイアリングが基本となるわけです。
●ベースレイヤー…濡れないもの。撥水性のあるメッシュの重ね着など。
●ミッドレイヤー…保温性と吸汗速乾性があるフリースなど。
●ソフトシェル…小さく畳める防風性のあるアウター(寒い時期には重ね着)
●レインウェア…冬用のハードシェルまでは必要はないが、防水透湿性のしっかりとしたレインウェア。
●インサレーション…尾根の避難小屋やテン泊する場合は薄手のダウンまたは化繊インサレーションがあったほうが良い。明け方は零度になる日が多いので。
●ネックゲイター、グローブ、帽子…天候悪化時に身を守るのが、通常露出している部分をカバーしてくれるこれらのアイテム。持って行っても使わない可能性は大きいが、いざという時にあるとないとで命運を分ける。
森林限界を攻める紅葉登山では、上記のようなレイヤリングを基本としましょう。ここで紹介した山のなかにも、山や天候の状態では、これよりも軽い装備で大丈夫な山はありますが、上のような備えにしておけば安心です。
【参考記事】
ウェアリングについては、⇒「マウンテンパーカーの防水性」⇒「防寒着の選び方と素材の基礎知識」の記事も参照してください。
★紅葉登山で高い山に行くなら、ぜひ準備しておきたいのがネックゲイター。いざとういう時に、低体温症を防いでくれる |
紅葉登山の身近なリスク「低体温症による遭難」
紅葉登山の装備の目的は、「低体温症予防」です。。
低体温症は天候悪化時に濡れてしまい、衣類が渇かない状態で風にあたり、体温を奪われ動けなくなり、遭難するパターンです。これまで説明したように秋の山は天候が急変する可能性が高く、装備が不十分だと低体温症になるリスクは、ふつうにあると考えて良いでしょう。
低体温症による遭難の事例としては2009年7月中旬の北海道でおきた「トムラウシ山遭難事故」が有名です。この事故はとても悲しいできごとですが、低体温症を予防するために何が必要か?がしっかりわかるので、事故原因の記録などの情報にはしっかり目を通しておきましょう。
森林限界の紅葉登山では、7月のトムラウシ以上に、天候天下がより起きやすいののです。備えを万全にしてから紅葉登山を楽しみましょう。
以上、森林限界の紅葉登山について、穴場や初心者向けのコース、そして秋山登山の基本装備と注意点について、みてきました。
山の紅葉のベストな時期は2週間ほどととても短く、そのタイミングに出会えるかどうかは、ほんとうに微妙です。時間の調整をするのもたいへんですし、山の紅葉は、登ってみるまでわからない「出会い」のようなものです。
ほんとうに観たい満足のいく山岳紅葉に出会えるには、何度かトライしなければならなかもしれません。
たとえ今シーズンがダメだったとしても、来シーズンに向けて、ゆっくり準備していきましょう。山の紅葉は、私たちにいつか出会えることを、待ってくれているはずですから。