桜と菜の花の名所(関東近県)。春爛漫のコラボ風景を見にいくには?

      2019/03/17

桜と菜の花

 桜と菜の花のコラボって、まさに春そのもの。

 白〜ピンクの桜と黄色い菜の花、そして青い空は、文句なしに春を感じるイメージ通りの風景です。

 この記事では、桜と菜の花のコラボレーションをぞんぶんに楽しむ名所を、紹介しています(関東近県のみ)。

 また、こうした素敵な風景の背景にある、桜や菜の花の栽培事情について、知っておきたい基礎知識をまとめました。

【関連記事】
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桜と菜の花のコラボを実際に見ることって、ありそうで少ない?

 桜と菜の花と青い空。もう、春爛漫(らんまん)といったらこの風景ですね。

 ただ、このイメージを写真では見たことがあっても、実際に桜と菜の花の風景を間近にみたことがある人は、実はそんなに多くないはずです。

 というのも、

・桜の名所は数あっても、同時に菜の花がたっぷり植わっているところは、案外少ない。

・桜と菜の花の満開の時期は、そんなに長くはない。

…という事情があるからなんですね。

 そこで、この記事では、桜と菜の花の両方をボリューミーにたっぷり楽しめる名所をピックアップして紹介していきます。

 桜と菜の花の名所で多いのが「桜堤(つつみ)」と呼ばれる、河べりの土手に桜が植わっているところ。桜と菜の花ではもっとも有名な埼玉の権現堂をはじめ全国各地で桜堤が多く見られます。

 この桜堤の特徴についてはまた後に詳しく述べていきます。

 桜と菜の花の風景といえば、そこに鉄道が加わるとまたいっそう雰囲気が出ます。関東近県で言えば、SLも走る真岡鉄道や沿線の菜の花で有名な千葉のいすみ鉄道など。鉄道+桜+菜の花の組み合わせは、撮り鉄ならずとも、心踊ものがありますよね。春の喜びに列車の躍動感が、「よし!やるぞ」というような、春らしいテンションをより上げてくれる感じがします。

 その他、一本桜と呼ばれる各地にあるエドヒガンや枝垂桜の古木の名所でも、桜の周囲に菜の花が植えられていることが多いです。が、今回は「桜と菜の花のボリューム感」を重視した紹介になっているので、一本桜ものは除いてあります。

 それでは、桜と菜の花の名所を紹介してきましょう。

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桜と菜の花の名所

幸手権現堂桜堤〜桜と菜の花といえばまずここ

●ソメイヨシノ1,000本 菜の花5万平米
●見頃時期:3月下~4月上
●所在地:埼玉県幸手市 ●アクセス;東武日光線幸手駅バス15分または徒歩30分、東北自動車道久喜IC20分

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 関東地方では最も有名な桜と菜の花の名所のひとつ。江戸時代より、利根川水系の洪水を防ぐ治水の要所として、河川改修が何度もおこなわれてきた地域で、桜も江戸時代から何度か植え替えられ今日にいたります。1kmの堤の桜並木の下側には、幅約50m以上で長さ600mの菜の花畑が広がります。

 隣接する行幸湖(みゆきこ)はカヌー競技で有名で、権現堂大噴水は桜シーズンには30分おきに噴水があがります。出店もたくさんでますが、公園に隣接するJA埼玉みずほ農産物直売所さくらファームで農産物やお弁当を購入し、桜と菜の花畑の間の土手に腰掛けてお花見するのもありです。

みなみの桜と菜の花

●カワヅザクラ、ソメイヨシノ800本 菜の花2.7ha
●見頃時期:2月中~3月上
●所在地:静岡県南伊豆町 ●アクセス;伊豆急下田よりバス20分、東名沼津IC120分

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 伊豆半島の桜とえいば、河津桜。カワヅザクラはオオシマザクラ とカンヒザクラの自然雑種で超早咲きで色が濃ゆいのが特徴です。河津町の河津桜が有名ですが、菜の花とのコラボといえば、伊豆半島の先端南伊豆町。有名なビーチ弓ヶ浜にそそぐ青野川の上流川沿いに植えられた河津桜と菜の花のコラボが、早春に楽しめます。

 川沿いの桜並木の下の土手には菜の花、それとは別に菜の花畑もあり、トータルで春の雰囲気をいちはやく感じられるのが魅力です。下賀茂温泉の日帰り入浴や石廊崎へのドライブと組み合わせるのもありです。

真岡鉄道「SL・桜・菜の花街道」

●ソメイヨシノ・枝垂桜1000本
●見頃時期:3月下~4月上
●所在地:栃木県真岡市 ●アクセス;真岡鉄道北真岡駅~西田井駅間、北関東宇都宮上三川IC20分

 桜と菜の花とSLのコラボ。とてもレアで貴重な風景が観れる名所。ただし、SLは土日祝に1往復するだけなので、SLのタイミングは写真マニアなどで激混みするので、SLとのコラボを見に行くならそれなりの覚悟が必要です。春の雰囲気を楽しむなら、SLはあきらめてそれ以外の時間に行きのんびり楽しむのもありですね。

 また真岡市全体で「1万本桜まつり」が開かれ、行屋川の樹齢80年のソメイヨシノの並木がある、根本山自然観察センターの桜のトンネルなど、桜の見所が多いので、たっぷり楽しめます。

桜と菜の花ロード

●ソメイヨシノ、山桜、八重桜など3600本 菜の花は道路脇約4kmほかに大潟村村内に11ヘクタール
●見頃時期:4月下〜5月上
●所在地:新潟県大潟村 ●アクセス;奥羽本線八郎潟駅タクシー5分〜15分または大潟村中心部でレンタサイクル、秋田自動車道五城目八郎潟IC10分〜20分

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 関東近県というには、遠すぎますが、ぜひ紹介したい桜と菜の花のポイント。有数の米どころ八郎潟(大潟村)を横断する県道298号沿いの両側、11kmにおよぶ桜と菜の花の街道。周囲に建物などが無いため、開放感あふれる空間です。関東などと違い、冬が寒いため菜の花の開花がおそく、桜のピークは4月下旬、菜の花のピークは5月上旬なので、桜と菜の花の見頃タイミングが合う期間は短い。それだけに、とてもレアで感動的な風景です。

 ゴールデンウィークには菜の花ロードを抜けた大潟村中心部で「桜と菜の花まつり」が開催されで店やミニSlなど、ほっこりした農村の春を楽しめます。

 桜の菜の花ロードの観覧は、ドライブで観に行くのがベターですが大潟村のホテルサンルーラル大潟、道の駅大潟などにレンタサイクルもあります。

 このほかにも、チェックしたい桜と菜の花の名所を、下の表にまとめました。

桜と菜の花のコラボの名所(関東)
名所 見頃時期 ポイント
さくら堤公園
埼玉県吉見町
3月末~4月初 ソメイヨシノ500本。荒川土手西沿いの1.8㎞に500本のソメイヨシノ。荒川土手のサイクリングロード沿いには菜の花
都幾川桜堤
埼玉県嵐山(らんざん)町
3月末~4月初 ソメイヨシノ250。本都幾川(つきかわ)の土手2kgにわたる桜並木。大きく弧を描いた並木なので、独特の奥行き感がある。
熊谷桜堤
埼玉県熊谷市
3月下~4月上 ソメイヨシノ500本。江戸時代から続く名所。2㎞にわたり土手の上に植えられた桜
国営昭和記念公園
東京立川市
3月下~4月下 園内全体で30種類1,500本。東京ドーム40個分の日本最大級の公園。桜の園の東側に菜の花畑が広がり、菜の花と桜のコラボが楽しめる。西立川駅からは徒歩20分ほどのところ。
蘆花恒春園
東京都世田谷
3月下~4月下 高遠桜15本他。文豪徳富蘆花の元屋敷の都立公園。長野高遠城址で有名な高遠小彼岸桜が有名。規模が小さ目だが菜の花畑も隣接。
いすみ鉄道
千葉県大多喜町・いすみ市
3月下~4月上 菜の花手鉄道とも言われるいすみ鉄道は菜の花の見所がいっぱい。桜のトンネルと線路わきの菜の花のコラボが新田野~上総東、西畑~東総元駅付近などで見られる。
あぐりパーク嵯峨山苑
神奈川県松田町
2月~4月 カワヅザクラ、カンヒザクラ、ヤエザクラ。標高差250mのみかん園の一部で菜の花と梅、桜の競演が長期間楽しめる。食用菜の花狩りも。このほかにも、松田町内では桜まつりが開かれ西平畑公園や松田山ハーブガーデンなど桜と菜の花の見所は多い。
潤井川・龍厳淵
静岡県富士市
3月下~4月上 ソメイヨシノ55本 川沿いの土手と桜並木の背後に富士山が浮かび上がる絶景。写真の撮影スポットとしてカメラマンでにぎわう。ライトアップもあり。
稲瀬川土手
静岡県富士宮市
3月下~4月上 ソメイヨシノ400本。 富士川と富士山との菜の花と桜の風景が見れる。桜シーズンは地元産の旬のタケノコも手に入る。
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桜と菜の花の開花タイミングに注意

 これらの名所でたっぷりと、桜と菜の花を楽しむには、実は開花タイミングには注意が必要です。

 とくに注意したいのが、ソメイヨシノがメインのところです。ソメイヨシノは見頃期間が1週間しか無いため、そもそもソメイヨシノの見頃にあわせて名所を訪れるのが難しいめんがあります。

 さらに、そこに菜の花の開花タイミングが合っていないといけないので、実は、どちらも満開がそろうタイミングに合わせるのは、決して簡単ではないのです。

 とくに菜の花は、冬の寒さの度合いによって、桜以上に開花時期が変わってきます。菜の花の撒き時も、品種や地域によって秋にまくもの、早春にまくものなど、さまざまなパターンがあります。

 ですので、菜の花の品種をとりまぜて種をまくことで、菜の花畑全体の開花時期を長くしているところが多いです。そのため、結果として菜の花畑のほうが桜よりも長くずっと咲いているようなイメージになっています。

 一方、桜のほうですが、ソメイヨシノは見頃がほんとに1週間しかありませんが、その他の八重桜や山桜系のものは比較的開花期は長くなります。(山桜については⇒「山桜の名所と特徴や種類・開花時期など」の記事も参照にしてください。)

 なかでも南伊豆の河津桜は1カ月かけて咲き続けますので、お花見のタイミングを合わせられるのがポイントです。ただ、河津桜の開花期が2月〜と早いため、厳寒の年は菜の花が少し遅れることも。それでも2月下旬から3月上旬はほぼほぼタイミングがあってくるので、間違いなく桜と菜の花のコラボが楽しめます。

 そのほかの名所では、ベスト・タイミングを狙うには、各地の観光協会の最新情報や、Twitterの検索機能などで、最新情報をゲットして、タイミングをあわせていきましょう。

河の土手に桜が多いのはなぜ?

 さて、ここまで紹介した桜と菜の花の名所のなかでも、やはり「堤」がいちばん多い定番のパターンになっていますね。桜と菜の花といえば、川べりの土手、といえそうです。

 ただ、実は、土手の管理の面から見ると、桜と菜の花を維持していくことは、決して簡単ではありません。美しい花の風景を生み出すには、それなりに人の手がかかっているので、そのあたりについて、少しみておきましょう。

 そもそも、河の土手に桜を植える風習は、江戸時代にはじまりました。

 桜を植えれば、お花見に人が沢山集まるので、土手が踏み固められて、丈夫な土手になる、という発想です。ユンボなどの重機がなかった時代には、けっこう有効な土木工事上の工夫だったのではないでしょうか。

 川べりは、やはり何十年に一度が水害が起こるため、また、河川改修は常に行わてれてきているため、江戸時代に植えられた桜が、現在までそのまま川べりに残っていることは、ありません。川べりの桜は、数十年単位で植え替えらてきています。

 現在、堤の桜の名所も、戦後の河川改修で植えられ、それが数十年たったものがほとんどです。

 いまでこそ山桜系が見直されて、山桜を植えることも少なくないですが、明治以後は、桜といえばソメイヨシノ一択。ソメイヨシノの寿命は50年〜60年と、エドヒガンなどの山桜系に比べると短いものです。

 つまり、堤の桜の名所のソメイヨシノの多くは、そろそろ植え替え時期に来ているといえるわけですね。

 もともと桜は根の張りが浅い樹木です。あまり根が張る樹木だと、土手に食い込んで土手の形状を崩してしまいます。ですので、根が比較的浅い桜が、堤には好んで植えられてきました。

 しかし、さすがに枯れるとなると、残された根の部分がスカスカになり、土手の構造を壊してしまいます。

 そこで、最新の桜堤の施工方法では、遮根シートを内部に設置して、桜の根が土手の奥まで張り込まないような、細かい工夫がされているのです。

 また、桜の根張りはそれほど深く無いので、桜の幹の下を踏みつけると、根が弱ってしまいます。そうした桜の特性にも気を使いながら植栽されているということを、充分知っておきましょう。

菜の花は土を肥やす作物なので…

 菜の花も、川べりで良く見かけることが多いですね。菜の花を、土手の法面(のりめん・斜面のこと)に植えれば、雨で法面が浸食されるのを防ぐ役割が期待できそうです。

 ところが、実は、菜の花と土手は、あまり相性が良くないことが、最近あきらかになりつつあります。

 20世紀は、河川の土手の法面は、コンクリートで塗り固めてしまうのが定番でしたが、今世紀に入り景観を重視し、グリーンを活かした工法が盛んになるなかで、法面の植栽に菜の花を使うことが盛んになりました。

 しかし、菜の花はもともと畑では「緑肥」として植えられます。緑肥は、畑を肥やすために植える作物で、すき込むことで養分を土に供給するだけでなく、土をフカフカに肥やす働きがあるものです。

 土が肥えはじめると、ミミズが増え、ミミズが増えるとモグラが増えて、しまいにはキツネが穴を掘って巣を作ります。どんどん土は柔らかくなっていきます。畑では、これはとてもよいことですが、堤が柔らかくては水害防止の働きをしてくれません。

 ですので実際のところ、多くの河川敷では、菜の花は「除草」の対象となっています。とくに、帰化植物であるセイヨウアブラナが土手にどんどん広がって、問題になりつつあるのです。

 ですから、「桜と菜の花の堤」で地域おこしをしよう!というところは、いろいろな工夫や管理をしながら、菜の花を土手に咲かせています。

 ここまでみてきたように、堤に生える桜と菜の花のコラボ風景は、実は、それを支える人たち創意工夫と努力の賜物だということです。

 花見でテンションあがりすぎたり、写真をとるために強引になったりして、桜や菜の花を育てる苦労を踏みにじるような、そうした花見客やカメラマンが後を絶たないのが、桜の名所の悩みだそうです。この素晴らしい風景を楽しむときは、ちょっとだけ、そうした裏方さんたちの手間がかかっていることを思い出しましょう。

 

 

 以上、桜と菜の花のコラボが楽しめる風景についてみてきました。

 また、春の花木といえば、桜だけではなく、いろいろあります。春に花をつける花については、
⇒「花木の種類と名前」

⇒「山桜の種類と名所」

⇒「ロウバイの関東名所と香りの楽しみ」

⇒『花桃の名所とその特徴』
の記事も参照してください。

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